表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/85

第47話 森の民との境界線

灰牙狼を討伐せず、沢奥へ誘導する作戦は成功した。

だが、その移動先は西方大森林の領域に近い場所だった。

人の道を守るためには、森の民の道も守らなければならない。

北砦から届いた木札を読んだロウグは、少しだけ顔をしかめた。


「灰牙狼が沢奥へ移動。補給路の危険は低下。ただし、西方大森林の外縁に接近……ですね」


田村誠司は黙って帳面を見た。


地図には、北砦補給路、沢沿い、そして西方大森林の受渡所が表示されている。


灰牙狼の通り道を示す赤い線は、確かに森の外縁へ近づいていた。


「人の道から離したら、森の民の道に近づいたってことか」


「よくある話です」


ロウグは静かに言った。


「こちらの問題を別の場所へ押し出すと、別の誰かの問題になります」


誠司は深く息を吐いた。


それでは駄目だ。


満タン便の仕事は、自分たちの道だけ守れば終わりではない。


繋いだ道の先にいる相手も、同じように守らなければならない。


「森へ知らせる」


荷台には水、薬、黒蔓札、葉形札、そして灰牙狼注意札を積んだ。


ミナも同行する。


今回は彼女の通訳が必要だった。


西方大森林の受渡所に着くと、年長の女性がすでに待っていた。


森の民も何かを感じていたらしい。


誠司は地面に地図を描いた。


北砦。


沢。


灰牙狼。


森の外縁。


補給路から離れたこと。


その代わり、森の近くへ来たこと。


ミナが言葉を補う。


年長女性の表情は険しくなった。


怒っているというより、当然の懸念だった。


「人の道を守るために、森へ押しつけたわけではない」


誠司はそう伝えてもらった。


そして、灰牙狼の通り道を森側と共有したいと説明した。


森の民は相談した。


長い時間だった。


やがて、年長女性は一本の枝を地面に置いた。


ミナが訳す。


「境界を決める。狼の道、人の道、森の道」


三つを分ける。


そのために、森の民は葉形札を出す。


北砦側は盾形札を出す。


満タン便は黒蔓札と地図を運ぶ。


三者で境界を作ることになった。


作業は翌朝から始まった。


沢沿いの奥。


灰牙狼が通った跡。


そこに、森の民の葉札と北砦の盾札を並べる。


人が入らない区域。


森の民も近づかない区域。


灰牙狼が通れる区域。


完全に管理できるわけではない。


相手は獣だ。


だが、少なくとも人が不用意に入り込むことは防げる。


誠司は黒蔓札を立てながら思った。


これは配送ではないようで、やはり配送だ。


運んでいるのは荷物ではなく、境界の情報。


どこを通るか。


どこを避けるか。


誰がどこまで入っていいか。


そういう約束を運んでいる。


昼過ぎ、灰牙狼の遠吠えが聞こえた。


近い。


だが、補給路側ではない。


沢の奥。


境界の向こうだった。


森の民の若者が緊張する。


北砦の兵士も槍を握る。


誠司は手を上げた。


「追わない」


ミナが訳す。


隊長も頷いた。


年長女性も頷いた。


追えば境界を壊す。


今日は、追わないことが成功だった。


夕方、水車町へ戻ると、帳面が光った。


三者境界路:仮登録


北砦・西方大森林・満タン便共同管理


さらに一文。


衝突リスク低下


誠司は小さく息を吐いた。


完全な解決ではない。


だが、人と森と獣の道は、少しだけ分かれた。


その夜、第一配送者の記録が浮かんだ。


私は、自分の荷が通る道だけを見た。

その横にある道を見なかった。

見えない道を踏み荒らした時、協力者は敵になった。


誠司は静かに頷いた。


満タン便の道は一本ではない。


その周りに、森の道、獣の道、村人の道、商人の道がある。


全部を見なければ、物流は続かない。


翌朝。


森の受渡所から木札が届いた。


境界、受け入れる。灰牙狼、今は森へ入らず。


北砦からも木札が届いた。


昼便、限定再開。夜間停止継続。


誠司は二枚の木札を並べて、少し笑った。


別々の相手から届いた、同じ方向の返事。


道はまだ続く。


満タン便は今日も、荷物だけでなく、約束を積んで走る。

第47話では、灰牙狼の誘導によって生まれた森側への影響を調整しました。

人の道だけでなく、森の道、獣の道も守る。

次回は、この共同管理の成果として、森の民から初めて“正式な配送依頼”が届きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ