86話 合流
セレナールから杖と同じ魔法を扱える指輪の道具《発動体》、“魔道環”をもらって魔法を学んだ。
水で練習したいから、水筒を買おうか。
昼飯を食べてから。
辺りに人が増え、騒ぎは大きくなっていた。
セレナールの魔法の手ほどきでしばらく人垣ができていたものの、人々は崩落現場へ集まって行くようだ。
ここら辺の人々よりよい状態の服を着ている、大通りの人々もこちらに集まっているようだな。
ひょっとしてもう昼を過ぎているのかもしれない。
セレナールは、気が付けばモードを残してそこから消えていた。
だが、上空を青い鳥が港の方へ飛んで行くので、そちらに向かったのかもしれない。
神父が騒ぎがあると言っていたな。
ケンウッドがこちらを見つけて来ていたが、人の群れに入り込んで見えなくなった。
匂いと感覚で、ゆっくりとだがこちらに近づいているのがわかる。
ん? 服を引っ張られている。
フィンが皮鎧帯の端を引っ張っていた。
どうした?
(姉ちゃん、“草の臭い”のするあのでっかいおじいちゃん、あのね? ……悪者と一緒に、ここを入ってくの見たにゃ」
何っ。
草の臭い、マイケル神父が確かに独特の匂いをさせていた。嗅いでいたな?
リゾット達と共に出入りしていただと?
ルッコ「僕は見てないよー、居たかもしれないけど、お昼寝してたー」
「……髭の、ギャレスじゃなくてか?」
フィン「? あの怖い衛兵のおじちゃんにゃ? 衛兵はこんなとこ来ないにゃ」
あ、モードが眉を上げてこちらを見ている、わかってる、後でちゃんと話す。
アリエスタ「よう、見ろよこの騒ぎ、俺らがぶっ潰した盗賊のアジトのせいだぜ」
モード「正確には頭目を逃がして、退路を崩され、追跡不能となった騒ぎですネ」
うっ、そうだった。
アリエスタ「ぐっ……次こそは!」
ああ、そうだな。
奴と、背後にいる黒衣の男の悪事を叩き潰さなければいかん。
ここはリゾットが勝手にやっていた拠点だから、連中の本当の拠点を見つけないとだな。
どこにあるのだろうか?
お、ケンウッドが人群れから出て来た。
今日はメイス使いのダロムは一緒じゃないのか。
「ぷはぁ、はぁ、大変な騒ぎですね、やっと来れました。こんにちはモードさん、皆さんも。今度は何をやらかしたんですかルーナさん?」
失敗したんだぞ。
アリエスタ「あれ、昨日師匠と居たおっさんか?」
「あれ? あなたはアリエスタさんじゃないですか……ここにセレナール様がいらっしゃいませんでしたか? あと、ガストンは一緒じゃないんですか?」
ガストンはいないぞ。
アリエスタ「師匠ならどっかに消えましたけど」
名前をちゃんとちゃんと言える人物は少ないのか、アリエスタは子供達が先程やっていたような、親指を上にする仕草をケンウッドにする。
ミウ「ケンウドー」
フィン「イタチのおじちゃんにゃ!」
ルッコ「誰ー? 商人さん?」
「おやおや、おしい、私はカワウソですよ。猫屋のフィンとミウちゃんかい? どうしたのこんなところで? 一緒にいる子はお友達かな?」
ケンウッドは抱き着いて来た猫達と知り合いの様だな。
獣人種を訂正? した際、手をワキワキさせて水かき、を見せたな。
イタチ族には水かきがないのかもしれない。
ビクター「あれ? フィン達はケンウッドさんを知ってるの?」
フィン「うんっ、父ちゃんとよくお仕事の話してるにゃ」
ん? ビクターとソニーも知らなかったのか。
ケンウッドと子供達の接点、に少し驚いている。
ああ、商人だからな。
仕入れ? とかそれの繋がりだろうか。
そして、彼は子供達と私達を交互に見てるな、なんとなく起きたことの予想がついているようだ。
さすがだなケンウッド。
頷いておいた。
ケンウッド「あはは、? ルーナさんの傍に何か、水? が浮かんでいるんですけど……気のせいでしょうか?」
気のせいじゃないぞ、魔法の練習だ。
モード「こほん、積もる話は組合事務所でゆっくりしてもらいましょうかネ、こちらも報せたいことがありますし、ケンウッドさんはゴブリン暴走の戦利品の処理が終わったようですしネ」
アリエスタ「おお? 例の大騒ぎして結局取りやめになったってあれか? お前らが総取りしたんだっけ?」
ビクター「あはは」
ケンウッド「いやはや、商神様のお導きです……」
しょうじん様?
ベル「ごっはん♪ ごっはん♪ ぺっこぺっこ~♪ ぱくっ」
ミウ「ぺこぺっこ~」
フィン「ぺっこぺっこにゃ~」
ルッコ「ぺっこぺっこー」
「あーあーわかったわかった、だりぃ~」
アリエスタの周りをグルグルし出したな。
もう限界か。
それと、私が浮かべている水玉をまた食べられてしまった。
油断できないな。
(ウンディーネ)
手に持つ水筒の水を操り、水球を再び持ち上げる。
呪文を唱えるとかなり扱いやすかった。
ソニー「上手です、ルーナさん!」
ケンウッド「おぉ、これは驚きましたね……」
アリエスタ「わかったわかったって、ホラ行こうぜ!」
そして、ケンウッドとモードと共に、私たちは冒険者組合に移動した。
道中、混乱しているケンウッドへモードが事のあらましを説明し、アリエスタがたまらず口をはさみ補足? する。
人質にされた子供達のことを気にして大丈夫か気にかけていたが、更に話した迷宮門のところでとても驚いていたが、口に出して騒ぐようなことはなかった。
呑気に通りの出店の食べ物を子供達と見ていたが、私も説明とやらをしなきゃいけない箇所に話が進んだようだ。
モード「……てわけですネ」
アリエスタ「……てわけなんすよ、ルーナが何でいたのかは俺も知らねえっすね」
彼はケンウッドには敬語っぽいんだな。
師匠のセレナールよりも丁寧なのは何故だろうな?
ん? 何故皆、私を見てるんだ。
アリエスタ「いや、? じゃないよっ、お前は何でそもそも“貧民街”をうろうろしてたわけ?」
「言ってなかったか? この子が泣いてたから探してたんだ」
ルッコ「わー」
前を歩いていたのを両手で持ち上げ、リス獣人の子を見せた。
「はあ? 泣いてた――ああ、鳴き声を聞きつけたのか? へぇ、やるじゃん」
フィン「そうだったのかにゃ!」
ミウ「やっぱりいたんだ」
ビクター「え! それでいなくなったんですか!?」
ソニー「聞きつけた? 組合の、外から?」
ベル「うん、丁度ここでねー、あっ、あの肉串と交換してたらね、迷子になったんだよルーナが」
迷子じゃない。
アリエスタ「お前がかよっ」
モード「エルフも迷子になるんですネ(衛兵が暴行されたごろつきを数名しょっ引いてましたけど、なるほどですネ)」
ケンウッド「いやはや、それが、二度目になる盗賊拠点の発見と壊滅に、巨大スライムとの戦いと、あの崩落、更には下水道最下層の例の(迷宮門)ですか……二日目の朝でこれだけの……」
アリエスタ「そう聞くと濃いな!?」
モード「はぁ、この後の事務処理作業を思うと、頭痛がしてきますネ」
彼女の背後には、いつの間にか護衛の男達が歩いてるな。
使い魔ではないよな?
ケンウッド「それではルーナさんとセレナール様はもうお会いできたのですね、先日引き合わせることを頼まれていましたので、よかったです。いやはや、早速魔法まで学ばれるとは……」
と、私が練習している浮かぶ水球を見ていた。
そうだったのか。
話しをしてるとすぐに冒険者組合に着いた。
昼飯を食べよう。
私は大して腹は減っていないが、毒を無理やり治して体に負担がかかっているミウには食べさせておいたほうが良い。
腹ペコのベルにも。
入るなりモードは受付のラウナ? だったか女性の職員に何かを言いつけている。
崩落現場の関係のことだろうか。
見知らぬ冒険者「なんだあの小娘、エルフじゃねえか?」
見知った冒険者「ああ、あれが噂の竜眼だ」
冒険者達「ああ……」「あれが……」「また奢ってくれっかな……」
「おい! ありゃ“紫電”か!?」「違えぞ、まだ小娘だ」「白いし別のエルフだろ」
「なんだよ有名人かと思ったぜ」「紫電がこんな辺境に来るかよ」
「ひゃ~エルフの女ってのはとんでもねえべっぴんだな」
「水爆弾のクソ爺と違って女の方が全然いいなぁおい!」
「俺今日はあいつでいいや」「ぎゃははは!」
「ゴブリンキングを殺ったって?」「嘘だなあのナリじゃ」
「大蛙をハンマーで叩き殺したって……」「嘘つけっての!」
「あのフェアリーが殺ったって噂も……」「殺すぞてめえ」
熟練らしき冒険者達「だめだあそこの奴ら。下級じゃヤバさに気付かねえみたいだな」「ちょっかい出さねぇように言っとかねぇと、“隻狼”に“暴れ魔法小僧”もいるし、タダじゃすまねぇぞ」
アリエスタ「今、暴れ魔法小僧って聞こえなかった?」
やはり昼時を過ぎた所の様だ、さっそく覗いた食堂の方はそれほど混んでいなく、酔っ払いが酒を飲んで騒いでいたり、酔いつぶれていたりした。
あれ?
ビクター「あ! 先輩!」
ソニー「ガストンさんが来てますよルーナさん」
アリエスタ「いねぇと思ってたら酔いつぶれてんじゃねえかおっさん!」
モード「あそこに座りましょう、あなたは子供たち用の椅子を」
護衛「はっ」
男達に指示し、椅子を引かせて彼女はガストンの突っ伏している卓に座った。
座るか。
随分大所帯? になったな。
ケンウッドにモード、ビクターとソニーの兄妹、子供用の椅子に座るフィン、ミウ、ルッコ。
そしてついでに酔い潰れているガストン。
ケンウッド「確か、昼の定食があると聞きましたが」
彼はいつも商人宿だから、こちらは不慣れなようだな。
モード「ええ、まだやってるはずですネ、なくても作らせますが」
アリエスタ「権力の横暴だ!」
ソニー「ちょっと先輩っ」
モード「値段もお手頃なので人気なんですよ、皆さんもそれでよいですかネ?」
アリエスタ「俺二人前で! さっさと作れってくれよ! ホラッ、チビ共も遠慮すんなよ!」
そういうのもいいのか。
ビクター「権力に屈してる……」
ベル「わぁ! じゃあねーじゃーあたし、三人前にしておく!」
アリエスタ「“しておく”?」
ソニー「私は一人前、それでお願いします。ベルちゃんは声が大きいから、注文がしやすくていいなぁ」
ビクター「僕も、一人前で!」
彼は鞄から出した袋の中を確かめてそう言った。
硬貨袋か。
もっと食べそうだし稼いだと思うが、どうやら使わないようにしているようだな。
節約? だったか。
ミウ「ていしょく? あれ? みう、のこすかも」
隣の卓でその定食を食いながら酒を飲んでいる冒険者がいるな。
肉の骨を筆のように動かして、なにか仲間と興味深そう、な戦い方のような話をしている。
内容は大きなパンとタレがかかった厚い肉、野菜の入った汁だな。
恐らく、普通の男達より多めだ、冒険者ならではの量だと思う。
小さな子供では食べきれない。
フィン「兄ちゃんが食べてあげるにゃ」
ルッコ「食べてもいいの?」
「ああ、遠慮? しないでたくさん食べろ」
ルッコ「わぁーっはーい!」
ベル「はーい!!」
アリエスタ「お前は大いに遠慮していいぞ、異様に食い過ぎてるって、太って飛べなくなっても知らねーぞ」
「そーお? じゃあ転がるーキャハハハハ」
おお、回転して飛び始めた。
やるなベル。
「あっそう」
「モード、後ろの男達はいいのか」
「フフフ、お気になさらず、ちゃんと食べさせていますからネ」
お辞儀をする男達、よかった。
一人、大きな猫族が食べたそうにしてからな。
アリエスタ「なんだなんだ、羽振りがいいじゃねえかよルーナ」
はぶり?
ああ、払いか。
金が要るんだったな。
足りるとは思うが。
モード「ああ、いけないいけない、盗賊団拠点壊滅のご褒美にここはわたしが奢りますネ」
うん?
アリエスタ「おいさっき注文取消し! 俺三人前で!」
ソニー「もー、先輩っ、卓を叩かないでくださいっ」
「アリエスタ、結構な量だぞ?」
「食えるうちに食い貯めとくんだよ!」
ほう? だが、腹に入りきるならな。
ベル「いいのモード、あたしけっこー食べるよ?」
ビクター「おお!?」
彼女が気を使ったな、彼が驚いている。
モード「ふふふ、大丈夫ですよ、経費で落ちますから」
けいひで落ちる?
そんな感じで昼飯を注文した。
ベル「ごっはん♪ ごっはん♪ ぺっこぺっこ~♪」
賑やかでよいものだな。
「~~~~♪」
またその歌も混ぜた。
「ベル、それ――」
ガストン「……ぅあ~、うるっせぇな~……んあっ、ベルか? あっ! お前ら!?」
椅子がガタンと揺れる、ガストンがベルの大声で起きた。
ミウ「がすとん、くさい」
フィン「起きたにゃガストン? しっかりするにゃ」
ルッコ「誰―? お酒臭いー」
フィン「ビクター兄とソニー姉ちゃんの先輩にゃよ」
彼も知り合いだったのか。
ガストン「? 猫っ子がいる、猫屋かここ? あり、組合だ……あぁ~ん? 随分人数が多、お、うぇ、気持ち悪ぃ、頭痛ぇ~~」
随分と疲れているようだな。
起き上がったが、そのまま背もたれにだらしなく寄りかかって、調子が悪そうに眼をまた閉じて苦い顔をしている。
なんだか昨日より老けこんでいるな。
ケンウッド「ようやく起きましたね、マスター、酔い覚ましを一つください」
ソニー「ガストンさん、二日酔いですか?」
ビクター「先輩、盗賊の拠点が街にもあって、ルーナさんが潰しましたよ! 先輩?」
「ゴブリン女王と戦った時より大変そうだな」
このまま死ぬんじゃないだろうか? 恐ろしいな二日酔いとやらは。
ビクター「!」
アリエスタ「魔物との戦いで例えちゃったよ! ただの酒の飲み過ぎだからな?」
ベル「きゃはははは!」
ガストン「うう、頭に響く……み、水」
ポチャンッ。
水玉を上に開いた口の方に持っていって落として見た。
ガストン「んぐっ……うめぇ」
まだ調子が出ないようだな。
アリエスタ「でっかい水球でも出して顔に落っことしゃいーんだよ」
ケンウッド「そうそう、話に上がったゴブリン関連ですが、結局ガストンさん抜きで戦利品の分配は無事終えました。ビクターさんにソニーさん、これが君達の報酬で、これはガストンさんの分ですね、代りにどうぞ受け取ってください」
ビクター「おおっ、ありがとうございます!」
ソニー「わあっ、ありがとうございます!」
ケンウッド「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方です、先日こちらで組合の皆さんに結構お配りしましたが、後は、ベイリ村の取り分を差し引いても、良い取引になりましたからね」
ケンウッドの取り分はよかったようだな。
魔法袋は売れたのだろうか。
モード「ええ、よい取引でしたね、目玉の魔法袋は全て組合で勝ち取りましたしネ、ふふふ」
“全て”だと? 他にもあったのか?
それに、勝ち取った?
ケンウッド「ははは、あ、ルーナさん、おかげさまで魔法袋は取引をさせて頂き、商人の皆や商店主の方々、魔法協会、水教会、衛兵団の方々から競売の末、見事冒険者組合様が最高値で勝ち取り買い取ってくださいました」
?
競売、高値? あぁ、一番高い金を払う者に売ったということかな。
アリエスタ「うーわ、えげつね~」
ビクター「? どういうことですかアリエスタさん」
「いや、一番金持ってんのが組合だからじゃねえの? 逆に言うと、魔物で商売やってる“大元締め”ってどこだよ?」
ああ、よくわからんが、なんとなくわかるぞ。
モード「まぁ、それもありますけど、もっとも活用できる組織がよいとケイラッド様が判断されたのが大きいですネ」
そういうものなのか。
妥当? というのかこれを。
給仕の娘が酔い覚ましとやらを持って来たようだ。
ガストンにソニーが飲ませているな。
「!? んぐっ、ぐえっ、まずっ、ぬぐぅ~!」
ベルが傍に飛び、小さな指をドロドロの液体に突っ込もうとしていたが、引っこめた。
「おしくないの?」
ガストン「……苦ぇっ!」
厨房から料理の中に混ざって漂っていたな。
ビクター「あっそうだ、モードさん、森にあった盗賊拠点の戦利品ってどうなったんでしょうか?」
「先程は隊長方とその話もしませんで申し訳ないのですが、未だ帰還した衛兵団から何も報せが届いていませんネ、忙しいんですかネ? ちなみに、隊長はどなたでしたか?」
ビクター「ギャレス隊長です」
「髭か」
アリエスタ「あぁ、そういやそうだったな」
ソニー「……」
ベル「やなヒゲ!」
フィン「やなヒゲにゃ!」
ミウ「きらい」
ルッコ「怖いのー」
モード「あらあら、ずいぶん嫌われましたネ」
ソニー「……あれ? 先輩、衛兵さん達と攻め行った際、あの場に居ましたっけ?」
アリエスタ「え? いや、いねーよ?」
「じゃあ、何でギャレス隊長が拠点に居たことを知ってるんですか?」
「ああ魔法だよ魔法」
「? なーんか適当だな~」
実は本当のことを言ってるな。
モード「あぁ、そうですか、ちょっと衛兵団詰め所まで確認しに行った方がよいかもしれませんネ」
ふむ?
お、護衛の男に指示して、出て行ったな。
衛兵団の詰め所とやらにやってくれたのだろうか。
そして、ケンウッドとヒソヒソと話してるな。
モード(彼は怪しい動きをしてると“こちら”で噂になっていますから、ひょっとしたら報酬は色々と誤魔化されて無いかもしれませんネ)
ケンウッド(はは、そうですか、やれやれ)
(あと、彼に関してルーナさんから話があるそうですネ)
と話しながらこちらを見たな。
私が聞こえてることを二人ともわかってるようだ。
話す前に、ガストンが動き出した。
「うぁ~、腹がなんか、熱いぜ……」
アリエスタ「おっさんっ、いい加減にシャキっとしろや!」
「うん? アリアスタじゃねえか、何してんだ?」
「アリエスタだっつぅの! おっさんが寝てる間にちょっと大冒険してきたぜ! めいき――『モード「風壁っ!」』――~~、~~~? ~~~~!?」
む、迷宮と口に出そうとしたのか、その瞬間にモードが風の魔法をアリエスタの頭の周りに出現させたぞ。
とたんに彼の声が聞こえなくなった。
皆「「!?」」
アリエスタ(~~、~~~!? ~~~~!)
バンバンッ。外から手で風の泡を叩いてる。
声は風で遮断? できるのか。
水の中の様に。
モード「フぅ、あんまり吹聴しては困りますネ、アリエスタさん」
“抜杖”の速さは流石だったな。まるで剣のそれと同じだ。参考、になる。
とりあえず、迷宮の話は内緒のようだ。
ガストン「おわっ、何だ!? モードさん? っとケンウッドさん!? やっべぇ! 寝過ごした!? あ、ルーナ、とチビ達じゃねえか、このリスっ子は誰だ? あれ? 今何時だ?」
目が覚めてきたようだな。
酔い覚ましとやらの効き目のおかげか。
アリエスタ(今頃気付いたのかよっ)
ビクター「先輩、何時ここに来たんですか? 朝は何でいなかったんですか?」
「あー、悪い、近くの酒場で飲み明かしちまったようだな、ここに来なきゃいけない、ってとこまでは覚えてて、辿り着いて、力尽きたみてぇだな」
ほう。
組合は夜からずっと開いているんだろうか。
ガストンが目で、お前らはどうしてたんだ?
と言っている。
ビクター「朝ソニーとルーナさんとここに来たんですが、まだガストンさんが来てないから待っていようと思ってたら、外に出たベルちゃんを追いかけたルーナさんだけ帰って来ないので、探しに出てたんですよ」
ベル「るーなねー、迷子になったんだよ」
……。
モード「ああ、待ち合わせしてたのですか? 何で泥酔した状態で入って来てここで寝てるのかな? と疑問に思ってましたネ」
ガストン「ハハハ……」
ケンウッド「やれやれ」
ガストンは正気に戻り、戦利品の立ち合いをすっぽかした、ことを謝り報酬を受け取った。
魔法袋の行方を聞くと「ああ、やっぱり?」と、予想がついていたようだ。
何故だろう?
ガストン「そりゃあ……ああ、例を言えばそのゴブリン暴走の討伐隊だよ。取りやめになったけどな? 魔法袋があれば、食料と武器を全部突っ込んでよ、身軽になった野郎共で馬を走らせりゃ、直ぐに着くし、その間に多くの人が殺されずに済むんだぜ?」
ビクター「なるほど! 先輩、僕らがたまたまいなくて、袋もなかった場合は……」
「想像すると怖ぇが、ベイリ村はやばかったかもしれんな。なぁ、水くれねえか、口ん中が苦ぇ。それとさっきからルーナの傍で浮かんでる“水玉”は何なんだ?」
「魔法の練習中だ。村にはマルコが居るぞ?」
彼は強いから大丈夫なはずだ。
ソニー「あはは(平気で言ってるけどびっくりだよぉ)」
「は? ……あ、ああ、そうだな、だがルーナ、マルコの親父は現役時代の“怪我”のせいで“長丁場”は保たねぇんだ、すぐにバテちまうのよ。引退した理由の一つだな。だから村はやばいかもしれねーな。“タラレバ”だけどよ」
なにっ、そうだったのか。
ベル「タラレバー」
フィン「なんかおいしそうにゃ」
ベルがガストンに水の入った杯を持ちあげて飛び、渡してあげていた。
「おっ、サンキュー、いいのか? 簡単に力使っちまって」
「けっこー持てるようになったからだいじょぶだよ?」
給仕の女が追加で水差しを持ってきたが、私が水球で足してしまった。
すまん。練習させてくれ。
アリエスタ「なぁ、マルコって誰よ?」
モードの風の防音が解かれたアリエスタが質問してきた。
ビクター「“ゲイル”の元リーダーの人です」
アリエスタ「ああ、あの“旋風”か! ルーナお前知り合いなんかよっ、サインもらったか? くれ!」
知ってるのか。
「息子のニコがゴブリンに捕まってたのを、村に案内してもらって会った。サインはない」
あったとしてもやらんぞ、売る気だろう。
ベル「ニコ! あの元気な男の子だね? へーそうだったんだ」
アリエスタ「どんだけガキを助けてんだよお前は」
ミウ「にこ?」
フィン「にこにこにゃ?」
ルッコ「男の子だって、村の子? クンクン?」
キュルル~。
お腹が鳴ってる。
料理の匂いが漂って来ているな。
そろそろだろうか?
ガストン「ぷはー、それで、魔法の練習とか大冒険とかってのは?」
眼を擦って水球を見てるな。
モード「ルーナさんとアリエスタさんが貧民地区の下水道でリゾット盗賊団の第二の拠点を見つけ、戦闘の末崩落したのですネ」
「えええ? すっげぇな……なんかうるさい音がしてたのってそれですか? こっちまで聞こえて来てたぜ(変な歌も聞こえた気がするな……)」
迷宮の事はそれとなく伏せて、詳しい話をする。
ガストン「まじか、酔っ払ってた俺が言えたことじゃねぇけどよ、ビクター達を呼んでも良かったんじゃねえか? ちょっと無謀過ぎるな、実際死にかけてるし」
ベル「あたし頑張った!」
ソニー「ベルちゃんえらいっ!」
アリエスタ「でもよ、人質に罠に爆発とか、色々しょうがなくねぇ?」
「あえて厳しいこと言わせてもらうがよ、死んだ後じゃしょうがないもクソもねぇぜ? グビ」
「ぐぬぬ」
確かにその通りだ。
やっぱり怒られたな。
「すまん」
皆に謝った。
今回は私もこたえるものがあったな。
ビクター「いえいえ! 僕にまで謝らないでください!」
ソニー「ルーナさんは頑張ったですよ!」
フィン「姉ちゃんは助けてくれたにゃ! 酔っ払いガストンは黙るにゃ!」
ルッコ「よしよしー」
ミウ「おじちゃんるうないじめちゃだめ!」
「う! ま、まぁ、無事でよかったし、ガキ達を助けたのはよくやった、よくやったぞ! リゾットの野郎は絶対とっ捕まえてぶっ飛ばそう。後、簡単に応援を呼べる方法を俺は知ってる」
何?
「それよりそろそろ飯か? それと、帰還した後のことがちょっとよくわかんねぇんだが……」
良い匂いがして来てるな、厨房も騒がしいし、定食が来るかもしれない。
ミウの解毒の騒動と、魔法の授業の話をしてる途中で、昼食が運ばれてきた。
読んでくださりありがとうございます。




