第119話 白い車の二度目の仕事
SR-02。
水車町で加えられた九番目の帰着手順を、日本側の次の運転者へ伝えるための新しい帰着教育系統。
その最初の教習車両として表示されたのは、
白色小型貨物車
車台番号――K2D-0713
満タン便と、まったく同じ車台番号でした。
しかし満タン便は、赤い車両として水車町にあります。
日本側工場にも、特装前の白いK2D-0713があります。
さらに未来では、満タン便を返却した後にも白いK2D-0713が存在する。
同じ番号の車を、同じ一台として扱っていいのか。
誠司たちはまず、車両の「名前」でも「番号」でもなく――
その車が今、どの仕事の途中にいるのかを分けることにします。
「同じ車台番号だけでは、足りなくなりました」
朝。
水車町車両返却所。
誠司は三枚の紙を並べた。
一枚目。
日本側特装工場
K2D-0713
白色
特装前
二枚目。
水車町
K2D-0713
満タン便・車両M-001
赤色
運用中
三枚目。
SR-02初回訓練車両
K2D-0713
白色
満タン便M-001完成検査後
ガランが。
三枚を見比べる。
「番号だけなら、三台あるみたいだな」
「でも記録上は一台です」
ロウグが言う。
「同一車両・異時点照合」
以前。
日本側工場から。
そう返答されている。
「一台なのに」
エレナが言った。
「今の記録では、三つの状態が同時に見えている」
それが問題だった。
たとえば。
部品を注文する。
K2D-0713用
とだけ書けば。
どの時点の部品が来るのか。
分からない。
特装前。
満タン便運用中。
特装終了後。
同じ車台番号でも。
必要な部品が違う可能性がある。
「人間で言えば」
ロウグが言う。
「個人札は同じ。でも役目札が違う?」
「かなり近いです」
誠司は答えた。
「車にも、役目札を付けます」
*
ちょうど。
似た問題が。
北方から来ていた。
氷晶石保冷箱。
番号。
北一七。
配送帳面には。
北一七――北方より出庫
同じ日の別頁には。
北一七――水車町より北方へ返却
若い仕分け係が。
最初に見たとき。
二箱あると思った。
だが。
実際は。
一箱。
北から。
薬草の低温輸送へ使用。
水車町で荷降ろし。
清掃。
氷晶石交換。
その日の復路で。
北へ返した。
「番号だけで一覧にすると」
ロウグが説明する。
「出庫一箱、返却一箱で、二つあるように見えます」
「では箱にも?」
「状態を付けます」
北一七
状態一――北方出庫
状態二――低温輸送中
状態三――水車町受領
状態四――清掃・点検
状態五――北方返送
一つの箱。
五つの状態。
「同じ日に」
若い仕分け係が言う。
「何回も札が変わる」
「それでいいです」
同じ物でも。
今何をしているか。
分からなければ。
次の処理を間違える。
清掃前の箱を。
再出庫。
返送済みの箱を。
在庫扱い。
そういう事故を防ぐ。
新しい名称。
――状態札。
「車にもこれを使います」
誠司は言った。
*
満タン便。
状態札。
最初は。
四段階に分けた。
車歴A
K2D-0713
白色基体車
特装前
車歴B
K2D-0713 / M-001
満タン便
特装運用
車歴C
K2D-0713 / M-001
最終返却・完成検査
車歴D
K2D-0713
特装終了後
SR-02帰着教習
ガランが。
四枚目を見る。
「Dは、本当に白へ戻るのか?」
「確認します」
まだ。
表示からの推測。
日本側工場へ。
照会。
水車町車両照会第四号
K2D-0713について。
SR-02初回訓練車両「白色K2D-0713」は、現在工場に存在する特装前車両と同一時点か。
それとも、満タン便M-001最終返却後の同一車両か。
車両自身の使用順序を回答願います。
最後。
日本側暦上の前後ではなく、車両本体が経験する順番を希望。
「ここ、大事ですね」
ロウグが言う。
日本側の日付。
水車町の日付。
始発線の適用時刻。
全部を混ぜれば。
前後が崩れる。
だが。
車体そのものは。
一台。
その車が。
どの順番で。
白。
赤。
白。
となるのか。
それなら。
追えるはずだった。
送信。
*
返答を待つ間。
車両返却所の書類を。
全部見直した。
修理票。
車台番号
だけ。
燃料票。
満タン便
だけ。
車輪交換票。
M-001
だけ。
「ばらばらだ」
ガランが言う。
これまで。
水車町に。
満タン便は一台しかなかった。
だから。
それでも困らなかった。
だが。
始発線へ問い合わせるようになり。
同じ車両の。
別の時点が出てくる。
今後。
部品。
仕様。
工場記録。
誤って混ざる可能性がある。
新しい正式記載。
車台番号
特装番号
車歴状態
現在管理地点
満タン便なら。
K2D-0713
M-001
車歴B・特装運用
水車町車両返却所
「長いな」
ガランが言う。
「整備票では必要です」
日常。
「満タン便」
でいい。
事故。
整備。
部品。
工場照会。
そこでは。
四項目。
「人も同じですね」
エレナが言った。
普段は。
誠司。
直人。
澪。
それでいい。
でも。
運行記録では。
個人。
役目。
便。
帰着先。
必要なものを増やす。
普段の呼び名と。
事故を防ぐ識別。
同じでなくていい。
*
早速。
部品照会で試すことにした。
満タン便の。
左後輪付近。
制動用の柔軟管。
損傷してはいない。
ただ。
表面に。
細かな硬化。
今すぐ交換するほどではない。
次回整備時。
交換候補。
ガランが。
以前の寸法を写す。
「日本側なら、適合品の記録があるかもしれん」
照会票。
最初。
K2D-0713制動柔軟管
そこで。
誠司が止める。
「状態を入れます」
K2D-0713
M-001
車歴B・特装運用
左後輪制動柔軟管
現在寸法――別紙
現地改修――あり
送信。
少しして。
返答。
適合部品照合――一件
ガランが読む。
「よし」
だが。
その下。
車歴A・特装前K2D-0713用純正部品――使用不可。
ガランの顔が変わる。
「同じ番号なのに?」
理由。
M-001特装時、後部荷重配分変更に伴い制動配管経路変更。
車歴A用部品では長さ不足。
もし。
車台番号だけで。
照会していたら。
白い特装前車両の部品が。
候補に上がった可能性がある。
「付かないなら、途中で気づくでしょう」
若い仕分け係が言う。
ガランは首を横に振る。
「足りないのを無理に引けば、付く場合もある」
張る。
曲がる。
接続部へ負荷。
その場では。
漏れないかもしれない。
道路で。
あとから。
問題になる。
「部品番号が同じ車だから」
誠司が言う。
「同じ部品だと思わない」
安全受付。
新規。
水車町安全第八号
事象――異時点同一車両の部品照合混同可能性
実害――なし
対策――始発線への車両部品照会は、車台番号・特装番号・車歴状態を併記する。
事故は。
起きていない。
でも。
起きる前に。
仕組みにする。
*
午後。
日本側から。
車歴照会の返答。
K2D-0713
車両本体順序照合
一枚目。
車歴A
白色小型貨物車
特装前基体状態
現在。
日本側特装工場にある。
白い車。
次。
車歴B
特装名称――満タン便M-001
車体色――赤
始発線を経由し、水車町配送系統へ投入。
今。
誠司たちの前にある。
赤い満タン便。
次。
車歴C
水車町より日本側特装工場へ最終帰還。
運行記録原本回収。
車体状態照合。
完成検査。
未来。
雪板が。
車両帰還担当として。
持っていく予定の便。
そして。
四枚目。
車歴D
完成検査後整備。
ガランが。
身を乗り出す。
特装設備――役目終了処理
始発線設備――取り外し
帰還線設備――取り外し
特殊補給設備――取り外し
車体色――白へ復帰
用途――通常小型貨物車・帰着教育車
「本当に白へ戻る」
ロウグが言った。
赤い満タン便。
最後は。
普通の白い小型貨物車へ戻る。
「取り外した特装設備は?」
ガランが読む。
実機評価後、設計記録へ固定。
保存対象部品――保存。
消耗部品――廃棄。
再使用可能一般部品――通常在庫へ返却。
全部。
博物館のように残すわけではない。
必要な物は。
保存。
使える普通の部品は。
また使う。
消耗品は。
処理。
「赤い塗装も?」
車体塗装――完成検査記録後、通常白色へ復元。
ガランが。
満タン便の白い文字を見る。
「消えるのか」
佐伯澪が。
この車へ正式に付けた名前。
満タン便。
だが。
名称継承先は。
すでに決まっている。
車が工場へ正式返却されたら。
満タン便の正式名称は。
水車町配送網へ残る。
車両側は。
旧名称として履歴保存。
「だから」
エレナが言う。
「白く戻っても、名前がなくなるわけではない」
名前は。
水車町に残る。
車は。
役目を降りる。
人と同じだった。
*
返答票には。
注意書きもあった。
車歴Aと車歴Dは、外観が同じ白色でも別状態。
誠司が。
そこへ線を引く。
「これです」
白い。
同じ番号。
見た目。
似ている。
だが。
A。
まだ満タン便になる前。
D。
満タン便を終えたあと。
同じではない。
車歴A
運行記録――なし
特装経験――なし
車歴D
運行記録――完了済み
特装経験――あり
車体疲労履歴――引継ぎ
修理履歴――引継ぎ
「白に戻しても」
ガランが言う。
「新品に戻るわけじゃない」
「はい」
傷。
修理。
疲労。
全部。
車歴Dに残る。
塗装だけ。
白。
特装設備を外しただけで。
過去まで。
消さない。
「SR-02は」
ロウグが続けて読む。
SR-02初回訓練には、車歴DのK2D-0713を使用する。
現在。
日本側工場にある。
車歴Aではない。
将来。
満タン便として。
全部の仕事を終えた後。
普通の白い車へ戻った。
その車を。
使う。
「順番は」
エレナが紙を並べる。
白。
赤。
白。
「これなら、一台ですね」
「車自身の順番では」
誠司が答えた。
日本側の暦では。
始発線の適用時刻が入り。
複数時点の記録が。
同時に見える。
でも。
車自身は。
一つずつ経験している。
A → B → C → D
この順。
「整備帳の最初に貼ります」
ガランが言った。
車体番号だけを見て。
別の状態の部品を。
取り寄せないように。
*
満タン便の運転席へ。
小さな状態札を追加する。
外から。
目立たない。
車台番号札の隣。
車歴B
特装運用中
貼る前。
車両管理。
ガラン。
運行責任。
誠司。
記録。
ロウグ。
確認。
「未来のCとかDは?」
「今の車へは貼りません」
現在。
B。
それだけ。
未来の状態を。
今の車へ先に貼らない。
「Aも?」
「工場側の記録です」
一台だからと。
全部の札を。
同時に付けない。
今。
何であるか。
その札だけ。
*
三浦直人は。
午後。
車両返却所へ来た。
今日は。
杖なし。
ただし。
歩く距離。
短い。
満タン便の前で。
新しい状態札を見る。
「車歴B」
「はい」
「その次がC」
「日本側へ返却」
「そのあとD」
誠司が。
白い通常車両へ戻る記録を見せる。
直人は。
長く読んだ。
「赤、消すんですね」
「そうなっています」
「特殊装備も」
「必要な検査が終わったら」
直人は。
満タン便を見た。
少し。
寂しそうにも見えた。
でも。
すぐ。
別の表情になる。
「普通の車に戻れるんですね」
「はい」
直人が。
静かに笑った。
「いいですね」
誠司は。
何も言わない。
「ずっと特別な車でいなくていい」
直人が続ける。
「仕事が終わったら」
赤い車体。
白い文字。
「普通に戻れる」
第一配送者。
差出担当。
旧運行責任者。
そういう名前から。
三浦直人へ戻った人。
その言葉は。
車の話だけには。
聞こえなかった。
「再出発担当の説明」
誠司が言う。
「いつ聞きますか」
直人は。
少し考えた。
昨日。
何も引き受けない日を。
一日過ごした。
「明日」
「分かりました」
「でも」
直人が言う。
「説明を聞くのと、引き受けるのは別ですよね」
「もちろんです」
直人が笑う。
「なら、聞きます」
*
SR-02について。
もう一つ。
確認する。
「帰着教育車に」
ロウグが言う。
「始発線設備は付いていない」
「はい」
「普通の白い荷物車」
「はい」
水車町で作った。
九項目。
それを。
日本側の次の運転者へ教える。
異世界のこと。
返送庫。
氷晶石。
中枢。
そうした知識は。
必要ない。
「九番目だけは」
サーラが言う。
「水車町でしか生まれなかった」
帰着完了後、次の役目を直ちに引き受ける義務はない。
それを。
普通の配送所へ。
普通の車で。
教える。
満タン便の特殊装備がなくても。
使える改善。
それが。
一番。
次へ残せるものだった。
*
日本側工場へ。
追加照会。
SR-02初回訓練対象について。
個人名は不要。
選定条件のみ確認希望。
水車町側から、特定個人を指定しない。
「名前を聞かない?」
ロウグが尋ねる。
「まだ本人が、こっちへ関わる理由がありません」
日本の。
普通の運転者。
訓練を受けるだけなら。
水車町へ個人名を送る必要はない。
必要最小限。
どんな人へ。
何のために。
それだけ。
返答。
夕方。
SR-02初回訓練対象
個人名――非開示
職種――配送運転者
運転経験――あり
SR-01旧教材受講――なし
九項目を。
最初から学ぶ人。
続く。
選定理由
一、他運転者の未完了便を引き継いだ経験あり。
二、代走後の帰着記録あり。
三、本人が帰着教育の受講を希望。
「代走」
誠司の目が止まる。
さらに。
代走対象便――田村誠司事故当日便
部屋が。
静かになる。
誠司が事故に遭った日。
残っていた配達。
集荷。
それを。
引き継いだ運転者。
日本側から。
以前。
返答があった。
当日配送――全件代替運行へ引継ぎ済み。
未配達貨物なし。
その。
代走担当者。
「この人が」
ロウグが言う。
「SR-02の最初の訓練を受ける」
「候補です」
誠司は訂正する。
返答票。
本人受講意思――確認済み
「もう候補ではないですね」
「そうですね」
本人が。
受けたいと答えている。
「理由は?」
個人情報を避け。
最小限の記録。
本人申告
「代走便を終えたあと、どこまでやれば田村さんの仕事が終わったことになるのか分からなかった」
「荷物は全部届けた。でも、田村さんは帰っていなかった」
「次に同じことがあったら、人が帰っていないことも仕事の途中だと分かるようにしたい」
誠司は。
長く。
その文章を見た。
自分の仕事は。
事故の日。
途切れた。
だが。
荷物は。
誰かが引き継いだ。
届けた。
そして。
その人は。
荷物だけでなく。
誠司自身が帰っていないことを。
ずっと未完了として覚えていた。
「九番目」
サーラが言う。
「この人にも必要ですね」
代走を終えた。
次の便。
また次。
誰かが倒れたぶんを。
ずっと背負うのではなく。
一度。
帰着する。
役目を置く。
そして。
次を選ぶ。
*
日本側の返答には。
最後に。
現在役目が書かれていた。
SR-02初回訓練対象
現在役目――日本側帰着当番
ロウグが。
ゆっくり読み上げる。
「帰着当番?」
誠司も。
覚えている。
自分の救援到着票を送ったとき。
日本側で。
返答を待っていた。
一名。
三浦直人と思われる人物が。
日本側仮眠室で眠っているとき。
状態を確認し。
無理に起こさず。
水車町へ連絡した者。
第一配送者救援予約を。
受け取った者。
ずっと。
始発側で。
返答を返していた。
あの。
日本側帰着当番。
同じ人物だった。
事故の日。
誠司の配送を引き継ぎ。
その後。
誠司が帰っていないことを。
確認し続け。
始発線がつながってからは。
日本側で。
帰着連絡を受け取っていた。
「名前は?」
若い仕分け係が尋ねた。
誠司は。
返答票を見る。
個人名――非開示
「聞きません」
本人が。
水車町へ名乗る必要は。
まだない。
役目。
今は。
それで十分。
*
その夜。
配送帳面が。
新しいページを開いた。
第一配送記録・車両第四便
満タン便を工場へ返したあと。
赤い塗装は落とされた。
特装設備も外された。
白い車になった。
三浦直人の記録。
私は工場の担当者へ言った。
「壊したんですか」
担当者は言った。
「いいえ」
「仕事を終わらせています」
続く。
「特別な車としての役目は終わりました」
「記録も、改善も、必要なものは受け取りました」
「だから、この車を普通の車へ返します」
直人は。
その白い車を。
しばらく見ていた。
私は聞いた。
「満タン便じゃなくなるんですか」
担当者は言った。
「名前は、水車町へ置いてきたんでしょう」
一行。
空く。
そのとき。
私は初めて。
車にも帰着があるのだと思った。
さらに。
白いK2D-0713は。
その後、一人の運転者の帰着教習へ使われた。
私は教習を見なかった。
見ないほうがいいと思った。
満タン便を知らなくても使える手順になっているか。
それを確かめるためだった。
第一配送記録。
終了。
その下。
SR-02。
初回訓練対象――登録済み
個人名――非開示
現在役目――日本側帰着当番
事故当日代走担当――一致
ここまでは。
日本側返答と同じ。
しかし。
最後に。
水車町側では見たことのない欄が。
一つ現れた。
水車町との個人情報接続――保留
「接続?」
ロウグが読む。
理由。
本人より条件あり。
条件。
一行。
「田村誠司が、自分の帰着を決めるまでは、名前を送らないでください」
誠司の手が止まった。
日本へ帰るか。
水車町に残るか。
別の道を選ぶか。
まだ。
決めていない。
日本側帰着当番は。
それを知っている。
だから。
自分の名前を。
こちらへ送らない。
さらに。
本人からの短い伝言。
「名前を知ると、田村さんは帰る理由にしてしまうかもしれないので」
誰も。
何も言わなかった。
その人は。
誠司のことを。
よく知っているらしい。
少なくとも。
「誰かが待っている」と知れば。
自分の希望より。
相手への責任を優先しかねないことを。
知っている。
最後。
日本側記録。
個人名開示条件
田村誠司・本人帰還意思確定後。
誠司が。
日本で四千二百十八回帰っていた配送所。
事故の日に。
その仕事を引き継いだ人。
そして今。
日本側で。
帰着を受け取っている人。
その人物が誰なのかは。
誠司自身が。
自分の行き先を選ぶまで。
伏せられることになっていた。
同じ車台番号K2D-0713が、白・赤・白の状態で記録されていた理由が整理されました。
満タン便は複数台存在するのではなく、一台の車両が、
車歴A――白色・特装前
車歴B――赤色・満タン便M-001として運用
車歴C――日本側工場へ最終返却・完成検査
車歴D――特装を外し、白色の通常貨物車へ復帰
という順番を経験します。
SR-02で使われる白いK2D-0713は、現在日本側工場にある「満タン便になる前」の白い車ではありません。
すべての仕事を終えたあと、普通の車へ戻ったK2D-0713です。
また、同一車両の異なる時点の部品を取り違えないため、水車町では「車歴状態」を整備票や始発線照会へ必ず併記することになりました。
そしてSR-02の最初の訓練対象も判明しています。
誠司が事故に遭った日、その日の配送を代走して全件届けた運転者。
現在、日本側で始発線の連絡を受け取っている「帰着当番」と同一人物です。
ただし、その人の名前はまだ水車町へ送られません。
本人自身が、
「田村誠司が、自分の帰着を決めるまでは、名前を送らないでください」
と希望しているからです。
誰が日本側で誠司の帰着を待っているのか。
その答えは、誠司自身が「どこへ帰るのか」を選ぶまで保留されています。




