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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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117/156

第117話 帰る場所を受け取る側

満タン便の帰還基準者として登録されている田村誠司。


その役目は、車を所有することでも、一生運転し続けることでもありません。


満タン便がすべての帰路を失ったとき。


最後に「どこへ帰すか」を指定するための権限です。


候補は二つ。


現在の水車町配送所。


そして、誠司が日本で四千二百十八回も仕事を終えて戻った旧配送拠点――「始発配送所」。


けれど。


帰る場所は、帰る人だけでは決められません。


そこには、受け取る側が必要です。

「今日は、登録しません」


朝。


水車町配送所。


昨日に続いて。


誠司は同じ答えを出した。


帰還基準者――田村誠司


初期基準地点――未登録


推奨候補

一、水車町配送所

二、日本側・旧配送拠点


ロウグが言う。


「昨日もそう言いました」


「はい」


「今日は何を確認しますか」


誠司は。


二つの候補名の横へ。


同じ一語を書いた。


――受入。


「俺が帰したい場所を決めるだけでは駄目です」


「受け取る側が」


サーラが続ける。


「帰ってきてもいいと言っている必要がある」


「はい」


水車町。


現在。


誠司自身の運行者帰着先。


車両返却所。


運行者一時帰着所。


安全受付所。


すでにある。


だから。


満タン便の最終帰還先にしてもいい。


そう思いそうになる。


だが。


一台の車両が。


通常経路を全部失って。


予告なしに帰ってくる。


その意味は。


普通の帰着とは違う。


故障。


遭難。


経路消失。


中継点喪失。


何か。


大きな異常が起きている可能性が高い。


「満タン便を帰す場所ということは」


ガランが言う。


「壊れた満タン便が来る場所でもある」


「はい」


「運転者が怪我してるかもしれん」


リアが言う。


「はい」


「夜中かもしれない」


「はい」


「荷台に何が載っているか分からない」


サーラが言う。


「そこもです」


誠司は。


帰還基準地点の。


受入条件を作った。


帰還基準地点・受入条件


一、車両を安全に停止できる場所がある

二、車両を一時保管できる

三、運転者を休ませられる

四、負傷者へ初期対応できる

五、未確認貨物を隔離できる

六、鍵と運行記録を受け取れる

七、異常・事故を受付できる

八、受入不能時の代替地点がある

九、受入側が基準地点となることへ同意している


最後。


九。


「ここがなければ」


誠司が言う。


「帰着先にしません」


*


まず。


日本側へ照会する。


旧配送拠点。


始発配送所。


そこは。


誠司が。


毎日のように戻っていた職場。


四千二百十八回。


朝。


荷物を積み。


道路へ出る。


配達。


集荷。


営業所へ戻る。


車を停める。


鍵。


端末。


未配達。


事故。


異常。


全部を戻す。


「四千二百十八回って」


ロウグが言う。


「全部、同じ建物なんでしょうか」


「分かりません」


誠司自身。


記憶を辿る。


配送拠点は。


一度。


仮の車庫へ移ったことがある。


改修。


数か月。


それから。


元の地域へ戻った。


「建物は違った時期があります」


「それでも同じ帰着先として数えている?」


「たぶん」


だから。


そこも照会する。


水車町始発照会第六号


田村誠司・過去帰着記録について確認。


帰着回数――四千二百十八回


確認事項

一、帰着地点は同一物理地点だったか

二、帰着受入担当は誰または何だったか

三、満タン便・車両M-001を緊急帰還車両として受入可能か

四、受入可能でない場合、その理由


注意

本照会は田村誠司本人の日本帰還意思確認ではない。


最後。


太く書く。


誠司が。


日本へ戻りたいか。


残りたいか。


それは。


別の問題。


満タン便の帰還基準地点を調べるための照会。


個人の将来選択と。


車の安全設計を。


混ぜない。


送信。


*


日本側の返事を待つ間。


水車町が本当に。


帰還基準地点になれるか。


試す。


「満タン便で?」


雪板が尋ねた。


彼女は。


第三配送単位の車両帰還担当として正式登録されたばかり。


「満タン便は使いません」


誠司が答えた。


帰還基準を試すために。


故障を作る必要はない。


使用するのは。


東方共同便の小型荷車。


帰着予定。


夜。


ただし。


受入側には。


正確な到着時刻を知らせない。


「抜き打ち?」


ガランが言う。


「時間帯は知らせます」


完全な抜き打ちにはしない。


夜間。


夕刻から深夜まで。


そのどこか。


通常業務を続けながら。


受け取れるかを見る。


運転者。


東方の経験者。


車両。


正常。


訓練札。


車体の見えない位置に付ける。


想定。


通常経路表示喪失


運転者――帰着可能

車両――自走可能

積荷――未確認箱一個


帰還基準地点へ到着


荷箱の中身。


空。


だが。


受入側は。


すぐ開けない。


未確認貨物として扱う。


「運転者が“訓練です”と言うのは?」


「車両停止後です」


道路上で。


本当の事故を装わない。


水車町へ入ってから。


帰還基準訓練票を出す。


周囲を。


不必要に驚かせない。


*


夜。


水車町は。


普通に動いていた。


南方の薬草。


仕分け。


西方の空水樽。


洗浄。


北方氷晶石。


保冷庫。


誠司は。


帰還基準訓練の受入担当には入らない。


「帰還基準者本人がいなくても受け取れるか確認します」


当番。


サーラ。


車両。


ガランの弟子。


人員。


リアの夜間補助。


記録。


若い仕分け係。


一人に。


集めない。


夜。


かなり遅く。


車輪の音。


東方小型荷車。


到着。


「帰着車両です」


運転者。


車両返却所へ。


しかし。


最初の問題が出た。


停止線まで。


入れない。


空の木樽が。


三つ。


進入路脇へ置かれている。


昼の洗浄作業。


片づけ待ち。


完全に道を塞いではいない。


普通の小型荷車なら。


避けられる。


だが。


満タン便なら。


曲がりにくい。


「止めます」


夜間当番。


判断。


荷車。


入口前。


駐車制動。


樽を。


先に移す。


時間。


四分。


そのあと。


入庫。


「失敗ですね」


若い仕分け係が言う。


「訓練としては成功です」


サーラが答えた。


本番前に。


見つかった。


進入路。


荷物を置かない。


昼間だけ。


ではなく。


常時。


床へ。


新しい線。


帰着進入路

仮置禁止


さらに。


夜間。


鍵返却箱。


見えにくい。


屋根の影。


灯りはある。


だが。


外から来た運転者には。


場所が分からない。


「照明を増やしますか」


「眩しくしない」


夜。


運転直後。


強い灯り。


目が慣れない。


ガランの弟子が。


低い位置へ。


覆い付き灯火を追加。


そして。


鍵箱まで。


手で辿れる。


木製の案内板。


「暗くても分かる」


サーラが言う。


車両。


受領。


鍵。


受領。


運転者。


水。


座位。


体調。


問題なし。


未確認箱。


黄色区画。


外装。


問題なし。


訓練票確認後。


空箱。


夜間帰還基準受入訓練


車両受入――完了

人員受入――完了

未確認貨物隔離――完了


改善二件

・進入路仮置禁止

・鍵返却箱夜間表示


翌朝まで。


小型荷車。


保管。


運転者。


休息。


朝。


通常経路で東へ戻る。


「これなら」


サーラが言う。


「水車町は受け取れます」


「一回できたから、永久に大丈夫ではありません」


誠司が答える。


月一。


夜間受入確認。


進入路。


灯火。


寝台。


水。


鍵箱。


未確認区画。


点検項目へ追加する。


帰る場所も。


維持しなければ。


帰る場所ではなくなる。


*


翌日。


日本側から返答が届いた。


田村誠司・過去帰着記録照会


帰着件数――四千二百十八件

照合――一致


一。


帰着地点。


物理地点――三地点


「三?」


誠司が読む。


一つ目。


旧営業所。


二つ目。


建替期間中の仮車庫。


三つ目。


現在営業所。


住所は。


違う。


建物も。


違う。


それでも。


四千二百十八回は。


一つの帰着系列として記録されていた。


理由。


帰着受入系統番号――同一


ロウグが。


顔を上げる。


「場所ではなく、受入の系統」


「そうみたいです」


次。


二。


帰着受入担当。


日常帰着受入――営業所運行管理


夜間――鍵返却設備および翌朝確認


人員異常時――当直または緊急連絡先


毎日。


同じ人が。


誠司を待っていたわけではない。


人。


鍵箱。


端末。


当直。


仕組み。


それ全体で。


帰着を受け取っていた。


「だから」


エレナが言う。


「建物が変わっても、同じ帰る場所だった」


誠司は。


水車町車両返却所を見る。


同じだった。


帰る場所とは。


一点の住所ではない。


受け取れる仕組み。


*


三。


満タン便M-001の受入。


返答。


通常受入――不可


理由。


日本側車両登録未完了

特装車両受入手順未設定

保管区画不適合

工場受領前のM-001を営業所資産として受領する権限なし


ガランが頷く。


「正しいな」


赤い満タン便が。


突然。


日本の普通の配送営業所へ戻ってきても。


受け取れない。


道路。


保管。


書類。


全部。


合わない。


ただし。


人命緊急時――一時避難受入可能


正式車両受領ではなく、救命・安全確保のみ。


誠司は。


そこへ線を引く。


日本側旧配送拠点。


人間を。


緊急時に受け入れることはできる。


だが。


満タン便という車両の。


正式な帰還基準地点には向かない。


少なくとも。


現在は。


四。


受入側回答。


満タン便M-001の帰還基準地点としての登録には同意しません。


はっきり。


拒否。


サーラが言う。


「よかった」


若い仕分け係が驚く。


「拒否なのに?」


「勝手に帰着先にされない仕組みになっているということです」


受け入れられない。


なら。


拒否できる。


それが。


安全だった。


*


誠司は。


日本側の返答へ。


返信を送る。


帰還基準地点登録拒否――受領。


人命緊急時の一時避難受入のみ、代替情報として記録します。


田村誠司本人の日本帰還意思については、引き続き未決定。


日本側。


返答。


了承。


それだけ。


「戻ってこいとは言わないんですね」


ロウグが言う。


「言われても困ります」


誠司は少し笑った。


日本の仕事は。


代替者へ。


引き継がれた。


車両も。


回収された。


誠司の緊急救援。


到着確認。


済み。


帰るか。


残るか。


選ぶ時間は。


まだある。


*


残る候補。


水車町配送所。


だが。


誠司一人が。


ここ。


と書くだけでは足りない。


受入側。


同意。


サーラ。


運行者帰着所。


「受け入れます」


ガラン。


車両返却所。


「満タン便一台なら、停止と保管ができます」


リア。


人員。


「運転者一名。負傷状態でも初期対応します」


ロウグ。


記録。


「異常便として、通常便と分けて受けます」


管理人。


補給網。


「水車町配送網へ接続可能です」


しかし。


誠司は。


最後に尋ねる。


「俺がいない場合でも?」


サーラが答える。


「そのための当番です」


「ガランがいないとき」


「車両当番が受けます」


「リアがいないとき」


「医療当番へ連絡します」


「ロウグがいないとき」


「記録当番がいます」


一人の顔。


ではない。


仕組み。


「では」


受入票。


帰還基準地点受入票


対象――満タン便・車両M-001


受入地点――水車町配送所


車両――水車町車両返却所

人員――水車町運行者一時帰着所

未確認貨物――返送受入所黄色区画

事故――水車町運行安全受付所


夜間受入――可能


受入不能時――地域代替帰着地点へ照会


田村誠司本人不在時――受入継続可能


受入責任者。


一人ではない。


水車町帰着当番


現在当番。


二名。


署名。


サーラ。


ロウグ。


車両確認。


ガラン。


医療確認。


リア。


「これで」


サーラが言う。


「水車町側は、帰ってきていいと言えます」


誠司は。


その票を受け取った。


帰る人より。


先に。


受け取る側が。


準備している。


昔。


第一配送者に。


足りなかったもの。


*


帰還基準地点登録。


満タン便。


車両M-001。


誠司。


本人確認。


画面。


帰還基準者――田村誠司


初期帰還基準地点を登録してください。


候補。


水車町配送所。


日本側旧配送拠点。


日本側には。


車両受入不同意


の表示。


選択できない。


誠司は。


水車町を選ぶ。


その前に。


ロウグが尋ねた。


「これは」


一度。


言葉を選ぶ。


「誠司さんが水車町に残ると決めることではない?」


「違います」


誠司は答えた。


「俺がどこで暮らすかとは別です」


「日本へ帰る可能性も?」


「残っています」


「では、何を決める?」


誠司は。


満タン便を見る。


赤い車。


白い文字。


多くの傷。


「この車が帰り道を全部失ったとき」


「水車町へ戻すと決めます」


それだけ。


自分の人生を。


車の設定欄へ。


一緒に書かない。


初期帰還基準地点――水車町配送所


本人確認。


田村誠司。


受入側同意。


確認。


登録。


配送帳面が。


静かに光る。


帰還基準地点――登録完了


基準地点――水車町配送所

受入系統――水車町帰着受入


続いて。


満タン便・完成検査条件


一、循環補給網――稼働

二、帰還線――接続

三、旧運行責任者――降車

四、帰還基準者本人意思――確認

五、最終積荷――未受領


四つ。


完了。


残る。


最終積荷。


満タン便自身の最終帰還記録。


「あと一つ」


ガランが言った。


誠司は。


首を横に振った。


「一つに見えるだけです」


雪板の最終運行。


後継帳面。


日本側工場。


三浦直人の再出発判断。


まだ。


いくつもある。


最後の一マスほど。


慎重に。


*


帰還基準を登録したあと。


確認試験。


車は動かさない。


照会だけ。


満タン便M-001

全通常帰路喪失を仮定。


最終帰還候補を回答。


表示。


一度。


消える。


そして。


第一候補――水車町配送所


受入――可能


車両経路――帰還線

人員受入――水車町運行者一時帰着所


正常。


「終わりです」


誠司が言う。


実車で。


帰路喪失を作らない。


照会で確認できるなら。


それで十分。


*


午後。


日本側から。


もう一枚。


遅れて返答が来た。


始発照会第六号の。


補足。


田村誠司・四千二百十八回帰着について


補足情報。


誠司が読む。


三つの物理地点を同一帰着系列として扱った理由は、同一の「帰着受入系統番号」を継承していたため。


ここまでは。


先ほどと同じ。


番号。


表示。


帰着受入系統――SR-01


ロウグが。


写す。


「始発帰着、一番?」


「たぶん」


その下。


現在の日本側営業所は、SR-01の使用を終了予定。


田村誠司救援便の到着確認完了後、後継受入系統への引継ぎ予約あり。


「後継?」


エレナが言う。


後継受入系統――接続先未表示


いつ。


切り替えるのか。


まだ。


確定していない。


誠司たちが。


ちょうど今日。


水車町を。


帰還基準地点へ登録した。


配送帳面が。


返答票を読み取るように。


光る。


帰還基準地点――水車町配送所


受入系統番号を照合中


数秒。


照合完了


ロウグが。


目を細める。


水車町帰着受入系統――SR-01


「同じ……?」


日本側。


誠司が。


四千二百十八回帰っていた営業所。


SR-01。


水車町。


今日。


正式に満タン便の帰還基準地点として登録した場所。


SR-01。


新しい番号ではない。


同じ。


「番号を再利用しただけでは?」


ロウグが言う。


詳細。


再利用――いいえ


系統継承――はい


全員が。


表示を見る。


SR-01


前受入拠点――日本側・始発配送所


後継受入拠点――水車町配送所


誠司は。


しばらく。


何も言えなかった。


水車町は。


満タン便の帰る場所として。


今日。


新しく作られたのではない。


補給網上では。


日本で誠司が四千二百十八回帰っていた配送所の。


後継受入拠点として登録された。


「でも」


サーラが言う。


「水車町配送所は、こちらで作ったものです」


「はい」


「日本側の営業所から、引継ぎなんて受けていません」


「受けていません」


ロウグが。


SR-01の引継ぎ条件を開く。


系統引継ぎ条件


一、旧拠点による受入終了準備

二、新拠点による受入同意

三、帰還基準者による新拠点登録

四、帰着記録の継承


一。


日本側。


終了準備。


二。


水車町。


今日。


受入同意。


三。


誠司。


今日。


登録。


四。


帰着記録の継承。


状態。


未完了。


「四千二百十八件を」


エレナが言う。


「水車町が引き継ぐ?」


誠司が。


すぐ首を横に振る。


「詳細を見ます」


帰着記録継承。


人事記録。


勤務記録。


個人情報。


そういうもの全部を。


水車町へ持ってくるのではない。


表示。


継承対象――帰着方式


車両停止

鍵返却

未完了貨物報告

異常報告

運転者状態確認

帰着完了確認


誠司の。


日本での。


毎日の終業手順。


それと。


水車町で作ってきた。


車両返却所。


安全受付。


運行者一時帰着所。


驚くほど。


似ている。


いや。


誠司自身が。


知っているやり方を。


異世界で。


一つずつ作った。


「俺が」


誠司が。


静かに言う。


「持ってきたんですね」


会社の書類を。


持ってきたわけではない。


設備も。


持ってきていない。


けれど。


仕事を終えるとき。


何を返すか。


どう報告するか。


誰かが戻らなければ。


どう探すか。


長い日常の中で。


身体に染みついていた。


その習慣を。


水車町で。


別の形に作り直した。


四千二百十八回分。


帰ってきた経験。


それが。


水車町の帰着受入へ。


つながった。


だが。


補給網の表示は。


それだけでは終わらなかった。


SR-01系統継承


起点――日本側始発配送所

後継――水車町配送所


初回設定者――未登録


「また未登録」


ガランが言う。


さらに。


系統作成時刻――田村誠司・第一回帰着以前


誠司の。


四千二百十八回。


その最初より前。


まだ。


誠司がその配送所へ。


一度も仕事から戻っていなかった時点。


すでに。


SR-01という。


帰着受入系統は作られていた。


最後。


SR-01作成目的


「田村誠司が、帰る方法を覚えるため」


誰も。


声を出さなかった。


誠司が。


配送の仕事を始めるより前。


誰かが。


日本側の配送所へ。


一つの帰着系統を用意していた。


四千二百十八回。


誠司は。


ただ職場へ帰っていたと思っていた。


だが。


補給網の記録では。


その毎日の帰着そのものが。


いつか水車町へ。


「帰る場所」を作るための。


長い教習になっていた。

満タン便の帰還基準地点を登録する前に、「帰る場所は受け取る側も同意していなければならない」という条件が追加されました。


日本側の旧配送拠点は、人命緊急時の一時避難は可能ですが、満タン便M-001を正式に受け取る設備や権限がないため、帰還基準地点となることを明確に拒否。


一方、水車町では夜間帰着訓練を行い、進入路の仮置き禁止や鍵返却箱の夜間表示などを改善した上で、組織として受入れに同意しました。


そのため田村誠司は、


「自分が水車町に残る」と決めたのではなく、

「満タン便がすべての帰路を失ったら、水車町へ帰す」


という意味で、水車町配送所を初期帰還基準地点へ正式登録しています。


これにより満タン便の完成検査条件は、五項目中四項目まで完了しました。


しかし最後に、さらに古い記録が判明します。


誠司が日本で四千二百十八回帰着した配送所と、水車町配送所は、補給網上で同じ帰着受入系統――SR-01を継承していました。


しかもSR-01は、誠司が配送の仕事で最初に帰着するより前から存在していました。


その作成目的は――


「田村誠司が、帰る方法を覚えるため」


誰が、何のためにその教習を始めたのかは、まだ分かっていません。

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