第11話:40兆円の死に金流動化プロジェクト
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原始人というのはおろかなものだな。
資本主義というゆがんだ世界の設計に、すべての人間が踊らされている。
働かなければ糧が得られない。畑を耕すにも、まずは金だ。種もみを既得権益から買え。
都市でも、仕事が欲しければ金を払って学校に行け。
普段の生活でも、健康になりたかったらこれを食え、おいしいものをたらふく食って仕事しろ。
太るために金を払わされ、太ったら痩せるために金を払わされ、病気になれば治すために金を払わされる。
仕事のし過ぎでストレスからハゲるんだ、ハゲたらこれを使えと金を払わされる。
何をやっても、どこへ行っても、生きているだけで無限に搾取される構造。
完全に『金の奴隷』になってしまっているのだ。
そしてその行き着く先が、戦争だ。
兵器を作り、買わせ、破壊させ、また復興のために金を借りさせる。
金のために、他人の命や未来までも奪い合う人類――このまま奪い合いを続けたその先に、一体どんな未来があるというのか?
だが仕掛ける側の既得権益は「自国民が勝手にはまっているだけで、我らは金を受け取っているだけだ」とほくそ笑み、世界を牛耳っている。
そんな愚かな構造を、未来の知恵で根底から塗り替えていく!
第2章「歪んだ資本主義の再設計」、開幕です!
「資本主義という仕組みは、実によくできた『搾取の永久機関』だな」
アルカディア・テック最上階のCEOオフィス。
25歳姿へと若返り、ビシッと仕立ての良いスーツを纏った社長の縦溝巌が、ホログラムモニターに映し出される世界経済の循環図を見つめながら、静かに呟いた。
元部長としての経験と思考加速パッチのキレが相まって、彼の眼差しは世界経済の「不都合な真実」を鋭く見抜いている。
「食べるために働き、ストレスで太るために金を使い、今度は痩せるために金を払う。ハゲれば毛生え薬をかわされ、病気になれば一生薬を買い続けさせられる……。何をやっても生きているだけで搾取される構造だ。そしてその果てに、兵器を売りつけて人の命までマネーゲームの道具にする」
「そうだね、巌さん。消費させて、病ませて、奪い合わせる……それがType 0.7の原始社会が陥っている一番大きなバグなんだ」
最高技術責任者(CTO)であるアルムが、静かに頷く。
「誰もが『足りない』という恐怖に怯えているから、既得権益はそこに漬け込んで金を搾り取る。でも、この歪んだサイクルを断ち切るには、まずこの社会を循環している『血液(資金)』の滞りを正さなければならない」
アルムが指先を滑らせると、空間にDW-QCS(ディメンジョン・ウェーブ クォンタムカリキュレーションシステム)の解析データが立体展開された。
そこに浮かび上がったのは、日本国内だけで約40兆円、世界全体では数千兆円にのぼる「死に金(休眠資産)」の光景だった。
権利者が死亡して永久に請求されなくなった保険金。
引き出しようのなくなった休眠口座。
複雑な相続の隙間に埋もれた資産や、所有者不明のまま放置された巨大なファンドの端数資金――。
「40兆円の死に金……。動かないお金は、存在しないのと同じだものね」
秘書の一ノ瀬ユミカが、息をのむようにモニターを見つめる。
「そうだよ、ユミカさん。既得権益やマネーゲームの亡者たちは、市場から金を吸い上げては自分たちの金庫に溜め込み、流動性を奪っている。それなら、この眠っている40兆円の死に金をDW-QCSの超次元演算で正当にサルベージし、真に必要な人々へ還流させよう」
「サルベージ……! アルムくん、そんなことが可能なの?」
「もちろんだよ。DW-QCSの多次元解析プロトコルを使えば、法的・システム的に100%クリーンな状態で、休眠資産を社会保障の補填や育英資金、そしてベーシックインカムの基礎資本へと自動再配置できる。誰の懐も痛めず、誰の権利も侵さずにね」
巌がフッと頼もしい笑みを浮かべ、コーヒーカップを置いた。
「素晴らしいアイデアだ。奪い合うために溜め込まれた死に金を解き放ち、与え合うための血流に変える。……だがアルム、これをやれば黙っていない連中がいるな?」
「うん。この40兆円という莫大な流動資金の動きを察知して、歪んだマネーゲームで世界を支配してきた海外の巨大ヘッジファンドや投機筋が、必ず食らいついてくる」
アルムの目が、未来を見通す青い光を宿す。
「彼らは自分たちの市場支配力が揺らぐことを恐れ、日本の株式市場や為替へ猛烈な空売り攻撃を仕掛けてくるはずだ。……でも、望むところだよ」
「相手の土俵であるマネーゲームで、未来の知恵を叩き込んで完封するわけだな! ふふっ、元部長としてもワクワクしてくるよ」
巌が不敵に口元をほころばせる。
資本主義の裏側に蔓延る既得権益と、金を神と崇めるマネーゲームの亡者たち。
彼らが仕掛けてくるであろう絶大な圧力を前に、アルムと巌、そしてユミカの三人は一切の揺らぎもなく笑みを浮かべていた。
40兆円の死に金を解き放ち、金の奴隷と化した原始社会を塗り替える――。
アルカディア・テックの超次元金融プロジェクトが、ついに始動した!
(第12話へ続く)
後書き
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