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毎朝満タンになる補充トラックで異世界配送を始めました  作者: たむ


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102/152

第102話 始発点への照会票

第二配送単位に欠けていた第四の役目。


それは、日本側配送所から田村誠司を送り出した「差出担当」でした。


けれど、差出人が不明だからといって、推測した名前で空欄を埋めることはできません。


誠司たちは、自分がこの世界へ来た理由を探す前に、始発点へ正しく問い合わせを返す道を作ります。

「俺が差出人欄へ署名することはできません」


朝の水車町運行安全受付所。


誠司は、差出担当の欄が空いたままの役目札を机へ置いた。


第二配送単位


運行担当――田村誠司

帰還担当――北方一号

待機担当――返送庫預かり手

差出担当――未受領


ロウグが帳面を見ながら言う。


「誠司さん本人の配送です。本人確認として署名する方法はありませんか」


「到着した人間としてなら署名できます」


誠司は答えた。


「でも、送り出した人間としては署名できない」


荷物を受け取った者が、差出人の欄まで埋める。


それでは記録の意味がなくなる。


自分は確かにこの世界へ来た。


水車町で暮らしている。


満タン便を運転している。


それは到着後の事実だった。


だが。


誰が。


どこで。


何のために。


田村誠司という人員を日本側から発送したのか。


誠司自身は知らない。


「差出人が見つからない場合、配送は永遠に終わらないのでしょうか」


エレナが尋ねた。


補給網中枢の管理人は、しばらく考えた。


「古い配送規則には、差出署名の代替手続きがあります」


「代筆ですか」


「いいえ」


管理人は首を横に振った。


「差出人の名を書く手続きではありません。発送が実際に行われたことを、別の記録で確認する手続きです」


署名がない。


だからといって、発送そのものが存在しなかったとは限らない。


事故。


災害。


緊急救援。


差出人が負傷している。


文字を書けない。


すでにその場を離れている。


さまざまな事情がある。


「署名と、発送証明を分けるんですね」


サーラが言った。


「はい」


誠司は白紙を二枚並べた。


一枚目。


――差出人確認票。


誰が送り出したかを確認するための紙。


二枚目。


――発送事実証明票。


誰が送り出したか分からなくても。


いつ。


どこから。


何が。


どの便へ載せられたか。


その事実を確認する紙。


「人員の場合は、本人の意思も必要です」


リアが言った。


誠司は欄を加えた。


本人同意

確認済み

未確認

緊急時省略

本人拒否


「拒否があれば、発送できない」


「原則は」


リアが答える。


「ただし、生命の危険があり、本人が意識を失っている場合は、同意を確認できなくても移動させることがあります」


「その場合、緊急時省略と理由を残す」


ロウグが書き込む。


「未確認のまま、確認済みにしない」


「はい」


誠司は、自分の発送事実証明票を見た。


取扱分類――人員

荷札名――田村誠司

出荷地点――日本側配送所

出荷日時――異世界到着三日前

本人同意――不明

差出担当――不明

発送理由――不明


ほとんどが空欄だった。


「これを日本側へ返します」


誠司は言った。


「分かる者に、分かる欄だけ書いてもらう」


「日本側への経路はあるのですか」


ロウグが尋ねる。


配送帳面に表示されているのは。


出荷地点、日本側配送所。


だが地図にはない。


西でも。


東でも。


南でも。


北でもない。


管理人は、満タン便の図面を広げた。


「帰還線が接続したことで、始発点への照会だけは可能になっているはずです」


「人や荷物も送れる?」


「現時点では、記録だけです」


紙。


署名。


受領票。


運行確認。


始発側へ返せるのは、配送を完了させるための情報だけ。


「照会口は、どこにありますか」


「満タン便の運転席です」


また。


運転席だった。


第一配送者の未降車記録。


音声事故報告。


第一配送者宛て書簡の宛先変更候補。


帰還線の起点。


そして。


日本側への始発照会口。


複数の未処理記録が、一つの場所へ集まっている。


「助手席箱とは別ですか」


ガランが尋ねた。


「別です」


管理人は運転席下部を指した。


「古い図面では、運行票返却口と記されています」


ガランが車体を見に行こうとする。


誠司が止めた。


「先に、満タン便を止められる時間を決めます」


「板を一枚外すだけかもしれんぞ」


「外してみるまで分かりません」


満タン便は、救援。


医療。


保冷。


回収。


四つの優先便に使う車両。


運転席周辺を分解している最中に緊急依頼が入れば、すぐには動かせない。


修理を始める前に。


代替手段。


作業終了時刻。


途中で戻せる状態。


すべてを決める。


「午後の三時間を使います」


誠司は運行板を確認した。


西方、東方、南方、北方。


循環共同便は動いている。


水車町周辺の救援用には、ガランの小型荷車。


医療用には、リアの薬草便車両。


満タン便でなければ運べない依頼が入った場合は。


運転席を三十分以内に復旧できる段階で作業を止める。


「外した部品は、順番どおり並べます」


ロウグが作業記録票を用意した。


「取り外し時刻。部品番号。傷。戻す位置」


「予備の留め具も先に作る」


ガランが言った。


「外してから折れてると分かっても、待たせんようにな」


謎を調べる作業も。


車両整備と同じだった。


急に開けない。


戻す準備をしてから始める。


*


午後。


満タン便は車両返却所の点検線へ入れられた。


燃料。


車輪止め。


鍵。


運行中止札。


すべて確認する。


助手席側には、赤い札。


整備中

緊急運行の場合、車両管理者へ連絡


運転席の下。


足元の奥に、灰色の板がある。


普段は床材の一部に見えていた。


ガランが留め具を調べる。


二つは通常のねじ。


三つ目は、頭の形が違う。


「工具が合わんな」


管理人が古い図面を確認する。


「回転させるものではありません。押しながら横へ滑らせます」


ガランが細い板で、留め具の中央を押す。


そのまま左へ。


かちり。


金具が外れた。


灰色の板を手前へ引く。


奥から、細長い金属箱が現れた。


紙を一枚ずつ通す程度の幅。


上には、小さな投入口。


下には、返却口。


左右に二本の細い筒がつながっている。


一本は、車体の奥へ。


もう一本は、運転席の背後へ伸びていた。


「始発照会口」


管理人が古い文字を読む。


ロウグが現在の共通語で札を付ける。


箱の中には、紙が詰まっていた。


一枚ではない。


何枚も重なっている。


黒く変色し。


端が固まっている。


ガランが引き抜こうとする。


「待ってください」


エレナが止めた。


「文字が残っているかもしれません」


紙の位置を記録する。


上向きか。


下向きか。


何枚重なっているか。


見える範囲で数える。


少なくとも六枚。


「乾いています」


エレナが言った。


「無理に曲げると割れます」


温かい室内へ急に持ち込まず。


車両返却所の中で。


少しずつ湿度を整える。


乾いた布を周囲へ置く。


紙そのものへ水は付けない。


箱の側面を外す。


一番外側の紙を、薄い板ごと支える。


ゆっくり持ち上げる。


紙は。


二枚ずつ重ねられていた。


上が原票。


下が写し。


昔の複写票らしい。


「二枚同時に入れたんじゃない」


ガランが送り機構を見る。


「本来、二枚一組で通す仕組みだ」


では。


なぜ詰まったのか。


さらに調べる。


紙送りの小さな車輪。


表面が硬くなり。


一部が欠けている。


回転すると、紙の片側だけを強く引く。


斜めに進み。


途中で折れ。


次の票が重なった。


「最初の一枚が詰まったあとも、何度も送った」


ロウグが六枚の票を見る。


「誰かが、同じ照会を繰り返したんですね」


第一配送者か。


北方一号か。


管理人か。


分からない。


今は内容を読まない。


まず、紙を一枚ずつ番号付きの保管板へ移す。


始発照会口・残置票一

残置票二

残置票三


原票と写しを分けず。


組のまま。


開封権限を確認できるまで保管する。


ガランは紙送り車輪を外した。


同じ大きさの部品はない。


だが、満タン便の工具箱には。


以前、可動枠の振動を抑えるために使った厚いゴムの切れ端が残っている。


「これを巻く」


金属の芯。


その周囲へ薄く削ったゴム。


厚さをそろえる。


一度に接着しない。


仮止めして回す。


左右の送り量を測る。


最初は、右がわずかに速い。


削る。


もう一度。


紙の代わりに、同じ厚さの布を二枚重ねて通す。


斜めにならない。


次に、不要な紙。


二枚一組。


投入口。


手動の小さな取っ手を回す。


紙は箱の中を通り。


返却口から、まっすぐ出てきた。


「動く」


ロウグが時刻を記録した。


だが、照会先へ送る筒とはまだつながっていない。


紙送り機構が直っただけ。


「送信試験をします」


原本は使わない。


水車町の試験票を二枚作る。


一枚目。


始発照会口・動作確認

差出地――水車町配送所

返答先――水車町配送所

内容――受領印のみ返送


二枚目は控え。


番号。


水車町始発試験第一号。


投入口へ入れる。


誠司は運転席へ座った。


始発照会口の横に、手のひらほどの押し板が現れる。


「運転者確認が必要です」


管理人が言った。


誠司が押す。


箱の中で、紙送り車輪が動いた。


からり。


からり。


照会票が奥へ吸い込まれる。


細い筒の中を、風が走った。


補給網中継器の表示が現れる。


始発照会口――再稼働

試験票――送信


返答経路――接続確認中


数字。


二十。


四十。


六十。


八十。


百。


水車町始発試験第一号

返答経路――接続完了


すぐに、運転席背後の筒から音がした。


からん。


返却口へ、一枚の紙が落ちる。


送った試験票。


下部に。


二本の手の受領印が押されていた。


受領地点――水車町配送所

往復確認――完了


同じ場所から送り。


同じ場所へ戻しただけ。


それでも。


送り口と返却口。


原票と控え。


受領印。


一連の仕組みが動くことは確認できた。


「次は、日本側です」


ロウグが言った。


誠司は時計を見た。


作業開始から二時間二十分。


予定した三時間まで、四十分。


満タン便を復旧する時間を含めれば。


今日の送信作業に使えるのは二十分。


「照会票は準備済みです」


サーラが差出人確認票を持ってくる。


「送れます」


誠司は紙を見た。


だが。


一か所だけ、まだ埋めていない。


本人同意。


「未確認と書きます」


誠司は筆を取った。


確認済みにしない。


覚えていないのなら。


覚えていないと記録する。


本人同意――未確認


田村誠司本人は、発送手続き、差出担当者、発送理由を記憶していない。


さらに。


到着後の事実を添える。


現在地――水車町

生命状態――異常なし

本人意思――到着理由の照会を希望

帰還先――水車町配送所

返答希望――差出担当、発送理由、本人同意の扱い


「発送事実の証明は?」


ロウグが確認する。


添付するのは写しだけ。


第二配送単位の記録。


水車町での最初の配送記録。


満タン便の運転席登録。


異世界到着三日前の出荷時刻。


個人札と役目札の分離記録。


原本は送らない。


始発照会口で詰まる可能性は、まだゼロではない。


失ってはいけない記録は、水車町へ残す。


「日本語の票も入れます」


誠司は、もう一枚用意した。


発送担当者様


田村誠司です。

私は現在、安全な場所にいます。


私がいつ、どのような理由で発送されたのか、記録を返してください。

本人同意を確認できなかった場合は、そのまま記載してください。


差出署名を代筆せず、担当者本人の確認をお願いします。


異世界語の照会票。


日本語の照会票。


二枚を一組にする。


間に薄い保護紙。


折らない。


上下。


差出方向。


返答欄。


すべて確認する。


「水車町始発照会第一号」


ロウグが読み上げる。


「宛先、日本側配送所」


「内容、田村誠司人員発送の差出確認」


「開封権限、日本側差出担当」


「返答先、水車町配送所・始発照会口」


二人以上で読み合わせる。


誠司は票を投入口へ入れた。


押し板へ手を置く。


「送信します」


紙送り車輪が動く。


からり。


からり。


照会票が奥へ入る。


風の音。


先ほどより長い。


細い筒の奥で。


何度も曲がり。


遠くへ進んでいくような音。


補給網中継器に表示が現れる。


水車町始発照会第一号

宛先――日本側配送所


始発線照合――開始


数字。


五。


十一。


二十三。


三十六。


四十八。


そこで止まった。


中継待機


「届いていない」


エレナが言った。


「途中までです」


誠司は時刻を見る。


車両復旧開始まで、十五分。


「今日は戻します」


「もう少し待てば」


ロウグが言いかける。


誠司は首を横に振る。


「満タン便を使える状態へ戻す時間です」


照会が途中でも。


紙は経路上で待機している。


運転席を開いたままにしても、早く進むとは限らない。


灰色の板を戻す。


留め具。


順番。


押し込み。


横へ。


通常ねじ。


床材。


工具。


取り外した部品数と、戻した部品数を照合する。


残りなし。


運転席。


足元。


制動操作。


問題なし。


誠司が車両を短く動かす。


停止。


異常なし。


予定した三時間以内に、満タン便は運行可能状態へ戻った。


運行安全受付所へ記録する。


水車町安全第六号

作業――満タン便始発照会口修復

作業時間――二時間五十三分

交換部品――紙送り車輪表面

残置票――三組保管

送信試験――成功

日本側照会――中継待機

車両復旧――完了


謎を追う作業で。


優先車両を止めた。


だから。


止めた時間と。


戻した状態まで。


安全記録へ残す。


*


始発照会の返答を待つ間。


差出署名がない荷物の取扱いも、四方向へ伝えられた。


これまでは。


差出人の名前がない荷物は、受け取らない地域もあった。


盗品。


置き忘れ。


押し付け。


そうした物と区別できないからだ。


一方で。


文字を書けない者。


名前を名乗れない者。


災害で帳面を失った者。


そうした差出人の荷物まで止まっていた。


新しい規則では。


署名がないことだけで拒否しない。


代わりに。


発送場所。


時刻。


荷物の外装。


預託印。


二人以上の確認。


発送理由。


返送先。


分かるものを記録する。


本人確認ができない場合は。


差出人不明


ではなく。


差出人確認待ち


と書く。


「不明と確認待ちは違います」


誠司は仕分け係へ説明した。


「不明は、調べても分からない状態。確認待ちは、返事を待っている状態です」


待っている荷物を。


捨てられた荷物として扱わない。


西方では、砂嵐の避難所に置かれた水袋。


東方では、道端の目印柱へ預けられた手紙。


南方では、豪雨で差出票が読めなくなった薬草箱。


北方では、返送庫の預かり手が残す補給品。


名前がなくても。


来た経路と責任を残せれば。


次へつなげられる。


その日の夕方。


南休所から最初の照会票が届いた。


雨で差出欄が消えた薬草箱。


外装に。


花渓の里で使う花印。


選別担当の結び紐。


採取日を示す葉の数。


三つの発送証明が残っている。


リアが照合する。


「花渓の里からの便で間違いありません」


ただし。


誰が選別したかは読めない。


新しい取扱票を付ける。


差出担当――確認待ち

発送事実――確認済み

荷物状態――正常

水車町到着後、花渓の里へ受領照会を返送


荷物は止めない。


薬草は予定どおり保冷庫へ。


差出確認だけを別便で戻す。


翌日の南方循環便へ照会票を載せる。


「荷物と確認票を、別々に動かせるんですね」


仕分け係が言った。


「荷物を止める必要がなければ」


誠司は答えた。


「確認だけを往復させます」


始発点への照会。


それは。


日本側の謎のためだけではなかった。


名前や署名を失った荷物を。


正しく受け取るための新しい往復便になった。


*


夜。


北方一号は、助手席箱の鍵を手元に置いたまま眠っていた。


体調は安定している。


第一配送者の音声記録。


残り二十九パーセント。


再生は、翌日以降。


個人札と役目札が分かれたことで。


次の再生は誠司本人と北方一号本人だけに記録される。


安全受付所。


運行者一時帰着所。


移乗路。


準備は整っている。


だが。


始発照会口の表示は、まだ四十八パーセントで止まっていた。


水車町始発照会第一号

中継待機


誠司は配送所の机で、運行帳を整理した。


南方の薬草。


差出確認待ち。


西方の水袋。


受領照会準備。


東方の手紙。


預託印確認。


日本側への照会。


中継待機。


待っている確認が増える。


だから。


期限も決める。


返答がなかった場合。


一日後。


三日後。


七日後。


次に何を確認するか。


「日本側は、何日待ちますか」


ロウグが尋ねた。


「こちらの七日で区切りましょう」


「返答がなければ?」


「再送は一回だけ」


何度も同じ票を送れば。


また始発照会口が詰まる可能性がある。


一通目の所在を確認してから。


二通目を出す。


「急ぎませんね」


「日本側の経路が、どれだけ長いか分からない」


誠司は答えた。


距離ではない。


時間の流れも。


同じとは限らない。


その言葉を口にしたとき。


車庫の方角から。


からん。


小さな音がした。


誠司とロウグは、満タン便へ向かった。


運転席の灰色の板は閉じている。


だが。


足元の返却口から。


紙の端が一枚、出ていた。


「中継待機だったはずです」


ロウグが補給網中継器を見る。


表示は。


始発線照合――百パーセント

返答票――受領待ち


誠司はすぐに紙を引かなかった。


時刻。


発見位置。


紙の向き。


外装。


記録する。


サーラとエレナを呼ぶ。


二人以上で確認する。


返答票を、ゆっくり引き出した。


薄い紙。


見慣れた異世界の紙ではない。


日本で使われていた感熱紙に似ている。


端に、小さな黒い四角が並んでいた。


日本語。


誠司には読める。


緊急人員転送記録


取扱対象 田村誠司

発送区分 緊急救援

本人同意 取得不能

省略理由 意識消失、生命危険あり

発送元 日本側道路上・配送車運転席

受領先 第二配送単位


差出担当 第一配送者


誰も声を出さなかった。


第一配送者。


誠司を日本側から送り出した差出担当。


録音が作成されたのも。


誠司が異世界へ来る一日前。


「第一配送者は、日本側にいた」


ロウグが小さく言った。


誠司は記録を読み進めた。


救援事由


対象車両、道路外転落の危険。

制動操作不能。

運転者、意識反応なし。

通常救援到着まで生命維持困難と判断。


車両ではなく、運転者のみを緊急転送。


誠司の記憶に。


白い霧があった。


夜の道路。


前方の光。


ハンドルが重くなった感覚。


その先は。


異世界の草原だった。


事故に遭う直前だったのか。


すでに事故が起きていたのか。


覚えていない。


記録は続く。


差出署名 未完了


未完了理由

差出担当者の降車手続き未完了。

差出担当者は現在も、転送車両運転席に登録中。


満タン便。


運転席。


第一配送者は。


誠司を救援転送したあと。


差出署名を終えないまま。


運転席へ残った。


署名代行 不可


署名受領条件

第一配送者の音声事故報告完了。

北方一号による帰着受領。

差出担当者の降車完了。


誠司自身の配送を完了させるためには。


第一配送者の帰着を終わらせなければならない。


二つの配送は。


別のものではなかった。


最後に。


返答票の下部へ、細い欄があった。


日本側到着確認票を返送してください。

帰着当番が待機しています。


「日本側にも、待っている人がいる」


サーラが言った。


誰なのかは書かれていない。


家族か。


同僚か。


救援担当か。


それとも。


第一配送者とは別の、配送所の人間か。


誠司は、その下の時刻表示を見た。


日本側経過時間

発送から三日と十四時間


誠司がこの世界へ来てから。


街道を直した。


西方をつないだ。


東方の補給庫を復旧した。


南方の薬草便を作った。


北方へ進んだ。


北方一号を連れ帰った。


多くの日が過ぎている。


それでも。


日本側では。


まだ三日と十四時間しか経っていなかった。


配送帳面が、静かに新しい項目を表示した。


日本側帰着当番――一名

状態――待機中


待機期限――あと十時間。


誠司の無事を知らせる到着確認票を。


日本側では。


今も誰かが待っている。


しかも。


待機期限は、残り十時間。


こちらの時間で十時間なのか。


日本側の十時間なのか。


表示だけでは分からなかった。


その夜。


第一配送記録の新しいページが開いた。


第一配送記録・始発第一便

私は、日本側の道路で田村誠司を見つけた。


彼の配送車は、道の外へ向かっていた。

運転者は目を閉じ、呼びかけに応えなかった。


私には、車両ごと運ぶ余裕がなかった。


荷物を残し。

車を残し。

運転者だけを満タン便へ移した。


本人の同意は取れなかった。


私は、彼を異世界へ送ったのではない。


落ちるはずだった道から、いったん預かった。


目を覚ました彼が、帰るか残るかを選べる場所まで届けるつもりだった。


だが。

その前に、私の運行が終わらなくなった。


記録の下に。


始発照会の状態が表示される。


発送事実証明――受領完了

差出担当――第一配送者

差出署名――未完了


田村誠司・配送状態――運送中


そして最後に。


日本側到着確認票

返送期限――十時間


未返送の場合

田村誠司は「救援先不明」として処理されます。


誠司は返答票を握らなかった。


折らない。


汚さない。


まず。


日本側へ返す到着確認票を作らなければならない。


自分が無事であること。


今いる場所。


帰還先。


そして。


まだ帰るか残るかを決めていないこと。


十時間以内に。


待っている誰かへ。


届けなければならなかった。

満タン便の運転席下にある「始発照会口」が修復され、日本側配送所との記録往復が可能になりました。


署名のない荷物についても、発送場所、時刻、預託印、確認者などから発送事実を証明し、荷物と照会票を別々に進める制度が始まっています。


日本側から届いた記録によれば、誠司の転移は緊急救援でした。


第一配送者は、道路外へ転落しかけていた誠司を、満タン便で一時的に回収したようです。


しかし日本側では、発送からまだ三日と十四時間。


誠司の到着確認を待つ帰着当番の待機期限は、あと十時間しか残されていません。

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