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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第14話 満タン便の倉庫番

商都リーベルへの道が見え始めた一方で、満タン便の依頼は増え続けていた。

走るだけでは回らない。

誠司は初めて、自分以外に満タン便を支える仲間の必要性を感じ始める。

翌朝。


田村誠司は受付所の前で頭を抱えていた。


木箱の上には依頼木札。


その横にも依頼木札。


さらに箱の中にも依頼木札。


増えている。


明らかに増えている。


「昨日の倍じゃないか……」


ロウグが楽しそうに笑う。


「繁盛していますね」


「だからその言い方やめろ」


誠司は木札を一枚ずつ確認した。


北砦行きの補給品。


鍛冶町行きの金具注文。


山の集落からの薬草。


最初の村からの豆。


隣村からの布。


水車町からの粉。


全部運べない。


荷台は広い。


だが無限ではない。


「走る時間も足りないな」


これまでは何とかなっていた。


しかし配送路が増え、依頼も増えた。


荷物の仕分けだけで午前中が終わりそうだった。


その時だった。


受付所の横で見慣れた少女が手を挙げた。


山の集落の少女だ。


最近はよく水車町へ来ている。


薬草や赤い実を届けるためだ。


少女は木札を指差した。


それから、木箱を指差した。


さらに自分の胸を叩いた。


「……手伝う?」


少女は大きく頷いた。


誠司はロウグを見る。


ロウグは肩をすくめた。


「荷物の仕分けならできますね」


少女は字が読めない。


だが木札の印は覚えている。


山の集落の印。


隣村の印。


最初の村の印。


それくらいなら判別できる。


誠司は試しに木札を渡してみた。


すると少女は迷わず仕分け始めた。


山の集落。


隣村。


最初の村。


見事に分けていく。


「すごいな」


少女は少し得意そうに笑った。


その日の午前中だけで、誠司は大きな変化を感じた。


自分が荷台を整理している間に、受付が止まらない。


荷物が集まり続ける。


仕分け係がいるだけで、こんなに違う。


昼過ぎ。


今度は水車町の受付若者が近寄ってきた。


彼も手伝いたそうだった。


理由は単純だった。


「満タン便が止まると困る」


ロウグが通訳する。


水車町は満タン便を前提に動き始めている。


粉。


薬。


部品。


全部が繋がっている。


だから受付も、自然と協力するようになっていた。


誠司は考えた。


そして帳面を開く。


新しいページに書いた。


受付担当


仕分け担当


配送担当


ロウグが覗き込む。


「役割分担ですか」


「一人で全部やるのは無理だ」


「ようやく気付きましたか」


「うるさい」


ロウグは笑った。


だが彼も同意している。


満タン便は、もう誠司一人の仕事ではなくなっていた。


午後。


鍛冶町へ向かう途中。


誠司は新しい荷台を眺めていた。


ガランが作った棚。


荷留め具。


区画線。


そこへさらに木箱を追加する計画を考えていた。


荷物の量が増えたからだ。


鍛冶町に着くと、ガランは話を聞いて大笑いした。


「ようやく倉庫番が必要になったか」


ロウグが訳す。


「倉庫番?」


「荷物を管理する者だ」


ガランは工房の奥を指差した。


そこには大量の鉄材が積まれている。


整理されている。


番号まで振られている。


「鍛冶屋は鉄を作るだけではない。どこに何があるか把握するのも仕事だ」


誠司は感心した。


物流も同じだ。


運ぶだけではない。


預かる。


整理する。


管理する。


それも仕事だ。


ガランは余った木材をいくつか譲ってくれた。


「受付所に棚を作れ」


そう言って。


その日の帰り。


誠司は水車町の受付所へ木材を運び込んだ。


少女。


受付の若者。


ロウグ。


みんなで簡単な棚を組み立てる。


村別。


町別。


砦行き。


急ぎ便。


仕切りを作る。


見た目は粗末だ。


だが機能的だった。


荷物がどこにあるか、一目で分かる。


少女は完成した棚を見て嬉しそうに笑った。


受付の若者も胸を張る。


ロウグは腕を組んで頷いた。


「立派な倉庫です」


「倉庫ってほどじゃないだろ」


「最初は皆そう言います」


その夜。


受付所の横には新しい木札が掛かった。


満タン便 集荷所


誠司はそれを見て少し驚いた。


「誰が作った?」


少女が手を挙げた。


受付の若者も手を挙げた。


どうやら二人で作ったらしい。


文字は歪んでいる。


だが気持ちは伝わる。


誠司は思わず笑った。


「ありがとう」


少女は照れくさそうに顔を逸らした。


翌朝。


帳面を開く。


新しい文字が浮かんでいた。


満タン便:第一集荷所登録完了


誠司は思わず天井を見上げた。


「登録好きだな、お前」


もちろん帳面は答えない。


だが文字は続いていた。


運行安定度 上昇


新規機能 解放条件達成


誠司の動きが止まる。


「……ん?」


ロウグが覗き込む。


「どうしました?」


誠司は帳面を閉じた。


見せる気はない。


だが胸がざわつく。


今までの文字とは違う。


明らかに違う。


運行安定度。


新規機能。


そんな言葉は初めてだった。


その時。


荷台の方から小さな音が聞こえた。


カチリ。


何かが動く音。


誠司は急いでトラックへ向かった。


荷台を開ける。


飲料ケース。


棚。


工具箱。


いつもと変わらない。


……いや。


違う。


荷台の奥。


これまでただの壁だった場所に、小さな扉のような継ぎ目が現れていた。


「なんだ……これ」


誠司は思わず呟く。


毎朝満タンになる不思議なトラック。


その秘密が、少しだけ姿を見せ始めていた。

第14話では満タン便に初めて「仲間」が増えました。


山の集落の少女と水車町の受付係によって、配送だけでなく仕分け・集荷の仕組みが整い始めます。


そしてラストでは、これまで沈黙していた補充トラックそのものに変化が発生。


次回はついに、トラックの新機能と秘密に踏み込みます。

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