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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第37話 届かなかった遅延札

荷物が遅れる時、理由を先に届ける。

満タン便は遅延連絡札を導入し、雨季の混乱を少しずつ抑えていた。

だが、その札が届かなかった場所で、小さな不信が生まれる。

雨は弱まったり強まったりを繰り返していた。


満タン便は今日も、水車町と仮橋受渡所を往復している。


荷物は少ない。


だが木札は多い。


遅延連絡札。


受領札。


予定変更札。


誠司は助手席の札束を見て苦笑した。


「紙仕事が増えたな……」


ロウグが笑う。


「配送業らしくなった証拠です」


その日の午後、問題が起きた。


山の集落から来た若者が、集荷所で怒っていた。


森ではない。


第一配送路の山の集落だ。


彼らは水車町から届くはずの塩を待っていた。


だが雨で山道が崩れ、配送が二日遅れていた。


誠司は遅延札を出したつもりだった。


しかし、届いていなかった。


確認すると、遅延札は隣村で止まっていた。


山道が危険で、誰も上まで運べなかったのだ。


「札も荷物と同じで、道がなければ届かない……」


誠司は額を押さえた。


当たり前のことだった。


連絡札を作っただけでは駄目だ。


連絡を届ける経路も必要だった。


山の集落の若者は、不安だったのだ。


塩が来ない。


理由も分からない。


満タン便に忘れられたのではないか。


そう思ったらしい。


ミナが必死に説明する。


若者は少しずつ落ち着いたが、表情は硬い。


誠司は頭を下げた。


「悪かった。知らせる方法が足りなかった」


その日のうちに、誠司は第一配送路を確認した。


山道は確かに危険だった。


一部が崩れ、トラックでは上がれない。


だが徒歩なら通れる細い道がある。


ここに中継札置き場を作ることにした。


隣村と山の集落の間。


雨でも濡れにくい大木の下。


そこに小さな木箱を設置する。


山道連絡箱


塩や大きな荷物は運べなくても、木札なら入れられる。


山の集落側からも確認に来られる。


満タン便が上まで行けない日は、ここに連絡札を置く。


ミナが葉形札の仕組みを応用し、山用の三角札を作った。


山道危険。


徒歩可。


荷物不可。


晴れ待ち。


絵で分かるようにする。


ロウグが感心したように言う。


「連絡の中継所ですね」


「荷物だけじゃなく、知らせにも中継所がいる」


帳面が光る。


情報中継箱:登録


第一配送路 雨季連絡網 安定化


翌日、山の集落へ遅延札が届いた。


今回は、山の若者自身が連絡箱から持ち帰った。


塩はまだ届かない。


だが、理由は届いた。


いつ頃届くかも分かった。


若者は前日より落ち着いた顔で頷いた。


誠司は荷台から水を数本渡した。


「塩は晴れ間に必ず運ぶ」


ミナが訳す。


若者は深く頭を下げた。


夜。


第一配送者の記録が浮かんだ。


私は知らせを一度だけ送った。

届いたか確認しなかった。

伝えたつもりと、伝わったことは違った。


誠司はその一文を見つめた。


まったくその通りだった。


配送は、届けたつもりでは駄目だ。


届いた証拠が必要だ。


翌朝。


満タン便の帳面には新しい規則が追加されていた。


満タン便規則九:連絡札にも受領確認を付けること。


誠司は苦笑した。


「受領印、連絡札にも必要か」


ロウグが頷く。


「情報も荷物ですから」


雨季の道はまだ悪い。


だが満タン便は、またひとつ失敗から仕組みを作った。


荷物が届かない日でも。


理由と予定だけは届くように。


それが、道を信じてもらうための仕事だった。

第37話では、遅延連絡札が届かなかったことで生まれた不信を描きました。

知らせにも配送経路と受領確認が必要。

次回は山道の晴れ間を狙い、塩を届ける短時間配送に挑みます。

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