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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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第13話 中継所の三人

北砦補給路に設置したばかりの中継所。

そこから早速、救援要請が届いた。

保護されていたのは、遠い街から来た三人の旅人だった。

帳面に浮かんだ文字を見て、田村誠司はすぐに荷台を開けた。


北砦中継所より救援要請。旅人三名、保護中。食料不足。


「昨日作ったばかりだぞ……」


呟きながらも、手は動いていた。


水。


スポーツドリンク。


硬いパン。


干し肉。


包帯。


念のため薬草。


ロウグは帳面を覗き込み、顔を引き締める。


「中継所が機能したということです。急ぎましょう」


誠司は頷いた。


今回は砦まで行く必要はない。


水車町と北砦の中間にある古い番小屋。


昨日、赤い布を立て、水と包帯を置いた場所だ。


助手席にはカイルが乗った。


彼はすっかり満タン便の砦担当のようになっている。


「中継所、近い。でも森、危険」


「分かってる」


トラックは朝の水車町を出た。


町の人々はもう、緊急便の出発に驚かなくなっている。


受付所の若者が、通常配送遅延の札を手早く掛けた。


満タン便の仕組みが、少しずつ周囲に根づいていた。


森の道は静かだった。


昨日打った赤い布の目印が、木々の間で揺れている。


それだけで、ずいぶん走りやすい。


知らない道ではなくなったからだ。


中継所に着くと、扉の前に砦の兵士が一人立っていた。


誠司たちを見るなり、ほっとした顔になる。


中には三人の旅人がいた。


一人は年配の男。


一人は若い女性。


もう一人は十二、三歳ほどの少年。


服装は村人とも商人とも違う。


上質だが汚れている。


荷物はほとんどない。


襲われて逃げ込んだのだろう。


カイルが兵士から事情を聞く。


「街道で魔物。馬車、壊れた。護衛、砦へ知らせに行った。三人、ここで保護」


誠司は頷き、まず水を渡した。


三人は冷たさに驚く余裕もないほど喉が渇いていた。


少年は一気に飲もうとしたので、誠司は手で制した。


「ゆっくり」


言葉は通じなくても、動作で伝える。


女性が少年の背を撫で、何度も頭を下げた。


年配の男は水を飲んだあと、誠司のトラックを見て目を細めた。


ただ驚いているだけではない。


観察している目だった。


ロウグが少し遅れて馬で到着した。


彼は三人を見るなり、表情を変えた。


「……これは」


「知り合いか?」


「直接ではありません。ですが、あの紋章は見覚えがあります」


ロウグは女性の外套に刺繍された小さな紋章を指した。


「川向こうの大きな町、リーベルの商会印です。かなり大きな商会ですよ」


年配の男がロウグの言葉を聞き、立ち上がった。


二人は商人同士らしく、早口で話し始める。


しばらくして、ロウグが誠司に向き直った。


「この方はリーベル商会の番頭、ノルド氏。女性は商会主の娘、エレナ様。少年は従者です」


「大物か」


「ええ。かなり」


ノルドは深く頭を下げた。


そして、依頼を出した。


水車町まで運んでほしい。


できれば、そこからリーベルへ戻る道も相談したい。


誠司は少し迷った。


人員搬送は緊急時のみ。


付き添い必須。


今回は負傷者ではないが、保護対象だ。


荷台に三人を乗せるには準備が必要になる。


「水車町までは運ぶ。ただし、荷台は揺れる。座って、固定して、勝手に立たない」


ロウグが訳す。


ノルドはすぐに頷いた。


エレナも落ち着いている。


少年だけが、トラックに乗ることへ不安そうな顔をしていた。


誠司は荷台に毛布を敷き、荷物棚の空き区画を人が座れるように整えた。


カイルが付き添いとして荷台に乗る。


ロウグは助手席。


帰り道、魔物の影は出なかった。


だが、荷台からは時折、小さな驚きの声が聞こえた。


エンジンの振動。


速さ。


窓のない荷台の金属音。


どれも彼らには未知なのだ。


水車町に着くと、町の人々がざわめいた。


リーベル商会の者が満タン便で運ばれてきた。


それだけで、新しい噂になる。


ノルドは降りるとすぐ、誠司に正式な礼を述べた。


そして、かなり重そうな革袋を差し出す。


誠司は中を見て固まった。


銀貨が多い。


「多すぎる」


ロウグが訳すと、ノルドは首を振った。


「命の対価としては少ない、と言っています」


誠司は困った。


命に値段をつける仕事はしたくない。


だが完全に拒むと、相手の面子を潰す。


結局、誠司は半分だけ受け取り、残りは中継所の維持費として使うよう提案した。


ロウグが訳すと、ノルドは驚き、やがて笑った。


「なるほど。道を守るために使う。良い考えだ、と」


これで中継所に食料、毛布、薬を置ける。


救える人が増える。


それなら金を受け取る意味がある。


その日の夕方、エレナが受付所に来た。


彼女はまだ若いが、目に強い光があった。


ロウグを通して、誠司に尋ねる。


「満タン便は、リーベルまで来る気はありますか?」


ロウグが少し緊張した顔になる。


リーベルは大きな町らしい。


商会が多く、荷物も金も動く。


そこへ行けば仕事は増える。


だが同時に、満タン便はもっと大きな力に見つかる。


誠司は即答しなかった。


「今の配送路を守るのが先だ」


ロウグが訳すと、エレナは少し驚き、それから微笑んだ。


「では、道が繋がった時に改めて、と」


彼女は一枚の木札を差し出した。


リーベル商会の通行証。


それがあれば、リーベルへ入る時に役立つという。


誠司は受け取った。


新しい道の鍵のように感じた。


翌朝。


帳面に新しい文字が浮かんでいた。


遠方候補:川向こうの商都リーベル。未接続。


誠司はため息をついた。


「未接続、ね」


つまり、まだ行くなということか。


あるいは、道を作れということか。


ロウグが横から覗き込み、楽しそうに笑った。


「ついに商都ですか」


「まだ行かない」


「ええ、まだ、ですね」


その言い方が妙に気になった。


満タン便の噂は、中継所で救った三人を通じて、さらに遠くへ届くだろう。


便利な配送屋。


毎朝満タンの鉄の車。


冷たい飲み物。


危険路を走る補給便。


良い噂だけならいい。


だが、価値あるものには必ず欲も集まる。


誠司は荷台を見た。


満タンの飲み物。


整えられた棚。


人を乗せるための毛布。


そして、増え続ける配送路。


「まずは足元を固める」


そう呟き、帳面を閉じた。


その時、受付所の若者が駆け寄ってきた。


「水車町の粉袋、北砦行き。鍛冶町の金具、今日中。あと、山の集落から赤い実の追加です」


ロウグが訳す前に、誠司は何となく意味を理解した。


今日も忙しい。


商都はまだ遠い。


だが、道は確実にそちらへ伸び始めていた。


誠司は運転席に乗り込み、エンジンをかける。


満タン便は今日も、今つながっている道を走る。


遠い町へ向かうのは、その道をちゃんと守れるようになってからだ。

第13話では中継所が初めて人命救助に役立ちました。

保護した旅人を通じて、商都リーベルという大きな目的地が登場。

ただし誠司は急がず、今ある配送路を守ることを選びます。次回は商都の噂が広がる前に、足元の運営強化です。

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