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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第18話 橋を繋ぐ者たち

リーベル方面への道を塞ぐ崩落橋。

避難村への物資輸送は続いているが、このままでは限界がある。

満タン便は初めて、人ではなく「道そのもの」を運ぶ仕事に挑む。

避難村で一夜を明かした翌朝。


田村誠司は崩れた橋を見下ろしていた。


川幅はそれほど広くない。


だが流れは速い。


荷物を人力で渡すことはできても、馬車は通れない。


商都リーベルと北側地域を結ぶ重要な街道は、完全に寸断されていた。


帳面には昨夜と同じ文字が浮かんでいる。


新規課題:橋梁復旧


誠司はため息をついた。


「配送屋の仕事じゃないだろ……」


すると隣でロウグが笑う。


「配送屋だからこそですよ」


「どういう理屈だ」


「道がなければ荷物は運べません」


言われてみればその通りだった。


誠司は反論できなかった。


まずは人を集める必要がある。


橋を直すには木材がいる。


金具がいる。


職人がいる。


そして食料もいる。


誠司は帳面を開いた。


水車町。


鍛冶町。


北砦。


第一配送路。


今まで繋いできた場所を指でなぞる。


全部が必要だった。


「呼ぶか」


その日から満タン便は、橋復旧のための連絡便になった。


北砦へ行き兵士を呼ぶ。


鍛冶町へ行き職人を呼ぶ。


水車町へ行き木材を集める。


最初の村と隣村からは食料支援。


山の集落からは丈夫な蔓と木材。


それぞれが少しずつ力を出し合う。


数日後。


崩落橋の周辺には人が集まり始めていた。


鍛冶長ガラン。


水車町の大工たち。


北砦の兵士。


避難村の若者。


そしてリーベル商会の作業員。


誠司はその光景を見て驚いた。


最初は一人だった。


異世界で迷子になっただけの補充員だった。


それが今では、こんな人数が同じ場所に集まっている。


ロウグが誠司の横で言った。


「面白いですね」


「何がだ」


「皆、あなたのために来たわけではありません」


「だろうな」


「ですが、あなたが繋いだから集まった」


誠司は少しだけ黙った。


その言葉は妙に胸に残った。


橋の工事はすぐには進まなかった。


まず仮橋。


その後、本格補修。


段階的に進める必要がある。


ガランが現場を見回しながら怒鳴る。


職人たちも負けずに怒鳴り返す。


大工と鍛冶屋が言い争う。


兵士が仲裁する。


ロウグは交渉に走り回る。


誠司はというと。


ひたすら運んでいた。


木材。


金具。


釘。


工具。


水。


食料。


そして缶コーヒー。


夜になると職人たちは缶コーヒーを取り合うようになった。


「眠らなくて済む黒い奇跡」


と呼ばれているらしい。


誠司は聞かなかったことにした。


ある日の夕方。


作業現場で小さな事故が起きた。


足場が崩れたのだ。


幸い大怪我ではない。


だが数人が川へ落ちた。


すぐに助け出されたものの、冷たい水で体力を消耗していた。


誠司は保冷区画を見た。


今は薬しか入っていない。


そこで考えた。


保冷ではなく保温ができないか。


もちろん分からない。


だが帳面を開くと、文字が浮かんだ。


保冷区画応用機能未解放


「未解放か」


思わず苦笑する。


本当にゲームみたいだ。


それでも薬は冷たいまま保たれている。


怪我人には役立つ。


治療班は感謝していた。


橋の工事は続く。


三日。


四日。


五日。


満タン便は毎日走った。


荷台は満タン。


ガソリンも満タン。


だが誠司自身の疲労は戻らない。


夜になると荷台で眠る。


朝起きて走る。


それを繰り返す。


そんなある朝だった。


ミナが水車町までやってきた。


大きな包みを抱えている。


「どうした?」


包みを開く。


中には弁当のようなものが入っていた。


山の集落の女性たちが作った保存食らしい。


ロウグが笑う。


「差し入れですね」


誠司は少し驚いた。


誰かから差し入れをもらうなんて、いつ以来だろう。


ミナは胸を張る。


満タン便の仲間だと言いたいのかもしれない。


誠司は頭を撫でた。


ミナは照れながらも嬉しそうだった。


そして六日目。


ついに仮橋が完成した。


木製の簡易橋。


馬車一台がやっと通れる程度。


だが十分だった。


最初に渡ったのはリーベル商会の空荷馬車。


次に北砦向けの補給車。


そして最後に。


満タン便だった。


誠司はハンドルを握る。


橋の上をゆっくり進む。


ギシギシと音が鳴る。


全員が息を呑む。


だが橋は耐えた。


渡り切った瞬間。


歓声が上がった。


避難村。


職人。


兵士。


商人。


皆が拍手している。


誠司は少し照れくさかった。


自分が橋を作ったわけではない。


運んだだけだ。


けれど。


運ばなければ橋はできなかった。


その時だった。


帳面が淡く光る。


新しい文字が浮かぶ。


リーベル接続率100%


第五配送路登録完了


さらに。


運行安定度 大幅上昇


誠司は嫌な予感がした。


最近この表示が出ると何かが起きる。


案の定だった。


荷台の奥から音がする。


カチリ。


カチリ。


前回、保冷区画が現れた時と同じ音。


誠司は急いで荷台を開けた。


皆も集まる。


ロウグ。


ミナ。


カイル。


ガラン。


荷台の奥。


保冷区画の隣。


新しい継ぎ目が現れていた。


前より大きい。


人の胸ほどの高さがある。


ガランが目を細める。


「また増えたな」


ロウグが興奮を隠せない。


「今度は何です?」


誠司はゆっくり近づいた。


扉に触れる。


淡い光。


そして。


カチリ。


扉が開いた。


中には――


小さな棚があった。


ただの棚ではない。


そこには一枚の木札が置かれている。


見たことのない文字。


だがなぜか意味だけは分かった。


配送拠点登録機能


誠司は思わず頭を抱えた。


「今度は倉庫管理システムかよ……」


ロウグは大笑いした。


ミナは何が起きているのか分からないまま笑っている。


橋の向こうには商都リーベルへの道。


荷台には新しい機能。


そして満タン便は、また一段階先へ進もうとしていた。

第18話では橋の復旧を中心に描きました。


満タン便は荷物だけではなく、人と町を繋ぐ存在へ成長しています。


そして新たに解放された「配送拠点登録機能」。


次回はいよいよ商都リーベルへ向かい、満タン便最大の転機を迎えます。

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