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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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132/156

第132話 作らないための製造票

水車町の零番に埋まっている、二枚のRCV-0受入基準板。

それらは。

現在、日本側特装工場で高瀬圭介が起案した図面から。

これから製造され。

満タン便の初回納車より前の水車町へ送られる予定です。

けれど製造開始条件は、

初回納車便運行者――本人受任


高瀬はまだ、その役目を引き受けていません。

地面には、完成品がある。

図面もある。

作る工場もある。

それでも。

本人が「はい」と言う前に、鉄板一枚作ってはいけない。

ならば工場は。

未来に必要だと分かっている物を、どこまで準備していいのでしょうか。

「材料も切らないでください」

朝。

水車町配送所。

日本側特装工場から。

一枚。

照会が来ていた。

RCV-0受入基準板

設計――完了

製造開始――本人受任待ち

製造準備として、材料確保を実施してよいか。


ガランが。

首を傾げる。

「作らないなら、材料くらい置いといてもいいだろ」

「場合によります」

誠司は答えた。

「その材料を確保したことで、別の仕事へ使えなくなるなら」

それは。

もう。

半分。

発注している。

必要になる。

かもしれない。

だから。

材料を棚から抜く。

担当者を予定に入れる。

加工台を空ける。

運送枠を取る。

すると。

まだ本人が。

引き受けてもいない仕事なのに。

周りが。

その仕事を前提に動き始める。

「結果として」

ロウグが言う。

「断りづらくなる」

「はい」

高瀬が辞退した。

でも。

材料は確保済み。

工場枠も予約済み。

発送便も確保済み。

そうなれば。

誰も言わなくても。

“ここまで準備したのに”。

が生まれる。

「未来に完成品があるから」

サーラが言う。

「余計に」

「はい」

だから。

先に。

準備。

の意味を。

分ける。

*

ちょうど。

西方共同便に。

似た問題があった。

乾季前。

水樽用。

交換弁。

例年。

壊れる。

だから。

今年も。

十個。

必要になる。

可能性が高い。

去年。

実績。

八。

一昨年。

九。

今年。

水場。

増えた。

「十個作っておく?」

ガランが尋ねる。

西方側。

まだ。

正式な交換依頼。

出していない。

現物。

使える。

「去年と同じなら」

若い仕分け係が言う。

「先に作ったほうが早いです」

「では」

誠司は。

三段階に分けた。

予測


製造準備


製造指示


予測。

今年、交換弁十個前後が必要になる可能性。


これは。

書いていい。

製造準備。

図面確認

必要材料量確認

加工時間確認

代替品確認


ここまで。

物を。

動かさない。

製造指示。

材料出庫

加工開始

完成品登録


これは。

正式依頼後。

「材料を棚から出したら」

ロウグが言う。

「製造指示」

「原則そうします」

予約。

と言いながら。

物理的に。

材料を。

別用途から。

取り上げない。

*

試す。

西方用。

交換弁。

図面。

ある。

鉄。

必要量。

一個。

小。

十個。

作れば。

鉄材。

そこそこ使う。

現在。

同じ鉄材。

東方の。

橋金具にも。

必要。

「十個分」

ガランが言う。

「確保したら、東方橋の補修材が減る」

「なら確保しません」

予測。

だけ。

棚の。

現在在庫。

記録。

使用可能鉄材――三十二単位


将来予測。

西方交換弁――最大十二単位想定


東方橋。

予定――十八単位


その他。

通常修理――最低八単位保持


合計。

三十八。

足りない。

「先に西方用で囲ったら」

サーラが言う。

「東方橋が止まる」

でも。

西方。

実際に。

十個。

壊れるとは限らない。

「だから」

誠司が言う。

「予測は在庫を動かさず、調達判断に使います」

鉄材。

追加。

共同調達。

六単位以上。

通常便で。

取り寄せる。

これは。

西方専用品ではない。

共通材。

「未来の仕事のために」

ロウグが言う。

「専用物を作らない。でも、全体の余裕は増やす」

「はい」

これなら。

西方の交換が。

三個で済んでも。

鉄材は。

別へ使える。

高瀬が。

初回納車を。

辞退しても。

無駄にならない。

*

新しい票。

条件付製造準備票


項目。

製造対象


製造条件


現在状態――未発注


設計――可/不可


必要材料確認――可/不可


共通在庫補充――可/不可


専用材料確保――可/不可


材料切断・加工――禁止/許可


工員拘束――禁止/許可


運送枠確保――禁止/許可


条件不成立時――自動失効


最後。

本票は製造指示ではない。


ガランが。

最後を二度読む。

「でかく書け」

「そうします」

赤。

作る票ではありません。


「分かりやすい」

*

RCV-0。

適用。

製造対象――受入基準板一組


製造条件――初回納車便運行者本人受任


現在。

未成立


設計。

完了済み


必要材料確認。

可


共通在庫補充。

可


専用材料確保。

不可


材料切断。

不可


加工。

不可


工員予定拘束。

不可


発送枠確保。

不可


条件不成立。

設計のみ保存


「これなら」

サーラが言う。

「辞退しても、残るのは図面だけ」

「はい」

図面。

将来。

別用途。

あるかもしれない。

記録として。

残す。

でも。

物。

作らない。

*

日本側工場へ。

返答。

RCV-0について、条件付製造準備のみ了承。

本人受任前の専用材料確保、切断、加工、作業枠固定、発送予約は行わないことを希望。


工場。

少しして。

了承。


さらに。

当工場でも「製造準備」と「製造指示」を分離します。


「向こうでも」

若い仕分け係が言う。

「今まで分かれてなかった?」

「たぶん実務上は分かれていたと思います」

誠司が答える。

ただ。

時間をまたぐ仕事では。

“予定”。

という言葉が。

強くなりすぎる。

未来で完成している。

だから。

予定。

予定だから。

準備。

準備したから。

実行。

そうやって。

本人意思が。

途中で。

消える。

だから。

わざわざ。

書く。

*

工場返答。

続き。

RCV-0材料確認を実施。


「材料確認はする」

ガランが。

少し嬉しそう。

「設計上の必要量だけです」

材質。

耐候性。

埋設。

荷重。

腐食。

基準。

日本側の。

普通の工業材。

厚板。

二枚。

「特殊金属じゃない?」

特殊材――不要


一般構造用鋼材で製造可能


「なら」

ロウグが言う。

「共通在庫で作れる」

ところが。

次。

推奨支給材――一件あり。


誠司が。

手を止める。

推奨。

必要。

ではない。

新規材料を使用せず、再使用材を優先可能。


ガランが。

乗り出す。

「何の再使用材だ」

表示。

車両M-001

特装終了時撤去材


全員。

黙る。

「満タン便?」

ロウグが。

ゆっくり読む。

*

詳細。

車歴C搬入後。

完成検査。

特装設備役目終了処理時に取り外す一般鋼材のうち、規格適合材をRCV-0へ再使用可能。


ガランが。

赤い満タン便の方を見る。

「どこだ」

誠司は。

すぐに。

部位照会を止める。

「今は聞きません」

「なぜ」

「まだ製造条件が成立していません」

どの部品。

何センチ。

どう外す。

そこまで。

調べ始めれば。

今ある満タン便を。

“RCV-0の材料”。

として見ることになる。

まだ。

その役目は。

存在しない。

「材料候補」

誠司が言う。

「までです」

高瀬が。

受任した。

そのあと。

工場が。

本当に。

再使用材を使うか。

判断する。

状態。

悪ければ。

新品。

使えばいい。

「じゃあ」

ガランが。

少し不満そうに。

赤い車を見る。

「今の車に、板になる鉄があるかもしれん」

「かもしれません」

「だけ」

「はい」

*

再使用。

考え方。

水車町でも。

普通にある。

壊れた荷車。

使える板。

外す。

橋修理。

使える金具。

洗って。

別に使う。

ただし。

“未来で再利用する予定”。

だから。

今の部品を。

温存する。

のは。

違う。

「満タン便の安全に必要なら」

誠司が言う。

「今、部品を交換します」

「未来のRCV-0材料が減っても?」

「はい」

車の。

現在安全。

優先。

未来の再使用材は。

余ったら。

使う。

逆ではない。

再使用材原則

現在運用の安全・修理を制限してまで、将来再利用材を保存しない。


ガランが。

大きく頷く。

「それならいい」

*

このルール。

すぐ。

実例。

北方。

古いそり。

床板。

一枚。

割れ。

交換。

古板。

端。

半分。

まだ使える。

以前なら。

「何かに使える」。

で。

工房裏。

積みっぱなし。

増える。

「再使用候補」

札。

付ける。

でも。

期限。

一運行月。

用途が。

決まらなければ。

薪。

補修小片。

通常資材へ。

戻す。

「未来の何かのため」

を理由に。

倉庫を。

埋めない。

再使用候補――用途未定


専用確保――なし


通常利用――可


「これ」

サーラが言う。

「場所にも余白を残せますね」

「はい」

物にも。

無役目時間。

ただし。

放置時間ではない。

次の用途を。

無理に。

決めない。

*

午後。

第一最終帰還便。

準備。

続く。

満タン便。

外装。

洗わない。

「泥、落とさない?」

ガランが尋ねる。

「安全確認に必要な範囲だけ」

長年の。

汚れ。

全部。

そのまま。

では。

腐食。

見えない。

だから。

車体下。

点検部。

泥。

落とす。

でも。

傷。

塗装。

修理痕。

磨いて。

消さない。

「工場へ返すから綺麗にする」

ではない。

現状を。

見せる。

雪板。

運転席。

操作。

再確認。

構内。

動かさない。

ペダル。

遊び。

変速。

駐車制動。

灯火。

警告。

異常。

なし。

主鍵。

返却。

予備鍵。

確認。

直人が返した。

あの鍵。

今。

正式に。

車両付属として。

二本。

揃っている。

主鍵――一

予備鍵――一

最終返却時引渡予定


「予備鍵」

直人が。

たまたま。

車両返却所を。

通った時。

少し。

立ち止まる。

誠司が。

説明を。

求めない。

直人自身が。

尋ねる。

「一緒に返るんですね」

「はい」

「もう俺の鍵じゃない」

「はい」

直人。

少しだけ。

笑う。

「よかった」

それだけ。

行く。

*

準備率。

三十三パーセント


ガランが。

数字を見る。

何も言わない。

誠司が。

逆に。

見る。

「言わないんですか」

「言ったら怒るだろ」

「怒ってません」

「そうか?」

ロウグが。

笑いを。

堪えている。

*

夕方。

日本側工場。

高瀬から。

本人限定連絡。

現在。

K2D-0713車歴A保管担当。

人員帰着当番は。

まだ。

辞退継続。

RCV-0条件付製造準備票を確認しました。


続く。

本人受任前に材料を専用確保しないことに賛成します。


その下。

一点、確認したいです。


自分が初回納車便を辞退した場合、

RCV-0設計票はどうなりますか。


誠司。

返答。

廃棄しません。

「未採用設計」として保存します。

後任候補が受任した場合、同じ設計を採用するかは改めて判断します。

あなたが設計したという理由で使用を強制しません。


返答。

少しして。

分かりました。


さらに。

それなら、設計したこと自体は後悔しなくて済みます。


誠司が。

その文を。

静かに読む。

作った図面。

イコール。

引き受ける約束。

ではない。

準備した。

イコール。

やらなければならない。

でもない。

これも。

役目と。

人を。

分けることだった。

*

夜。

配送帳面。

第一配送記録。

開く。

第一配送記録・準備第一便

私は。

仕事を引き受けてもらう前に。

準備を終わらせておくのが親切だと思っていた。


三浦直人。

古い記録。

車を用意した。

鍵を用意した。

路線を用意した。

宿を用意した。

役目札も書いた。


そして。

候補者へ。

言った。

「いつでも出られます」


相手は。

紙を見た。

「もう、私の名前が書いてあります」


直人。

答えた。

「予定です」


「断ったら?」


「書き直します」


「車も?」


「別の人へ」


「宿も?」


「使わなければ空きます」


「材料も?」


直人は。

そこで。

答えられなかった。

すでに。

その便専用に。

工具。

部品。

燃料。

人員。

集めていた。

相手は言った。

「断っていいと言われても」

「断ったら、これ全部が無駄になるんですね」


一行。

空く。

私はそのとき。

“断れること”と。

“断りやすいこと”は。

同じではないと知った。


現在。

水車町。

条件付製造準備票。

本人受任前

設計――可

共通在庫確認――可

専用確保――不可

加工――不可

人員拘束――不可


第一配送記録。

最後。

約束の前に。

物を積みすぎないこと。

それも。

帰る余白でした。


*

その下。

日本側工場。

RCV-0。

新しい材料欄。

推奨支給材――車両M-001特装終了時撤去材


状態。

使用未決定


そこまでは。

夕方。

見た。

だが。

配送帳面が。

さらに。

一行。

開いた。

再使用材候補番号――M001-RF0


ガランが。

夜番の途中で。

止まる。

「RF0?」

照会せず。

まず。

車両側。

部品番号だけ。

確認。

満タン便。

現況部品一覧。

M001-RF0。

一件。

存在。

部位――表示制限中


「今の車にある」

ロウグが言う。

詳細。

撤去条件――車歴C搬入受領後


現在使用状態――有効


「安全部品か?」

誠司が。

そこだけ。

確認する。

現在運行安全に必要――はい


全員。

黙る。

だから。

今。

外せない。

当然。

未来の板を作るために。

現在の安全部品を。

外すことはない。

「交換予定?」

車歴C完成検査時――役目終了予定


さらに。

再使用適合見込――高


誠司は。

そこで。

詳細を閉じようとする。

まだ。

製造条件。

成立していない。

部位を。

知る必要はない。

だが。

一番下の。

既存履歴だけ。

表示された。

M001-RF0

製造元――水車町


「水車町?」

ガランが。

低く言う。

満タン便。

日本側で。

特装された車。

その現在安全に。

必要な部品の一つ。

M001-RF0。

製造元。

日本側工場ではない。

水車町。

製造日。

未到来


現在。

満タン便に。

すでに。

付いている。

なのに。

水車町では。

まだ。

作っていない。

そして。

その部品は。

満タン便が。

日本側工場へ帰ったあと。

役目を終え。

取り外され。

二枚のRCV-0基準板へ。

再加工される予定。

つまり。

零番の地面に埋まっている鉄板は。

将来。

満タン便から外される材料で。

作られる。

そして。

その満タン便に付いている元の部品自体も。

さらに別の未来で。

水車町が。

これから作ることになっていた。

最後。

M001-RF0

水車町製造指示――未発行。


今。

満タン便を安全に走らせている一つの部品。

その製造票は。

まだ。

この水車町のどこにも。

存在していなかった。

RCV-0の設計図は完成していますが、初回納車便の運転者本人がまだ受任していないため、日本側工場では製造を開始できません。

今回、水車町では「準備」という言葉が本人への圧力にならないよう、

予測

条件付製造準備

製造指示

を明確に分離しました。

本人受任前でも、

図面確認。

必要材料量の確認。

共通在庫の補充。

までは可能。

しかし、

専用材料の確保。

材料の切断。

加工。

作業員の拘束。

発送枠の予約。

は行いません。

「断れる」と書くだけではなく、断っても周囲へ大きな損失を発生させない状態を保つためです。

そしてRCV-0には、新品の鉄ではなく、満タン便が日本側工場へ最終帰還したあとに外される再使用材を使えることも判明しました。

ただし、その材料候補――M001-RF0は現在も満タン便の安全運行に必要な部品であり、今取り外すことはできません。

さらに新しい問題があります。

M001-RF0の製造元は――水車町。

しかも製造日は、まだ未来。

現在の満タン便にはすでに取り付けられているのに、水車町ではその部品を作る製造指示すら、まだ一度も発行していません。

満タン便を現在支えている部品の一つが。

これから水車町で、初めて作られることになっています。

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