第128話 ゼロ番の乗客票
満タン便の初回納車を行う運転者。
その人物は、車を水車町へ置いたあと。
運転者としてではなく――
一人の「普通の乗客」として、日本側特装工場へ帰る予定です。
その帰路に必要なのが、
人員共同便・乗客票
適用番号――0000
水車町乗継所ができるより前。
まだ「普通の乗客」という仕組みさえ存在しなかった時代の運転者へ。
現在の水車町から、帰るための一枚を送る。
けれど。
乗客票を作るだけでは、人は帰れません。
必要なのは。
到着した人を、誰かの役目や荷物としてではなく。
ただ一人の人として受け取れる場所です。
「先に、受入口を完成させます」
朝。
水車町乗継所。
誠司は。
昨日の表示を閉じた。
人員共同便・乗客票
適用番号――0000
発行元――水車町乗継所
発行時刻――未到来
適用時刻――水車町乗継所設立以前
発行確認者――未登録
ロウグが尋ねる。
「票を先に発行してはいけない?」
「帰る先がまだ仮設です」
今。
日本側との人員移動には。
満タン便の助手席系統を使っている。
雪板。
水車町へ来た。
小川健太郎。
日本側から来て。
日本側へ戻った。
正常。
しかし。
満タン便は。
最終返却準備に入った。
助手席系統も。
新規旅客受付。
停止済み。
「車がなくなったあとも」
サーラが言う。
「人だけ来られる場所が必要」
「はい」
以前から。
計画していた。
水車町固定人員受入口
それを。
作る。
*
場所は。
水車町乗継所の隣。
運行者一時帰着所とは。
壁一枚。
離す。
「繋げない?」
ガランが。
図を見る。
「扉一個で行けたほうが便利だろ」
「扉は作ります」
誠司が答えた。
「でも入口は分けます」
運行者一時帰着所。
仕事を終えた運転者。
救援。
帰還。
役目札。
事故。
そうした人を。
受ける場所。
水車町乗継所。
普通の人。
訪問。
旅行。
家族。
見学。
何も役目を持っていない人。
「入口を一つにすると」
サーラが言う。
「来た人を最初に“何の仕事ですか”って聞くことになりますね」
「はい」
それを。
避ける。
普通の旅客。
まず。
名前。
体調。
荷物。
どこへ行きたいか。
必要なのは。
それだけ。
*
固定人員受入口。
大きな設備ではない。
二人掛けの。
長椅子。
転送直後。
立たなくていい。
手すり。
左右。
水。
小机。
荷物置き。
床。
滑りにくい板。
灯り。
強すぎない。
壁。
案内。
到着後、すぐに立つ必要はありません。
役目を持っていなくても利用できます。
行き先が決まっていない場合、乗継所当番へ申し出てください。
ガランが。
最後の文を見る。
「行き先未定でもいいのか」
「はい」
世界を越えて。
来る。
だから。
必ず。
どこかへ行かなければ。
ではない。
休んで。
考える。
満宿へ行く。
そのまま。
帰る。
それも。
本人が決める。
*
そして。
最も大事な区画。
到着線。
床へ。
円を描かない。
魔法陣でもない。
鉄の細い枠。
一人分。
中央。
椅子。
人員線の。
固定受入位置。
既存の始発照会口から。
地下。
細い線路のような。
古い導線が。
延びていた。
水車町配送所を。
整備したとき。
使途不明。
として残していたもの。
「これが人員線?」
ガランが。
床板を外して。
確認する。
銀色。
古い。
途中。
二箇所。
切れている。
「今まで反応しなかった」
ロウグが言う。
「条件が足りなかったみたいです」
始発照会。
表示。
固定人員受入系統
起動条件
一、普通人員乗客票――運用開始
二、役目を持たない乗客の往復実績――一件以上
三、水車町側固定受入設備――安全確認
四、到着後役目自動付与――無効
二。
すでに。
ある。
小川健太郎。
始発訪問便第一号。
日本側。
水車町。
日本側。
仕事。
なし。
救援。
なし。
帰還役目。
なし。
普通の乗客。
「小川さんが来たことが」
若い仕分け係が言う。
「設備の条件になってる」
「来たことより」
誠司が言う。
「帰れたことです」
片道ではない。
往復。
本人意思。
両方。
確認済み。
*
切れている導線。
ガラン。
接続。
ただし。
直接。
つなげない。
間に。
二つ。
遮断具。
一つ。
水車町側。
一つ。
人員受入口側。
「二つ?」
「片方だけ壊れても止められるようにする」
水車町側。
始発照会。
人員線。
事故。
異常。
その場合。
受入口だけ。
切れる。
配送帳面。
通常便。
止めない。
逆。
配送所側が。
作業中。
受入口を。
独立して安全停止。
できる。
「一つの故障で全部止めない」
ガランが言う。
「はい」
いつもの。
考え方だった。
*
設備を作っても。
いきなり。
人を通さない。
試験。
第一。
空。
「空を送る?」
「接続確認です」
日本側工場。
人員受入口。
受信準備。
水車町。
送受信。
双方。
無人。
起動。
薄い白。
椅子。
変化。
なし。
固定人員線・空系統確認――正常
第二。
荷重。
人間と同じではない。
麻袋。
砂。
六十キロ。
椅子。
固定。
「これを日本へ?」
「人員線診断用です」
通常荷物として。
使わない。
日本側。
確認。
開始。
白い光。
袋。
消える。
日本側。
試験荷重――到着
重量。
六十。
外装。
異常なし。
そして。
戻す。
水車町。
到着。
六十。
異常なし。
固定人員線・荷重往復確認――正常
第三。
温度。
水。
薄い容器。
人体温度に近い。
ただし。
中身。
水。
移動後。
変化。
許容内。
第四。
緊急停止。
転送。
開始前。
片側遮断。
実行不可
正常。
第五。
双方遮断。
異常表示。
正常。
「人は?」
リアが尋ねる。
「今日は乗せません」
既に。
人員線そのものは。
三浦直人。
小川。
人で。
実績がある。
新しいのは。
固定受入口。
そこに。
設備のためだけに。
誰かを。
世界越えさせる必要はない。
診断。
十分。
*
最後。
到着後。
受入手順。
模擬。
人。
イオ。
ただし。
転送しない。
椅子へ。
座った状態から。
開始。
リア。
「聞こえますか」
「はい」
「お名前」
「イオ」
「めまい」
「ないです」
「立ちたいですか」
「……立っていいですか」
「まだ待ってください」
二分。
体調。
問題なし。
荷物。
一個。
本人確認。
そのあと。
起立。
歩行。
水。
乗継所。
到着記録。
到着――確認
「受領」
とは。
書かない。
「誰の持ち物にもならない」
サーラが言う。
「はい」
*
固定人員受入口。
安全確認。
完了。
水車町固定人員受入系統
設備――完成
人員実運用――未実施
過去人員往復実績――小川健太郎一件
固定系統使用開始――可能
ただし。
満タン便返却前に。
無理に。
通常旅客便を。
増やさない。
「開業?」
ロウグが尋ねる。
「限定運用です」
新規。
世界間普通旅客。
希望が来たら。
一件ずつ。
安全確認。
今。
まだ。
運賃。
貨幣交換。
宿泊。
滞在規則。
未整備。
だから。
大量に。
受けない。
固定人員受入口
試用運用
いつもの。
第0版。
考え方。
*
これで。
乗客票0000。
発行条件。
すべて。
揃った。
発行条件
水車町固定人員受入系統――完成
役目を持たない乗客往復――実績あり
初回納車便・帰着代替経路――成立
表示。
発行可能
ロウグが。
薄い紙を。
一枚。
机へ置く。
「誰の名前を書きます?」
「書きません」
「乗客票なのに?」
「今は原票です」
ここ。
新しく。
分ける。
乗客票原票
と。
使用乗客票
原票。
まだ。
誰のものでもない。
日本側工場へ。
送る。
将来。
初回納車運転者が。
本人意思で。
役目を引き受ける。
そのあと。
本人確認。
本人呼称。
帰着希望。
その時。
初めて。
使用乗客票にする。
「未来の候補者の名前を」
サーラが言う。
「今の水車町で先に書かない」
「はい」
未来記録に。
候補がいる。
それでも。
空欄。
人員共同便・乗客票原票
番号――0000
本人呼称――未割当
出発地点――水車小屋北側荷置場・仮帰着口
希望到着地点――日本側特装工場・人員受入口
本人意思――使用時確認
役目――なし
乗車時役目付与――なし
到着後役目付与――なし
携行品――使用時記入
帰着確認――使用時記入
雪板が。
じっと見る。
「本当に、ただの乗客票ですね」
「そうします」
初回納車の。
運転者。
でも。
車を。
正式に引き渡した瞬間。
それは。
終わる。
帰り道で。
“初回納車運転者”。
と書かない。
一人の。
乗客。
*
「発行確認者」
ロウグが。
最後の空欄を見る。
未登録
サーラが。
少し考える。
「一人を決めます?」
誠司は。
首を横に振った。
「乗継所が続く限り使える仕組みにします」
誰か一人。
いないと。
乗客票を。
発行できない。
それでは。
また。
役目が。
人へ貼りつく。
発行主体。
水車町乗継所
発行確認。
当番二名
「二名?」
「一人が票を作って、一人が確認」
本人名。
その日の。
当番記録に残す。
永久権限者。
作らない。
「今日なら」
サーラ。
乗継当番。
ロウグ。
記録当番。
二人。
誠司は。
確認者に入らない。
帰還基準者。
満タン便返却準備。
すでに。
役目が多い。
「俺は見ます」
「押さない?」
「はい」
*
原票。
一行ずつ。
読む。
サーラ。
本人欄。
空白。
確認。
ロウグ。
便区分。
普通人員。
確認。
サーラ。
荷物扱い。
ではない。
確認。
ロウグ。
到着後役目。
なし。
確認。
最後。
発行主体――水車町乗継所
発行確認――当番二名
サーラ。
印。
ロウグ。
印。
乗客票0000
原票発行――完了
配送帳面。
静かに。
光る。
初回納車便・予備帰着経路
未登録
↓
確保済み
そして。
初回納車便・運行者帰着
状態――未実施
帰着手段――確保済み
救援対象――いいえ
現在。
本人は。
まだ。
日本側工場。
出発していない。
でも。
出発する前に。
帰り道は。
用意された。
*
「この紙」
ガランが尋ねる。
「どうやって工場へ送る?」
ここも。
決める。
乗客票0000。
原票。
普通の手紙。
ではない。
初回納車便の。
帰着設備。
一部。
しかし。
原鍵のような。
権限物でもない。
「第一最終帰還便に載せます」
誠司が言う。
雪板が。
満タン便を。
日本側工場へ。
返す。
その時。
工場が。
車を受け取る。
その後。
初回納車へ。
必要になるもの。
だから。
第一最終帰還便・付帯文書
人員共同便・乗客票原票0000
ただし。
満タン便内部の。
運行記録槽へ。
入れない。
別。
封筒。
車両書類。
工場搬入時。
車両と。
一緒に。
引き渡す。
「受取確認も別?」
「はい」
車両――受領
運行記録――受領
乗客票原票0000――受領
三つ。
どれか。
足りなければ。
不足として。
記録。
車自体を。
受け取れない。
とは限らない。
でも。
初回納車準備。
開始不可。
「混ぜない」
ロウグが言う。
「はい」
*
原票。
封印。
ただし。
内容を。
秘密にするためではない。
未割当欄へ。
勝手に。
名前を書かれないように。
外装。
乗客票原票0000
本人未割当
工場受領後も、本人受任前に氏名記入禁止
「誰かが未来記録を見て」
サーラが言う。
「候補者の名前を先に書かないため」
「はい」
封印番号。
P-0000。
水車町。
保管箱。
第一最終帰還便まで。
保管。
*
午後。
日本側工場へ。
連絡。
乗客票0000原票――発行完了。
第一最終帰還便に付帯文書として発送予定。
初回納車運行者本人受任前は未割当状態を維持願います。
返答。
了承。
続けて。
初回納車運行者候補本人へ。
本人限定。
予備帰着経路が確保されました。
乗客票0000は未割当で発行済みです。
あなたの氏名は記入していません。
現在の受任状態――保留
変更なし。
少しして。
返答。
確認しました。
その下。
自分の名前が入っていないことも確認しました。
雪板が。
それを見て。
小さく頷いた。
「大事ですね」
「はい」
候補者が。
一番。
見ている。
*
しかし。
本人から。
一つ。
質問。
日本側へ戻った時、誰が到着確認をしますか。
誠司が。
手を止める。
これまで。
帰路。
作った。
水車町側。
仮帰着口。
乗車。
日本側。
人員受入口。
到着。
だが。
日本側で。
誰が。
その人を。
受けるのか。
「工場の人員受入当番」
ロウグが言う。
「それを確認します」
日本側工場。
照会。
初回納車便運行者が乗客票0000で帰着する際の受入確認役を回答願います。
返答。
日本側特装工場・人員帰着当番
「役目で返ってきた」
サーラが言う。
個人名。
不要。
さらに。
初回納車便実施時の当番を、その時点で本人受任確認する。
正常。
しかし。
その下。
注意。
人員帰着当番は、初回納車便運行者本人と兼務不可。
「当然です」
ロウグが言う。
運転者は。
水車町側。
当番は。
日本側。
同時に。
両方。
できない。
誠司は。
初回納車運行者候補の。
現在役目を思い出す。
K2D-0713車歴A保管担当
「今の工場側人員帰着当番は?」
照会。
返答。
兼務担当――K2D-0713車歴A保管担当
全員。
黙る。
ガランが。
ゆっくり言った。
「同じ人か」
現在。
白いK2D-0713を。
保管している人。
その人は。
工場の小規模運用上。
人員帰着当番も。
兼務している。
そして。
同じ人物が。
初回納車便運行者候補。
「このままじゃ」
サーラが言う。
「自分を日本側で受け取らないといけない」
「できません」
当然。
不可能。
システムも。
表示。
役目競合――あり
*
初回納車便。
新しい。
出発条件。
一つ。
増える。
出発前条件
K2D-0713車歴A保管担当――引継ぎ完了
日本側人員帰着当番――別人受任
初回納車便運行者――本人受任
雪板が。
表示を。
長く見る。
「私と同じですね」
誠司も。
そう思った。
雪板。
返送庫。
第七管理人。
その役目を。
降ろすまで。
第三配送者を。
引き受けなかった。
今。
日本側工場の。
名前も知らない候補者も。
同じ。
白いK2D-0713を。
保管する人。
帰ってくる人を。
受け取る人。
そして。
満タン便の。
最初の納車運転者候補。
三つ。
持っている。
このまま。
出せない。
「先に」
誠司が言う。
「工場側の役目を降ろしてもらう必要があります」
「本人が運転を引き受けるなら」
ロウグが補足する。
まだ。
受任していない。
だから。
今すぐ。
引継ぎを命令しない。
まず。
説明。
*
本人限定照会。
初回納車便運行者候補本人へ。
現在役目との競合を確認しました。
あなたが将来、初回納車便を受任する場合、出発前に以下の役目引継ぎが必要です。
一、K2D-0713車歴A保管担当
二、日本側人員帰着当番
現在の役目を降りる意思がない場合、初回納車便を辞退できます。
現在の受任保留状態に変更はありません。
返答。
すぐには。
来ない。
当然。
自分の。
今の仕事。
それを。
降りる話。
未来の便。
候補だから。
と。
軽く決められない。
水車町。
待つ。
*
夕方。
固定人員受入口。
試用運用。
初日。
利用者。
ゼロ。
「誰も来ない」
若い仕分け係が言う。
「いいことです」
サーラが答えた。
設備は。
誰かを。
使わせるために。
作るわけではない。
必要なとき。
使える。
それでいい。
水。
交換。
灯り。
確認。
椅子。
異常なし。
手すり。
緩みなし。
遮断具。
正常。
固定人員受入口
日次点検――完了
普通の設備になっていく。
*
夜。
日本側から。
返答。
初回納車運行者候補。
説明確認しました。
続く。
現在の保管担当を、初回納車のためだけに今すぐ降りるつもりはありません。
誠司が。
頷く。
正しい。
まだ。
車歴A。
白いK2D-0713。
その人が。
保管中。
赤い満タン便。
まだ。
返ってもいない。
仕事。
途中。
車歴C最終受領まで、現在の保管担当を継続したいです。
つまり。
赤い満タン便が。
工場へ帰る。
白いA。
赤いC。
比較。
搬入受領。
そこまでは。
自分で。
見届けたい。
そのあと。
車歴C搬入受領後、保管担当の引継ぎ手続きを希望します。
さらに。
人員帰着当番も、同時期に後任を選定してください。
最後。
二つの役目を降りたあとで、初回納車便の受任を判断します。
雪板が。
静かに。
「順番が決まりましたね」
「はい」
工場。
赤い車。
受け取る。
役目。
引き継ぐ。
普通の自分になる。
そのあと。
初回納車便を。
引き受けるか。
決める。
帰る練習。
役目を降りる。
本人として決める。
水車町で。
何度も。
積み上げたものが。
日本側でも。
同じ形になり始めていた。
*
深夜。
配送帳面が。
新しいページを開いた。
第一配送記録・乗客零便
満タン便を最初に届けた運転者は。
車を置いたあと。
運転者ではなくなった。
三浦直人の。
古い記録。
私は、その人に言った。
「帰るなら、運転者票が必要です」
その人は首を振った。
「もう運転者ではありません」
「では、帰還者票?」
「帰還者でもありません」
直人は。
困った。
「じゃあ、何として帰るんですか」
運転者は。
答えた。
「人として」
一行。
空く。
私は、その言葉を帳面に書けなかった。
当時の帳面には。
荷物。
運転者。
救援者。
返送者。
そのどれでもない人を書く欄がなかった。
続く。
だから。
あの人の帰着は、長い間。
「未完了」のまま残った。
現在。
水車町には。
ある。
人員共同便・乗客票
何者でもない。
ではない。
ただ。
役目を付けずに。
人として運ぶ欄。
そして。
番号。
0000
第一配送記録。
終了。
*
その下。
現在記録。
乗客票0000原票――発行済み
本人割当――なし
第一最終帰還便付帯――予約済み
続いて。
初回納車便・運行者候補
現在役目――K2D-0713車歴A保管担当
兼務――日本側人員帰着当番
車歴C搬入受領後――役目引継ぎ希望
初回納車受任――保留
そこまでは。
本人の返答どおり。
しかし。
さらに。
工場側の。
引継ぎ準備欄が。
開いた。
K2D-0713車歴A保管担当
後任候補――二名
日本側人員帰着当番
後任候補――二名
「二人ずつ」
ロウグが。
深夜当番の机で。
読む。
詳細。
個人名。
非表示。
本人通知。
まだ。
していない。
ただ。
適性だけ。
表示。
保管担当。
一人目。
車両整備担当
二人目。
完成検査記録担当
人員帰着当番。
一人目。
工場安全担当
二人目。
SR-02帰着教育補助担当
「別々の人に分けられる」
サーラが言う。
現在の候補者が。
二つ。
兼務していた役目。
後任では。
それぞれ。
別の人へ。
渡せる。
また。
一人分の仕事を。
分ける。
その方針。
問題ない。
しかし。
一番下。
共通条件。
二役の後任選定に必要な立会人――一名
立会人。
候補。
表示。
水車町側からの参加可。
「水車町?」
ロウグが読む。
工場側の役目引継ぎ。
なぜ。
水車町側の人間が。
立ち会えるのか。
詳細。
遠隔立会――可
条件
車歴Aと車歴Cの双方について、
運行上の差異を説明できる者。
ガランが。
後ろから。
画面を見る。
「俺か?」
車体。
整備。
改修。
それなら。
ガラン。
条件に近い。
しかし。
表示された候補は。
別だった。
遠隔立会候補――田村誠司
誠司の名前。
そして。
もう一行。
立会目的――後任選定ではない。
確認事項――「役目を降りた本人が、初回納車便を断ってもよい」ことの確認。
部屋が。
静かになる。
車の知識ではなかった。
役目を。
引き継いだあと。
空白になった人へ。
次の仕事を。
自動的に載せない。
それを。
水車町側から。
確認するため。
帰着標準。
九番目。
その立会。
誠司は。
表示を読む。
だが。
さらに。
その下に。
小さな補足。
遠隔立会候補――田村誠司
候補根拠――SR-02教材・第九項目作成者
誠司が。
眉を寄せる。
「作成者?」
第九項目。
帰着完了後、次の役目を直ちに引き受ける義務はない。
あれは。
誠司一人で。
作ったものではない。
水車町で。
みんなで。
作った。
実際。
誠司も。
そう記録していた。
「作成者欄が」
ロウグが。
詳細を開く。
水車町帰着標準・第0版
第九項目
発案――複数
文案記入――田村誠司
採用確認――水車町運行安全受付
作成者代表――田村誠司
「代表」
サーラが言う。
誠司は。
その表示を。
しばらく見る。
一人の仕事に。
したくなかった。
けれど。
外へ渡す記録では。
誰が。
説明責任を持つか。
代表が。
必要になることもある。
「立会は」
ロウグが尋ねる。
「受けますか」
誠司は。
すぐ答えなかった。
候補。
未来記録。
また。
自分の名前。
でも。
今度は。
運転でも。
発送でも。
車両所有でもない。
誰かが。
今の役目を。
ちゃんと降りたあと。
次を。
断っていい。
それを。
確認するための立会。
誠司は。
表示の最後を読む。
立会人本人意思――未確認。
まだ。
何も。
決まっていなかった。
水車町では、満タン便の助手席系統に依存しない固定人員受入口が完成しました。
人員転送そのものは既存実績があるため、新設備の確認では生きた人を試験に使わず、空系統・荷重・温度・遮断試験を実施。
小川健太郎による「役目を持たない普通の乗客の世界間往復」実績と合わせて、固定人員受入系統が試用可能となりました。
これにより、初回納車運転者の予備帰路に必要な、
人員共同便・乗客票0000
が正式発行されています。
ただし乗客本人の名前は空欄。
未来の候補者が役目を引き受ける前に、現在の水車町が勝手に名前を書かないためです。
また、乗客票0000の帰着先を確認したことで新しい問題も判明しました。
初回納車運転者候補は現在、
K2D-0713車歴A保管担当
であると同時に、
日本側人員帰着当番
も兼務しています。
そのまま初回納車へ出れば、自分自身の日本側帰着を自分で受け取らなければなりません。
そのため候補者本人は、
車歴Cの搬入受領までは現在の仕事を続ける。
その後、二つの役目を後任へ引き継ぐ。
役目をすべて降りてから、初回納車便を引き受けるか改めて決める。
と回答しました。
そして、その役目引継ぎには水車町側から一名、遠隔立会人を置くことができます。
現在表示されている候補は――田村誠司。
立会の目的はただ一つ。
役目を降りた本人が、その次の仕事を断ってもいいことを確認するため。
ただし誠司自身は、まだその立会を引き受けていません。




