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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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94話 ケープ

 道具屋で買い物を一通りそろえた後、ケンウッドとダロムが店に来て何やら良さそうな物を持参してきた。


 アリエスタ「え? そうなの? 魔法の品かよ。いや、違くてさ、なんか俺の魔力を吸い取ってる気がするんだけど」


 なに?


 ダロム「わかりまスかルーナ様、アリエスタ殿……?」

 彼は感心しつつも、私の傍に浮いている水球に合わせて目がそっちに行ってしまっていた。


 ケンウッド「おお、さすがですね。おっしゃる通り、魔法の品なんですが、どうも皆さん嫌がられるようで手放されて、結局買い戻され戻ってきてしまうのです。物は本当に良い品なんですが……」


 ジミー「呪われとるみたいなもんやからなぁ、苦情が絶えんからそのケープはうちはもう扱わんと随分前にお断りさせてもろたのう」

 マギー「そうなんですー? お爺ちゃん」


 アリエスタ「ふーん、呪いねぇ?」

 興味深く彼はケープを調べている。

 がっつり触っているが大丈夫か?


 ガストン「……ああ、これは、ちょっと普通のやつじゃ無理かもな」

 彼も触って生地を見つめて、直ぐに手を離してそう言った。

 彼らの手から魔力がケープへ移動している。


 彼にもよく視ると、魔力が備わっているのを感じた。


 何故今まで気付かなかったのだろう?


 ケンウッド「どうも持ち主が不調を訴えてくることが多くてですね、調べると魔法の品だとわかったのですが、“鑑定が効かなくて”困っていてですね、様々な魔法使いの方々にお見せした結果、どうやら魔力をある程度吸い取るそうで、魔術士方からは近付けるなと敬遠されたものです」


 アリエスタ「鑑定が効かない? ああ、この妙ちくりんな文字のこと?」

 生地の裏に、本当だ、魔法の槍とは全く違う文字があるな。


 うん?


 これ、迷宮門の、光る文字に似てるような?


 裏地に目立たなく縫いこまれていて、おまけに影になって見え辛い、む、アリエスタが興味をなくして隠れた。


 アリエスタ「まぁ、俺らなら大丈夫かもな? てことでホレ!」

 ビクター「ええ!? だ、大丈夫ですか?」

 アリエスタが急にダロムから受け取り私の肩に着せた。

 弓が挟まって具合が悪い。


 ふむ、丈は、尻がぎりぎり隠れるくらいか。

 腕が隠れて、何だか包まれるような感じだ。


 む、確かに魔力を吸っているな。

 そして止まった。


 うむ、それほど吸われた感じはしない。

 浮かべている水球を何百回も創り出したくらい減っただろうか。

 よくわからないが大したことはないな。


 着心地の方が全然よい。


 兄妹とレン&マギー「「おお、似合ってる」」


 ガストン「へぇ……ある程度吸って、今までの連中は、その後はどうなったんですか?」


 ケンウッド「ええ、鑑定者や魔法使い方は“魔法が使い辛い”と嫌がられていましたね、冒険者の方達はやはり気味悪がられて居心地が悪くなって脱いでしまいました」

 ふむ。


 さっきガストンが手を離したのと同じか。

 魔力を失ったのを直感したのかもしれない。


 アリエスタ「全然余裕そうだな?」


「うむ、着心地が気に入った」

「そっちかよ!」


 ベル「ふかふか~」

 彼女はフードに飛び込んだ。

 ビクターがホッとして、揺れるフードのさきっちょを少しつまんだが、特に大丈夫なようだ。


 ガストン「うん? もう変な感じがしねえな?」

 彼も、再度触ったが、やはり吸い取られていない。


 皆「「?」」

 ケンウッド「ほう?」


 アリエスタ「ある程度吸い込んだからじゃねえの? 何で吸い取るのか謎なんだけど」


 一度脱いで、弓を肩から降ろして着けなおし、挟まった長髪は取り出しまとめて手前に降ろす。

 それでフードも被ってみる。

「なにをするだーっ」

 あ、すまん、入ってたベルが落っこちて来てしまった。


 きゃー、かわいい!

 と娘達がよろこんで歓声を上げている。


 レン「にゃんともないにゃ」

 マギー「わー、触り心地がいいです、ほんとに吸い取るんです?」

 ソニー「ほんとだ、良いものですね、すっごく似合ってますよルーナさん! それと、本当に平気ですか? ベルちゃんも?」

「ああ」

 ベル「えー? なにがー?」


 皆で触っているが問題ないな。


 というか、恐らく私から一定量、吸い取ったからではないだろうか。


「あれ? 模様がある……樹?」

 ビクターはフードに隠れていた柄を見つけた。


 ソニー「そうなのお兄ちゃん、背中? わーっ奇麗な樹の模様ですね、これ金糸かしら?」

 ビクッター「え? これ金なの? 金の糸これ?」

 アリエスタ「なに!? 見せろっおー? 高そうなだけはあるじゃん、ここだけ抜糸して売ろうぜルーナ」

 いや、背中だから見えない。


 ケンウッド「あはは」

 ダロム「アリエスタ殿、絶対勘弁やめてくだサい」

 む、ダロムが少し怒気をはらんだ声でアリエスタに覆いかぶさるように迫った。


「え!? じょ、冗談だよ冗談っ!」

 ソニー「もーっ、こんなきれいな模様なんだから、絶対いじっちゃだめですからね先輩!」


 ちなみにジミーは受付に座りのんびりと煙草を吸いながら、何か計算、をする道具らしきものを触っている。

 ジミーのパイプは細くて他の物より長いな。

 金属っぽいからあれで叩いたら痛そうだ。


 ソニー「あ! ケンウッドさん、会長にはお見せになられましたか?」


 ケンウッド「え? ああっ、そういえばまだでしたね。調べたのはもう随分昔で……

そうですね、セレナール様が街に来られたのはその後でしたから」


 なら、後で見せてみるか。


 アリエスタ「やだよ! 俺は当分師匠の顔は見たくねえからなっ、お前一人で行って来いよ」

「まだ何も言ってない」

「その顔でこっち見てくりゃわかるわ!」


 ソニー「あれれ? なんか、ルーナさんと先輩が妙に仲が良くなってる!?」

 共闘したからな。

「悪かったな!」


 ガストン「はは、そんじゃ、今んとこ魔法の効果は謎ってわけだな」


 一旦脱いで背中の柄を見ようとしたが――ソニー「ルーナさん、どんな魔法がかけられているかわかりますか?」


「……わからん」


 何か、ケープの魔力が渦巻いているような感じがあるが、何だろうな。

 吸い終わった後にそうなった。


 アリエスタ「だよな! まぁ、手としてはよくある効果から調べてけば良いんじゃねえの?」

 ふむ、鑑定と言うものは大事なんだな。


 マギー「あ、あのー、そもそもこのケープ、どういう良い品なんですー?」


 ダロム「このケープは、“状態を保持スる”性質を持っておりまス」


 一同「「おお! んん?」」

 ふむ?


 ビクター「状態保持?」

 ガストン「ああ、それに、だいぶ丈夫みたいだな」

 さすが詳しいな。


 アリエスタ「だからボロっちくねえんだ?」

 ソニー「え? よくわからないんですけど、ほつれても治るってことですか?」

 レン「勝手に治るにゃ?」

 マギー「傷つかないってことですー?」

 ガストン「ああ」


 アリエスタ「はあ? どれが正解だよ?」


 ダロム「ええ、今のところ全てが当てはまりまス」

 ガストン「そうそう」

 ケンウッド「大きく損傷、破けたらだめですよ?」


 一同「「すごい!」」


 ほう、良いものだな。

 勝手に治るというのが信じられないが、治療が効く皮みたいなものなんだと思えばよいか。

 ヴァインに不意打ちされたとして、一撃ぐらいは防いでくれそうだな。

 焼けても治るのだろうか?

 

 アリエスタ「あー、だから魔力を吸うんだなきっと!」


 ケンウッド「あ、それはまた別みたいですよ、状態を保つ効果は、遥か昔に私の生家が手に入れた頃からずーっとあります」


 昔からずっとあった古い品ということか。

 あの、主の依頼書みたく古くなってない。

 状態保持の魔法の力とやらでだな。


 アリエスタ「おりょ?」

 マギー「あー、お爺ちゃんのまねですー」

 ベル「おりょー?」


 ビクター「え、いつの頃の品ですか、これ?」

 ジミー「おりょ、恐らく儂より年上やで」


 ガストン「こりゃ驚いた」

 マギー「ひょえーです」


 ソニー「先輩、何してるんですか?」

 アリエスタ「いや、全然黴臭くねえなって」


 レン「にゃ~、なんかめっちゃどんな効果があるのか気になるにゃ!」

 ソニー「隣のミナトスさんの鑑定具じゃダメなんでしょうねきっと……」


 ケンウッド「はは、王都なら高度な鑑定道具があるらしいんですがね」

 ふむ、後で文字らしき場所を調べてみよう。


 ダロム「気に入っていただけまシたかルーナ様」


「ああ、ありがとう、買い取ろう」


 ケンウッドの商品をダロムからマギーへ渡し、道具屋にマントやケープ等の外套の類が多く置かれた。


 どうやらケンウッドの事務所は上の階にあるそうだ。

 マギーやジミーの家も同様なんだそうだ。


「商人連盟?」


 ケンウッド「ええ、商人連盟スイレーン支部事務所、ですね。私も一応所属しています。私以外にも仲間が使用してますが、ようは宿と似たようなものですね、皆その一角いっかくを借りて、それぞれ商いをしてるんですよ」


 ああ、組合ギルドのような感じか。

 書類がたくさんある受付を思い出した。


 買う物はなくなり、道具屋と、ケンウッドのケープの支払いをした。

 道具類は大体、大蛙の報酬より少し少ないくらいだった。

 アリエスタ「高っか!」

 ガストン「まぁこんだけ揃えればな、ちょっと良い品ばかり選び過ぎたか?」


 ビクター「あの、干し肉を買い過ぎてるんだと思います……」


 アリエスタ「なんか値の張りそうなの積んでなかったかぁ?」

 ソニー「ルーナさん、ベルちゃんの食べる分頑張って稼がなきゃですね」

 うむ。

「食い過ぎなんだよお前!」

 ベル「だっておいしいんだもん!」



 ケープは通常のものと同じ値段だった。

 いいのか。

 アリエスタ「本当にいいんすか? めっちゃ高いんでしょそれ? もう返さないっすよ?」


 ケンウッド「ええ、勿論ですよ。ルーナさんに使用していただければケープも本望でしょう(売れるだけマシですしね)」

 ソニー「もう先輩っ、って……?」

 ビクター「本望ですか?」


 ダロム「はい、このケープは、元々エルフの方々が身に付けていたものらシいのでス」

 ほう。


 ビクター「あ、“樹の模様”と関係があるのかな?」

 ケンウッド「ええ、確かそうですね、ダロムや蜥蜴族の長老がその辺にとても詳しいんですよ」


 ダロム「ソの“深緑のケープ”は今で言う、ローグや、レンジャーの様な将兵達が着ていたものと伝えられておりまス、ソシて、ソの“黄金の大樹紋”は、隊長の証だと聞き及んでいまス」

 ほう。


 一同「「おおっ」」


 ジミー「おりょ、えらい懐かしいこと聞いたのう」

 ベル「たいちょー?」

 レンジャー?


 ガストン「ああ、レンジャーってのは簡単に言うと……自然に特化した、狩人の戦士さ。ええとだな、ローグが街や迷宮ってんなら、レンジャーは森とかだな」

 ふむ。


 レン「狩りが上手いのにゃ?」

 ビクター「エルフのレンジャーって、森で一番恐れられてますよね……」

 そうなのか。


 ベル「るーなたいちょー?」

 アリエスタ「ははは、お前にぴったりじゃん! ちょっと弓構えて見ろよ」

 ソニー「もーっ、先輩!」


「見て見たいにゃ!」

 マギー「お願いですー!」

 む、こうか?


 弓を降ろし弦を引く恰好だけしてみる。

 空射ちをすると弓が痛むから仕草だけだ。


 アリエスタは馬鹿にしてるようだが、レンやマギーが期待の眼で見つめるからだ。


 ヴンッ。


 !

 その時、右手の手元に、矢筒から出していないはずの“矢”が、突然現れた。


 一同「「!?」」


 しかも知らない、持ってない矢だ。


 弓を持つ手とは逆の、ケープに覆われた腕を矢をつがえる振りをしようと出した際に、銀色の光沢がきらめく、金属製の矢が右手に出現していた。


 読んでくださりありがとうございます。

 この品が後々まで大活躍するのをこの時は私でさえ想像していませんでした。

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