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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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116/156

第116話 帰る練習便

第三配送者候補の雪板には、満タン便を運転できる技術があります。


未来の記録では、すでに日本側工場へ満タン便を返却したことにもなっています。


けれど本人は、まだ役目を引き受けていません。


雪板が求めたのは。


運転の練習ではなく――


「車を置いたあと、自分が帰る練習」でした。


水車町は、車両を動かす技術と、仕事を引き受ける意思を分けるところから始めます。

「教習を受けたら、第三配送者になるんですか」


朝。


水車町車両返却所。


雪板は、満タン便の運転席を外から見ながら尋ねた。


「なりません」


誠司は答えた。


「運転できることと、運転を引き受けることは別です」


ロウグが二枚の紙を机に置く。


一枚目。


車両技能確認票


二枚目。


第一最終帰還便・役目受任票


まだ。


二枚目は白紙。


「技能確認票に合格しても」


誠司が言う。


「受任票へ署名する必要はありません」


雪板が。


二枚を見比べる。


「未来では、私が運んだことになっています」


「はい」


「日本側の運転認証も有効」


「はい」


「それでも?」


「今のあなたの返事にはなりません」


雪板は。


少しだけ笑った。


「何度聞いても同じですね」


「変わらないところなので」


未来。


記録。


能力。


候補表示。


全部が揃っても。


本人の「はい」だけは。


本人にしか書けない。


*


技能確認票にも。


いきなり満タン便を走らせるとは書かなかった。


項目の最初。


一、停止状態での降車手順


ガランが。


紙を覗き込む。


「運転教習なのに、最初が降り方か」


「今回の目的ですから」


誠司は答えた。


雪板が求めているのは。


目的地まで走る練習だけではない。


車両を引き渡す。


鍵を返す。


役目札を置く。


運転席から離れる。


そのあと。


個人として帰る。


そこまで。


一つの便として扱う。


「実車の前に」


誠司は言った。


「小さい返却便で一度やります」


*


ちょうど西方へ。


返さなければならない車両があった。


水車町で修理していた共同整備荷車。


西方第二水場のもの。


右車輪。


軸受け。


荷台の留め金。


修理完了。


今後は。


水場と隊商の中継運搬に使う。


本来なら。


西方便の後ろへ連結して返す予定だった。


だが。


自走できる。


「これを返します」


誠司が言う。


雪板が。


小さな二輪荷車を見る。


満タン便とは。


何もかも違う。


大きさ。


操作。


速度。


「これで満タン便の練習になるんですか」


「運転の練習ではありません」


「帰る練習」


「はい」


車を。


別の場所へ持っていく。


正式に引き渡す。


その瞬間。


その車を運転する役目は終わる。


帰りは。


その車に乗れない。


別の便を探す。


そこを経験する。


「同行は?」


「俺が行きます」


誠司が答えた。


「教習便なので」


雪板一人を。


試験だからと。


未知の手順へ出さない。


ただし。


運転者は雪板。


誠司は。


教習同乗者。


役目札も分ける。


運転担当――雪板

教習確認――田村誠司


「帰りも一緒ですか」


「はい」


「それでは、一人で帰る練習にならない」


「最初から一人にする必要はありません」


誠司は答えた。


できることを確認するための練習で。


事故が起きる条件まで再現しない。


一度。


手順を経験する。


必要なら。


次は一人。


「分かりました」


*


西方第二水場まで。


半日。


荷車には。


返却車両だからと。


何も積まないわけではない。


水場用。


交換弁。


麻縄。


補修板。


軽い物だけ。


荷台を汚す油や砂袋は避ける。


返却時。


修理状態を確認しやすくするため。


出発前。


雪板は。


個人札。


雪板。


首元。


役目札。


西方共同整備荷車・返却運転


こちらは。


運転席横。


「個人札と役目札を一緒にしない」


ロウグが確認する。


「はい」


雪板が答えた。


「車を置くとき、役目札も置く」


「個人札は?」


「持って帰ります」


それが。


今日の一番大事なところだった。


*


出発。


水車町。


西方路。


雪板の運転は。


慎重だった。


慎重すぎるくらい。


速度。


低い。


車輪溝。


避ける。


下り坂。


手前で減速。


誠司は。


ほとんど口を出さない。


「右」


「はい」


「次の標柱で休憩」


「はい」


それだけ。


西方第二水場。


予定より。


少し遅く到着。


遅れ。


十二分。


誰も問題にしない。


水場側。


サーラの補助担当。


車両受取。


修理箇所。


三点。


確認。


右車輪。


正常。


軸。


異音なし。


留め金。


固定。


車両札。


一致。


雪板が。


鍵を渡す。


西方共同整備荷車


車両引渡――完了


雪板の役目札。


返却運転。


そこへ。


終了印。


「これで」


誠司が言う。


「この車は、もう運転しません」


雪板が。


荷車を見る。


帰り道は。


そこにある。


車輪もある。


座る場所もある。


問題なく動く。


それでも。


もう乗らない。


水場の車だから。


「分かっています」


雪板は。


役目札を。


水場側へ渡した。


手元に残るのは。


個人札。


雪板。


一包。


それだけ。


「次は?」


誠司が尋ねる。


雪板は。


水場の便板を見る。


水車町方面。


夕方。


隊商共同便。


空席。


二。


「これで帰ります」


「乗車を希望しますか」


「はい」


新しい役目札は。


作らない。


雪板は。


もう運転者ではない。


人員共同便・乗客票


本人呼称――雪板

出発――西方第二水場

到着希望――水車町乗継所


「変な感じです」


雪板が言った。


「何がですか」


「さっきまで、自分が運んでいたのに」


西方から来た共同車。


今度は。


自分が乗せてもらう。


「それが帰る練習です」


*


隊商便。


出発まで。


一時間半。


雪板は。


その時間を。


車両の横で待たなかった。


満宿の小さな休憩所。


水。


椅子。


軽食。


「運転者だったときは」


雪板が言う。


「車のそばにいないといけないと思っていました」


「引渡し前は必要な場合があります」


「今は?」


「もう水場側の管理です」


自分の手を離れた車を。


いつまでも見張らない。


それも。


役目を降ろす練習。


途中。


水場担当が。


返却荷車を少し移動した。


雪板が。


立ち上がりかける。


止まる。


担当者が。


自分で動かしている。


もう。


自分の運行ではない。


雪板は。


再び椅子へ座った。


「難しいです」


「運転より?」


「はい」


誠司は。


少し笑った。


「分かります」


*


夕方。


隊商共同便。


水車町行き。


雪板。


乗客。


誠司。


乗客兼教習確認者。


二人とも。


運転しない。


途中。


荷車の一台で。


荷紐の緩み。


停止。


運び手が直す。


誠司も。


雪板も。


手を出さない。


必要なら。


頼まれたときに補助する。


「直せます」


雪板が小声で言う。


「俺もです」


「でも?」


「今の運行担当がいます」


直せる人が。


全部やる。


それでは。


役目が育たない。


運び手自身が。


紐を締め直す。


確認。


出発。


水車町。


日没前。


到着。


人員共同便

西方第二水場→水車町


雪板――到着

田村誠司――到着


雪板が。


水車町乗継所へ。


自分の足で降りる。


個人札。


雪板。


確認。


「帰着先は?」


誠司が尋ねる。


「満宿」


「運行者一時帰着所では?」


雪板は。


一度考えた。


「今日は教習便なので」


「役目としては、帰着確認が必要です」


雪板が。


少し目を細める。


そう。


普通の乗客として。


水車町へ帰った。


同時に。


返却運転教習を終えた運転者でもある。


「先に帰着所」


「はい」


*


運行者一時帰着所。


雪板。


個人札。


西方返却運転。


終了。


車両。


西方第二水場。


引渡済み。


帰路。


人員共同便。


本人状態。


問題なし。


役目札。


返却済み。


個人札。


本人保持。


車両返却後帰着訓練――完了


サーラが。


帰着印を押す。


雪板は。


表示を。


長く見た。


「車がなくても」


「はい」


「帰着できる」


「はい」


「鍵も持っていない」


「はい」


「役目札もない」


「はい」


誠司が答える。


「だから、人として帰っています」


雪板は。


自分の個人札へ。


親指を置いた。


木製。


雪板の印。


「これだけで?」


「十分です」


*


翌日。


満タン便の実車教習。


雪板は。


まだ。


第三配送者役目受任票へ。


署名していない。


技能確認だけ。


車両返却所。


構内。


道路へは出ない。


誠司は。


最初に鍵を渡さなかった。


「まず降ります」


雪板が。


笑う。


「まだ乗っていません」


「乗ったつもりで」


教習項目。


一。


停止。


駐車制動。


変速位置。


エンジン停止。


鍵。


取り外し。


周囲確認。


扉。


降車。


鍵。


引渡。


個人札。


保持。


役目札。


返却。


「これを最初に覚えます」


誠司が言う。


「運転の終わらせ方」


雪板は。


一つずつ。


動作を確認する。


まだ。


鍵は差していない。


それでも。


最後まで。


一度やる。


次。


乗車。


座席位置。


鏡。


視界。


死角。


足。


クラッチ。


制動。


変速。


雪板は。


ほとんど迷わなかった。


「本当に覚えていますね」


ロウグが。


外から記録する。


雪板は。


ハンドルを握りながら。


少し困った顔をする。


「身体が先に動きます」


「分からない記憶は、今は使いません」


誠司が言う。


「今ここで確認したことだけを技能票に書きます」


雪板が知っている。


だから。


全項目合格。


とはしない。


今。


確認した動作だけ。


記録。


始動。


構内前進。


停止。


左折。


右折。


後退。


目標線。


停止。


二周。


三周目。


誠司が。


木箱を。


決められた死角位置へ置く。


雪板は。


発進しない。


鏡では。


見えない。


助手に確認。


ロウグ。


「左後方、障害あり」


雪板。


エンジン停止。


降車。


目視。


「動かさない?」


誠司が尋ねる。


「見えないので」


「正解です」


満タン便。


大きい。


荷台。


死角。


未来で運転できたから。


今も勘で動かしていい。


にはしない。


四周。


急制動試験。


低速。


正常。


五周。


受取位置へ。


停車。


雪板が。


教習最初の手順を。


一人で行う。


駐車制動。


変速。


停止。


鍵。


周囲確認。


降車。


鍵袋。


車両返却所へ。


役目札。


教習運転。


終了。


個人札。


雪板。


本人へ残る。


満タン便・車両M-001


水車町実車技能確認――完了


配送帳面が光る。


これまで。


初回教習受講――完了

教習実施時刻――未到来


だった表示が。


更新される。


初回教習受講――完了


実施地点――水車町車両返却所

教習担当――田村誠司


実施時刻――本日


未来側の記録と。


現在の実施記録が。


一つになった。


教習記録照合――一致


雪板が。


小さく息を吐く。


「一つ、追いつきましたね」


「はい」


「でも」


雪板は。


役目受任票を見る。


「まだ決めていません」


「はい」


誠司は。


手を伸ばさない。


*


雪板は。


その日。


満宿へ戻った。


答えは。


翌朝まで保留。


誰も。


催促しない。


そのあいだ。


水車町は普通に動く。


西。


水樽。


東。


豆。


南。


薬草。


北。


氷晶石。


人員共同便。


二名。


東方から水車町。


満タン便。


構内教習のみ。


通常運行なし。


配送網。


止まらない。


「候補者が決めている間も」


エレナが言う。


「仕事は進む」


「そうでないと」


サーラが答える。


「本人が“自分が決めないと全部止まる”と思います」


それでは。


自由な返事ではなくなる。


第三配送者候補が。


断っても。


物流網は。


今日も動く。


その状態で。


本人に選んでもらう。


*


翌朝。


雪板は。


一人で水車町乗継所へ来た。


そこから。


車両返却所。


満タン便の前。


誠司。


ロウグ。


サーラ。


ガラン。


必要な者だけ。


雪板が。


役目受任票を手にする。


第一最終帰還便・車両帰還担当


対象車両――満タン便・車両M-001


運行区間――水車町→日本側特装工場


車両正式引渡後――本人役目終了


帰着先――水車町運行者一時帰着所


帰着方法――人員帰還線


工場受領不能時――待機または車両ごと水車町返送


出発前辞退――可

工場正式受領前中止――可


工場正式受領後の水車町帰着――本人意思再確認


雪板が。


最後まで読む。


「第二最終帰還便は?」


「別です」


誠司が答える。


「この署名では引き受けません」


「再出発担当は?」


「別の役目です」


「返送庫?」


「もうあなたの役目ではありません」


雪板は。


目を閉じた。


少し。


それから。


「なら」


目を開ける。


「引き受けます」


ロウグが。


筆を渡す。


「個人名ではなく、雪板で?」


「はい」


本人が選んでいる個人識別。


雪板。


その印を。


受任票へ押す。


車両帰還担当――雪板

本人受任――確認


サーラ。


帰着先。


水車町運行者一時帰着所。


確認。


誠司。


教習。


確認。


ガラン。


車両状態。


現時点運行可能。


確認。


第三配送単位


車両帰還担当――雪板

登録


配送帳面が。


静かに光る。


未来側の。


候補


という文字が消えた。


第三配送単位


車両帰還担当――雪板

継承受領担当――ロウグ

帳面帰還担当――満タン便配送網

再出発担当――三浦直人・候補


登録済み――三件

候補――一件


第三配送者。


一人の人ではない。


三つ。


現在の意思が。


ようやく揃った。


「出発日は?」


雪板が尋ねる。


「まだ決めません」


ガランが笑う。


「引き受けたばっかりだぞ」


「車両最終点検」


誠司が指を折る。


「後継帳面の進捗」


「日本側工場の受入日」


「帰還基準者設定」


そこで。


言葉を止めた。


最後。


まだ。


田村誠司自身の問題が残っている。


帰還基準者――田村誠司

本人意思――未確認


満タン便を。


日本側で完成させるため。


必要な条件。


「先に」


雪板が言う。


「誠司さんが決める番ですね」


「そうなります」


*


雪板の受任登録をしたことで。


これまで。


詳細を開けなかった帰還基準者設定の説明欄が。


初めて表示された。


帰還基準者


車両が登録配送路、帰着地点、中継地点のすべてを喪失した場合に使用する最終帰還参照。


ロウグが読む。


「参照?」


続き。


帰還基準者を、車両の所有者・運転者・命令者として扱わない。


帰還基準者本人に、車両運行義務は発生しない。


誠司が。


少しだけ息を吐く。


名前を登録する。


イコール。


車を持つ。


運転する。


責任を一人で背負う。


ではない。


では。


何をするのか。


すべての帰路情報を失った場合。


車両は、帰還基準者本人が現在「帰る場所」として登録している地点を、安全帰還候補として参照する。


全員が。


誠司を見る。


「俺自身の場所ではない?」


「本人所在地ではありません」


管理人が答える。


誠司が。


帰る場所として。


登録している地点。


現在。


運行者帰着票。


誠司の第一帰着先。


水車町配送所


代替。


地域受入。


だから。


満タン便が。


全ルートを失った場合。


水車町を。


最後の帰還候補にする。


「なら」


ロウグが言う。


「誠司さんが日本へ戻った場合でも?」


表示。


帰還基準地点は、本人所在地に自動追従しない。


誠司が。


目を上げる。


それは重要だった。


誠司が。


いつか。


日本へ帰る。


水車町に残る。


別の場所へ行く。


どれを選んでも。


満タン便の帰還先が。


勝手についてくるわけではない。


「本人が変更しない限り」


サーラが言う。


「水車町のまま」


「はい」


なら。


なぜ。


田村誠司という個人名が必要なのか。


水車町配送所を。


最初から帰還基準地点にすればいい。


誠司は。


次を読む。


帰還基準地点の変更権限を持つ者――帰還基準者本人


つまり。


場所が。


壊れた。


街が移転した。


配送所がなくなった。


別の安全な拠点を。


帰る場所にしたい。


そのとき。


誰が変更を承認するか。


その人。


「永久に俺ですか」


誠司が尋ねる。


表示。


いいえ。


次の行。


帰還基準者は、後継者または組織へ権限移譲可能。


誠司は。


そこで。


少し眉を緩める。


一生。


個人名に縛りつける必要もない。


水車町の仕組みが育てば。


組織へ渡せる。


「それなら」


ガランが言う。


「思ったより普通の管理権限だな」


「まだ最後まで読みます」


誠司は言った。


契約書は。


安心したところで。


読むのを止めない。


最後の項目。


初期帰還基準地点――未登録


「未登録?」


ロウグが言う。


現在。


誠司の運行者帰着票には。


水車町。


登録されている。


なのに。


満タン便製造時の。


初期値。


未登録。


帰還基準者名――田村誠司


初期帰還基準地点――本人による初回登録待ち


「今、登録すれば」


エレナが言う。


「初めて場所が入る」


「はい」


その下。


注意。


初期登録後も変更可能。


登録地点は、本人の居住地である必要なし。


本人が「車両を帰したい場所」として選択すること。


誠司は。


水車町配送所の窓を見る。


共同荷車。


乗継所。


返送受入所。


車両返却所。


安全受付。


運行者一時帰着所。


それぞれ。


長い時間を掛けて作った。


帰る場所。


「今日は決めません」


雪板が。


少し笑った。


「今度は誠司さんですね」


「はい」


「未来では決まっていても?」


「今の俺が決めます」


雪板が頷いた。


同じだった。


*


その夜。


配送帳面が開いた。


第一配送記録・第三配送第一便

第三配送者候補は、運転できた。


私より上手かった。


私は鍵を渡そうとした。


彼女は受け取らなかった。


「帰る練習が先です」


私は言った。


「工場まで行けば、帰還線があります」


彼女は首を振った。


続く。


「線があることと、自分が帰れることは違います」


「車を置く」


「鍵を返す」


「役目を置く」


「それから、ただの自分として乗せてもらう」


「それを一度やってから、引き受けます」


第一配送者。


三浦直人は。


その練習を。


用意できなかった。


当時の水車町には、普通の人を運ぶ便がなかった。


荷物便。

救援便。

返送便。


人は、仕事か事故がなければ乗れなかった。


私は初めて気づいた。


配送網を作ったつもりで。

人がただ帰るための席を、一つも作っていなかった。


誠司は。


水車町乗継所の方角を見る。


今は。


ある。


誰かが。


役目を持たなくても。


乗れる席。


記録の最後。


彼女は言った。


「その席ができたら、また呼んでください」


私は、その席を作れなかった。


そして。


現在の配送帳面。


新しい一行。


人員共同便――稼働


運行者役目終了後帰着――対応可能


百年以上。


未完了だった条件が。


ようやく。


満たされる。


だが。


その下。


帰還基準者設定に。


新しい情報が現れた。


帰還基準者――田村誠司


初期基準地点登録――本人意思待ち


推奨候補地点――二件


一。


水車町配送所


当然。


今。


誠司が。


自分の帰着先として登録している場所。


そして。


二件目。


誠司の手が止まる。


日本側・旧配送拠点


「旧配送拠点?」


ロウグが読む。


誠司には。


そんな場所を。


帰還先として登録した覚えはない。


詳細。


田村誠司・過去帰着記録より抽出


帰着回数――四千二百十八回


誰も。


声を出さなかった。


日本側。


誠司が異世界へ来る前。


日々。


配送車で戻っていた場所。


営業所。


車庫。


配送拠点。


おそらく。


そこ。


四千二百十八回。


仕事を終え。


車を返し。


鍵を戻し。


毎日のように帰着した場所。


だが。


最後の表示だけが。


おかしかった。


日本側・旧配送拠点


現在状態――存在確認不能


水車町側記録名――始発配送所


「始発配送所……?」


日本側の。


誠司が働いていた配送拠点。


それが。


水車町の古い記録では。


「始発配送所」と呼ばれている。


満タン便の始発照会口。


日本側特装工場。


誠司の事故。


三浦直人。


すべてが繋がる日本側の起点。


その場所は。


偶然。


誠司が働いていた営業所だったのではない。


満タン便配送網が。


最初から。


始発点として登録していた場所だった。

雪板は、第三配送者候補としての返事をする前に、「車を置いたあと、自分が帰る練習」を行いました。


西方の修理済み共同荷車を自分で返却し、鍵と役目札を現地へ置いたあと、人員共同便の一人の乗客として水車町へ帰着。


続いて満タン便の実車教習も、役目受任とは切り離した「技能確認」として完了しました。


そして雪板は、自分の意思で第一最終帰還便の車両帰還担当を正式に受任。


第三配送単位は現在、


車両帰還担当――雪板

継承受領担当――ロウグ

帳面帰還担当――満タン便配送網


の三役が登録済みとなりました。


残る候補は、再出発担当の三浦直人です。


また、雪板の登録によって「帰還基準者」の詳細も開示されました。


田村誠司という個人へ車が自動追従する仕組みではなく、「満タン便がすべての帰路を失った際に、最後に帰す場所を変更できる権限」を持つ人です。


初期基準地点はまだ未登録。


候補は二つ。


現在の水車町配送所。


そしてもう一つは――誠司が日本で四千二百十八回も帰着していた「旧配送拠点」。


水車町側では、その場所を昔から「始発配送所」と記録していました。

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