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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第28話 止まった普通便

森の泉は回復し、満タン便は小さな依頼も大切にする方針を固めた。

だが、普通の日常こそ壊れやすい。

ある朝、満タン便の受付所から、ひとつの荷物が消えていた。

その朝、最初に異変に気づいたのはミナだった。


水車町の集荷所。


緑の森棚。


白の通常棚。


赤の緊急棚。


青の保冷棚。


いつものように依頼札を確認していたミナが、突然声を上げた。


誠司は荷台から顔を出す。


「どうした?」


ミナは通常棚を指差していた。


そこには、昨日まで置かれていたはずの木箱がなかった。


宛先は北砦。


中身は包帯と薬草。


緊急ではないが、次の補給便で届ける予定だった。


ロウグが帳面を確認する。


「確かに記録があります。北砦行き、包帯一箱。未配送」


「誰かが持っていったのか?」


受付係は青ざめて首を振る。


鍵は壊れていない。


棚も荒らされていない。


他の荷物は無事。


消えたのは、その一箱だけだった。


誠司は眉をひそめた。


盗難なら、もっと価値のある荷物を狙うはずだ。


保冷薬。


リーベルの香辛料。


銀貨の入った対価袋。


包帯一箱だけを盗む理由が分からない。


帳面を開く。


すると、文字が浮かんだ。


通常便未達リスク発生


対象:北砦包帯箱


推奨:所在確認


「やっぱり消えてる扱いか」


ミナは自分のせいだと思ったのか、耳を伏せている。


誠司は首を振った。


「ミナのせいじゃない。仕組みの問題だ」


ロウグが訳すと、ミナは少しだけ顔を上げた。


誠司は考える。


荷物が消えた。


だが盗難とは限らない。


誰かが間違えて別便に載せた可能性もある。


まずは確認だ。


水車町の棚。


荷台。


北砦便の控え。


リーベル受付所との拠点札。


全部を調べる。


すると、リーベル受付所の記録に妙な表示があった。


北砦包帯箱:西方大森林便に混載


「混載?」


森棚を見る。


昨日、森の器と水を積んだ時、包帯箱が一緒に動いたらしい。


誰がやったのか。


おそらく、緑札と白札の紐が似ていた。


ミナが仕分けを間違えたのではなく、札の色が薄く、見分けにくかったのだ。


誠司は息を吐いた。


「盗難じゃない。誤仕分けだ」


ミナはさらに落ち込んだ。


誠司はしゃがみ、彼女の目線に合わせる。


「違う。これは俺のミスだ。見分けづらい札を使った」


ミナは首を振る。


だが誠司は続けた。


「仕組みで直す」


満タン便は、西方大森林受渡所へ向かった。


森の民たちは、包帯箱を大切に保管してくれていた。


間違えて届いたと気づき、開けずに置いていたらしい。


年長女性は静かに箱を返してくれた。


誠司は深く頭を下げる。


包帯箱は無事だった。


だが、問題は無事だったことではない。


間違えて届いたことだ。


帰り道、誠司は帳面に書いた。


配送規則追加:札は色だけでなく形も変える。


赤は三角。


青は丸。


白は四角。


緑は葉形。


文字が読めなくても、色が薄くても、分かるようにする。


水車町へ戻ると、ミナと受付係、樽職人がすぐに新しい荷札を作った。


森便の札は葉の形。


北砦便は盾の形。


水車町内は丸。


リーベル便は四角。


鍛冶町便は金具形。


ガランが見たら笑いそうな形だ。


だが分かりやすい。


ロウグは感心して言った。


「良いですね。文字に頼らない仕組みです」


「読める人ばかりじゃないからな」


「それに、疲れている時にも間違いにくい」


それが大事だった。


人は疲れる。


忙しいと間違える。


だから間違えにくい形にする。


夕方、北砦行きの包帯箱は、改めて満タン便に積まれた。


今度は盾形の札を二つ付けて。


砦に着いた時、カイルが箱を受け取り、不思議そうに札を見た。


「盾、分かりやすい」


誠司は笑った。


「だろ?」


カイルは頷いた。


その夜、水車町へ戻ると、帳面に文字が浮かんでいた。


通常便未達リスク解消


視認性改善:運行安定度上昇


さらに、第一配送者の記録が短く現れた。


私は、大きな失敗ばかり恐れた。

だが道を壊したのは、小さな間違いの積み重ねだった。


誠司は静かに頷いた。


普通便が止まる。


それは大事件ではない。


だが、放っておけば信用が削れる。


小さなミスを小さなうちに直すこと。


それが、満タン便を長く続ける方法だ。


翌朝。


集荷所には新しい形の荷札が並んでいた。


ミナは得意げに胸を張る。


受付係も笑っている。


ロウグは商人らしく、さっそくリーベル受付所にも同じ仕組みを導入すると言い出した。


誠司は運転席に乗り込む。


「今日の普通便、出発だ」


普通を守るのは、思ったより難しい。


けれど。


普通が届くから、人は安心して暮らせる。


満タン便は今日も、派手ではない荷物を積んで走り出した。

第28話では、荷物の誤仕分けを通じて「普通便を守る大切さ」を描きました。

文字や色だけに頼らず、形で分かる荷札を導入。

小さな改善が満タン便を強くしていきます。次回は、この新しい荷札が思わぬ形で命を救います。

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