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第6話:アルカディア・テック始動!

「まさか、たった数十秒で全株式の場外買い付け(TOB)が完了するなんてな……」


元社長の悪徳(あくとく) 過(すぎる)は、自分のデスクで頭を抱えてガタガタと震えていた。


「過(すぎる)社長、セキュリティ対策費を『無駄な経費だ』と言って毎年削減し続けていましたからね。DW-QCSの超次元演算から見れば、この会社の株式管理とセキュリティ網は穴だらけの豆腐のようなものでしたよ」


25歳の姿でスタイリッシュなスーツを着こなす巌(いわお)が、呆れ顔で吐き捨てる。


「ひ、ひぃぃ……っ! すみませんでしたぁっ! なんでもします! だからクビだけは……っ!」


「安心したまえ、過くん。君と猪俣くんには解雇ではなく『再教育』の場を用意した。明日からは我が社の最下層で、床掃除とゴミ分別を徹底的にやってもらう。奪うことしか知らなかった君たちに、まずは与えられた環境を綺麗にする喜びを学んでもらおうじゃないか」


巌の完璧なコンフォートゾーン補正による、一切の容赦がない爽やかな宣告。

腰を抜かした悪徳と猪俣は、警備員(ナノバイタルで強化された元・社員たち)の手によって引きずられるように退場していった。


残された社員たちは、長年の抑圧から解放され、歓喜と拍手で沸き立った。


「アルムくん……! 私、なんだか夢を見ているみたい……!」


隣で目を輝かせる一ノ瀬ユミカに、アルムは優しく微笑みかけた。


「夢じゃないよ、ユミカさん。ここからが本番だ。僕たちはこの場所を拠点に、世界を生まれ変わらせる」


◇


こうして、ブラック企業ネクスト・ソリューションズは一夜にして消滅し、新たな巨大複合企業『アルカディア・テック』が産声を上げた。


社長には、若返りと思考パッチによって超絶ハイスペック化した縦溝巌が就任。

そしてアルムは最高技術責任者(CTO)として、2326年の未来技術を次々と現世へ解き放ち始めた。


『アルカディア・テック』が掲げたスローガンは明確だった。


**『エネルギー&マテリアルフリー――すべての人々に、真の自由を』**


設立からわずか数日後、日本の主要テレビ局、さらにはYouTubeやSNS、ニューヨークのタイムズスクエアの大型ビジョンに至るまで、全世界のメディアで一斉に『アルカディア・テック』の創立CMが放映された。


画面に映し出されたのは、あまりにも美しい一対の男女だった。


彫刻のように整った顔立ちの超絶イケメンと、世界中の誰もが見惚れるような透明感を持った超絶美女。

二人はしなやかな身ごなしで歩み寄り、カメラに向かって眩しい笑顔を向ける。


『テクノロジーは、奪い合うためのものではありません。与え合い、分かち合うためのものです』

『アルカディア・テックは、地球上のすべてのエネルギーとマテリアルをフリーにし、人類に真の自由を提供します』


その映像を見た世界中の人々は、最初は「AIで生成された超リアルな3DCGだろう」と高を括っていた。

しかし、CMの最後に衝撃の種明かしがなされる。


二人の男女がカメラの前でそっと自分の肌に触れると、皮膚の生体ナノ膜がスッと透過し、内部の精密な量子回路とナノアクチュエーターが美しく結晶のように輝いて見えたのだ。


『※本映像の出演者はAI画像描写ではなく、アルカディア・テックが開発した次世代生体リアル・ロボティクスです』


「「「ろ、ロボティクスだとぉぉぉぁぁぁっ!??!?」」」


世界中が激震した。

人間と寸分違わぬ質感、滑らかな仕草、そして感情豊かな表情。

2026年のロボット工学の常識を、一気に数百年間跳び越えたオーバーテクノロジーの提示。


「アルム……! CMの反響が凄まじいことになっているぞ! 世界中の大手メディアや海外の政府機関から、問い合わせと取材の電話がパンク状態だ!」


社長室で、25歳の巌が嬉しそうに悲鳴を上げた。スマホの通知は相変わらずピコピコ鳴り響いているが、思考パッチのおかげで巌はそれらを優雅に捌いている。


「ふふ、驚くのはまだ早いよ、巌さん。これは挨拶代わりの名刺代わりに過ぎないからね」


「あはは! 頼もしい限りだな! そして一ノ瀬くん、君の配属部署だが――アルムの直属の秘書兼、未来技術推進部のリーダーをお願いしたい」


「えっ……!? 私が、そんな大役に……!?」


突然の抜擢に驚くユミカに、アルムはそっと手を重ねた。


「ユミカさんの真面目さと優しさが、この会社には絶対に必要なんだ。僕と一緒に、世界が変わっていく瞬間を特等席で見届けてほしい」


「アルムくん……! はいっ、私、全力で頑張ります……!」


赤面しながら決意を固めるユミカ。

二人の甘い雰囲気を、巌は「若いって素晴らしいな」と破顔しながら見守っていた。


「よし! 資金は1000億円(+400兆円の死に金ネットワーク)、技術は未来の2326年レベル、そして最高の仲間が揃った! アルム、次はいよいよ『あの技術』を世に解き放つとしようか!」


「うん。『ナノバイタル・スカルプ』の特許出願と、奪い合いの医療利権を塗り替える第一歩だね!」


近未来へと一気に加速し始めた2026年。

アルカディア・テックと縦溝親子の進撃は、留まることを知らない――!


(第7話へ続く)

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