93話 買物
アリエスタ「なぁ、必需品ってもっかい言って見ろよソニー」
ソニー「……ぷぅ」
道具屋で冒険者の準備として、様々な物を買った。
街のあちこちにあった様な、手提げ灯火、カンテラと言うらしいのと、補充用の魚油。
野営地にケンウッドが使っていたな。
お互いを打ち付けて火をともす火打石と、火打ち金とやらも。
ガストンが実際にやって見せると、火花がぶつけ合ったところから出た。
ゴブリン王やオーク達と剣をぶつけた時にも出たものだな。
火の魔法があるんだろうが、もしソニーが居なかったり魔力がなくて休んいる時は使えないから要る。
干し肉をたくさん買った。
ベル「やったー! ぱくっ」
アリエスタ「今食うのかよ!」
ガストン「これと、これに、これもだな」
次々とガストンは持って来て受付にどんどんと積んでいく。
包帯やいくつかの布類、鋏や針、紐やナイフ等の道具が入った小さな入れ物、匙や杯に器等の食器類、この畳んであるのは、寝る時の毛布か。
寝台は無理だった。
傷に塗る塗り薬や薬草もガストンらの勧めで入れる。
ベル「やーっ、苦い臭いがする!」
アリエスタ「薬なんだから当たり前だろが」
魔法薬と比べ安く、皆大抵これを使っているようだ。
ガストン「さっき切った指に塗っておけよ、あれ? 治りが早いな」
指先の傷は塞がっていた。
ジミー「おりょ、エルフ様は旅の方ではなかったのかの?」
積んだこの必需品とやらを、私が最初から持ってないから謎に思われた。
ガストン「ああ、ちょっと訳ありでな、ベイリ村から出て来たばかりなんだよ」
ジミー「なんやそうなんか、マルコの坊主は元気にしとるかのぅ」
兄妹「「坊主!?」」
マルコは坊主だぞ?
ベル「ハゲだったね!」
アリエスタ「そういう意味じゃねえから!」
ガストン「はっはっはっ、もちろん! 親子揃って元気過ぎて大変だったぜ?」
ジミー「おりょ? 赤子はそろそろ立つ頃かのう?」
ガストン「何言ってんだ爺さん、もう五歳になるぜニコは」
「六歳だぞ」
ガストン「おっ、そうそう、悪ぃルーナ」
ベル「ニコはニッコニコしてたよ!」
ジミー「なんや、もうそんなに経っとるんかい、早いもんやのう、そんならニルーナちゃんは産後の日達はとっくによくなったんかいな?」
うん?
ニコの母の名だな。
兄妹「「?」」
アリエスタ「何の話?」
ガストン「……ベイリ村のことさ。ああ、ぴんぴんしてるぜ爺さん」
彼は寂しそうに笑った。
ニルーナはニコを産んだ後亡くなったと聞いたが……。
今のは嘘か。
ジミー「ひょっひょっ、そうかいそうかい」
ガストン「あぁ……」
マギー「……よかったですね爺ちゃん」
レンは知らないようで、首を傾げている。
ベルは話がよくわからないようで、積んである買物の山の方に興味を向けている。
ジミー「ひょっひょっひょっ、そうやなぁ、昔はよくここで買い物しとったんよ、丁度ほれ、エルフ様の服装と同じで、同じ場所におったのう。はて?」
“彼女の服”に気付いたか。
革鎧からはみ出てる部分を見ている。
「この服はニルーナのものだ」
「おりょ? そうなんや? ベイリ村から来られたとおっしゃっておりましたな、もろうたんですかの? ……エルフ様のお名前は、ルーナ様と言いましたかの?」
感付き始めたか?
表情が硬い。
ガストンは何も言わないが、もう笑ってない。
「ああ、名前も、ニコと分けて残った名をもらった。私は記憶がないんだ」
嘘をつく気も、真実を言う気もないが、問いには答えよう。
ジミー「名を? ……そうなんやな、随分彼らと仲良うしてもろうとるようで、ほんまによかったですわ」
これはひょっとしたらまずいことを言ったのかもしれない。
ベル「この木の枝みたいなの、おいしそうな匂いがする」
アリエスタ「勝手に齧るなよ、俺は金払わねぇぞ? あと静かにしてろ」
いつの間にかジミーに手を握られていた。
「エルフ様は常しえに生きる種族と聞いております。どうか地べたに生きる我々の事を、たまには思い出してくだされ、ルーナ様」
ふむ?
ガストン「爺さん……」
アリエスタ「爺ちゃんみてぇなとぼけた爺さん、一度会ったら忘れねえと思うぜ」
ソニー「先輩っ! しいっ!」
「起きてからの全部を覚えてるぞ、私は記憶がからっぽだからな」
まだ十日くらいだが、出来事、戦った敵、出会った人々すべてを。
「なんと! ひょっひょっひょっ! こりゃ参りましたな!」
そう言って笑う顔は長く伸びた毛に隠れてよく見えなく、彼の手は少し震えていた。
きっと笑っていたからだろう。
その後、アリエスタとベルが面白いものはないかと騒ぎ始め、ガストンが気を取り直して持ってきたものを受付に置いた。
お、水筒だ。
受付に置いてあった水差し、から良い香りのする水を入れてもらった。
中に葉が何枚か沈んでいた。
早速魔法の練習をする。
レン「なんか浮いてるにゃ!」
マギー「すごいですっ、水魔法ですー」
アリエスタ「ほんとどこでもやってんな」
ソニー「あれ? 今呪文唱えましたルーナさん?」
ジミーはやはり目があまり良くないのかもしれない。
全然気が付いていない。
ベルに買い物の品物のことを聞かれている。
ガストン「魔法と言えば魔法薬だな、魔法協会や水教会でも売ってるが、ここで買っておくか」
ビクター「ポーションですね」
ふむ、ケンウッドにもらったものがあるからいらないな。
魔力を回復する魔力薬、マナポーションとやらもあると言われたが、魔力はたくさんあるので断った。
赤色の魔法薬と違い、青色の液体だ。
どことなく、感じる魔力の色合いに近いな。
アリエスタ「ケチな俺が言うのもなんだけどよ、保険で一本は買っとけ、値下げしてくれる今のうちに!」
ほう? ほけん?
ガストン「はは、まあ、アリエスタの言うとおりだ、“もしもの時用”に一本ずつ買っておけよ、それに自分以外に使う機会もお前ならあるだろう」
ああ、ミウの時とかがそうだったな。
ソニー「私も賛成です、私のお師様も、会長様も必ず用意しておけとおっしゃっていました
なに?
「わかった」
ベル「ほけん? あー、貯め置きの貯め置きとかのことかな?」
アリエスタ「何だそれ!? おまえどんだけ貯め込んでんだよ?」
マギー「いいの? 爺ちゃん」
ジミー「そうや、一番ええ奴を降ろしい」
魔法薬が並べてある棚の、一番高いところから孫娘を梯子に昇らせて取って降りたな。
ベル「手伝うー?」
ソニー「ベ、ベルちゃん、大人しく見ててようね?」
ガストン「おいおい、それ結構するんじゃないのか爺さん」
アリエスタ「値下げしてくれるっつっても金毟り取る気まんまんじゃねえか爺ちゃん!」
「ばかたれっ、普通もんの値で、ちゃんと値引いて売るわい、ルーナ様だけ特別やで」
「いいのか? ありがとうジミー」
「外は命がけですからな、少しでもルーナ様の助けになりますよう祈うとります」
魔法薬と魔力薬を受け取り、手を握られた。
いつの間にか名前で呼んでるな。
アリエスタ「なぁ爺ちゃん、俺も命がけで外に出てんだけどな?」
ジミーとアリエスタが話している。
「なんだって小僧はさっきからルーナ様とガストン達と混ざって一緒におるんや? エルフ様の修行はどうしたんや?」
「だからその修行中なんだっての、師匠から冒険者やれってさ」
「嘘こけ! セレナール様んとこに戻らんかい!」
「ほんとだっつーの! ソニーもなんか言ってやってくれよこの爺に!」
「ふぇっ!? 私ですか? え~と、ジミーさん、確かにセレナール様がそうおっしゃられているところに、私達も居合わせました、ホントのことだと思います」
「思いますじゃなくて事実だろうが」
「おりょ? そうなんか? なんや、ほんなら、ちゃんと頑張るんやで小僧! ほれ、もっと買うていかんかい!」
「なんだよ! それに俺は元々用意してあっからもういいんだっての!」
「ルーナ様のお供を気張るんやぞ小僧」
「お供だあ? 俺はこいつの子分じゃねえぞ爺!」
兄妹「まあまあ」「もー先輩やめて」
ガストン「ふう、こんなもんか?」
道具屋を見回し、あらかた目ぼしいものを見繕った。
ちなみに、アリエスタは私のを参考、にして勝手に用意している。
彼は大体、懐の魔法袋の中に用意してあるようで少ない。
ビクター「あとは……地図とかですかね?」
ガストン「ああそうだ。いや、組合で買おうぜ、ここにあるのは世界地図だからな」
指差す先に、壁に飾られているものがあった。
おお、これが世界地図というものか。
あちこちに絵が描いてあって面白いな。
海らしきところに、下水蛸の触手みたいなのが動いているな。
今いるところはどこだろう? あ、スイレーンの文字があった。
私達はこのでっかい陸――大陸の中ほどにいるようだ。
ベル「絵が描いてあって楽しいねー」
……今“絵の竜”が大陸を横切って飛んでったが、彼女は目で追ってない。
やはり私にしか見えてないのか?
うん?
棚の下の、ごちゃごちゃと山のように置いてある物の中に魔力を感じるな。
ソニー「先輩先輩、櫛と石鹸もです、はいルーナさん」
ガストン「ああ、そうか?」
ビクター「え? いる?」
「いるもんっ」
ふむ、匂いは悪くないな。
朝の森にそよぐ風のようだ。
ベル「おいしそうな匂いだね!」
アリエスタ「食うなよ! 口の中泡だらけになんぞ!」
「スンスン、は~」
気に入っったようだ。
いるかな?
ソニー「いるに決まってるじゃないですか! もうっルーナさんまで疑問に思っちゃだめです!」
むう。
アリエスタ「おいおい、えらい量になってるじゃんっ、金大丈夫か? 剣の代金もまだなんだからな?」
多分大丈夫だろう。
しかし、けっこう嵩張りそうだな。
鞄に入りきらないぞ。
「いらねえもん捨てろよ」
ジミー「出して見い」
マギー「買い取るです」
ガストン「あー……驚くなよ爺さん」
鞄の中身を出して見せた。
一同「「えっ……」」
アリエスタ「あ、忘れてた」
ビクター「……はい」
ソニー「わぁたくさん、さすがルーナさんだねお兄ちゃん」
アリエスタ「へ?」
ベル「お宝―」
ビクター「……うん」
アリエスタ「ちょっ!? (こいつもかよ!?)」
レン「汚いにゃ!」
マギー「変な臭いがします!」
ソニー「……え?」
アリエスタ「だろぉ? よく見とけよソニー、これが同年代の娘っ子の普通の反応なんだかんな……お前もだぞルーナ!」
「よくわからん」
「ってめえ!」
ガストン「まぁまぁ」
ジミー「おりょ? ずいぶん溜め込んどるのお、まるでリス族やな」
驚く娘達の中で、興味津々、に老人が前のめりに取り出した品々を手に取って見た。
リス族……あ、ルッコだな。
ベル「でしょ~」
アリエスタ「こいつはエルフだよっ」
ガストン「お前よくちょくちょくつっこんで疲れないな?」
「うるせっ」
ビクター「あはは」
「こっちのこれら全部はゴミやな、この素材と、魔石に、おりょ、使用済みの魔法の杖やねこれは? “核石”はないんか? お、あったで、これでセットやな、収集家に売れるでこれは」
ビクター「へ~」
ソニー「あの時の取っといたんですね」
「ホブゴブリンの角やなこれは? なんや真っ黒で珍しいのう……なんで毒茸なんか拾っとるんや? まぁええ、他のもまとめて、全部買取るで」
「なっ」
何? ゴミ?
アリエスタ「ほらぁ!」
ベル「? ゴミじゃないよじっちゃん」
あ、そういえば、リゾットの罠通路にあった毒牙鼠の巣で拾った、変なガラス玉があったな、どこにやったか……鎧の袋だったか?
む!
鞄の中の物も取り出し始めた。
「あ、そ、その木のお守りと斧は別にしてくれ、もらい物だ」
ベル「あっ、メダルはあたしのー! 売らないもん!」
「おりょ、すまんのう、うん? このメダルは……」
「何かわかるか?」
「あだめや、わからん」
アリエスタ「なんだよ! なんかすげえ何かかと思ったわ!」
ビクター「空きができましたね」
ソニー「あ~あ、スッキリしちゃいました……でもこれで入りますね」
アリエスタ「なんで残念そうなんだよ」
「やれやれ、冒険者の癖やな、ガストンの坊主も新入りの頃に何度も開けさせて全部さばいたもんやで」
兄妹「「ええ!?」」
ガストン「勘弁してくれよ爺さん、何時の話してんだ」
アリエスタ「おいおっさんっ、お前もかよ! ちょっと鞄見せて見ろよ」
「昔の話だって! こらっ、俺の鞄に触るんじゃねえっ。ほらっ、仕舞うコツがあるんだよ、順番も工夫してだな……」
マギー「あ、これはそっちのほうがいいですよ」
アリエスタ「あー、丸めて折るのか、ふーん」
ビクター「これは背中に着く面に挟んで、クッションにするんですよ」
ふむ勉強になる。
なんとか入りそうだな。
しかし、毛布などかさばる物は皆、持っていないようだが。
ソニー「あ、私達は宿に置いてます、街の外に出る時は持ち出しますよ」
レン「よく使うものはポッケに入れればいいにゃ」
マギー「収納なら、ベルトポーチなんてどうですー?」
おお。
ガストン「ああ、装具周りか、ルーナも戦いが激しいから、あちこち傷んでるな」
ビクター「……まだベイリ村を出て三日ですよ?」
他には、革帯や腰の、ベルトを買う。
小型の鞄、ポーチを取り付けられるものを買った。
入れ物が増えてちょっと嬉しい。
傷んだ帯を取り換えたり、よりしっかり固定できるように装具を直した。
「動きやすくなったな」
格段に変わった。
中剣の鞘代わりの装具も手に入ったので、完全にむき出しではなくなった。
この手部分を覆う部分の名は護拳と呼ぶらしい。剣の種類はサーベルなんだそうだ。
拳を覆うのはごろつきからもらった“拳当て”もそうだな。
買ったものをいれた鞄も肩にかけて具合を見る。
前より重さが増えたが、大して重くない。
ちなみにまだ金は払ってないが、マギーがちゃんと羊皮紙に書き記してある。
マギー「でもそんなに持って重くないですー?」
レン「そういえばそうにゃ、なんで平気にゃ?」
ガストン「力持ちなんだよ」
アリエスタ「蛙の時にさんざん見ただろ? 多分こいつ、この状態で天井まで飛べるぜ。やるな! やんなくていい!」
ビクター「天井にぶつかりますよルーナさんっ」
ジミー「さて、他には何か入用ですかの?」
「魔法袋はあるか?」
アリエスタ「道具屋なんかにあるわけねぇだろっ」
ソニー「先輩っ失礼ですよ!」
マギー「そんなすごい魔法の品は置いてないですー」
ジミー「おりょ? よく冒険者達に聞かれるで、あいにく置いておらんよ」
ソニー「ルーナさん、魔法協会でたまに取り扱っていますけど、滅多に出てこないんです……」
ガストン「まぁ、売るぐらいなら自分で使うわな」
アリエスタ「高すぎて買う気にもなんねーよ(もう持ってるし~)」
ビクター「やっぱり、迷宮で手に入れるしかないのかな……」
彼も欲しそうだ。
ふむ、残念だ。
魔法協会に行っても置いてなさそうだな。
アリエスタ「そういうこった、まっ、俺は持ってるけどな」
マギー「ええっ、すごいです~」
レン「さすが魔法使い様にゃ」
ソニー「ちょっと先輩! それはセレナール様の物でしょう!? いいんですか勝手に見せびらかして! それに魔道具は基本、秘匿するものですよ!?」
アリエスタ「はぁ? だってさっきくれたじゃんかよ! 俺のもんだからいいんだよもう」
ソニー「あれはあげてません! 貸してるんです!」
ガストン「ははは図太いな」
あぁ、やっぱり渡してたのは魔法袋だったか。
くれたんじゃなかったようだな。
ベル「ねぇ干し肉買おうよ!」
アリエスタ「いや、もう十分買っただろ!」
ガストン「そうだな、う~ん、何かが足りてないような……」
む、誰か客が来た。
「ルーナ様」
ダロムだ。
いや、扉を先に開けただけか。
ケンウッド「……こんにちはジミーさん。お、皆さんお揃いですね」
彼らだった。
やはり“近づいてきた音”は二人だったか。
ジミー「おりょ、よう来ましたな“若殿”」
マギー「ケンウッドさんご苦労様ですー」
ガストン「あれ? 納品ですかい」
ふむ?
なにやら荷物を抱えた商人のケンウッドと、そしてダロムが扉を開けて彼を先に入れ、後から彼も荷物を抱えながら入って来た。
ダロム「ルーナ様、ジミー様、皆サま、お久シぶりでごザいまス」
ベル「ケンウッドとダロムだ!」
「ダロム」
様付けが取れてないな。
ジミーと一緒に呼ばれた。
アリエスタ「? 誰?」
ビクター「あぁ、ケンウッドさんの護衛をしている、ダロムさんです」
「へー(ってか、片腕みたいだけど? 大丈夫なわけ?)」
ジミー「おりょ、ベルちゃん、若を知っとるんやな?」
ベル「わか? ケンウッドだよ」
マギー「ベルちゃん、ケンウッドさんは若様なんです」
?
「ふーん、いっぱいあるんだね」
おおだな? ごしそく?
ケンウッド「ははは、まぁそんなことはいいんですよ」
ガストン「(もう面倒臭ぇから話しとくか)爺さん爺さん、ルーナ達は記憶に難があってな、まだあんまり世の中のことが思い出せてないんだよ」
アリエスタ「達じゃなくてこいつだけな」
ジミー「おりょ? そりゃあ、えらい難儀やで! 儂の頭もやけどのう」
ビクター「ルーナさん、ケンウッドさんは大きな商店の家の、息子さんなんですよ」
マギー「はい~大店のご子息さんですー」
アリエスタ「へー、そうなんか、全然えばってないからわかんなかったぜ」
ソニー「ちょっと先輩っ!」
ケンウッド「あはは、バレちゃいましたか、あんまり広めてもらわないでくれるとありがたいのですけどね」
ベル「パパがいるの?」
ケンウッド「ええ、遠い南都で、今も元気で商売していると思いますよ、こちらに来て細々と勝手にやっている私とは、特に関りはないですからね」
「そうか、ケンウッドはよくやっているぞ」
アリエスタ「なんでお前が褒めてんだよ?」
ケンウッド「! いやぁ、ルーナさんにそう言われると嬉しいですねぇ、ありがとうございますっ」
ジミー「なんや若と仲がよいんかルーナ様は。さすがやで、しっかし狭い世界やなぁ」
ケンウッド「丁度良かったルーナさん、あ、私はジミーさんのお店と取引をしてましてね、この荷物はお店に置かしてもらって、売れたら代金を頂く形で商売をしているんです」
マギー「そうです、うちは一部手数料を頂いてるですー」
「そうか」
いまいちよくわからんが、ケンウッドは自分の店を持ってないようだな?
馬車の行商か。
アリエスタ「ふーん、何売ってんの?」
「ふふふ、これですっ!」
ソニー「わぁ、お洋服ですか?」
ビクター「マントだ」
ガストン「おお! これだ! 流石ケンウッドさん」
ケンウッド「はい?」
彼曰く、雨風を凌ぐ羽織、マント。
もしくは短外套――“ケープ”とやらを忘れていたそうだ。
見れば確かに、ビクターもガストンも、組合の冒険者達もなにかしら羽織っていたな。
アリエスタ「ああ、そういやお前いっつも皮鎧だけだと思ったら、元々持ってなかったのか」
ソニー「私達はローブがありますからいらないですけど、うっかりしてました。ルーナさん、野営の時も寒がらないで平気にしてたから」
魔術士のアリエスタやソニーはローブがある。
アリエスタ「これぞ必需品だな? ソニー」
「もぅ先輩っしつこいですっ!」
ビクター「ぷくく……」
「お兄ちゃん!」
マギー「ちなみにうちも今、値引きして買ってもらってたとこなんです」
ケンウッド「おお、そうでしたか、ルーナさんがお世話になっています」
ガストン「ずいぶん揃えて来ましたね」
ケンウッド「ええ、マント状の物や、丈の短いケープ、こちらは頭巾、フードとも言いますがそれ付きですね、生地の厚いものと薄手の物、丈夫な素材の物、それと軽さも大事ですね。こちらは魔物の皮性で水をとても弾きますよ。ですがルーナさん!」
む、なんだ?
色々取り出してきたので、触ってみようとしたら引っ込められてしまった。
ケンウッド「事務所の壁に飾ったまま長いこと忘れていましたが、ダロムがこれが良いのではないかと指摘してくれましてね。これを是非、ルーナさんに格安で進呈したいと思います!」
事務所?
彼にも拠点が街にあるのか。
ダロムの荷物の方から取り出してきて広げて見せた。
ファサッ……。
!
これは、ケープとやらか、丈が短く、頭巾が付いている、深い木々の良い色合いだな。
アリエスタ「なんか古くせぇなそれ、スンスン」
ガストン「おー……けっこういい品みたいだな」
ビクター「そうなんですか?」
ソニー「わぁ~、細かい柄、深緑の色合いも、すごく素敵ですね! 古いものとは思えないです」
ジミー「おりょ? ううん? それは確か……ええんですか若?」
ガストン「あれ? ケンウッドさん、それ、家から代々伝わるとかっていう大事な物じゃあ?」
なに?
「いいんですよ、魔法袋の代わりといってはなんですが、それ相応の品で返させてもらいます」
そうか。
ベル「ねーこれ、森の匂いがするよ?」
レン「ほんとにゃ、いい香りにゃ」
アリエスタ「えー? 長いこと忘れてたって、埃被ってるただの飾りじゃねえかそれ」
ビクター「え? 新品じゃなくてですか? 全然新しいですよ?」
「はあ? うんー? ……なぁ、このマント、じゃなくてケープさぁ、どっちでもいいんだけどよ」
「ああ、魔力があるな」
皆「「!」」
読んでくださりありがとうございます。
さあ来ましたよ、狙ってた主人公キャラの機能と言えば? のやつが。




