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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第49話 雨季明けの通常便

西方大森林受渡所が正式登録され、満タン便の配送網はまた一つ安定した。

長く続いた雨季も、ようやく終わりが見え始める。

止め、減らし、分けて守った道が、少しずつ通常へ戻っていく。

朝の空が、久しぶりに明るかった。


田村誠司は水車町の集荷所の前で、空を見上げた。


雲はまだ残っている。


だが、雨の重さはない。


川の水位も少し下がり始めていた。


帳面を開くと、文字が浮かぶ。


雨季終盤


各配送路、通常復帰準備推奨


「やっとか」


思わず声が出た。


ロウグが隣で笑う。


「長い雨でしたね」


「走れない日が多かった」


「ですが、止まりませんでした」


その言葉に、誠司は帳面の地図を見た。


川下漁村路。


北砦補給路。


山道便。


仮橋受渡所。


西方大森林受渡所。


どの道も一度は細くなった。


止まった区間もあった。


だが、完全には切れなかった。


それは大きかった。


まずは漁村路。


ぬかるんでいた本線は、まだ完全には戻っていない。


だが丘側迂回路は安定していた。


魚便は半量から三分の二へ増やす。


一気に戻さない。


漁師たちは少し不満そうだったが、雨季中の経験で理解していた。


「全部戻すのは、道が乾いてから」


ロウグが訳すと、漁村の老人は頷いた。


次は北砦補給路。


中継所の灯は無事。


灰牙狼は沢奥に移動したまま。


昼便限定は継続するが、週二便へ戻す。


カイルは嬉しそうだった。


「缶コーヒー、足りない」


「そこかよ」


誠司は笑いながら、夜番用の缶コーヒーを少し多めに渡した。


山道便は、まだ慎重に。


崩落箇所は乾いてきたが、端は弱い。


塩と布は小分け配送を継続。


大荷物は晴天が三日続いてから。


山の集落は、もう急かさなかった。


連絡箱が機能しているからだ。


知らせが届けば、人は待てる。


仮橋は最後だった。


水位は下がったが、橋はまだ弱い。


満タン便は渡らない。


軽荷受渡方式を継続しつつ、ガランたちが本格補修に入る。


リーベル商会からは、大量の荷を早く戻したいという声も出た。


だがエレナが抑えた。


「道が戻る速度に合わせる」


ロウグが訳したその言葉に、誠司は少し驚いた。


リーベルも、変わり始めている。


夕方、水車町に戻ると、集荷所の札が少しずつ掛け替えられていた。


雨季制限中から、通常復帰準備中へ。


ミナは札を磨きながら、どこか誇らしげだった。


彼女にとっても、この雨季は大きな仕事だったのだろう。


夜。


帳面に第一配送者の記録が浮かんだ。


雨が明けた時、私は急いで全てを戻そうとした。

道は乾いていなかった。

人も休めていなかった。

復旧にも速度がある。


誠司は静かに頷いた。


戻すことも、急いではいけない。


通常便は、道と人が戻ってから。


翌朝。


満タン便はいつも通り満タンだった。


だが荷台は、雨季前とは少し違う。


余白がある。


分割札がある。


遅延札がある。


黒蔓札がある。


葉形札がある。


ただ速く運ぶためではなく、長く続けるための道具が増えていた。


誠司は運転席に乗り込む。


「通常復帰便、一日目。出発」


エンジンが静かに唸る。


雨季は終わりに近づいている。


だが満タン便は、雨季で覚えたことを忘れない。


止めること。


分けること。


知らせること。


空けておくこと。


そして、戻す時も急がないこと。


今日の荷物は少し多い。


でも、満載ではない。


それが今の満タン便だった。

第49話では、雨季明けに向けた通常復帰を描きました。

大切なのは、一気に戻さないこと。

雨季で学んだ運行制限や余白の考え方は、今後の満タン便の基礎になります。

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