第42話 運行停止の重さ
山道で荷台の余白を狙う者たちが現れた。
誠司は道塞ぎがあった場合、その路線を運行停止にすると決める。
だが、その規則はすぐに波紋を呼ぶことになる。
水車町の受付所に、新しい札が掛けられてから一日。
道を塞ぐ行為があった場合、その路線は運行停止します。
その文を見た人々の反応は、思ったより大きかった。
「厳しすぎる」
「一部の者のせいで、村全体が困るのか」
「だが、満タン便が襲われたら全部止まる」
意見は割れた。
田村誠司は、それを黙って聞いていた。
本当は運行停止などしたくない。
だが、道を塞いで要求を通そうとする者が出た以上、曖昧にはできない。
ロウグが静かに言う。
「規則は、使う前が一番揉めます」
「使いたくない規則だけどな」
「だから必要なのです」
その日の午後、山の集落から木札が届いた。
山道で誠司を止めた男たちは、集落の周辺に住む猟師崩れだったらしい。
集落の長は謝罪し、今後は見張りを出すと書いていた。
だが同時に、お願いもあった。
運行停止はしないでほしい。
塩も布も薬も、まだ必要だからだ。
誠司は帳面を見つめた。
停止すれば安全は守れる。
だが、困る人も出る。
止めることは簡単ではない。
「全部止めるんじゃなくて、条件付き運行にする」
ロウグが頷いた。
「護衛付き、連絡箱確認、荷台開放不可、でしょうか」
「それで行こう」
山道便は、通常運行ではなく条件付き運行に切り替わった。
山の集落から若者が二人、崩落箇所まで迎えに来る。
満タン便は荷台を勝手に開けない。
積み増しは受付経由のみ。
道に異常があれば即停止。
この内容を木札にして、山道連絡箱へ入れる。
翌朝。
山道便の日。
誠司は少し緊張していた。
荷物は塩小袋、薬草、布。
荷台には余白。
助手席にはミナ。
山道連絡箱には、集落からの返事が入っていた。
条件を受け入れる。迎えを出す。
崩落箇所の手前には、山の若者が二人いた。
槍を持っている。
だが満タン便に向けたものではない。
道を守るための槍だった。
誠司は軽く頭を下げる。
若者たちも頷く。
山道は静かだった。
昨日の男たちは現れない。
集落に着くと、長が待っていた。
彼は深く頭を下げ、木箱を差し出した。
中には山の干し肉と薬草。
迷惑料のつもりらしい。
誠司は受け取りすぎないよう、半分だけ受け取った。
そして、地面に絵を描いた。
道。
満タン便。
村人。
見張り。
みんなで守る。
ミナが訳すと、長は強く頷いた。
山道便は、その日無事に終わった。
水車町へ戻ると、帳面が光った。
運行停止規則:条件付き運行へ移行成功
地域協力度 上昇
誠司はほっと息を吐いた。
止めるだけが答えではない。
でも、止める選択肢があるから、条件を守ってもらえる。
その夜。
第一配送者の記録が浮かんだ。
私は停止を恐れた。
止めれば嫌われると思った。
だから、条件を出せなかった。
そして、道は乱れた。
誠司は静かに頷いた。
運行停止は罰ではない。
道を守るための最後の線だ。
その線があるから、条件付きで続けられる。
翌朝。
受付所の札が少し書き換えられた。
危険・妨害があった路線は、運行停止または条件付き運行になります。
町の人々は、それを以前より静かに受け入れていた。
満タン便は万能ではない。
だが、止め方を知れば、続け方も見えてくる。
誠司は運転席に乗り込み、エンジンをかけた。
今日の便は北砦中継所。
雨はまだ続く。
道はまだ危うい。
それでも、守るべき線を引きながら、満タン便は走り続ける。
第42話では、運行停止規則の波紋と、条件付き運行への切り替えを描きました。
止めることは罰ではなく、続けるための線引き。
次回は雨季の中、北砦方面で新たな異常が発生します。




