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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第27話 走らない日のあとで

第一配送者の失敗を知った誠司は、満タン便を一日休ませた。

走らないことも、配送を続けるために必要な仕事。

休整日明け、森から届いたのは小さな回復の知らせだった。

休整日の翌朝。


田村誠司は、いつもよりゆっくり荷台を開けた。


飲み物は満タン。


ガソリンも満タン。


それはいつも通りだった。


だが昨日一日走らなかったせいか、荷台の中が少しだけ落ち着いて見えた。


棚は整っている。


荷留め具も直した。


受付所の依頼札も整理された。


満タン便は、走らなくても壊れなかった。


むしろ、少し強くなった気がした。


「休みも仕事、か」


誠司が呟くと、ミナが受付所から手を振った。


彼女は昨日覚えたばかりの優先札を、誇らしげに並べている。


赤は緊急。


青は保冷。


白は通常。


緑は森関係。


ミナなりの工夫だった。


ロウグがそれを見て笑う。


「良い仕分けですね」


「勝手に色を増やしたらしい」


「必要なら増やせばいいのです」


その時、森入口受渡所から木札が届いた。


緑の紐。


ミナがすぐに反応する。


木札には、森の印と短い文。


ロウグが読めない部分をミナが補う。


「泉、少し戻った。水、澄む。礼。あと、小さい依頼」


「小さい依頼?」


ミナは木札を指差す。


「子ども用の木の器。三つ」


誠司は少し笑った。


大きな異変のあとに、子ども用の器。


それが妙に嬉しかった。


森が危機から、生活へ戻りつつある証拠だ。


「受けよう」


今回は緊急ではない。


通常便。


ただし森の文化に合わせる。


水車町の樽職人へ依頼し、鉄を使わない小さな器を三つ作ってもらう。


ついでに冷たい水を少量。


薬師からは、森の泉の水質を見るための簡単な薬包。


満タン便は昼前に森へ向かった。


今回は荷物が少ない。


だから焦らない。


道を確認しながら進む。


森入口受渡所には、年長の女性と数人の子どもが待っていた。


子どもたちはトラックを怖がりながらも、興味津々で見ている。


誠司は荷台から木の器を取り出した。


小さく、軽く、丸みがある。


子どもが使っても危なくないように作られていた。


年長女性は器を受け取り、満足そうに頷く。


子どもの一人が、その器で水を飲んだ。


冷たい水に驚き、目を丸くする。


周囲に小さな笑いが広がった。


誠司はその光景を見て、胸が軽くなった。


これでいい。


満タン便は、大きな危機だけを運ぶものではない。


子どもの器も。


日々の水も。


小さな困りごとも。


同じように大切だ。


帰り際、森の年長女性が誠司に一枚の葉を渡した。


薄く光る、不思議な葉だった。


ミナが訳す。


「泉の葉。道が悪くなったら、これを立てる。森の民が分かる」


つまり、森側の目印だ。


誠司は丁寧に受け取った。


これで満タン便だけが道を示すのではなく、森の民も道を守る側になる。


水車町へ戻ると、帳面が淡く光った。


西方大森林受渡所:安定化


文化配慮配送、継続中


さらに新しい表示。


共同管理路、成立


誠司は頷いた。


それが一番大事だった。


満タン便だけの道ではない。


みんなで守る道。


夕方、受付所ではミナが緑の札を専用の棚に入れていた。


「森棚か?」


ミナは胸を張って頷いた。


ロウグが笑う。


「満タン便も、ずいぶん細かい商売になりましたね」


「商売というより、生活だな」


誠司はそう答えた。


その夜。


帳面に、第一配送者の記録が少しだけ浮かんだ。


小さな依頼を後回しにした。

大きな依頼ばかり積んだ。

そのうち、人々は小さな不便を我慢しなくなった。

そして道は、日常から壊れた。


誠司は静かにページを閉じた。


小さな依頼を軽く見ない。


それもまた、第一配送者の失敗から学ぶべきことだった。


翌朝。


満タン便の帳面には、新しい通常依頼が並んでいた。


森の器。


水車町の粉。


北砦の包帯。


漁村の魚。


リーベルの薬。


大きな事件はない。


けれど、全部が誰かの暮らしに必要だった。


誠司は運転席に乗り込み、エンジンをかけた。


「今日も普通に行くか」


普通の日を届ける。


それが満タン便の仕事だった。

第27話では、森の泉の回復と小さな日常依頼を描きました。

第一配送者の失敗を踏まえ、満タン便は大きな仕事だけでなく、小さな依頼も大切にする方針を固めます。

次回は、その“普通の日”を壊す新たな問題が発生します。

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