第103話 十時間の到着票
日本側では、田村誠司の無事を知らせる到着確認票を、誰かが待っています。
待機期限は残り十時間。
しかし、日本側と異世界側では時間の進み方すら同じとは限りません。
誠司たちは長い説明を一度に送るのではなく、まず「無事である」という最も必要な情報だけを先に届けることにしました。
「帰るかどうかは、書きません」
水車町配送所。
始発照会口から届いた日本側の返答票を前に、誠司はそう言った。
紙の一番下には。
日本側到着確認票を返送してください。
帰着当番が待機しています。
待機期限――あと十時間。
と記されている。
サーラが返答票を見た。
「到着確認を返すのに、帰還意思も必要なのですか?」
「いいえ」
誠司は首を横に振った。
日本側から求められているのは。
田村誠司がどこかへ届いたか。
生きているか。
救援を継続する必要があるか。
まず、その確認だった。
帰る。
残る。
その選択とは別の話だ。
「一枚の紙に両方を書くと」
ロウグが言った。
「受け取る側が、無事確認と帰還判断を同じ手続きだと思うかもしれません」
「分けます」
誠司は紙を二枚出した。
一枚目。
――緊急到着確認票。
二枚目。
――帰還意思確認票。
帰還意思確認票には、まだ何も書かない。
今送るのは一枚目だけ。
「十時間しかないのなら、全部説明しようとしないほうがいい」
ガランが言った。
「長い手紙ほど、途中で詰まるからな」
満タン便の始発照会口は、つい昨日修復したばかり。
以前は何枚もの票が重なり、紙送り車輪で詰まっていた。
最初から大量の記録を送るべきではない。
誠司は到着確認票の項目を、必要最小限に絞った。
対象者――田村誠司
生命状態――異常なし
現在地――水車町配送所
救援受入――完了
帰還意思――未決定
次回照会――可能
本人署名――田村誠司
「これだけですか?」
エレナが尋ねた。
「発送理由も、第一配送者についても聞かない?」
「後です」
「待機期限の意味も?」
「後です」
今必要なのは。
待っている相手へ。
無事だと知らせること。
十の質問を載せて、到着確認そのものが遅れるくらいなら。
一つの答えを先に届ける。
物流と同じだった。
救援物資の荷車へ。
工具も。
手紙も。
商売の品も。
全部を積んで出発を遅らせるより。
今必要な水だけを先に出す。
「確認者も付けます」
サーラが言った。
本人だけの署名では。
意識や判断状態を、日本側が確認できない可能性がある。
誠司本人。
水車町配送所の受入側。
医療確認。
三つの欄を作る。
本人――田村誠司
現地受入確認――サーラ
健康状態確認――リア
リアが誠司を見る。
「頭痛、目眩、記憶の混乱は?」
「転移直前については欠けています」
「それ以外は?」
「問題ありません」
「睡眠は?」
「取れています」
リアは確認欄へ署名した。
通常会話、判断、歩行、運行業務可能。
転送直前の記憶に一部欠落あり。
無理に「健康」とだけ書かない。
分かっていることと。
分かっていないこと。
両方を送る。
サーラが受入確認を行う。
「田村誠司さんは、水車町配送所へ帰着登録されています」
帰還線。
恒常帰還先。
水車町配送所。
それも確認する。
「これで送れます」
ロウグが言った。
誠司は時計を見た。
「その前に一つ」
「時間差を調べますか?」
「調べません」
ロウグが少し驚く。
日本側で残り十時間。
こちら側で、どれだけの時間に相当するのか。
知りたい。
だが。
それを先に調べれば、確認票の送信が遅れる。
「時差は、到着票へ時刻を二つ書いて、返答側に記録してもらいます」
誠司は欄を一つ加えた。
水車町側送信時刻――現在
日本側受領時刻――受領側記入
送ってしまえば。
帰ってきた控えから、時間差を調べられる。
照合と配送を、別便にしない。
今必要な便の中へ、調査を組み込む。
「まず無事を返します」
*
満タン便を車両返却所へ移す。
今日は走らせない。
始発照会口を使うだけ。
それでも。
鍵。
車輪止め。
運行札。
作業者。
すべて記録する。
作業――日本側緊急到着確認票送信
使用設備――満タン便始発照会口
車両走行――なし
前回修復した灰色の板を開く。
紙送り車輪。
傷なし。
ゴム表面。
剥がれなし。
返却口。
空。
送信筒。
異物なし。
「試験票は?」
ロウグが尋ねた。
誠司は首を横に振った。
「今日は入れません」
「故障確認をしなくて大丈夫ですか」
「目視確認はしました」
時間に余裕がある通常便なら。
試験票を一枚送る。
戻りを確認。
そのあと本便。
だが今日は。
照会口を使ったばかりで、前回の動作記録も正常。
試験票そのものが、送信経路を一回使う。
待機期限がある状況で。
必要のない一往復を増やさない。
「確認を省くのではなく」
サーラが言う。
「前回の確認記録を使う」
「はい」
毎回、最初から全部やり直すわけではない。
いつ確認したか。
その後に何があったか。
そこから判断する。
誠司は到着確認票を投入口へ入れた。
原本ではない。
水車町には、同じ内容の控えを残している。
紙の上端だけを送り車輪へ噛ませる。
「水車町始発照会第二号」
ロウグが読み上げた。
「緊急到着確認」
「宛先」
「日本側配送所・帰着当番」
「返答先」
「水車町配送所」
誠司が運転席へ座る。
エンジンは掛けない。
確認板が現れる。
優先区分を選択してください。
通常。
記録。
救援。
三つ。
「救援」
誠司が選ぶ。
続いて。
救援区分では、添付資料を最小限にしてください。
「向こうも同じことを言ってるな」
ガランが苦笑する。
添付はなし。
到着確認票一枚だけ。
「送信します」
誠司が押し板を押した。
からり。
紙送り車輪が動く。
到着票が奥へ入る。
風の音。
前回、日本側へ照会を送ったときより短い。
補給網中継器へ表示が出る。
水車町始発照会第二号
区分――救援
日本側配送所へ送信中
十七。
三十一。
五十。
七十四。
九十二。
百。
送達完了
日本側受領確認待ち
「届いた」
ロウグが言った。
まだ受領ではない。
送達しただけ。
相手が確認し。
受領印を返すまで。
便は終わらない。
「満タン便を復旧します」
誠司は運転席から降りた。
返事を待つために。
始発照会口を開けたままにしない。
灰色の板を戻す。
留め具。
ねじ。
足元。
確認。
鍵を車両返却所へ戻す。
運転者帰着印。
車両確認。
作業終了。
後は、受信を待つ。
*
「今から全員で返事を待たないでください」
配送所へ戻った誠司が言った。
仕分け場では。
西方共同便が荷降ろし中。
南方から薬草箱が二つ届いている。
東方では、共同荷車の一台が予定より遅れている。
北方の氷晶石便は、翌朝着予定。
日本側への到着確認は重要だった。
だが。
そのために、四方向の配送を止めてはいけない。
「受信当番だけ残します」
サーラが割り当てる。
最初の一時間。
ロウグ。
次。
エレナ。
三人目。
サーラ。
三十分ごとに始発照会口を確認。
音がした場合は、二人以上で返答票を受け取る。
「誠司さんは?」
「通常業務へ戻ります」
日本側からの返事を待つ本人が。
一番、照会口へ張り付かない。
何度確認しても。
返事が早くなるわけではない。
誠司は西方共同便の仕分けへ入った。
水樽。
空樽。
修理金具。
乾燥果実。
帰りの荷物。
一つずつ確認する。
途中。
何度も車庫の方角が気になった。
それでも。
運行札を読む。
荷姿を確かめる。
受取人を確認する。
日本側に待つ者がいる。
こちらにも。
今日、荷物を待つ人がいる。
一方の待つ人を大事にするために。
別の待つ人を忘れてはいけない。
*
昼前。
南方の薬草箱について、照会札が届いた。
前日に差出担当が読めなくなっていた箱。
花渓の里から返答。
発送担当――薬師補助ミナ
発送事実――確認
雨天により差出票破損
本人署名――現地保管帳で照合
差出確認待ちから。
確認済みへ。
薬草はすでに保冷庫へ入っている。
止めなかった。
確認だけがあとから追いついた。
「発送確認、完了」
ロウグが運行帳を更新する。
その直後。
車庫から。
からん。
音がした。
誠司の手が止まる。
だが走らない。
近くにいた仕分け係へ声を掛ける。
「受信当番を呼んでください」
「誠司さんが行かないんですか?」
「二人確認です」
自分宛ての返事。
だからこそ。
自分一人で取り出さない。
ロウグとサーラが先に車庫へ向かう。
誠司は西方便の荷札を、担当者へ正式に引き継いでから向かった。
途中の仕事を放り出さない。
車庫へ着く。
返却口から、紙の端が見えていた。
時刻。
位置。
状態。
記録。
サーラが受け取る。
薄い日本側の紙。
上部には。
緊急到着確認 受領済
大きな文字。
その下。
対象者 田村誠司
生命状態 確認
救援先 確認
救援先不明処理 取消
捜索継続処理 停止
帰還意思 保留として受領
誠司の肩から。
わずかに力が抜けた。
「保留でいいんですね」
ロウグが言った。
「今すぐ帰るか、残るかを答えなくていい」
続けて。
帰着当番からの文章。
田村さんへ。
無事確認しました。
現在地の詳細についてはこちらでは照合できませんが、生存および受入先の存在を確認しています。
帰還の判断は、救援確認とは別に扱います。
今すぐ決める必要はありません。
事故当日の担当配送分は、すべて代走へ引き継ぎました。
未配達のまま残っている荷物はありません。
使用車両も回収済みです。
誠司は、その一行をもう一度読んだ。
事故当日の配送分。
すべて代走へ引き継ぎ済み。
未配達なし。
自分が途中でいなくなったあと。
誰かが。
残りの荷物を受け取った。
誰かが走った。
届けた。
「誠司さん」
ロウグが声を掛ける。
「大丈夫ですか」
「はい」
誠司は返答票を折らず、台へ戻した。
日本で。
自分がいなくなれば。
荷物が全部止まっているのではないか。
そう考えたことがなかったわけではない。
けれど。
止まっていなかった。
別の運転手へ。
別の便へ。
荷物は引き継がれていた。
水車町で。
今やっていることと同じだった。
自分が走らなくても。
荷物は続く。
「帰ってから謝らなければならないと思っていました」
誠司が呟いた。
「誰に?」
「待たせた相手に」
返答票には。
待たせた荷物はないと書いてある。
もちろん。
事故そのもの。
職場。
関係者。
話すことはあるだろう。
それでも。
荷物については。
すでに次の人が受け取っていた。
「引き継がれていたんですね」
「はい」
誠司は短く答えた。
*
返答票には、送信時刻と受領時刻も記されていた。
水車町側。
送信時刻。
日本側。
受領時刻。
さらに。
返答送信時刻。
水車町側。
受領時刻。
管理人が補給網の照合表示を出す。
時間差照合――不定
固定換算不可
「一時間が何分になる、という関係ではないのですか」
エレナが尋ねる。
「はい」
管理人が答えた。
「始発線の中では、配送状態によって時間差が変わります」
運送中。
中継待機。
受領待ち。
帰還待ち。
状態によって。
二つの世界の時間の進み方が変化する。
「では、残り十時間という表示は?」
日本側待機期限――解除
すでに消えている。
到着確認が受領されたため。
帰着当番は、期限付きで待つ必要がなくなった。
次回連絡期限――なし
本人判断待ち
「間に合ったかどうかは?」
ロウグが尋ねる。
補給網が答える。
日本側残余待機時間
到着確認受領時――九時間十二分
水車町で数時間。
作業し。
仕分けを行い。
昼近くまで待った。
それでも。
日本側では、四十八分しか経過していなかった。
「だからといって、次からゆっくりしていいわけじゃありません」
誠司が言った。
時間差は固定されていない。
今回は。
早く届いた。
次も同じとは限らない。
「期限のある照会は、受け取ったら先に必要最小限を返す」
サーラが安全受付帳へ書く。
日本側の一件から。
水車町の新しい運用が作られる。
緊急照会返信規則
一、期限の有無を確認
二、最初の返信は必要最小限
三、詳細照会は別便
四、返答期限と受領確認を記録
五、回答不能項目は「確認待ち」と明記
一枚の到着票が。
また一つ。
物流の仕組みへ変わった。
*
だが。
日本側から届いたのは。
到着確認の受領だけではなかった。
返答票の裏面に。
追加資料 一件
と書かれていた。
サーラが裏返す。
別の細い紙が、二枚重ねになっている。
一枚目。
誠司が事故当日に使っていた配送端末の記録。
回収車両内端末
最終業務記録
通常の配送先。
荷物番号。
時間指定。
完了。
次。
完了。
その下に。
見覚えのない業務が一件。
臨時救援配送
対象 田村誠司
配送先 第二配送単位
実行条件 運転者生命危険
状態 待機
「待機?」
誠司は紙を見た。
「事故が起きる前から登録されていた?」
登録日時が書かれている。
事故の三日前。
北方一号が。
誠司を受取人へ変更した日。
朝間補給契約を開始した日。
そして。
第二配送単位に、田村誠司が発送登録された日。
同じ日だった。
「第一配送者が登録したのでは?」
ロウグが尋ねる。
二枚目の紙に。
操作記録がある。
業務登録端末――田村誠司使用端末
操作区分――本人操作
認証――有効
登録者ID――田村誠司
誠司は、しばらく紙を見つめた。
「覚えていません」
事故の三日前。
自分が。
自分の配送端末へ。
自分自身を緊急救援対象として登録した。
そんな記憶はない。
「認証が有効とは?」
エレナが尋ねる。
返答票に説明がある。
代理入力なし。
管理者入力なし。
遠隔操作記録なし。
端末所持者本人による操作として記録。
「第一配送者が端末を使った可能性は?」
「記録上は、ありません」
サーラが答える。
さらに。
日本側帰着当番からの追記。
この臨時業務は、通常の配送システムでは作成できません。
事故後の端末回収時まで、社内側では表示されていませんでした。
端末内部にのみ保存されていました。
誰がどのように登録したものか、こちらでも確認できていません。
通常業務ではない。
会社側には見えていない。
だが。
誠司本人の端末には。
事故の三日前からあった。
自分が生命の危険に陥ったとき。
第二配送単位へ送る。
そのための救援便。
「第一配送者が道路で偶然見つけたわけではない?」
ロウグが言った。
誠司は首を横に振る。
「音声記録では、見つけたと言っていました」
第一配送者は。
日本側の道路で。
事故に遭いかけている誠司を発見した。
通常救援では間に合わないと判断し。
満タン便へ運転者だけを移した。
その記録自体は。
日本側の緊急転送記録とも一致する。
ただし。
その救援を受け取るための入口だけは。
三日前から準備されていた。
「誰かが事故を知っていた」
エレナが言った。
「あるいは」
管理人が、慎重に言葉を選ぶ。
「事故が起きたから、三日前に記録が作られたのかもしれません」
「順番が逆になるんですか?」
「始発線の時間差は固定ではありません」
管理人は答えた。
「通常の前後関係まで保証されるとは、記録に書かれていません」
原因が先。
結果が後。
それすら。
二つの世界の間では。
必ずしも同じ順序とは限らない。
誠司は日本側の端末記録を見た。
本人操作。
認証有効。
自分が作ったことになっている。
「推測では埋めません」
誠司は言った。
「本人操作という記録と、俺に記憶がないという事実。両方を残します」
水車町運行安全受付所へ。
新しい黄色票を提出する。
水車町安全第七号
区分――記録異常
対象――田村誠司日本側発送記録
現象――本人記憶のない本人認証操作
端末記録――本人操作
本人申告――操作記憶なし
原因――未確認
仮説――記載しない
次回確認――日本側端末操作原票、第一配送者音声記録
誰がやったのか。
今は書かない。
未来の自分。
第一配送者。
北方一号。
補給網。
どれも。
まだ証明されていない。
「次に確認できるのは」
ロウグが言う。
「第一配送者の音声記録の続きです」
残り二十九パーセント。
途中で切れたところ。
私の本当の登録順は――
北方一号の体調は。
今日も安定している。
だが。
日本側から返答が来たからといって。
すぐ音声再生へ進まない。
「今日はここまでです」
誠司が言った。
「到着確認便は、受領されました」
一つの便が終わった。
次の便は。
別の日に出す。
*
夕方。
水車町配送所の掲示板へ。
小さな新しい札が付けられた。
緊急照会――受領済
日本側――田村誠司無事確認
詳しい事情は書かない。
個人の情報を。
街中へ広げない。
それでも。
誠司がずっと気にしていた日本側へ。
無事だという知らせが届いたことだけ。
仲間たちへ伝えた。
ガランが見上げる。
「向こうの荷物も、全部届いたんだってな」
「はい」
「なら、一件くらい肩から降ろしていいだろ」
誠司は笑うでもなく。
しばらく札を見た。
「そうします」
事故の日。
自分が持っていた配送分。
それは。
別の人へ渡った。
自分の仕事だった。
けれど。
自分だけにしかできない仕事ではなかった。
そのことを。
水車町で何度も学んでいた。
日本でも。
同じだった。
*
夜。
配送帳面が新しいページを開いた。
第一配送記録・始発第二便
田村誠司の救援枠は、私が作ったものではない。
日本側の道路で彼を見つけたとき。
始発照会口には、すでに一件の空きがあった。
対象者。
田村誠司。
状態。
緊急時のみ使用。
私は、それを使っただけだ。
誰が枠を作ったのか調べた。
補給網は答えた。
「本人です」
私は、まだ事故に遭っていない本人へ確認しようとした。
だが始発線は、その照会を受け付けなかった。
理由は一つだった。
「発送前の荷物へ、到着後の照会を送ることはできません」
記録の下に。
日本側端末の操作情報が表示される。
臨時救援配送登録
登録者――田村誠司
本人認証――有効
登録日時――事故三日前
さらに。
今まで表示されていなかった欄。
登録命令発行地点――水車町配送所
ロウグが息を呑んだ。
事故の三日前。
日本にいた誠司の配送端末へ。
水車町配送所から。
臨時救援配送の登録命令が送られている。
だが。
その三日前。
誠司はまだ。
水車町の存在すら知らなかった。
最後の一行が現れた。
命令発行者――田村誠司。
日本にいた田村誠司の救援便を。
水車町にいる田村誠司が登録した。
補給網の記録は。
そう示していた。
日本側へ、必要最小限の「緊急到着確認票」が送られました。
誠司の無事は正式に確認され、「救援先不明」としての処理は停止。
帰るか残るかについても、今すぐ決める必要はないと確認されました。
また、事故当日に誠司が残した配送物は、すべて別の運転者へ引き継がれ、未配達品はないことも判明しています。
しかし日本側の配送端末には、事故の三日前から誠司自身を対象にした緊急救援便が登録されていました。
しかも、その登録命令の発行地点は水車町配送所。
発行者は――田村誠司。
まだ水車町へ来ていないはずの誠司が、自分自身の救援便を先に手配していたことになります。




