第147話 受け取らない待避所
第一最終帰還便に、新しく見つかった安全条件。
帰路待避点0
始発線の途中。
水車町でも。
日本側でもない場所。
帰還を続けられなくなった車を、一台だけ安全に止められる区画です。
そこには。
すでに一度だけ。
K2D-0713が停止した記録がありました。
車内人員――なし。
車両異常――なし。
積載物――P-0000。
ゼロ番の乗客票。
停止理由は。
「受け取る側が、まだ人を帰せなかったため」
故障していなくても。
帰ってはいけない時には、止まる。
けれど。
そこで新しい問題が生まれます。
車が止まったら。
誰が、その車を「受け取る」のでしょうか。
答えは。
誰も受け取りません。
「待避点を、倉庫にしません」
朝。
水車町配送所。
誠司が。
最初に言った。
ロウグが。
昨日の表示を読む。
帰路待避点0
区分――車両一時保持
用途――帰還継続不能時の安全待機
車両受領――しない
次用途決定――しない
ガランが。
言う。
「でも、車はそこにあるんだろ」
「あります」
「誰かが預かる?」
「預かりません」
「管理は?」
「そこを分けます」
*
水車町。
零番車両枠。
似ている。
でも。
違う。
零番。
車両。
水車町へ。
物理的に。
到着。
水車町が。
まず。
受け取る。
ただし。
次。
修理。
貸出。
廃車。
返送。
決めない。
物理受領――する
次用途――未定
一方。
帰路待避点0。
物理受領――しない
次用途――未定
車は。
まだ。
帰還運行の途中。
水車町へ。
戻った。
わけでもない。
日本側へ。
着いた。
わけでもない。
「じゃあ」
サーラが言う。
「誰の責任ですか」
「運行を止めたからといって、所有や管理主体を勝手に移しません」
現在。
第一最終帰還便。
なら。
車両管理。
水車町。
帰還中。
技術支援。
両側。
運転者。
雪板。
そこ。
変わらない。
ただし。
車両を。
動かす責任。
止まる。
ことで。
減る。
「止めた車を」
ロウグが言う。
「誰かへ押しつけない」
「はい」
*
黒板。
四つ。
到着
受領
保管
待避
分ける。
到着。
場所へ。
来た。
受領。
相手が。
責任を。
引き受けた。
保管。
一定期間。
状態維持を。
引き受けた。
待避。
危険な移動を止め、安全な状態を維持する。
「維持するなら」
ガラン。
「保管じゃないのか」
「待避点側が修理計画や次用途まで持ちません」
「最低限だけ?」
「はい」
車輪。
固定。
電源。
必要最小。
火災。
監視。
通信。
人員。
安全。
それだけ。
*
実地。
水車町。
南方共同荷車。
一台。
道。
塞がない。
空地。
使う。
白線。
縄。
引く。
模擬待避区画
運転者。
荷車。
止める。
車輪止め。
置く。
荷。
触らない。
「受領票」
若い仕分け係が。
持ってくる。
誠司。
首を横に振る。
「使いません」
「じゃあ何を書く?」
待避開始票
車両。
南方共同荷車S-12
原因。
模擬
現在位置。
模擬待避区画
所有。
変更なし
管理主体。
変更なし
積荷。
開封しない
次用途。
決めない
作業。
安全固定のみ
「修理できそうなら?」
「待避終了手続へ進んでから」
待避中に。
勝手に。
車輪。
外さない。
部品。
取らない。
荷物。
降ろさない。
“そこにあるから”。
で。
仕事を。
始めない。
*
次。
人。
雪板が。
荷車の。
横。
立つ。
「私は?」
「そこです」
「車と一緒に待つ?」
「本人が短時間待ちたいなら」
「長くなったら?」
「車と一緒に残る義務はありません」
雪板が。
頷く。
そこ。
大事。
車両待避継続中でも、運転者役目を終了できる。
ガランが。
眉を上げる。
「車を置いて?」
「はい」
「運転者が?」
「安全な引渡し手順が成立していれば」
「誰にも受け渡してないのに?」
「車そのものは、待避状態へ固定されています」
人が。
車と。
一緒に。
縛られる。
必要。
ない。
*
誠司は。
二つ。
書く。
車両状態
と。
人員状態
別。
車。
待避継続
人。
待機
休息
帰着
役目終了
どれも。
選べる。
「帰還車両担当だから」
雪板が言う。
「車が動くまで残れ、ではない」
「はい」
「技術の人が来るまで?」
「残る必要はありません」
「日本側工場が受け取るまで?」
「ありません」
雪板。
満タン便を見る。
「それならいいです」
*
ただし。
運転者が。
離れる前。
必要。
車両安全固定
鍵または起動権限の処理
現在症状記録
荷物封印確認
技術支援への状況引継ぎ
人員帰着経路の成立
「鍵」
ガランが言う。
「持って帰る?」
場合。
よる。
鍵を。
本人が。
持ち帰れば。
車。
動かせない。
でも。
後。
救援側。
必要。
なら。
困る。
逆に。
車内へ。
置く。
危険。
だから。
待避点0。
仕様。
確認。
車両起動権限――待避封止可
物理鍵。
車内。
専用封止箱。
収納。
外から。
通常開封。
不可。
両側技術支援。
または。
運転者本人。
解除。
「鍵を」
雪板が言う。
「誰かに渡さなくていい」
「はい」
誰かへ。
車両役目。
押しつけない。
*
次。
人員帰着。
始発線。
途中。
どうやって。
人だけ。
抜ける。
配送帳面。
待避点0。
仕様。
人員離脱口――一
車両から独立
車両帰還継続――不要
人員帰着先――本人選択可能範囲から選定
現在。
接続可能。
水車町固定人員受入口
日本側普通人員受入口
雪板。
表示。
見る。
「どっちにも行ける?」
「接続状態と本人希望を確認して」
「車は?」
「残ります」
「私だけ?」
「帰れます」
*
ガランが。
ぽつり。
「車より先に人が帰ってもいいんだな」
誠司は。
頷く。
「人が車の付属品にならないように」
満タン便。
重要。
でも。
人。
もっと。
先。
車。
途中。
止まった。
だから。
運転者も。
そこへ。
拘束。
しない。
*
ただし。
この機能。
今。
人で。
試さない。
「使ってみる?」
若い当番が。
冗談半分。
言う。
サーラ。
即。
首を横に振る。
「普通人員を設備試験に使いません」
以前。
固定人員受入口。
作った時。
同じ。
空線。
砂袋。
体温水。
模擬。
で。
確認。
今回も。
人。
使わない。
*
待避点0。
遠隔。
状態照会。
車両停止床――正常
固定機構――正常
最大保持――車両一台
人員区画――一名
飲料――最低待機量あり
保温設備――簡易
双方向通信――水車町側正常
双方向通信――日本側正常
人員離脱口――閉鎖待機・起動可
火災隔離――正常
漏液排出――正常
自動受領登録――なし
最後。
大事。
待避点到着時、車両の所有・管理・次役目を自動変更しない。
正常。
*
「負荷試験は?」
ガラン。
「現地へ車を送らずにできる範囲だけ」
床。
自己診断。
固定機構。
無荷重。
作動。
通信。
遮断。
復帰。
人員離脱口。
空線。
開閉。
車両封止箱。
模擬権限。
全部。
遠隔。
確認。
でも。
実車。
送らない。
待避点が。
使えるか。
確かめるためだけに。
満タン便を。
世界の途中へ。
入れない。
「必要になったら」
雪板が言う。
「本番で使う」
「はい」
「使わない方がいい」
「はい」
救急箱。
同じ。
待避点も。
使わず。
帰れるなら。
それが。
いい。
*
ここで。
第一最終帰還便。
手順。
更新。
異常。
なし。
通常帰還継続
異常。
あり。
安全停止
その後。
技術判断。
継続
限定移動
現地補修
帰還中断
帰還中断。
さらに。
現在地点安全――その場待機
または。
現在地点不適――待避点0へ限定移動可能か確認
限定移動。
できる。
なら。
待避点0。
できない。
なら。
現在地。
別救援。
待つ。
「待避点があるから」
ガランが言う。
「そこまで走れ、にはしない」
「はい」
壊れた車。
待避所。
ある。
だから。
走れ。
ではない。
待避点まで。
動くこと自体が。
安全。
な場合だけ。
*
さらに。
待避点へ。
着いた。
後。
待避開始
技術支援。
車両状態。
固定。
そして。
運転者。
選択。
短時間待機
人員帰着
休息後再確認
本人判断延期
「帰還役」
雪板が。
見る。
「人員帰着を選んだら終わる?」
「車両帰還担当役を終えるか、本人に確認します」
「自動では?」
「しません」
たとえば。
人だけ。
水車町へ。
戻る。
翌日。
安全が。
確認。
され。
本人も。
また。
運転したい。
なら。
再受任。
できる。
でも。
車が待っているから戻れ
とは。
しない。
「一回終わらせる?」
雪板。
「長時間になるなら、その方が安全です」
長時間待避時――運転者役目終了を標準
再開時――本人再受任
雪板。
「それがいい」
*
水車町側。
ガラン。
技術支援。
手順。
見る。
「俺も」
「はい」
「車が待避点に入ったら、ずっと当番?」
「しません」
「一便限定って言ったよな」
「帰還運行が中断した時点で、継続当番を本人へ確認します」
ガラン
第一最終帰還便・運行中技術支援――受任済
長期待避移行後――別確認
技術者も。
車に。
縛らない。
「良し」
*
日本側。
同じ。
当日技術当番。
帰還中断。
長期。
なったら。
通常勤務。
交代。
できる。
一人。
寝ずに。
待たせない。
長期待避――技術当番交代可
引継ぎ必須
車両受領扱い――しない
「誰も受け取らないのに」
ロウグが言う。
「情報は引き継ぐ」
「はい」
車の。
所有。
変えない。
でも。
安全情報。
引き継ぐ。
*
ここまで。
決めてから。
初回使用記録。
見る。
帰路待避点0
初回使用
使用車両――K2D-0713
車歴状態――B
車内人員――なし
搭載物――P-0000
車両異常――なし
待避理由――受取側人員帰着系統未成立
続き。
今まで。
閉じていた。
使用目的――受入連動確認
ガランが。
「試験だった?」
詳細。
有人試験――いいえ
車両性能試験――いいえ
配送実績――なし
受入側準備確認――はい
無人。
車両。
P-0000。
だけ。
載せる。
人。
いない。
受入側が。
“初回納車運転者を安全に人として帰せる”。
状態。
か。
確認。
する。
「車を受け取れるかじゃない」
サーラが言う。
「はい」
車。
受け取れても。
人。
帰せない。
なら。
納車便。
成立。
しない。
だから。
始発線。
途中。
止める。
*
待避時間――43分
人員――なし
技術異常――なし
受入側人員帰着系統――未成立継続
そして。
待避終了方法――出発側へ無人返送
全員。
静か。
車。
無理に。
水車町へ。
入れなかった。
受け取る側。
まだ。
人を。
帰せない。
だから。
車だけ。
届かせる。
ことも。
しなかった。
無人返送――正常
P-0000――車載継続
紛失――なし
車両損傷――なし
配送実績――なし
一回。
来ようとして。
途中で。
止まり。
そのまま。
戻る。
でも。
失敗。
ではない。
受入不可。
正しく。
確認。
できた。
*
「誰が無人で送り出した?」
ガランが。
尋ねる。
表示。
送出主体――日本側特装工場
個人。
当日始発線運用当番
また。
固定。
しない。
「誰が止めた?」
自動待避
条件判定――人員帰着系統未成立
「誰も判断してない?」
「条件は事前に人が決めています」
誠司。
答える。
でも。
本番。
入口。
未成立。
なのに。
担当者が。
“まあいける”。
で。
通せない。
自動。
止まる。
*
そして。
P-0000。
この無人確認で。
使われた。
と言っても。
乗客。
いない。
票。
消費。
しない。
原票状態――未使用
受入条件照合――一回
人員割当――なし
有効状態――維持
だから。
今。
現在。
水車町に。
原票。
ある。
未来で。
一度。
照合。
されても。
人。
載せて。
使われていない。
票。
のまま。
循環。
している。
「ゼロ番らしい」
ロウグが。
呟く。
人を。
決めない。
でも。
人が。
帰れる仕組みか。
先に。
確かめる。
*
現在の。
第一最終帰還便。
待避点0。
正式。
登録。
第一最終帰還便・緊急待避先――使用可
ただし。
使用予定――なし
使用を前提とした運行――しない
異常時のみ
人員離脱――可
車両受領――なし
運転者役目長期拘束――なし
車両外技術支援。
水車町側――ガラン
日本側――当日技術当番
待避。
帰路待避点0
三つ。
つながる。
第一最終帰還便準備――六十二パーセント
ガランが。
数字。
見る。
「上がったな」
誠司。
「待避所を使う予定が増えたわけではありません」
「分かってる」
「なら」
「数字くらい見せろ」
雪板が。
笑う。
*
夜。
第一配送記録。
開く。
第一配送記録・待避第一便
私は昔。
止まった車の横に。
運転者を残した。
三浦直人。
記録。
車がある。
鍵を持っている。
状況を知っている。
だから。
その人がそこにいるのが。
一番早いと思った。
雨。
夜。
修理。
翌朝。
運転者は。
車の横で一晩待った。
直人。
朝。
行く。
運転者。
眠っていない。
私は言った。
「車を見ていてくれて助かりました」
相手。
答える。
「帰っていいって、誰も言わなかったので」
一行。
空く。
私は。
帰れない車と。
帰っていい人を。
同じものとして扱っていた。
その後。
待避。
手順。
変更。
車が止まっても。
人まで止めない。
車が待っても。
人まで待たせない。
車が帰れなくても。
人には帰る方法を残す。
第一配送記録。
最後。
待避所とは。
車を預かる場所ではなかった。
人を、車から解放するための場所だった。
第一配送記録。
終了。
*
現在。
帰路待避点0。
正式設定。
完了。
ロウグが。
最後の。
設備欄。
確認。
通常解除
条件。
技術支援確認
運転者本人再受任
双方受入状態正常
問題。
なし。
次。
無人車両解除
両側運行当番確認
問題。
なし。
そして。
三つ目。
通信断時・手動解除
ロウグの。
手が。
止まる。
「これ」
全員。
見る。
使用条件――双方向通信長時間不能
用途――待避車両を危険状態から離脱させるための最終手段
通常運行での使用禁止
「権限は?」
ガラン。
詳細。
手動解除権限源――SR-01/ORG
部屋が。
静かになる。
誠司が。
ゆっくり。
読み直す。
SR-01/ORG
原鍵権限
あの。
濃銀色の。
原鍵。
小川が。
日本から。
持ってきた。
三日前の。
救援枠。
SR-01を。
水車町へ。
延長した。
原鍵。
現在。
水車町で。
保管中。
でも。
まだ。
移してはいけない。
日本側SR-01。
稼働中。
SR-02。
未成立。
権限分離。
まだ。
途中。
「鍵を」
サーラが。
言う。
「雪板さんに持たせる?」
「しません」
誠司。
即答。
原鍵。
持つ。
イコール。
帰路待避点。
解除。
だけ。
ではない。
SR-01。
基底権限。
変わる。
可能性。
ある。
「ガランさんに?」
「しません」
「日本側へ送る?」
「今は送れません」
正規。
解除。
は。
通信。
ある。
限り。
使える。
でも。
両側。
完全に。
通信。
失う。
そして。
待避点に。
止まった車を。
危険から。
動かす必要。
が。
出た時だけ。
原鍵。
権限。
必要。
*
「物理鍵を差すのか?」
ガラン。
「まだ分かりません」
表示。
物理原鍵移送――不要
全員。
少し。
息を吐く。
だが。
次。
権限照合元――水車町
現在権限保持状態――成立
実行者登録――なし
誠司が。
目を細める。
原鍵。
ここ。
ある。
権限源。
ある。
でも。
緊急時。
誰が。
その権限を。
使うのか。
決まっていない。
さらに。
手動解除は、原鍵所有者本人による実行を必要としない。
誠司。
本人が。
押す。
必要。
ない。
むしろ。
原鍵所有者。
兼。
運行者。
兼。
判断者。
に。
しないため。
別。
役目。
必要。
だった。
最後。
帰路待避点0
通信断時手動解除
必要役目――緊急解除立会
現在登録――なし
条件。
まだ。
非表示。
ただし。
一行。
だけ。
開いていた。
原鍵を渡さずに、
原鍵の権限だけを一回使わせる仕組みが必要。
満タン便を。
安全に。
止める場所は。
できた。
今度は。
その場所から。
本当に。
動かさなければならなくなった時。
原鍵そのものを。
誰にも渡さず。
権限だけを。
一度だけ。
どう使うのか。
それが。
次の未解決になっていました。
帰路待避点0について、水車町ではまず、
待避と、
受領と、
保管
を分けました。
待避点0へ車が入っても。
水車町にも。
日本側にも。
まだ車両は受領されません。
所有や次の役目も変わりません。
ただ危険な移動を止め。
安全な状態で待たせるだけです。
そして最も重要なのは。
車が待避しても、運転者までそこへ拘束しないこと。
第一最終帰還便で長時間待避が必要になった場合、雪板は車両を安全固定した上で、人だけ水車町または日本側へ帰ることができます。
車が帰れないことと。
人が帰れないことは別です。
また、帰路待避点0の最初の使用記録も判明しました。
それは有人配送ではなく。
P-0000を積んだK2D-0713を無人で送り、受入側が「初回納車運転者を人として安全に帰せる状態か」を確認するための事前照合でした。
受入側人員帰着系統が未成立だったため。
車は途中で止まり。
四十三分後。
無人のまま出発側へ戻っています。
人を危険な試験には使っていません。
そして新たな未解決事項。
帰路待避点0には。
水車町側と日本側の通信が長時間完全に失われた場合だけ使える、手動解除があります。
その権限源は――
SR-01/ORG原鍵
ただし。
原鍵そのものを雪板にも。
ガランにも。
日本側にも。
渡してはいけません。
必要なのは。
原鍵を渡さず、原鍵の権限だけを一度使う仕組み。
そのための「緊急解除立会」は。
現在、まだ誰も登録されていません。




