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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第23話 森の奥から来た依頼

森の民との受渡所が正式に認められた満タン便。

しかし、新たな依頼には不穏な一文が添えられていた。

――森内部に異変あり。

誠司は初めて、森の奥に関わることになる。

翌朝。


田村誠司は帳面を見つめていた。


注意:森内部に異変あり。詳細不明。


その文字は昨日から消えていない。


満タン便は配送屋だ。


魔物退治をするわけでもない。


冒険者でもない。


だから本来なら関わる必要はない。


だが問題は、依頼元が森の民であることだった。


せっかく築き始めた信頼。


それを無視するわけにもいかない。


「どう思う?」


誠司が尋ねると、ロウグは腕を組んだ。


「危険です」


「だろうな」


「ですが、放置も危険です」


「それもだな」


森との受渡所は出来たばかりだ。


森側で何かが起きれば、配送路そのものが閉じる可能性がある。


つまり物流の問題でもあった。


ミナは珍しく真剣な顔をしていた。


森の民との接触が続いたことで、多少なりとも親近感があるのだろう。


「行く。ただし奥までは入らない」


誠司は決めた。


まず話を聞く。


それから判断する。


満タン便の基本は変わらない。


状況確認だ。


荷台には水。


薬。


包帯。


保冷区画には薬師が用意した薬。


さらに修理した木桶二つ。


今回は商売ではない。


救援便に近かった。


昼前。


森入口受渡所へ到着する。


すると前回とは違い、森の民が大勢集まっていた。


空気が重い。


緊張している。


年長の女性も表情が硬かった。


ミナが話を聞く。


完全には分からない。


だが断片は伝わった。


「森の泉」


「病気」


「枯れる」


「獣が変」


誠司は眉をひそめた。


ロウグも困った顔をする。


「森の奥にある泉で何か起きたようですね」


泉。


森の水源だろう。


もしそこに問題が起きれば大変だ。


年長の女性は誠司に向かって深く頭を下げた。


そして木札を差し出す。


森の印が刻まれている。


今までとは違う印だった。


ミナが驚いた顔をする。


「奥へ入る許可」


誠司は思わず聞き返した。


「俺に?」


ミナは頷く。


どうやらそうらしい。


女性はさらに続ける。


森の民の若者が案内する。


入口だけではなく、泉まで来てほしい。


そんな内容だった。


ロウグは少し青ざめた。


「かなり特別扱いですね」


「喜んでいいのか?」


「普通なら数年かけても貰えない信頼です」


誠司は頭を掻いた。


配送していただけなのに。


だが今さら断れる空気でもない。


結局。


午後から森へ入ることになった。


ただしトラックは入口まで。


そこから先は徒歩。


鉄を嫌う森の民への配慮でもある。


誠司は工具箱から最低限の物だけ持つ。


懐中電灯。


ロープ。


小型ハンマー。


水。


ミナも同行。


ロウグは入口で待機することになった。


「絶対に無理しないでください」


「分かってる」


「本当に」


「分かってるって」


森の奥は別世界だった。


光が少ない。


空気が冷たい。


木々が異様に大きい。


何百年も生きているような巨木が並んでいる。


案内役の若い森の民は無言だった。


ただ先導する。


一時間ほど歩いた頃。


異変が見えた。


小川だった。


水が濁っている。


本来なら澄んでいるらしい。


森の民たちが不安そうな顔をしている。


さらに進む。


やがて泉へ着いた。


そこで誠司は言葉を失った。


泉そのものは美しかった。


だが中央に黒い塊が沈んでいる。


まるで焦げた木の根のような物体。


周囲の水だけが濁っていた。


森の民たちは近づかない。


恐れている。


ミナも顔をしかめた。


「気持ち悪い」


誠司も同感だった。


何かがおかしい。


その時。


帳面が勝手に開いた。


今までこんなことはなかった。


ページがめくられる。


文字が浮かぶ。


配送対象認識


異常物資検知


判定:流通阻害要因


誠司は固まった。


「は?」


さらに文字が続く。


除去推奨


「いやいや待て」


配送屋だぞ。


何でそんな機能がある。


だが帳面は容赦ない。


泉。


小川。


森。


受渡所。


その線が地図のように表示される。


そして黒い塊だけが赤く点滅していた。


まるで物流障害扱いだ。


「配送システム目線かよ……」


思わず呟いた。


ミナは不思議そうな顔をする。


当然だ。


説明できない。


だが確かなのは。


あの黒い塊が原因らしいということ。


誠司は近づいた。


森の民たちが止めようとする。


だが少しだけ確認したい。


泉の縁まで行く。


そこで気付いた。


黒い塊は木ではない。


石でもない。


金属だった。


しかも。


見覚えがある。


「……まさか」


誠司は息を呑んだ。


それは錆びた鉄板だった。


形が妙に人工的だ。


この世界の物ではない気がする。


帳面が再び光る。


同系統反応検知


解析不能


誠司の背筋が冷えた。


同系統。


つまり。


自分のトラックと同じ種類の何か。


あるいは。


同じ世界から来た物。


森の泉に沈む謎の金属。


満タンになるトラック。


勝手に成長する帳面。


別々だと思っていた謎が、初めて繋がった気がした。


森の民たちは不安そうに誠司を見る。


泉は今も濁っている。


誠司はゆっくり立ち上がった。


「……まずは持ち帰れないか考える」


配送屋にできること。


それは運ぶことだ。


もしあれが原因なら。


運び出す。


それが最初の一歩になる。


夕暮れ。


森入口受渡所へ戻った頃には、誠司の頭は混乱していた。


帳面は沈黙している。


だが最後に一文だけ残していた。


第二部主要案件発生


誠司は空を見上げた。


西方大森林の異変。


泉に沈む謎の金属。


そしてトラックとの同系統反応。


どうやら今回の依頼は。


ただの配送では終わりそうになかった。

第23話では、西方大森林の異変の正体が少しだけ明らかになりました。


森の泉を汚していたのは、トラックや帳面と同系統と思われる謎の金属片。


これにより物語は「物流スローライフ」から少しずつ世界の謎へ踏み込み始めます。


次回は泉の異物回収作戦。

満タン便は初めて、自分自身の秘密に近づいていきます。

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