↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
121/156

第121話 世界を越える普通便

日本側帰着当番――小川健太郎。


事故の日、田村誠司が残した配送を引き継ぎ、その後も日本側で帰着を受け取ってきた人物です。


誠司が自分の意思で「当面は水車町で暮らす」と決めたことで、小川の名前は初めて水車町へ開示されました。


そして小川は、次の照会を送ってきます。


日本側始発配送所→水車町乗継所


移動区分――普通の乗客


目的――田村誠司の私物一件を本人へ返却


救援でもない。


帰還でもない。


仕事でもない。


ただ、会いに行って、物を返し、また帰る。


満タン便配送網は初めて、「世界を越える普通の旅客」を運ぶことになります。

「小川を呼ぶ前に、帰りの便を作ります」


朝。


水車町配送所。


小川から届いた人員移動事前照会。


その横へ。


誠司は一枚の白紙を置いた。


ロウグが言う。


「まだ来てもいないのに?」


「来られることだけ確認して出したら」


誠司は答えた。


「帰れなくなるかもしれません」


日本側。


水車町側。


人員移動。


これまでにもあった。


三浦直人。


日本側から水車町へ。


ただし。


あれは。


第一配送者の帰着。


役目。


事故。


救援。


全部が絡んでいた。


今回の小川は。


違う。


「普通の乗客」


サーラが照会票を見る。


「本人がそう希望しています」


救援対象ではない。


帰還者でもない。


第三配送者でもない。


物資の付き添いでもない。


ただ。


自分の意思で。


別の場所を訪ねたい。


「なら」


誠司は書いた。


始発訪問便・乗客票


項目。


本人氏名

出発地点

希望到着地点


移動目的――記載任意


本人移動意思


滞在予定


帰路希望


帰路未確定時の滞在方法


体調上の注意


携行品


到着後の役目――なし


最後。


太くする。


到着後の役目――なし


「小川さんはSR-02の受講者でもありますよね」


ロウグが言う。


「日本側では」


「水車町では?」


「普通の乗客です」


SR-02。


見学。


帰着当番。


誠司の同僚。


そうした役目を。


人員移動票へ。


付けない。


水車町へ来たから。


何か働いてもらう。


でもない。


「雪板さんと同じですね」


サーラが言った。


「はい」


雪板も。


第三配送者候補でありながら。


水車町へ来た便では。


ただの乗客だった。


人を。


目的に縛って運ばない。


*


問題は。


帰り道。


小川は。


日本側で生活している。


水車町へ来る。


私物を返す。


それから。


日本へ戻るつもり。


だが。


「何日の予定です?」


ガランが尋ねる。


小川の照会。


滞在希望――一泊以上

上限――未定


「未定?」


「休みの日数を決めてないのか?」


誠司は。


日本側へ確認を送る。


返答。


早い。


日本側勤務調整――済み


予定休暇――三日

延長可能――一日


水車町滞在時間は、日本側経過時間と一定比率ではないため、帰路は時刻指定ではなく本人希望確認方式とする。


以前。


日本側。


四十八分。


水車町。


数時間。


固定ではなかった。


日付を。


強く約束できない。


だから。


「何日の何時までに戻す」


とはしない。


代わりに。


日本側帰路希望――本人が帰路申請した時点で照会


「それで勤務は大丈夫なんですか」


ロウグが尋ねる。


日本側返答。


帰路遅延時――日本側帰着当番代理配置済み


本人不在による配送停止――なし


誠司が。


その一文を見る。


小川も。


自分がいなければ。


営業所が止まる状態で。


来ようとしていない。


ちゃんと。


引き継いでいる。


「なら」


帰路票。


作る。


始発訪問便・帰路予定票


第一希望――日本側始発配送所


帰路判断――小川健太郎本人


水車町側送出地点――水車町乗継所


日本側受入――始発配送所人員受入


帰路未実施時――水車町満宿利用可


帰路不能時――本人安全確保後、再照会


「帰る日を決めるんじゃなくて」


サーラが言う。


「帰れる手順を先に決める」


「はい」


*


次。


人員経路。


日本側へ。


普通人員訪問に使用可能な経路を照会。


返答。


現在使用可能――一件


始発人員線


経由設備――満タン便・車両M-001助手席系統


水車町側受入――運行者一時帰着所隣接人員区画


三浦直人が。


日本側から。


水車町へ来たときと同じ。


満タン便の助手席系統。


ただし。


分類が違う。


以前使用――帰着人員


今回使用可能――訪問人員


「車は走らないんですよね」


雪板が確認する。


「走りません」


満タン便。


水車町車両返却所。


エンジン停止。


駐車制動。


車輪止め。


鍵。


返却所管理。


助手席だけが。


始発側との。


人員接続点になる。


だが。


問題。


満タン便は。


近いうち。


日本側へ最終返却する。


「車を返したら」


ロウグが言う。


「訪問便もなくなる?」


表示。


車両M-001最終返却後

始発人員線――固定受入設備へ移管予定


「予定」


ガランが嫌そうな顔をする。


「まだ設備がないな」


「なら今回の便を常設便とは扱いません」


誠司は言った。


今。


使える。


だから。


永遠に使えることにしない。


始発訪問便


現行経路――車両M-001助手席


将来経路――未整備


現在便限りの安全確認――必要


小川の便。


一回。


そのための経路。


将来。


普通の往来を続けるなら。


別に固定設備を作る。


「仮設橋と同じですね」


エレナが言う。


渡れる。


でも。


仮設だと書く。


永久橋のふりをしない。


*


人を。


いきなり通さない。


先に。


座席系統の確認。


満タン便。


助手席。


誰も座らない。


日本側。


同じ系統の受入席。


連絡。


二人確認。


小さな試験袋。


中身。


水一瓶。


布一枚。


総重量。


三キロ。


人員ではない。


ただし。


座席側の転送状態を見るため。


「荷物便として運ばない?」


若い仕分け係が尋ねる。


「経路試験です」


本番の。


私物輸送には使わない。


試験。


日本側から。


水車町側。


助手席。


一瞬。


白く。


光る。


試験袋。


到着。


封印。


一致。


水。


漏れ。


なし。


次。


水車町側から。


日本側へ。


同じ袋。


戻す。


日本側。


受領。


始発人員線・経路往復試験――正常


ただし。


人と袋。


同じではない。


だから。


人員転送については。


医療側の安全確認を。


別に行う。


リア。


三浦直人の転送記録。


確認。


転送後。


一時的な筋力低下。


めまい。


軽度。


休息で改善。


「小川さんにも」


リアが言う。


「到着後すぐ歩かせない」


助手席。


到着。


二分。


座位。


本人応答。


水。


必要なら。


移乗椅子。


そのあと。


本人が歩けると確認してから。


降りる。


「会うのは?」


「その後です」


誠司が答える。


仕事仲間。


久しぶり。


それでも。


到着直後に。


感動の再会をする必要はない。


まず。


人を。


安全に受け取る。


*


携行品。


一件。


小川が。


直接返したい。


誠司の私物。


始発訪問便では。


荷物と人を。


同じ記録にしない。


乗客――小川健太郎


携行品――個人携行一件


内容。


本人対面返却希望。


開封なし。


だが。


世界を越える。


何でも。


持ち込めるわけではない。


最低限。


危険物。


液体。


生物。


腐敗物。


火気。


薬品。


確認。


日本側。


小川からの申告。


紙・鍵類を含む個人用小包一件


液体――なし

火気――なし

生物――なし

腐敗性――なし

薬品――なし


開封検査――本人希望なし


「開けない?」


ガランが言う。


「危険物申告があり、外装異常がなければ」


誠司は答えた。


私物を。


異世界へ来るから。


全部見せろ。


とはしない。


安全に必要な範囲。


だけ。


水車町側でも。


外装。


封印。


異常。


確認。


中身は。


誠司本人へ返したあと。


本人が開ける。


*


小川へ。


正式便計画を送る。


始発訪問便・第一号


乗客――小川健太郎


区分――普通人員訪問


日本側出発――本人意思確認後


水車町到着――水車町乗継所扱い


到着後役目――なし


水車町側宿泊――満宿


日本側帰路――本人希望時に再確認


携行品――一件


受取人――なし

到着確認――水車町乗継所当番


返信。


確認しました。


その下。


小川本人。


「受取人なし」でお願いします。


誠司が。


少し笑う。


さらに。


田村さんが受取人になると、たぶん入口で待っているので。


ロウグが。


誠司を見る。


「待つつもりでした?」


「……少し」


「小川さんの読みが合ってます」


*


始発訪問便。


実施日。


水車町側。


大げさにしない。


荷物口。


普通に稼働。


西方便。


積み込み。


東方便。


受領。


南方。


薬草仕分け。


北方。


氷晶石。


満タン便だけ。


車両返却所。


転送用位置。


停止。


エンジン。


切。


運転席。


無人。


助手席。


空。


誠司は。


人員区画の外。


待機。


中へ。


入らない。


受入担当。


サーラ。


医療確認。


リア。


記録。


ロウグ。


車両。


ガラン。


「始発側、本人意思」


始発照会口。


小川健太郎


移動希望――確認


体調――問題なし


携行品――一件


日本側出発準備――完了


水車町。


受入準備――完了


最後。


本人へ。


再確認。


今から水車町へ移動しますか。


返答。


はい。


開始。


助手席の周囲。


薄い白。


以前。


直人が来たときと同じ。


一瞬。


座席が。


見えにくくなる。


光。


消える。


助手席に。


一人。


男が座っていた。


紺色の上着。


仕事着ではない。


小さな旅行鞄。


膝の上。


薄い包み。


小川健太郎。


*


「小川さん」


リアが声を掛ける。


「聞こえますか」


「はい」


「お名前を」


「小川健太郎です」


「現在地は」


一度。


周囲を見る。


「水車町……でいいんですよね」


「はい」


「吐き気」


「なし」


「めまい」


「少し」


「立たないでください」


「はい」


素直。


二分。


三分。


水。


一口。


「脚に力は?」


「入ります」


「あと一分」


「はい」


誠司は。


外から。


見ている。


小川も。


誠司に気づいている。


でも。


手を振らない。


先に。


受入手順。


四分。


リア。


起立許可。


助手席から。


降りる。


足元。


一度。


確認。


問題なし。


携行品。


本人保持。


外装。


異常なし。


始発訪問便・第一号


小川健太郎――水車町到着


受領。


ではない。


到着確認――完了


小川が。


その表示を見る。


「ちゃんとしてますね」


誠司が。


初めて近づく。


「小川」


「お疲れさまです、田村さん」


昔と。


同じ挨拶だった。


誠司も答える。


「お疲れ」


数秒。


二人とも。


それ以上。


言葉が出ない。


小川が。


先に周囲を見る。


「本当に水車あるんですね」


誠司が。


思わず笑った。


「そこから?」


「水車町って聞いても、田村さんが勝手にそう呼んでるだけかと思ってました」


「ちゃんと回ってる」


「ですね」


遠くで。


大きな水車。


ごとん。


ごとん。


回っている。


*


小川は。


そのまま。


誠司と話し込まなかった。


乗継所。


到着票。


満宿。


部屋。


荷物一。


自分で持つ。


昼食。


休息。


「預かり物は?」


誠司が尋ねる。


「夕方でいいですか」


「もちろん」


「せっかく来たのに」


小川が言う。


「着いてすぐ返して帰るのも、普通の乗客っぽくないので」


そのまま。


満宿へ。


「普通の乗客って」


ロウグが呟く。


「難しいですね」


「仕事を作らないことが?」


サーラが尋ねる。


「はい」


水車町へ来た。


日本側の人。


始発線を知っている。


帰着当番。


誠司の同僚。


聞きたいこと。


山ほどある。


それでも。


今日は。


到着した人。


休ませる。


*


午後。


小川は。


一人で水車町を歩いた。


案内役。


付けない。


ただし。


地図。


渡す。


水車町乗継所

満宿

食堂

共同井戸

配送所

立入制限区画


迷った場合――乗継所へ戻る


車両返却所。


勝手に入らない。


薬品保管。


入らない。


それ以外。


市場。


水車。


橋。


見てもいい。


小川は。


まず。


市場へ行った。


焼いた穀物菓子。


一つ買った。


貨幣。


持っていない。


そこで。


また問題。


「日本のお金、使えませんよね」


当然。


水車町の貨幣と。


日本円。


交換制度。


ない。


第一号旅客。


食事。


宿。


水。


最初から。


どうするか。


決めていなかった。


「満宿代は?」


サーラが。


頭を抱える。


救援者。


帰還者。


これまでは。


費用。


配送網負担。


でも。


普通の旅行者。


ずっと無料。


とはいかない。


「第一号は試験便として」


誠司が言う。


「宿と基本食は配送網負担で記録します」


ただし。


買い物まで。


無料にはしない。


小川は。


菓子を。


棚へ戻そうとした。


店主が。


笑う。


「一個なら食え」


「でも」


「代わりに日本の話をしろ」


「それ、商取引ですか」


「知らん」


結果。


小川。


菓子一。


話。


十分。


正式な貨幣交換ではない。


「記録は?」


ロウグが尋ねる。


誠司は。


首を横に振った。


「個人同士のやり取りまで、配送帳面へ入れません」


全部を。


物流にしない。


それも。


普通の訪問だった。


*


夕方。


満宿の小さな談話室。


小川。


誠司。


二人。


ロウグは。


記録係として。


同席しない。


私物返却。


個人のこと。


必要なら。


あとから。


物流上の事実だけ。


誠司が報告する。


小川が。


旅行鞄から。


薄い灰色の包みを出した。


日本の。


普通の封筒。


少し。


角が潰れている。


封。


透明なテープ。


「これです」


誠司が。


受け取る前に尋ねる。


「俺が渡した?」


「はい」


「事故の前日?」


「前日の帰着後です」


「何て言った」


小川が。


少し考える。


「最初は」


『ちょっと預かってくれ』


「それだけ?」


「俺が嫌だって言いました」


誠司が。


苦笑する。


「小川なら言うな」


「何か分からない物を預かりたくないので」


「それで?」


「田村さんが」


小川は。


当時の声を思い出すように言う。


「『自分の鍵だから危なくない』って」


鍵。


始発側申告。


紙・鍵類。


一致。


「それから」


小川が続ける。


「『明日、俺が返せって言っても返すな』って」


誠司の顔が。


少し変わった。


「俺が?」


「はい」


「理由は」


「『帰る場所を決める前に持つと、間違える』って」


誠司には。


記憶がない。


「それで」


「いつ返す?」


小川が。


答える。


「『俺が自分で帰る場所を決めたら』」


今。


決めた。


当面。


水車町で暮らす。


日本への移動権は。


残す。


だから。


小川は。


来た。


「受け取ります」


誠司が。


両手で。


包みを受け取った。


小川健太郎預かり品


本人返却――完了


物流帳面へ書くなら。


それだけ。


中身は。


個人のもの。


*


「開けます?」


小川が尋ねる。


「ここで?」


「どっちでも」


誠司は。


少し考え。


「ここで開けます」


テープ。


古い。


一度も。


剥がした跡がない。


小川も。


開けていない。


中。


黒い革の。


小さなキーケース。


「これ」


誠司は。


覚えていた。


日本で。


自宅の鍵を入れていたもの。


事故当日。


所持品一覧には。


なかった。


小川が。


持っていたから。


「懐かしいですか」


「はい」


ケースを開く。


一つ目。


銀色。


普通の鍵。


誠司の。


日本の部屋の鍵。


「まだ部屋は?」


「会社管理経由で保全中です」


小川が言う。


「勝手に処分はされてません」


「そうか」


日本へ。


今すぐ戻る理由ではない。


でも。


戻りたくなったとき。


開けられる扉が。


一つ。


まだある。


誠司は。


鍵を。


すぐポケットへ入れなかった。


机へ置く。


二つ目。


小さな紙。


誠司の字。


短い。


帰る場所を決めてから開ける。


「俺の字ですね」


「ですよね」


「小川は見た?」


「封筒の外からは見えませんでした」


紙の下。


もう一本。


鍵。


誠司が。


眉を寄せる。


見覚えがない。


平たい。


暗い銀色。


家の鍵より。


短い。


普通の扉用には見えない。


頭の部分。


刻印。


SR-01


ロウグを。


呼ぶことにした。


ここからは。


個人の鍵だけではない可能性がある。


*


水車町配送所。


安全受付。


小川本人。


同席希望。


誠司。


ロウグ。


サーラ。


ガラン。


鍵を。


何かへ差さない。


まず。


外観記録。


長さ。


傷。


刻印。


曲がり。


なし。


SR-01


裏。


小さく。


ORG


「原?」


ロウグが言う。


「オリジナル?」


「決めません」


誠司が答える。


始発照会口へ。


鍵そのものを。


かざすだけ。


挿入。


しない。


照合。


反応。


すぐ。


帰着受入系統鍵


系統――SR-01


部屋が。


静かになる。


さらに。


区分――原鍵


ガランが。


低く言う。


「本当に原鍵か」


SR-01。


誠司が。


日本で四千二百十八回。


帰着した系統。


その始まり。


作成目的。


田村誠司が、帰る方法を覚えるため。


初回設定者。


未登録。


その系統の。


原鍵が。


事故前日。


誠司の手元にあった。


「何を開ける鍵です?」


ロウグが尋ねる。


表示。


物理扉用――いいえ


用途――帰着受入系統・権限移管


誠司が。


目を細める。


「権限移管」


詳細。


SR-01原鍵


使用可能処理

一、受入拠点変更

二、後継受入系統への権限引継ぎ

三、旧系統閉鎖


単独使用――不可


現在の帰着基準者本人確認が必要


「俺」


「はい」


SR-01。


日本側始発配送所。


現在。


使用終了予定。


後継。


水車町。


そして。


日本側次期。


SR-02。


今まで。


記録上だけで。


つながっていた。


その権限を。


正式に移すための。


原鍵。


「これを」


小川が言う。


「田村さんは前日に持ってた?」


「そうなります」


誠司は。


全く覚えていない。


さらに。


鍵の履歴。


原鍵・最終個人所持記録


田村誠司


受領日。


事故前日。


受領地点。


日本側始発配送所


差出人。


表示。


出る。


全員。


黙る。


差出人――田村誠司


誠司が。


自分を見るように。


表示を見る。


「また俺」


未来の救援予約と。


同じ。


自分から。


自分へ。


だが。


その下。


差出時本人照合――不一致


ロウグが。


顔を上げた。


「不一致?」


差出人名。


田村誠司。


でも。


本人照合。


一致していない。


差出人名称――田村誠司


生体照合――該当なし


差出権限――SR-01原鍵による代理発行


「誰かが」


サーラが言う。


「田村さんの名前で送った?」


「代理権限で」


悪用。


とは。


まだ決められない。


原鍵。


そもそも。


受入系統を。


引き継ぐための鍵。


代理発行が。


正式機能かもしれない。


「履歴を開きますか」


ロウグが尋ねる。


誠司は。


一度。


小川を見る。


「これは俺の私物として預けた物です」


「はい」


「でも、配送網の原鍵でもある」


「みたいですね」


「履歴確認していい?」


小川が笑う。


「そこまで来たら、俺に聞くことじゃないでしょう」


誠司は。


本人確認。


履歴のみ。


権限変更。


しない。


原鍵。


使わない。


照会。


SR-01原鍵


直前使用履歴――一件


時刻。


誠司の事故。


三日前。


救援予約が作られた日と。


同日。


使用目的。


帰着受入系統・一時延長


延長先。


表示。


水車町配送所


「三日前から?」


ロウグが言う。


水車町配送所。


まだ。


存在していない。


誠司も。


異世界へ来ていない。


それでも。


SR-01は。


事故の三日前。


水車町へ。


一時的に延長されていた。


だから。


救援枠。


作れた。


そして。


その原鍵を。


誰かが。


誠司の名前で。


日本側へ送った。


事故前日。


誠司は。


それを受け取った。


記憶はない。


小川へ。


預けた。


*


最後。


使用者欄。


原鍵使用者――非表示


「また非表示」


ガランが言う。


理由。


現在のSR-01権限移管未完了のため。


原鍵を。


正式に。


旧系統から。


新系統へ。


移すまで。


使用者名は。


開かない。


「今やりますか」


ロウグが尋ねる。


誠司は。


即答した。


「やりません」


原鍵。


持っている。


本人確認。


できる。


水車町。


受入。


できている。


だからといって。


その場で。


系統を閉じない。


日本側。


SR-01。


まだ。


帰着受入として。


稼働している。


小川が。


日本へ帰るとき。


使う可能性もある。


SR-02。


まだ。


訓練開始前。


「引継ぎ計画を作ってからです」


誠司が言った。


原鍵を。


鍵だから。


使う。


ではない。


何が止まるか。


誰が帰れなくなるか。


確認する。


「帰着系統の引継ぎも」


小川が言う。


「普通の引継ぎと同じなんですね」


「同じにします」


*


原鍵。


保管。


誠司の私物ケースへ。


戻さない。


勝手に配送所の鍵箱へも。


入れない。


所有。


個人預かり。


田村誠司。


ただし。


系統権限物。


安全保管。


必要。


そこで。


二重記録。


所有・預かり――田村誠司


保管場所――水車町安全保管箱


使用時。


誠司本人。


プラス。


水車町帰着当番二名。


確認。


単独で。


使わない。


「自分の物なのに?」


小川が言う。


「俺一人で使えると危ないので」


「相変わらずですね」


「小川に言われたくない」


久しぶりに。


日本でしていたような。


会話だった。


*


小川は。


その夜。


水車町へ泊まった。


満宿。


普通の部屋。


仕事。


なし。


翌朝。


SR-01の会議へ。


呼ばない。


本人から。


見学希望もない。


市場。


東側の橋。


水車。


昼。


南方薬草便を。


しばらく眺めていた。


「田村さん」


「何?」


「こっちでも、同じですね」


「何が」


「荷物来たら、みんな忙しい」


「そりゃそうだろ」


小川が笑う。


「安心しました」


誠司は。


その意味を。


少しだけ。


分かった。


*


二日目の夕方。


小川が。


水車町乗継所へ。


「明日、日本へ戻ります」


「分かりました」


帰路申請。


本人意思。


あり。


体調。


問題なし。


携行品。


来たとき。


一件。


帰り。


旅行鞄一。


預かり品。


なし。


市場で貰った。


小さな木札一。


「何ですか、それ」


ロウグが尋ねる。


「菓子くれた店のおっちゃんが」


表。


水車。


裏。


「次は金持ってこい」


と書かれている。


「金、交換できるようにしておいてください」


小川が言う。


新しい。


宿題。


普通の旅客が。


来るようになれば。


運賃。


宿泊費。


貨幣。


滞在。


考える必要がある。


「順番にやります」


誠司は答えた。


*


その夜。


配送帳面が。


新しいページを開いた。


第一配送記録・人員第一便

私は、人を世界の向こうへ運ぶ方法を。

ずっと帰還と呼んでいた。


救助した人を返す。

迷った人を返す。

役目を終えた人を返す。


だから。

人が世界を越えるには。

何かを終えていなければならないと思っていた。


続く。


北方一号は言った。


「終わっていなくても、会いに行っていいでしょう」


私は答えられなかった。


三浦直人の。


古い記録。


私は帰還線を作った。


でも。

帰る人しか乗れない線だった。


それでは道ではない。


一方向の回収装置だった。


最後。


本当の道は。


行って。

会って。

何もしないで。

また帰ってこられる。


誠司は。


水車町乗継所を見る。


日本側から。


普通の乗客が。


来た。


明日。


普通に。


帰る。


一つの道が。


ようやく。


道になり始めた。


第一配送記録。


終了。


だが。


SR-01原鍵の記録が。


もう一度。


静かに開いた。


SR-01原鍵


現在保管――水車町


権限移管――未実施


その下。


これまでなかった。


次回使用予定。


SR-01→後継受入系統


移管先候補――二件


一。


水車町帰着受入系統


二。


日本側SR-02


「二つ?」


ロウグが言う。


原鍵は。


一つ。


受入系統の権限移管。


普通なら。


どちらかへ。


渡すように見える。


だが。


表示。


分割移管――可能


さらに。


移管後


水車町側――帰還受入権限を継承


日本側――帰着教育権限を継承


SR-01は。


一つの仕組みの中に。


二つの役目を持っていた。


帰ってきた人を。


受け取ること。


そして。


帰り方を。


教えること。


水車町は。


受け取る側を継ぐ。


日本側SR-02は。


教える側を継ぐ。


「なら」


サーラが言う。


「原鍵を二つに分ける?」


表示。


物理鍵分割――不要


権限分割実行者――二名必要


一名。


現帰還基準者――田村誠司


そして。


もう一名。


SR-01初回設定者


誠司の手が止まる。


初回設定者。


これまで。


ずっと。


未登録。


非表示。


その欄が。


わずかに変わった。


初回設定者――生存確認済み


全員が。


表示を見る。


さらに。


現在地点――水車町


「ここにいる?」


ロウグが言った。


SR-01。


誠司が配送の仕事を始めるより前。


日本側へ。


「帰る方法」を用意した人物。


その本人が。


現在。


水車町にいる。


そして最後。


個人名は。


まだ出ない。


代わりに。


役目だけが表示された。


現在役目――なし。


水車町にいる。


役目を持たない一人の人。


その誰かが。


SR-01を最初に作った人物だった。

小川健太郎は、救援でも帰還でも業務でもない「普通の乗客」として、日本側から水車町へ到着しました。


このため水車町では、世界を越える人員移動にも、


本人意思

滞在方法

帰路

携行品

到着後に役目を自動付与しないこと


を明記した「始発訪問便」が作られています。


また、旅客が増える場合には宿泊費や運賃、貨幣交換など、これまで存在しなかった普通の旅行者向け物流も必要になることが分かりました。


小川が誠司へ返した事故前日の預かり品は、誠司自身のキーケース。


中には日本の自宅鍵と、もう一本――SR-01原鍵が入っていました。


SR-01原鍵は物理的な扉を開ける鍵ではなく、帰着受入系統の権限を移すための鍵です。


そして事故の三日前、この原鍵を使ってSR-01が一時的に水車町へ延長されたことで、田村誠司の緊急救援枠が成立していました。


原鍵を実際に使用した人物の名前は、まだ非表示です。


ただし新たに一つだけ判明しました。


SR-01を最初に設定した人物は――現在も生きており、水車町にいます。


しかも、その人物の現在の役目は、


「なし」


と記録されています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。