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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第38話 晴れ間の塩便

雨で山道が崩れ、山の集落へ塩が届かなかった。

遅延札すら届かなかった失敗を受け、満タン便は山道連絡箱を設置する。

そして雨季のわずかな晴れ間、誠司は塩を届ける短時間配送に挑む。

雨が止んだ。


朝、田村誠司が運転席で目を覚ますと、水車町の空には久しぶりに薄い青が見えていた。


地面は濡れている。


川の水位も高い。


だが、雨は落ちていない。


帳面を開くと、すぐに文字が浮かぶ。


第一配送路:山道一時通行可


推奨運行時間:午前中のみ


「午前中だけか」


短い。


だが十分だった。


山の集落へ届ける塩は、もう三日遅れている。


完全に乾くまで待てば安全だ。


だが、待ちすぎれば集落の保存食作りに影響が出る。


誠司は荷台を開けた。


塩袋。


薬草。


遅れていた布。


それから水を少し。


荷物は最小限にする。


重すぎると山道で危ない。


ミナが盾形札ではなく、山用の三角札を抱えて走ってきた。


「行く」


彼女はそう言いたげに胸を張る。


誠司は一瞬迷ったが、頷いた。


山の集落の道はミナの故郷にも近い。


彼女の感覚が役に立つ。


「危ないと思ったら戻る。絶対に無理しない」


ミナは真剣に頷いた。


ロウグは水車町に残り、受付を調整する。


「午前中のみ運行、と掲示しておきます」


「頼む」


満タン便は山道へ向かった。


雨上がりの道は、見た目より滑る。


タイヤがぬかるみに沈み、何度もハンドルを取られた。


誠司は速度を落とし、慎重に進む。


途中、山道連絡箱を確認した。


昨日置いた遅延札は回収され、代わりに山の集落からの受領札が入っていた。


知らせ受領。塩を待つ。


ミナが嬉しそうに笑う。


知らせは届いていた。


それだけで、昨日よりずっと気持ちが軽い。


さらに進むと、崩れた場所に着いた。


道の半分が落ちている。


トラック一台分の幅は、ぎりぎり残っている。


誠司は車を止め、降りて確認した。


地面を踏む。


柔らかい。


端は危ない。


「通れる。でも一回だけだな」


ミナが小さく頷く。


誠司は黒蔓札ではなく、黄色い注意札を立てた。


片側崩落。徐行。重荷禁止。


絵で分かるように、崖と車輪を描く。


この道を他の荷車が通るなら、無理をしないように。


トラックへ戻り、ゆっくり進む。


車体がわずかに傾く。


誠司の手に汗が滲む。


ミナは息を止めている。


タイヤがぬかるみを踏み、少し滑る。


「頼むぞ……」


アクセルは踏み込まない。


焦らない。


ゆっくり、一定に。


トラックは崩落箇所を抜けた。


誠司は大きく息を吐いた。


山の集落に着いた時、まだ昼前だった。


集落の人々が待っていた。


塩袋を下ろすと、若者たちがほっとした顔になる。


保存食作りに使う塩。


肉や山菜を長く持たせるために必要なものだ。


塩は、ただの調味料ではない。


冬や雨季を越すための命綱だった。


集落の長が誠司に深く頭を下げる。


誠司は首を振った。


「遅れて悪かった」


ミナが訳す。


すると長は、山道連絡箱の受領札を見せた。


知らせがあったから待てた。


そう言っているらしい。


誠司は胸の奥が少し熱くなった。


荷物は遅れた。


でも、理由は先に届いた。


それが不信を防いだのだ。


帰りはさらに慎重だった。


午後になると雲が戻ってきた。


山の空気が重くなる。


崩落箇所を戻る頃には、ぽつりと雨が落ち始めた。


間に合った。


水車町へ帰り着くと、雨は本降りになった。


帳面が光る。


晴れ間配送成功


第一配送路:再び通行注意


山道連絡箱:有効


誠司は荷台にもたれ、深く息を吐いた。


疲れた。


だが、いい疲れだった。


ロウグが受付所から出てきた。


「塩は?」


「届けた」


「素晴らしい」


「午前中だけの便だ。次は無理しない」


「それを掲示しましょう」


その日の夕方、受付所に新しい札が掛かった。


山道便は晴れ間のみ運行


重荷は分割


連絡箱を確認してください


ミナはそれを見て満足そうだった。


夜。


第一配送者の記録が浮かんだ。


晴れ間を逃すまいと、荷を積みすぎた。

ひと便で全部運ぼうとした。

そして道を壊した。

分けて運べばよかったのに。


誠司は静かに頷く。


全部を一度に運ばない。


晴れ間でも、欲張らない。


それが今日の教訓だった。


翌朝。


また雨だった。


だが山の集落から受領札が届いていた。


塩、受領。保存作業開始。次便、晴れ待ちでよい。


誠司は少し笑った。


待ってもらえる道になっている。


それは、急ぐことより大切な成果だった。


満タン便は今日も走る。


だが、無理には走らない。


届く理由と、待てる仕組みを積んで。

第38話では、雨季の短い晴れ間を使った山の集落への塩配送を描きました。

重要なのは、全部を一度に運ばないこと。

次回は、雨季によって各地で発生する「分割配送」の仕組みを本格化させます。

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