第7話:毛髪再生と利権の崩壊
第7話を読みにお越し頂きありがとうございます!
実は作者は最近ダイエットをはじめまして、お盆休みのあとから、2か月でなんと15kgも痩せたのです。
廻りのかたがたが心配するほどの見た目の変化や、ほっそりとした腕や足、ベルトをつけないと今迄の洋服がずり落ちるほどに。体重計の体組成年齢も実年齢から8歳も若く計測して頂けました。
何をやったかと言えば、夕食を食べた後は翌昼まで水だけで過ごすという事を2か月やっただけです。
いわゆる16時間絶食ですね。
ですが、人によっては危険な行為になる場合もあるので、きちんとコーチングなどを受けながら実施してくださいね。
筆者も、イノマタハクゾウさんの様に、胃の中の物を全くない状態になったまま仕事に行っていましたので、こむら返りになったりとか異常につらかったのですが、体は非常に軽くなりました。
ですが、周りの人が余りに心配するので、デブ活を始めようと思っています。
余談ですみません。
では第7話をお楽しみください。
しかし、人間には変化を極度に恐れる心理機能『ホメオスタシス(生体恒常性)』が存在します。
そのため、「満員電車やサービス残業がないと生きている実感が湧かない!」
と楽園を拒絶して地下に引きこもる旧人類もちらほら……。
そんな中、隣の並行世界から「休日出勤! 24時間働け!」と叫ぶ超社畜軍団が攻めてきて……!?
覇王パパ・巌の痛快無双をお楽しみください!
「あ、アルムくん……! 大変なことになっちゃってるよ……!」
アルカディア・テックの役員室で、秘書に就任したばかりの一ノ瀬ユミカが、タブレッド端末を胸に抱えながら青ざめた顔で飛び込んできた。
画面に躍っていたのは、世界中のニュースサイトやSNSのトレンドを独占する見出しの数々だった。
『アルカディア・テック、毛髪完全再生&細胞若返り特許【ナノバイタル・スカルプ】を出願!』
『薄毛・脱毛症の根治不可説が完全崩壊!? 既存の製薬業界に激震!』
『米国大手メガファーマ、アルカディア・テックの特許取消し請求の意向を表明』
「ふふ、予想通りの反応だね。世界中のメガファーマ(巨大製薬会社)や利権団体が一斉に蜂の巣をつついたような騒ぎになっているよ」
デスクでDW-QCSの仮想ホログラム画面を操作していたアルムは、まったく動じることなく穏やかに微笑んだ。
アルムが出願した『ナノバイタル・スカルプ』。
それは、休眠状態にある毛根の細胞シナプスへ微弱な量子ナノ波動を送り込み、わずか数日で100%若い毛髪を再生させるという、現代の医学常識を根底から覆す超技術だった。
「アルムの言う通りだね、一ノ瀬さん」
25歳の爽やかイケメン姿へと超絶若返った社長・縦溝巌が、高級ブランドのコーヒーを優雅に嗜みながらソファーから立ち上がった。
「既存のAGA治療薬や毛髪移植ビジネスは、世界で年間数十兆円規模の巨大市場だからね。それを一瞬で過去の遺物にする特許を私たちが無償に近い価格で提示したものだから、彼らは自分たちの利権(奪い合いのパイ)を守ろうと必死なのだよ」
思考パッチの効いた巌は、1000億円の資産と世界の裏側を見抜く圧倒的な余裕を漂わせている。
「で、でも……! アメリカの巨大製薬企業『バイオ・メガ・コープ』の日本支社長が、凄まじい剣幕で『今すぐ特許を取り下げなければ、あらゆる手を使って潰す』って乗り込んできているの……! 警備を突っぱねて、応接室で暴れていて……!」
ユミカが心配そうに拳を握りしめる。
「なるほど。奪うことしか知らない『原始社会(Type 0.7)』の典型的な反応だね。……よし、巌さん、直接お会いして『対話』と『修正』をしてあげようか」
アルムは優しくユミカの頭を撫でると、巌と共に応接室へと向かった。
◇
応接室では、高級スーツを着た巨漢の外国人男性――バイオ・メガ・コープ日本支社長のジョンソンが、デスクを力任せに叩きまくっていた。
「オーマイゴッド! ふざけるなよ日本の極小ベンチャーが! 我々が長年かけて築き上げた脱毛症市場を破壊する気か!? その『ナノバイタル』の特許技術を我々に100億ドルで売り渡せ! さもなくば、世界中の法廷で貴社を訴訟地獄に叩き落とし、経済的に抹殺してやるぞ!」
ジョンソンは目を血走らせ、今にも殴りかからんばかりの威圧感を放っていた。
だが、扉を開けて入ってきたアルムと巌の表情には、恐怖どころか「哀れみ」すら浮かんでいた。
「ジョンソン支社長。怒りで血圧が200を超えていますよ。肥満と過度のストレスで、あなたの冠動脈は今にも詰まりそうだ」
アルムが静かに告げる。
「な、なに……!?」
(DW-QCS――局所生体スキャンおよび認識補正)
アルムの手のひらから、不可視のナノ波がジョンソンの体内へと透過した。
「ガッ……!? な、なんだ……身体が急に軽く……!? 激しい頭痛が消えた……!?」
ジョンソンが自分の胸を押さえて目を見開く。長年の不摂生と暴飲暴食でボロボロだった彼の血管と肝臓機能が、一瞬で健常化されたのだ。
「私たちは、あなた方と争うつもりはありません。奪い合うのではなく『与え合う』ために、この技術を公開したのです」
巌がそっとジョンソンの肩に手を置いた。25歳のイケメン社長から漂う圧倒的な包容力に、ジョンソンは気圧される。
「ジョンソンさん。あなたの会社が作ってきた薬も、かつては人を救いたいという善意から始まったはずだ。利益を守るために病気や悩みを長引かせるビジネスは、もう終わりにしましょう。このナノバイタル技術をあなた方の製造ラインでも作れるよう、無償でライセンスを分かち合います。その代わり――世界中の人々に、安価で届けてあげてください」
「む、無償ライセンスだと……!? 我々に奪わせるのではなく、与える……!?」
ジョンソンは絶句した。
訴訟や脅迫で技術を奪おうとしていた自分に対し、アルムたちは命を救い、さらに莫大な利益と名誉をも生む未来技術を「分かち合う」と言って差し出してきたのだから。
「あ……ああ……。私は、なんて愚かなことを……」
ジョンソンはガタガタと膝を突き、自らの醜い欲望と、目の前の青年の底知れぬ慈愛に涙を流した。
「ありがとう……アルディア・テック……! 我々も変わります! 人々を本当に幸せにするために、この技術を世界へ広めます……!」
◇
「すごいです、アルムくん……! あんなに怖かった外国の社長さんが、泣いて感謝して帰っていくなんて……!」
応接室を出たあと、ユミカが感激の面持ちでアルムの手をギュッと握りしめた。
「ふふ、力でねじ伏せるんじゃなくて『分かち合う喜び』を知ってもらうのが、僕たちのやり方だからね」
アルムが優しく微笑む。
「さて、アルム。身近な医療利権の健全化も一歩前進した。次はいよいよ、世界中で人の命を脅かしている『AIドローン兵器と紛争』の無力化――『ナノアークリアクター』とDW-QCSの本領発揮と行こうじゃないか!」
巌が不敵に、そして頼もしく言い放った。
資本主義の歪みを正し始めた縦溝親子の「世界健全化修正譚」は、ついに世界平和という壮大な領域へと踏み出していく――!
(第8話へ続く)




