表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/76

第33話 雨の中継所

川下漁村路では、満タン便が初めて本格的な通行止めを判断した。

雨季は始まったばかり。

次に確認すべきは、北砦補給路の中継所だった。

北砦へ向かう森道は、雨でまるで別物になっていた。


昨日まで固かった土は柔らかく沈み、枝葉から落ちる水滴がフロントガラスを叩く。


田村誠司はワイパーを動かしながら、慎重にハンドルを握っていた。


「視界が悪いな……」


助手席のミナは、盾形札と赤布を抱えて外を見ている。


後ろの荷台には、水、包帯、干し肉、缶コーヒー。


そして中継所補修用の板材と油布。


北砦補給路は、雨季でも完全には止められない。


砦が孤立すれば、街道全体が危険になる。


だが、無理に走るわけにもいかない。


そのための中継所だった。


森に入ってしばらくすると、最初の異常があった。


赤布の目印が落ちている。


雨で紐が緩んだらしい。


誠司はトラックを止め、ミナと一緒に降りた。


泥が靴に絡みつく。


「ここは付け直しだ」


ミナは頷き、赤布を木の高い位置に結び直す。


雨でも見えるよう、少し大きめの布に替えた。


帳面に書く。


北砦補給路:目印補修一件。


さらに進む。


中継所が見えた時、誠司は顔をしかめた。


屋根から水が漏れている。


扉も半分開いていた。


中に入ると、棚の下段が濡れていた。


幸い、薬と包帯は上段へ移してあったため無事だった。


だが干し肉の一部が湿気を吸っている。


「危なかったな」


ミナが悔しそうに耳を伏せた。


誠司は首を振る。


「前に上段へ移しておいたから助かった。点検の意味はあった」


二人で作業を始める。


屋根に油布をかぶせる。


隙間に板を打つ。


扉の蝶番代わりの革紐を締め直す。


中の棚を少し高くする。


床には石を敷き、荷物を直接置かないようにする。


雨の音が強くなる。


森の奥から、低い唸り声が聞こえた。


ミナが顔を上げる。


「獣」


誠司は手を止めた。


中継所の外。


木々の向こうに、灰色の影が動いている。


魔物か、ただの獣か分からない。


だが近い。


誠司はトラックに戻り、クラクションを短く鳴らした。


バン!


雨の森に音が響く。


影は一度止まり、ゆっくり離れていった。


「雨の日は音も届きにくいな」


誠司は炭酸缶を数本、中継所に置いた。


飲むためではない。


緊急時の威嚇用だ。


ただし、勝手に開けられると危ない。


ミナに絵で説明してもらい、盾形札の横に注意札を作る。


振って投げる。顔に向けない。子どもは触らない。


絵で描けば、文字が読めない者にも伝わる。


作業が終わる頃、砦側からカイルがやってきた。


雨具を着て、泥だらけになっている。


「中継所、大丈夫?」


「今直した」


カイルは中を見て、安心したように頷いた。


砦では、雨で巡回が減り、魔物の動きが読みにくくなっているらしい。


補給便は週二回から、天候次第に変更する必要があった。


誠司は帳面に書いた。


北砦補給路:雨季運行。晴れ間優先。荒天時は中継所止まり。


カイルは少し不安そうだった。


「砦、困る」


「完全には止めない。でも危ない日は中継所まで。砦側が取りに来られるなら、ここで受け渡す」


カイルは考え、頷いた。


砦側にも役割を持たせる。


満タン便だけが無理をしない。


それが続けるための仕組みだ。


帰り道、雨はさらに激しくなった。


誠司は速度を落とす。


何度かタイヤが滑った。


だが、無理に急がない。


水車町に戻ると、ロウグが待っていた。


「どうでした?」


「中継所は使える。ただし運行は減らす」


ロウグは頷いた。


「正しい判断です」


受付所には新しい札が掛かった。


北砦補給路:雨季中は天候運行。中継所受渡あり。


町の人々はそれを読み、不安そうにしながらも納得していた。


夜。


帳面に第一配送者の記録が浮かんだ。


中継所を作らなかった。

すべてを自分の車で届けようとした。

雨の日も、夜も、壊れた道も。

そして、戻れなくなった。


誠司はその文を見て、静かに息を吐いた。


満タン便は、走れる。


でも、走らない日があっていい。


途中で渡してもいい。


相手に取りに来てもらってもいい。


全部を自分で抱えないこと。


それが第一配送者との違いになる。


翌朝。


雨は少し弱まっていた。


帳面には新しい表示が出ている。


北砦補給路:雨季運行安定


中継所機能:有効


誠司は小さく頷いた。


そして、次の点検予定を見る。


仮橋水位上昇。確認推奨。


今度はリーベルへ続く仮橋だ。


雨季は、まだ始まったばかりだった。

第33話では、雨の北砦補給路と中継所の重要性を描きました。

満タン便だけが無理に走るのではなく、中継所で受け渡す仕組みができました。

次回はリーベル方面の仮橋。増水した川が試練になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ