第145話 返事を先に使わない便
白いK2D-0713・車歴D。
日本側特装工場から始発配送所へ。
普通の車として配置換えされる一便。
その運転者は。
未来のSR-02教習指導者になるための条件を満たします。
けれど。
その人を教習指導者候補にするために。
普通の配置換え運転者へ選んではいけません。
だから。
未来記録は。
最後の返事を隠しました。
SR-02教習指導者受任――未開示
開示条件。
K2D-0713車歴D普通配置換え完了後
未来には。
返事がある。
でも。
今は読めない。
なら。
水車町がやるべきことは。
その答えを当てることではなく。
どんな返事でも困らない仕組みにしておくことでした。
「“たぶん受ける”も禁止です」
朝。
水車町配送所。
誠司が言った。
ガランが。
昨日の表示を見る。
条件一致――はい
役目説明――本人へ実施
受任――未開示
「でも」
ガランが言う。
「ここまで行ってるなら」
誠司が見る。
「なら?」
「受ける可能性、高そうだろ」
「それを使いません」
未来。
返事。
あり。
内容。
隠れている。
だから。
分からない。
それだけ。
はい
かもしれない。
いいえ
かもしれない。
今は決めない
かもしれない。
「未開示を」
ロウグが言う。
「“ほぼ承諾”って読むな」
「はい」
*
三つ。
並べる。
受任
辞退
保留
全部。
正常。
さらに。
四つ目。
説明だけ受けて、回答しない
これも。
あり。
「保留との違いは?」
サーラが尋ねる。
「保留は本人が“あとで決める”と伝えた状態です」
回答しない。
は。
回答そのものを。
まだ。
渡していない。
催促。
しない。
違い。
小さい。
でも。
大事。
*
「じゃあ」
ガランが言う。
「未来の教習指導者が辞退したら?」
「別の人を探します」
「SR-02は?」
「待ちます」
「小川は?」
「待てます」
SR-02。
訓練開始日。
まだ。
決まっていない。
小川も。
“いつまでに”。
とは。
受けていない。
「車がDになったから」
即。
訓練。
しなければ。
ならない。
ではない。
雪板の。
第零試験も。
まだ。
本人受任。
していない。
ロウグの。
車歴移管確認も。
原記録が。
揃ってから。
再確認。
全部。
順番。
ある。
*
「なら」
サーラが。
紙を出す。
「辞退された時の手順も先に作っておきましょう」
その通り。
未来記録。
受ける。
前提で。
組んでいたら。
見えない圧力。
になる。
SR-02教習指導者・回答別運用
一。
受任
役目開始日。
別途。
本人と。
調整。
受任した瞬間。
翌朝。
教習。
ではない。
休息。
勤務。
小川側。
予定。
全部。
確認。
二。
辞退
理由。
記載不要
普通車配置換え記録。
変更なし
通常勤務評価。
変更なし
次回配車。
影響なし
候補検索。
別途
三。
保留
本人指定。
再確認時期。
あるなら。
その時。
なければ。
本人から。
連絡。
来るまで。
待つ。
四。
回答なし
追跡。
なし。
催促。
なし。
役目。
未成立。
*
ガランが。
二を見る。
「普通車配置換えの評価まで書くか?」
「必要です」
“教習を断った”。
その後。
普通車。
移送当番から。
外される。
なら。
実質。
断れない。
だから。
後役辞退を、元業務の配置・評価・安全記録へ反映しない。
「本当に安全問題があった場合は?」
「それは元の安全記録で扱います」
断った。
から。
下げる。
ではない。
元仕事で。
事故。
あれば。
事故として。
処理。
別。
*
実地。
試す。
ちょうど。
東方。
車輪交換済み。
荷車。
一台。
夕方。
返却。
運転者。
普通配置換え。
終了。
役目。
降りる。
本人。
荷車管理の。
経験。
長い。
将来。
新しい運び手へ。
点検手順を。
説明する役。
条件。
合う。
ただし。
今まで。
頼んでいない。
誠司。
まず。
確認。
本日の通常運行記録を、別役目の条件照合に使用してよいですか。
本人。
「何の役目?」
「それは、照合して条件が合った場合に説明します」
「使っていい」
今回使用――可
条件。
照合。
一致
それから。
説明。
「新人へ、出発前の車輪点検を教える短期役です」
本人。
少し。
考える。
「やりません」
サーラが。
筆を。
止めない。
受任――辞退
理由。
記載なし
「理由いらない?」
本人。
「はい」
「実は、人に教えるの苦手で」
「書きたいですか」
「いや」
理由――記載なし
そのまま。
終了。
*
翌日。
同じ本人。
普通東方便。
候補。
勤務。
休息。
資格。
全部。
正常。
「昨日断ったから」
若い仕分け係が。
一瞬。
言いかける。
誠司が。
見る。
本人も。
見る。
若い仕分け係。
口を閉じる。
通常配車。
条件だけ。
見る。
結果。
その人。
当番。
になる。
普通に。
走る。
普通に。
帰る。
異常。
なし。
後役辞退による元業務影響――なし
「これで」
サーラが言う。
「本当に断れた」
「はい」
断れる。
と。
紙に。
書くだけ。
ではない。
断った。
次の日。
何も。
悪くならない。
そこまで。
あって。
初めて。
断りやすい。
*
未来の。
SR-02。
同じ。
教習指導者候補。
条件。
一致。
そこまで。
分かっている。
でも。
受任結果
は。
普通配置換え後。
それでも。
さらに。
本人の。
記録利用。
同意。
候補照合。
役目説明。
全部。
終わってから。
本人が。
決める。
「結果を」
ロウグが言う。
「現在側が先に知ったら」
「普通配置換えへ影響する可能性があります」
たとえば。
未来で。
受任。
している。
と。
知る。
そうしたら。
当日の。
運転者選定で。
無意識に。
その人へ。
車を。
回す。
逆に。
未来で。
辞退。
している。
と。
知れば。
別の人へ。
回したくなる。
どちらも。
駄目。
だから。
答えは。
隠れている。
*
新しい。
原則。
後役回答遮断
一。
元業務の選定前に、後役の受任結果を参照しない。
二。
元業務の実施中に、後役説明をしない。
三。
元業務終了後、本人が役目を降りてから後役手続へ進む。
四。
後役辞退・保留・無回答を、元業務評価へ反映しない。
五。
未開示回答を推測して、元業務を操作しない。
六。
後役が不成立でも、元業務を再実施しない。
「六」
ガランが言う。
「前にも似たのあったな」
「あります」
普通仕事。
経験を。
作り直さない。
都合のいい人が。
出るまで。
普通配置換えを。
何度も。
作る。
それも。
駄目。
必要な。
配置換え。
だけ。
やる。
その中から。
本人同意。
ある記録。
だけ。
後役条件へ。
使う。
*
「ところで」
雪板が。
言った。
「私の第零試験も同じ?」
「同じ考え方です」
第三配送。
満タン便。
返す。
その役目。
終わる。
水車町へ。
本人。
戻る。
無役目。
一日。
本人希望。
そこまで。
終わる。
その後。
第零試験。
説明。
再確認。
「第三配送でうまく運転したから」
第零試験。
やってください。
とは。
しない。
「第三配送を断らなかったから」
次も。
受ける。
とも。
しない。
雪板。
頷く。
「なら大丈夫」
*
午前。
その標準。
完成。
午後。
別。
大きな。
予定。
満タン便。
比較封印二。
本測定。
全員。
揃った。
ガラン。
車両構造。
エレナ。
記録。
サーラ。
安全受付。
雪板。
返却運転側。
誠司。
最終集約。
ロウグ。
原記録。
読み上げ。
K2D-0713
車歴C照合用・出発前固定記録
本測定
ただし。
現在。
車歴。
まだ。
B。
最終返却準備中。
C。
始まるのは。
日本側工場。
搬入受領。
完了時。
だから。
票。
上。
赤字。
本記録は車歴Cそのものではない。
C搬入後比較に使用する、B末期固定記録である。
「名前長いな」
ガランが言う。
「間違えるよりいいです」
*
A。
事前固定記録。
開けない。
日本側。
白い。
特装前。
状態。
今。
それと。
見比べて。
測定。
合わせたら。
意味。
ない。
だから。
水車町側。
現在だけ。
測る。
測定箇所。
車台。
基準点。
左右。
前後。
斜め。
機関番号。
車体取付。
荷台。
床。
運転席基準。
RF0。
取付状態。
古い。
補修。
一つずつ。
測定値――記録
観察方法――記録
使用器具――記録
測定者――記録
確認者――記録
推測値――使用禁止
*
前部。
正常。
中央。
正常。
後部。
正常。
一箇所。
泥。
奥。
見えにくい。
「落とす?」
ガランが。
「必要な範囲だけ」
乾いた。
柔らかい。
刷毛。
使う。
削らない。
磨かない。
塗装。
剥がさない。
番号。
出る。
一致。
*
運転席下。
RF0。
今度は。
外さない。
鏡。
照明。
穴六。
長穴。
約〇・九。
現状。
直接。
確認。
RF0取付補修歴と一致
でも。
工場比較では。
「一致するはず」。
と。
使わない。
現在の。
観察。
として。
書く。
*
雪板が。
測定票を。
見る。
「私がここにいる理由は?」
「返却運転前の、運転席側状態確認です」
「構造判断は?」
「しません」
雪板。
座席。
位置。
ベルト。
操作。
視界。
足元。
確認。
運転者使用状態――正常
それだけ。
専門。
判断。
しない。
役目。
混ぜない。
*
二時間。
休憩。
入れる。
「続ければ終わる」
ガラン。
「休みます」
誠司。
「知ってる」
水。
飲む。
甘い。
焼き菓子。
少し。
再開。
*
午後。
最後。
車台後端。
対角。
二回。
測る。
一回目。
差。
一・三。
二回目。
一・二。
許容。
内。
でも。
一回目と。
二回目。
〇・一。
差。
「三回目」
ガラン。
測る。
一・二。
固定値――一・二
一回目。
消さない。
初回測定――一・三
再測定――一・二
三回目――一・二
採用値――一・二
初回差原因――測定具着座不十分と推定
「推定」
エレナが。
見る。
「確定じゃない」
「はい」
原因。
断定。
しない。
測定結果。
残す。
*
全項目。
終了。
測定不能――0
推測補完――0
再測定項目――1
安全異常――0
現在の。
車両。
状態。
固定。
完了。
そして。
その場で。
封印。
C-PRE-0713
封入。
原本。
一。
測定票。
器具確認票。
観察記録。
RF0現状図。
再測定記録。
全員。
署名。
ただし。
水車町。
控え。
数値。
複写。
しない。
残すのは。
封印番号
頁数
測定完了時刻
立会者
破損なし
だけ。
「何で数値を残さない?」
若い仕分け係が。
「工場から照会が来た時」
現在側。
記録を。
直して。
合わせる。
余地。
減らす。
原本。
封印。
そのまま。
日本側へ。
渡す。
工場。
A。
記録。
C搬入後。
記録。
三つ。
並べる。
そこで。
初めて。
比較。
*
第一最終帰還便準備
車歴C照合用・出発前固定記録――完了
準備率。
五十八パーセント
ガランが。
見る。
誠司も。
見る。
「今日は」
ガランが言う。
「ちゃんと進んだな」
「はい」
率。
ではなく。
一つ。
大きい。
仕事。
終わった。
*
封印。
満タン便。
所定。
返却記録箱。
へ。
入れる。
その時。
ロウグが。
返却チェック欄。
一つ。
開いた。
「新しい項目です」
第一最終帰還便
出発前安全条件
既存。
帰着余力。
七。
人員帰着。
車両受入。
運転者。
休息。
記録原本。
比較封印。
そして。
一番下。
帰路技術支援――未成立
ガランが。
覗く。
「技術支援?」
詳細。
車両帰還担当は、帰還途中の故障原因を単独診断する義務を負わない。
雪板が。
読む。
少し。
顔を上げる。
異常発生時
一、安全停止
二、症状報告
三、車両外技術連絡担当へ照会
四、継続/現地補修/待機/返却中止を判断
「返却中止」
雪板が。
そこを見る。
「止めてもいい?」
「安全なら」
誠司が言う。
予定された最終帰還を完遂することより、
運転者・車両・周辺安全を優先する。
床下。
K2D-RS 2/2。
帰路予備材。
ある。
でも。
雪板が。
道端で。
鉄を。
切る。
曲げる。
判断まで。
一人で。
する必要。
ない。
可能なら。
外から。
技術。
支援。
受ける。
*
「誰が担当?」
ガランが。
言う。
表示。
車両外技術連絡担当――未登録
「俺?」
「まだ聞いてません」
「聞いてないだけで――」
「推測もしません」
ガランが。
口を閉じる。
今日。
朝。
やったばかり。
未登録。
だから。
ガラン。
とは。
限らない。
条件。
先。
決める。
*
詳細。
少し。
開く。
必要能力
車両異常の聞き取り
現地補修可否判断
「修理しない」判断
帰還中止判断
日本側受入技術者との連絡
さらに。
車両帰還担当との上下関係――不可
最終帰還完遂を業績目標としない
運転者へ現地分解を強制しない
通信不能時の運転者安全停止判断を尊重する
そして。
一名では成立しない。
「一人じゃない?」
ロウグ。
次。
車両外技術支援
水車町側――一名
日本側受入側――一名
二人。
両端。
水車町。
出発側。
日本。
受入側。
雪板。
その間。
*
日本側。
候補。
現在。
未抽出
水車町側。
候補条件一致――一名
名前。
非表示。
本人限定照会前
誠司は。
開かない。
「また一人」
サーラが言う。
「だから先に役目を作ります」
同じ。
順番。
*
その夜。
第一配送記録。
開く。
第一配送記録・帰路修理第一便
私は。
車が止まると。
運転者に直させていた。
三浦直人。
古い記録。
道具はある。
補修材もある。
なら。
現場で直せると思った。
ある日。
北へ。
向かう。
車。
異音。
運転者。
止まる。
直人。
遠隔。
指示。
「下を見て」
運転者。
見る。
「分かりません」
「ボルトを確認して」
「どれですか」
直人。
苛立つ。
「いつも乗ってる車でしょう」
運転者。
答える。
「私は運転する人です」
一行。
空く。
「修理する人ではありません」
直人。
そこで。
気づく。
運転者は。
異常に気づく責任を持つ。
安全に止める責任を持つ。
症状を伝える責任を持つ。
でも。
故障原因を当てる責任までは持たない。
さらに。
車を必ず帰す責任も持たない。
直人。
その便。
結局。
現地。
修理。
しなかった。
次の日。
技術者。
行く。
原因。
小さい。
支持金具。
亀裂。
私は。
一日遅れたと思った。
技術者は。
「一日で済んだ」と言った。
最後。
帰る便には。
運転者の外に。
「今日は帰さない」と言える人が必要だった。
第一配送記録。
終了。
*
現在。
満タン便。
第一最終帰還便。
新しい。
条件。
車両外技術支援――必須
水車町側担当――未登録
日本側担当――未登録
両側成立前――出発不可
雪板が。
静かに。
読む。
「これがあれば」
「はい」
「途中で変な音がしても、私が車の下へ潜らなくていい」
「潜らないでください」
「鉄も」
床下。
K2D-RS。
「勝手に切らなくていい」
「はい」
「帰れないなら」
「帰さない判断もできます」
雪板。
頷く。
第一最終帰還便準備――五十八パーセント
数字。
変わらない。
それで。
いい。
大きな。
測定。
終わった。
代わりに。
出発前に。
必要な支援が。
一つ。
見えた。
最後。
車両外技術支援。
水車町側。
候補条件。
一番下。
必要条件追加
満タン便を「直せる人」ではなく、
「直さず止める判断をした実績がある人」。
候補。
一名
名前は。
まだ。
開かれていなかった。
未来のSR-02教習指導者候補について。
水車町では、未開示の返事を「たぶん承諾」と推測しないため、後役回答遮断の手順を作りました。
候補条件へ一致しても、
受任
辞退
保留
回答しない
はすべて正常な結果です。
特に重要なのは、後の役目を断ったことによって、元の普通業務の評価や配車が変わらないこと。
実地試験でも、通常運行後に別役目を辞退した運転者が、翌日も通常条件だけで普通便へ選ばれることを確認しました。
また、満タン便では。
ついに車歴C照合用・出発前固定記録の本測定が完了。
現在のK2D-0713を、未来のA記録を見ずに測定し、原記録を封印しました。
これで日本側工場では将来、
A事前固定記録
水車町出発前固定記録
C搬入後記録
を独立して比較できます。
そして新たに判明した出発条件。
第一最終帰還便には。
運転する雪板とは別に――
車両外技術支援
が必要です。
異常時。
雪板は安全に止まり。
症状を伝える。
しかし。
故障原因を一人で診断したり。
K2D-RSを自分だけの判断で加工したり。
「最終帰還だから」と危険な車を無理に走らせたりする必要はありません。
水車町側と日本側。
両方に一人ずつ。
必要なら、
「今日は車を帰さない」
と言える技術担当が必要です。
現在、水車町側の条件に一致する人物は一名。
ただし。
本人には、まだ何も聞いていません。




