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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
94/133

90話 顎砂

 魔法の槍を溶かすことになった。

 長剣を種類するのに使うそうだ。


 ビクター「ええ? それ溶かしちゃうんですか? いいんですか?」

 ガストン「まぁ好きにしてみろよルーナ」

 アリエスタ「えええもったいねえ! 魔法の武器だぞ!? それに、失敗したらどーすんだよ!?」

 ブシューッ!

「熱っちいっ!」

 また鼻から熱気が出た。


 ミナトス「……必ず成功させる、研ぎは休みだ」

 作業机に置いてあった研ぎ石らしきものを、ミナトスはガストンとビクターに放り投げた。


 ビクター「あれ? 自分で研ぐんですか僕ら?」

 ガストン「しょうがねぇな、きっと大仕事なんだろうよ、それとも、数日得物、預けるか?」

「いえ、自分で研ぎます」


 早速作業に取り掛かるようで、この工房を熱し続けている炉の火を工房の施設に備え付けてある道具で、どうやら強くしている。

 風を送っているようだな。

 空気が流れ込んでいるのを感じる。

 ミナトスは小声で呪文のようなものを唱えているから、魔法も使っているのかもしれない。


 槍は術式らしき紋様を、インクを塗りたくった後、用意した大きな羊皮紙に転がすようにして写し取ってあり、その後、ポンと炉に放り込まれた。


 アレグサンタ「うえ? い、一体どういうことですか?」

 ガストン「俺も専門家じゃねえからな、多分、バラバラの破片だけじゃ治せないからだと思うぜ、武器の打ち直しって大体が前より目減りしちまうのよ」

 ビクター「あー、槍をつなぎ、みたいに使うってことですか?」

「そうそう、つなぎだな、わかったかルーナ?」


「治るならなんでもいい」

 大体はわかったぞ。


 アリエスタ「なぁ、それって前と同じ剣になんのか? そもそも槍自体、刃の部分は先っぽだけじゃん」

 ガストン「まぁ、意匠いしょうは変わるだろうな、ルーナ、前とは別もんになるのは覚悟しとけよ?」

 いしょう?

 ビクター「作りとか、形のことですよルーナさん」


「ああ、だが槍の強さが加わるんだろう?」

 アリエスタ「う~ん、俺も知らねえぞ、魔法の武器を溶かして新しい武器にするなんて」

 ビクター「でもちょっとわくわくしますねっ」

 

 店の受付から剣の破片全部を持ち込んで机に置いてある。

 ミナトスが戻った時はベルとイオもついて来た。


 ベル「わー、こっち温かいね! 何してんのー?」


 イオ「おや……こりゃ、一日仕事かね? あんた」

「……弁当頼む」

「はいよっ!」

 ふむ、これからずっと、ここから動けないのだろうか?


 完成するのは明日とかだろうか。


 見ていると、ミナトスは小声でまた何か唱えている。

「……陽の……息吹よ……柱の……斜陽から……」

 魔力が巡った。

 ボオウッ!


 炉の火の勢いが増したな。

 火の魔術だろうか。

 工房内の熱が一気に上がったぞ。


 アリエスタ「なんかめちゃくちゃ熱くなってきたんだけど?」

 ローブを脱ぎだした。

 アリエスタは、首元にたくさん何かをぶら下げているな。

 一つは冒険者認識票だ。


 アレグサンタ「うえっ!? あわわ、まさかもっと熱くなるのでは?」

 イオ「あんたまだやってたのかい? 前みたいにちょっと手伝っておやりよガストン、先輩だろ?」

 イオは既に工房と店の間の通路に避難していた。


 ガストン「ええ? 俺がですか? しょうがねえなぁ、ビクター、手伝ってくれよ」

「は、はい」

 ふむ? どうやら初めてではないようだな?

 どうも、この工房は客がただ頼んで終わりというわけではないようだな。

 アレグサンタ「うぇあ、あありがとうございます」


 ガストン「熱でぶっ倒れる前にさっさと終わらせるぞ、ここを元に戻しゃいいんだろ? アレグなんとか?」

 アレグサンタ「うえっ!? は、はい! あと自分はアレグサンタでっす」

 どうやら彼らはアレグサンタの鎧の修理を手伝うようだ。



「……魔石と血がいる、身体の一部も」

 黙ってミナトスの作業を見てると、椀をこちらに出してきたぞ、なんだって?


 イオ「ちょっとあんた、何しようってんだい?」


 アリエスタ「ええ、まじかよ」

 ベル「なにー? なんか作るの?」

「ベルも知ってんのか? 儀式のこと」

「儀式ぃ? おまじないのことー?」

「ああ、そう、それそれ」


 イオ「あんた適当に答えてないかい? あんたっそうなのかい?」


 ミナトス「……少しだけだ、嫌なら魔法はなくなる」

「かまわんぞ」

 髪の毛でもよいか? 長髪を掴んでみせ目線で問うと、牛の剣鍛冶師は黙って頷いた。

 丁度長い髪も邪魔だったからな、この際、全部切ってしまおう。


 まとめてすべて掴み、腰の小剣を抜き、首元辺りで切る。

 小剣で――。

 イオ「あ、あんたちょっと――」

 アリエスタ「え? あちょっと待てばか――」


 ソニー「ちょちょっと待ったー!!」


 アリエスタ「うわっ!?」

 ガストン「あん?」

 ビクター「あれ? ソニー?」

 妹のソニーがいつの間にか奥の扉を開けて立って、こちらを睨んでいた。


 やはり、別の店だったようだな。

 背後に道具屋らしき様々な品が陳列? された店内が見える。

「? (子供達を送って)戻って来たかソニー」

 アリエスタ「びっくりした! なんで道具屋から出てくんだよ!?」


 ソニー「ちょっと何してるんですかルーナさん! とにかくその手を止めてください! 剣を髪から離してっ」

 イオ「そうだよっ、駄目だよそんな長くて奇麗な髪全部切っちゃ! ソニーちゃんよく止めたよ! ホラ離しなさいっ」

「むっ」

 あ、小剣を奪われた。


 結構力が強いなイオは。


 ベル「もー、それじゃ多すぎだよ? ちょっとでいいんでしょ? 牛のおっちゃん」


「……工房に子供は入るな」


「ミナトスさん、私はもう大人ですっ、ルーナさんに何させてんですかもうっ」

 ソニーが珍しく怒っているな、髪の毛のことでだろうか?


「……知らん。少しだと言った」


 アリエスタ「言ってねえよ!」


 ガストン「なにやってんだか、ビクターそこ持ってくれ」

「あ、はい」

 アレグサンタ「うえ!? あ、あれ、いいんですか?」


 ちなみに、ミナトスが注意したのはソニーの背後、向こうの道具屋の壁の裏に隠れてる子供達のことだろう。


 多分、猫屋の娘レンと、恐らく犬娘のマギーの二人が何故か店に居て、隠れている。

 扉を開けてソニーが出てきた際に慌てて隠れた音と声が聞こえた。


「でも、髪が長くて邪魔だったんだ」

 ソニー「何ですって!?」

 あ、いかん、更に怒った。

「お、落ち着け」


 アリエスタ「ルーナをビビらすとかどんだけ!?」


 謝った。

 ソニーは自分の鞄から紐を取り出し、髪の毛をまとめて結んでくれた。

 髪は女の命だとか、絶対に切ってはダメだと約束させられた。

 少し涙ぐんでいたのでしょうがなかった。


 髪を結ぶ際、櫛ですいた時に落ちた数本をミナトスに見せたら頷いたので、それが体の一部となり、血は先ほどより多めの数滴を提供した。


 ソニー「はぁ~、キラキラしてて素敵……」

 余った一本を窓の明かりにかざして眺めているな。

 くれと言うのであげた。

「わあっ嬉しいっ、ありがとうございますルーナさんっ」

 アリエスタ「高く売れそうだな……」

 ソニーが怒った。


 今度は自分で切った。

 うむ、ミナトス程じゃないがうまく切れたぞ。


 アリエスタ「うえー、痛くねえのかよ」

 血が苦手なのか?

 ビクター「うーん、不思議ですね、さっき切ったとこはもう塞がりかけてますよね?」

「嘘つけえ!」

 そうだな。

 そういうものじゃないのか? 薄く切ったんだぞ。


 ガストン「おーいビクター、こっち抑えてくれ、あとアレグサンタ、そこを持ってると指が潰れるぞ」

「あ、すいません先輩」

「うえっ!?」


 ソニー「……ちょっと、お兄ちゃんとガストンさん、何で鍛冶仕事してるんですか?」

 アレグサンタ「あ、はは、すいません、僕の鎧の修理、手伝ってもらってて」

「あれ? アレグサンタくん? 鎧の修理?」


 アリエスタ「なぁ、ソニー、こいつ年足りてねぇんじゃねえのか、冒険者の」

 なんだ、知り合いか?

 蛙の時は気付いていなかったのか。


 素材を渡した後、ミナトスはすぐさまそれらを、すでに溶けて炉の下部から、赤熱した液体として皿に流れ出て来て溜まっているところに放り込んだ。


 バチバチバチッ!

 火花が弾けて、雷のように連なって辺りに飛び散った。


 一同「「!?」」

 ソニー「わっ!?」

 ミナトス(……? ずいぶん強いな)


 アリエスタ「……何だ今の?」


 ミナトス「……」

「なあっておっちゃん」

 ベル「おっちゃん?」


 ミナトスは作業に集中してるな。


 イオ「うちの人は口より手が動く方なんだよ(なんだろね今の? 魔法の素材を混ぜ込んだ時の反応みたいだったけどね?)」

 ソニー「なんだか、お師匠様達の秘薬作りに似てますね……」


 アリエスタ「はあ? こいつの爪垢は錬金素材かっての」

 ベル「ルーナ秘薬?」

「ははははっ、おまえの唾液でポーションでも作れんじゃねえの?」

 ふむ?


 ビクター「……(売れるかも)」


 彼の作業が面白くてあまり聞いてなかったが、また必要なら渡すべきか?

 ミナトス「ん」


 見ていたら、私のとこの壁に掛けてある、掴むような道具を取れと顎で言われた。

「あぁ」

 手渡す。


 イオ(おや、だんなの言葉がわかってるみたいだね? この子、息子の嫁に来ちゃくれないかねぇ? 旦那の弟子でもいいさね)


 ベル「ねぇソニーなんでそっから来たの? 何そっち?」

 アリエスタ「だから道具屋だっての」


 ソニー「はい、えーと、あ、ルーナさん、レイア母さんがとっても感謝してましたよっ、もちろん先輩もです」

 アリエスタ「ふーん? 感謝なら、なんか物でくれ!」

「も~先輩はホントに遠慮がないですね~」

 

 レン「弟と妹達を助けてくれて、ありがとうにゃ! 今晩はごちそうするにゃって!」

 たまらず、レンが戸口から顔を出して来たぞ。

 その顔の下にはマギーも顔を出したな。

 マギー「こ、こんにちわです~」


 イオ「おや、マギー、レンちゃんが遊びに来てたのかい?」

 手を振って来たので、振り返しておいた。


 アリエスタ「まじで!?」

 ベル「やったー!」

 ソニー「よかったですね先輩、普段あんまり感謝されませんもんね」

 アリエスタ「なんか棘あるなお前?」


 イオ「あんたたち仲がいいんだねぇ」


 ミナトス「……仕事だ、出て行け」

 む、騒ぎ過ぎたか。人数が多いしな。


 もしくは、剣を打ち始めるのだろうか。

 ずっと見ていたが、剣の破片を炉に全て放り込んだな。

 受け皿の槍の溶けたものは少し冷えたのか道具で取り出し、炉の近くに置いて熱を保たせている。


 空になった受け皿へ溶けた剣が流れ込むのだろう。

 柄や唾、はすでに分解してある。


 イオ「何だいあんた、ぶっきらぼうに?」


 アリエスタ「へいへい、ほんじゃそろそろ道具屋に行こうぜ、ここ通っていいのか?」

 ソニー「あっ、ここはお店の人達用の通路でした、すいませんイオさん」


 「いーんだよそんなの、ルーナちゃん、お代はモノが出来上がった後で良いからね、多分値が張るけど大丈夫かね? 言っても打ち直しだから、金貨一枚以内だけどね」

「ああ、大丈夫だ」



 ミナトス「……“代剣”は」

 思い出したようにミナトスがこちらを見てそう言った。

 うん? 大剣?

 ガストン「だいけんな、預けた剣ができるまでの間、仕事になんねえだろ? それまで代わりに持ってろって剣さ」

 ほう。


 イオ「ああ! そうそう、剣修理中なんだから、その間代りに店の剣を持っててもらうんだけどね……ルーナちゃんはいらないかね?」

 代、剣か。

 すでに二本装備してる剣を見てイオがそう言った。


「ああ、大丈夫だ」

 ミナトスは一応聞いてみただけなようだ。肩を竦めて作業に没頭し直す。


 どうやら、ずっと居なくてよいようだな。


 うん?

 まだ何か用事があったような。



 む、ずっと鳴っていた槌を叩く音が止まったな。

 ガストン「ふう、終わったぞー、暑くてかなわん」

 ビクター「はは、汗ダラダラですね」

 アレグサンタ「はぁはぁ、治してくれて、ホントにありがとうございます~」

 お、彼の鎧の修理が終わったか。

 

 アリエスタ「おい鳥っ、さっさと水飲め! 休め! 倒れんぞ!」

 ビクター「と、鳥……」


 イオ「ごくろうさん、そっちの中庭で涼みなよ、湧き水があっておいしいからみんな飲みな。しかしあんたずいぶん面倒見良いんだね? アリなん、とかだっけ?」

「アリエスタだっての! 全然言えてねぇなおばちゃん!」


 ガストン「あっちぃ~、そーだルーナ、おやっさんに頼んだか? 蜂の素材で防具作るの」

 あ、それだ。

 忘れてた。


 男達は中庭へ出て行った。

 涼しい風が入って来た。


 ベル「ねー、あっちのお店行こーよ? なんかいろいろあるし、いい匂いがする!」

 アリエスタ「お前の防具作るんだよ今からっ」

 

 ミナトス「……見せてみろ」

「すまん、実は……」


 王蜜蜂の護衛の素材と、女王の顎の素材でベルの防具を作れないか聞いてみた。専門じゃないようだが……。


「……顎砂か、片手間だ、見せろ」

 アリエスタ「へー、言うじゃん、って見せろの意味の広さだよ! 何を!?」

 その素材と、ベルを掴んで一緒にミナトスの座る机に乗せた。


 ベル「なにをするだっ! あたしもおまじないに混ぜるの!?」

 アリエスタ「違うわ! 剣の話とは別! お前の鎧を作るんだっての!」

「あー、昨日話したやつ? わかった、作ってー」


「……動くな、測れん」

 ああ、大きさを知りたかったのか。

 ベルの胸周りを木の棒のような、板のような、目盛り、のあるもので図っているな、あれは確か、定規、だったか?


「……胸当てならすぐだ、他は時間をもらう。羽周りのことはわからんぞ。部位はどうしたい? 重さは気にするな」

 ほう?


 ソニー「ベルちゃん、胸当て以外は、好きなのを作っていいって、どこに付けたい? すっごく軽いらしいよ?」


「えー、そうなんだ、ふーん、あ、全然軽いね? じゃあねー……」

 すぐ傍の素材を持ってみたり、背中の羽を動かして見たりして、どんな防具にするか考えている。

 ぶんぶんと彼女に比べれば大きな蜂の顎刃を振っている。


 アリエスタ「……なんかこっちの方が高くつきそうだな? 金大丈夫かルーナ? 俺は出さねぇからな!」


 イオ「こんな小っちゃくてかわいい子の鎧なんているのかいルーナちゃん? 魔物と戦うのに連れ回すのかい? そもそもあんた本当に魔物と戦えるのかね?」


 ソニー「イオさん、ルーナさんは多分上級冒険者に匹敵する強さがあります、武力だけなら!」


「ええ? 本当かい? 腕っぷしがいいのかい? こんなにぷにぷにだよ?」

 そう言ってイオは腰に両手を置いていた、私の二の腕を揉んだ。

 ちょっとこそばゆいな。


 アリエスタ「それ以外は駄目みたいに言ったな!?」

「そんなことありませんっ、あっ、ぷにぷにだ」

 ソニーも反対側を揉んだ。

 むう。


「大丈夫だ、必ず守る。が用意はしておきたい」


 アリエスタ「しょうがねえよ、こいつも仲間だからなっ、あと、ベルはこう見えても怪力でおばちゃんでも持ち上げられるんだぜ?」

 ベル「ムンッ!」


「おやまぁ本当かい? 恩寵持ちかねこの子は? それならいいんだけどねぇ、心配だよあたしゃ……最近はずいぶん若い子が多いねぇ、あんた」


「……時代だろ、できたぞ」


 アリエスタ「早っ! ええ? そんな簡単にできんのかよ?」

 確かに速い。


 だが見ていたが、技術? がすごかったぞ。


 ミナトスは話してる間、女王の顎の牙部分の一つをさっと器具で削り、顎砂を作り出した。器具はその時かなり削られ傷んでいた。


 また別の器具で顎素材を曲線を生かして胸板状に切って細かく加工し、棚の薬品や鉄粉らしき粉等、幾つかを顎砂に混ぜた合わせた後、それをはけで胸板に塗布し、なにやら火の魔術を吹き込み、一瞬輝かせ、熱していた。


 そして、あっという間に冷ました後、仕上げの細かい加工をし、机の引き出しから丈夫そうな魔物の素材らしき、結わえた細糸を通し、着脱可能な胸板を作り終えたのだ。


「見事だ」


「フン……勉強代はもらった、持ってけ」


 アリエスタ「え? タダか!? やったー! さんきゅーおっさん!」

 何故アリエスタが喜ぶ、ああ、タダなところかな。


 ベル「わっ、もうできたの! これがあたしの鎧? すっごーい! 軽くて硬いね! あんがとミナトス!」

「グッフッフ……いいから着けてみろ、具合は?」

 イオ「おやおや」

 今までにない朗からな顔になったな。さっきレン達にも見せかけたぞその顔。


 ベル「うん! うんしょ、うんしょ、あれ? ねールーナ、ソニ~」

 うん? 着け方か?

 ソニー「はいはい、あぁ、これはこっちに腕をまず通して……」

 私もちゃんと見て覚えなければな。

 

 アリエスタ「なぁ、これどんくらい丈夫なわけ? ぱっと見、顎砂って、女王の顎素材にそれを塗っただけじゃん?」

 ふむ。


 ガストン達が戻って来たぞ。


「お、早速できたのか、仕事が早いなおやっさん、で、丈夫さの話だって?」

 ビクター「おお、もうできてる!? ……他に女王の顎はケイラッド様が着けてましたよね?」


 アレグサンタ「そ、その顎は、お、王蜜蜂の女王!? 奥地の化け物っていうか、守ってる軍隊をなんとかしないと手に入らなかったような? ぜ、全部倒したんですか?」

 おお、わかるのか?

 赤いからだろうか。


 ソニー「ねー、すごいよね」

 アリエスタ「そうだぜ! すげえだろ!」

 ガストン「お前さん、自分もいたかのように話すね?」

 ビクター「はは、ほぼルーナさんが全部ですけど、死骸も溶けちゃったし」


 レン「何の話しにゃ?」

 マギー「よく聞こえないです~」

 娘たちはこちらに入って来ないな、ミナトスが怖いのかもしれない。


 そのミナトスは、一瞬、並んでいた盾に手が泳いだ後、机の影に立てかけてあった鉄板らしき板を取り出して、例の顎砂を混ぜた塗るやつを、少しだけ塗布、して火の魔術をかけた。

 ガストン「あれ? そういう製法だったけか?」


 ミナトス「……不勉強だなガストン、突いて見ろ」

 そう言って鉄板を丈夫そうな石壁の前に立てかけた。

「お? はいよ、どれどれ……」

 ガチャ……。

 預けたガストンとビクターの剣を工房に持って来ていたイオが、置き場所を教え、それを掴み上げ構えた。


 ベル「着けたよ!」

 ソニー「ベルちゃんちょっと待っててね?」


 アレグサンタ「な、何が起きてるんだ……」

 レン「にゃ~」

 マギー「わくわく」


 塗布した箇所は狭いな、そこを突いて強度を試すのだろうが、当たるのだろうか。

 あ、全然問題なかったな、かなり近くから刺してみるようだ。

 ガンッ!

 ガストン「なっ!?」


 アリエスタ「弾きやがった!」

 ビクター「せ、先輩っ塗ってない部分は突けるんですか?」

「ああ、見てろよ、フンッ!」


 ギィンッ!

 貫通した。


 一同「おお~!!」


 ベル「すごいねー、あたしの鎧もこんな感じ? 突いてみて!」

「だめだ」

 アリエスタ「できるか! 危な過ぎるわ!」


 ガストン「あぁ、滑って胸板以外を斬っちまうからな」


「へぇ~、大したもんだねぇ、これが最近王都から届いた、あれ、なんだっけねぇ? 錬金術? の試薬かいあんた?」


「……魔力の障壁ができる、らしい」


 皆「「えっ」」

 アリエスタやソニーが特に驚いている。


 ふむ、確かに、衝撃の瞬間、魔力が弾けるのを感じたな。

 王都の、錬金術、の試薬ね。


 アリエスタ「こいつは金の匂いがするぜ!」

 ガストン「いやぁ、驚いたな、防具屋泣かせじゃねえの、これルーナの胸板や俺達の防具にも塗ってもらおうぜ!」

 ビクター「おお!」


「……同種の素材でないと定着せん」

 ガストン「はあ!? そりゃないぜおやっさん」


 アリエスタ「なんだよ! じゃあ女王の甲殻がいるってことだろ? 溶けちゃったよそれ!」

 ビクター「護衛蜂の甲殻じゃだめなんですか?」


 ミナトスは黙って首を振った。

 ふむ、女王の顎砂は、女王の素材に塗らないと駄目なようだ。

 定着? しないのだな。

 雨が降ったら落ちてしまうとかだろうか?

 

 アレグサンタ「あ、あの~……」

 アリエスタ「何だよ、言いてぇことははっきり言えよ」

「はいあの、じゃあ、ランクは落ちるでしょうが、護衛蜂の、素材同士なら?」

 ほう、よい案だな。

「……鋼鉄の鎧を買え」

 ふむ、鋼鉄程度の硬さ止まりということか。

 ビクター「はは、そうなっちゃいますか」

「うえっ!? か、買えないっす~」


 ソニー「あはは、えと、つまり、どういうことですか?」

 ガストン「作れるんだろうけど、鋼鉄製と変わらない強度にしかならねえんだろうな」


 イオ「だって試薬はほんのちょっとしかないんだよ? お試しでどうぞってやつだからね」


 ガストン「ふうん、今後魔法屋の店先にでも置かれるってわけか?」

 アリエスタ「いい商売してやがるなっ」

 イオ(メイズ卿様様だねぇ、すごいお方だよホント……)


 ビクター「ソニー、先輩の大剣も、さっきの鉄板も鋼鉄製なんだよ」

 私の胸当や手甲もだな。

 ソニー「ああ! じゃ、じゃあ、ベルちゃんの鎧ってすごく丈夫ってこと?」


 アリエスタ「ガストンのおっさん、知らなかったの? 進歩してんじゃん防具界隈も」

 ビクター「界隈……」


 ガストン「いやー、驚いたわ、都で装備を見直すかなこりゃ」


 ビクター「ケイラッド様の胸当ても女王製ですよね? このことはご存じなんですかね?」

 ミナトス「……顎砂に試薬は今初めて使った、女王素材が全く卸されんからな」


 ほう、勉強代と言うわけだ。


 ならば、最も硬くなったのかベルは。

 完全武装が楽しみだな。

 

 ソニー「あれ? じゃあ今この街で一番強力な装備をしてるのってベルちゃんですか?

 アリエスタ「おいベル、その胸板向けて怪力出して突っ込んで来るんじゃねえぞ! 穴が開いちまうわ!」

 イオ「あっはっはっは、こりゃいいさね!」

 

 ミナトス「……時代だな」


 読んでくださりありがとうございます。

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