表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
86/132

82話 門

 透明スライムが溢れすぎて、とうとう瓶が割れてしまった。


 突然、辺りに汚水と透明スライムと瓶の鋭い破片が弾け飛んだ。


 バッ。

 だが、モードが何か唱えているのを横目にしながら、私は素早くルッコを掴んでミウと一緒に胸元に抱いて、飛び散るそれらから隠すようにして咄嗟に背を向けた。


 一同「「わあっ!?」」


 遅れて皆の驚く声が聞こえる。



 ん?

 飛んでこないな。


 見ると、風の風球のようなものが飛び散った全てが、驚くアリエスタの目の前で包まれていた。


 割れた瓶や汚水が風球の底に溜まり、大量の透明なスライムが泡のように汚水の中でかき回されていた。


「誰か、これらを入れる何かを下の方に用意してくれませんかネ」

 アリエスタ「!?」

 モードだった。

 彼女が短杖を出して風の球体を維持していた。


 辺りを風が流れ、皆の髪が揺れている。

 見事だ。


 それと、肩に留まっていたはずの青い鳥がいない。あ、飛び上がってまた肩に留まった。

 もしかして、驚いて落っこちてたのか?

 

 レガリア「ハッ! モード殿、こちらに入れてくだサい、水を弾きまス」

 守備隊長が腰の取り付けてある中型鞄から、妙な皮袋を取り出して下に用意した。

 伸び縮みしていて、なんだか地の底で見た蛸の表面に似ている。


 モード「ありがとうございます、よいしょ」

 風の球の障壁が弱まり、底に集まっていたのが袋の中へと落ちた。

 透明スライム達「……」


 いや、瓶の破片だけ、宙に浮かんでいる。

 風球が収まってなくなった後もだ。


 あぁ、組合の衝動で酒瓶を引き寄せたあの魔術か?


 モード「……包み……固めよ……」

 そして、短杖の先端に魔力が急激に高まったぞ。


 それに彼女も手を添えて、魔力を破片に集中させた。

 ピキパキ、バシュンッ!


 あっというまに破片が一つに集まって、塊になった。


 アリエスタ「あーっ、俺の買った瓶だぞ!」

 彼がひょいっと塊をつかみ取って、モードを恨めしく見た。


 ゼラ「瓶の一つくらい、いーじゃないの、元々割れてたし。おかげで誰も怪我しなかったんだからね?」


 レガリア「お見事でス、モード殿」

 そう言って中をチラと見て、口を備え付けの紐できつく締めた。


 マイケル神父「いやいや、驚きました。見事な風防に念道術ですな、流石です風壁殿。まだよくわからない生態のスライムですが、陽の光に近づけるのはやめておいたほうが良いですな。それと、一部、教会にも分けてくださいね、こちらでも調べてみますから」

 

 風防、それに風壁?

 もしかして、彼女は二つ名持ちか?


 モード「増え過ぎて瓶を内側から割り破ったんですかネ。目の前で起きたのが幸いでした」

 アリエスタが手に持っていた瓶のすぐ後ろをモードは歩いていたからな。

 魔法はかけやすかったのだろう。

 そう言って腰のベルトに短杖を納めた。


「ありがとうモード」

 ミウ「? わかんない」

 ルッコ「すごかったー」

 フィン「すごにゃすごいにゃ!」


 モード「フフフ、どうしたしましてねすネ。咄嗟に子供達を守ったのはとても良い動きでしたネルーナさん」


 ベル「もー、アリ! 危ないじゃないの!」

「ええっ、俺のせいなの!? 瓶が脆いのがいけないんじゃねえ? これ組合で買ったんだけど?」

 半目で睨むが、モードは肩を竦めただけだ。


 ゼラ「いや、硝子ガラスってそういうもんでしょ」

 レガリア「やはりこのたこの胃袋が一番でスな、破片を入れても別に破れたりはシまセんゾモード殿」

 袋を叩いてそう言う。

 ポヨンポヨンしている。

 ほう。


 下水蛸の皮だよな、それ。

 袋以外にも使えそうだな……。


 ギャレス「おい! いい加減迷宮の話をせんのか!」


 へいへい、とアリエスタはこの穴の下で起きたことを説明した。


 まずは、私が落ちて意識を取り戻したところを話した。


 その時、ギャレスはこちらに近づかず、戸口から動かず離れて聞いていた。

 皆で恐る恐る、端までいって下をのぞき込む。

 崩れないか慎重になりながら。


 マイケル神父も来ない、この人数で彼は大きいから、崩れるのを心配したのだろう。

 鎧を着ている衛兵のゼラとレガリアも同様だ。


 色々と説明した。


 まず、落下死せず、恐らく巨大な白い蜥蜴に落ちて助かったこと。

「尻尾しか見えなかったがな」

 誰も信じなかったが、興味はもったようで話がれた。


 レガリアが蜥蜴族の漁師たちが昔から信奉する湖の主モッカ様とやらも、巨大な蜥蜴だと話してくれた。

 それは、依頼書にあったやつか?


 アリエスタ「湖の主が下水の底にいるわけないじゃん」


 マイケル神父「それについてはわかりかねますが、その大穴、“トンネル”は“第二湖”のロッカへ通じていますよ? 汚水はそこのスライム浄化場で清め、モッカ湖へお戻ししているのですから」

 ふむ、あの奥と繋がってるのか。


 ゼラ「ええ? 自由に行き来できるっていうことですか?」


 モード「レイクアリゲイドという湖最強の魔物がいますが、それの変種を見たのでは? モッカ様は空想上の存在ですよ?」

 おお?


 レガリア「ええ、モッカ様は大海を行く大船のようにとても大きいと伝わっておりまス」

 そんな主なのか、誰だ依頼を出したのは。

 捕獲だったなそういえば。


 ギャレス「ええい! どうしてちゃんと仕留めるか捕まえるかしとらんかったのだ!」

 アリエスタ「おっさん、意識失って落っこちたって聞いてた?」


 ベル「おいしいのかなー?」

 それは、どっちのことを言ってるのだろうな。


 話を続ける。

 瓦礫で埋まったがベル来てが助けてくれたこと。


 怪力の事を信じないのでマイケル神父に許可をもらって持ち上げてもらった。

 子供達は大いに喜んだ。


 以降、皆ベルをただのフェアリーとして見なくなり、扱いが丁寧になった。


 ベル「まだいけそうっ」

 やはり、持ち上げる力や時間が強くなっているな。


 その後下水蛸とやらがやってきて食われかけたが、アリエスタが遅れて落ちて来て止めをさし、素材を採ったこと。

 素材を見せたら全員に少し嫌がられた。

 ちゃんと洗ったか? と。


 モードとレガリアはこれは良いものだ、よく素材を入手したと褒めてくれた。

 これで袋でも作ってもらおうか。

 

 その後、水底に迷宮門を見つけたことを話した。


 すぐ後に救助に降りて来てくれたゼラも見た。


 そして、その後またちょっと死にかけたが、上まで戻って来たわけだ。


 パタタ……それを聞いていたのか、突然、青い鳥が穴の底へと飛び立っていった。

 確認しに行ったのだろうか?

 ミウ「とりさんいっちゃった」


 フィン「迷宮にゃんて見たことないにゃあ!」

 ルッコ「ねー、行って見たいね!」


 ベル「ねえ、迷宮っておいしいものあるの?」

 ソニー「どうなんだろ? ガストンさんのパーティが潜ったことがあるんだよね? お兄ちゃん」

「僕も詳しくないけど、地上より強力な魔物が出るってことぐらい……あと、魔石しか落とさないとか、言ってたような?」

 落とす?

 しかし、強力な魔物が出るのか、ふむふむ。


「ごはんまだ?」

 ミウがもぞもぞと動く。

 退屈なのか。

 干し肉をまた鞄から出して私と子供達で分け合って食べる。

 ベル「あーっ! あたしのやつそれ? ちょーだい!」


 マイケル神父「それが真なら、大変な発見ですな、我らの街に迷宮ができる等」

 ギャレス「おいゼラ副長、本当に見たのか? 迷宮門を? 本当に?」

「確かに迷宮の入口のでしたよ? 昔迷宮で見たのと同じ作りで、光ってた魔法の紋様も同じものでしたからね」

 ほう。


 モード「“閉まっていた”んですか? それと、ちょっと行き来が大変な場所にありますネ、しかも水没してるのでしょう? 土魔術士と水魔術士に、人手がたくさん要りますネ」

 鳥を黙って見送った彼女がそう言う。

 確かにそうだな。


 レガリア「守護隊は崩落絡みで手が回りまセんゾ、今できることは確認と簡単な調査だけでシょう。」

 アリエスタ「はいっ! 俺がやってやるよ!」

 ゼラ「おっ、じゃあ俺も」


 ギャレス「おいゼラ! 団長に報告するのが先であろう! それに、儂の選出した精鋭で調査するに決まっておる!」

 皆「「え~」」


 モード「皆さん落ち着いて下さいネ、まずは現物の門を見てからですが、まだ入れないかもしれませんからね?」


 一同「「ええ?」」


 なんだ、後で挑戦しようと思っていたんだがな。残念だ。

 ミウ「どうしたの?」

 ルッコ「まだ入れないんだってー」 ミウ「にゃんで?」


 モード「ゼラ副隊長、扉は閉まっていたのですよね? ならまだ“死んでいる”のでは?」


 ゼラ「え? あ! そうだ、閉まってたな。えーと、水中だったからつい普通の扉みたいに思い込んでた。まだ死んでますねあれは」

 まだ死んでる? 扉が?


 アリエスタ「意味わかんねぇ」


 マイケル神父「ああ、確か、“休眠状態”とか言うのでしたね?」

 休眠状態?

 レガリア「サすが神父様、博識でスな」

「いえいえ、蔵書ぞうしょの中に迷宮都市の探索禄がありましてね、以前読んだことがあるのですよ」

 ぞう書? だが読んでみたいぞそれ。


 ギャレス「誰か、説明してもらわんとさっぱりわからんぞ!」


 モード「ああ、すいませんネ。“迷宮門”というものは、定期的に勝手に閉じたり開いたりするものなのです。簡単に言うとこの下にある扉は、今はお休み中というわけですネ」

 アリエスタ「何それ! 聞いてねえよ!」

「ふふふ、今言いましたネ」


 ギャレス「ええい、それで一体いつ開くのだ!?」

 マイケル神父「確か本には平均的な日数で、一月程度と記されてありましたな」

「神父様のおっしゃる通りですネ、組合の調査記録と同じですネ」


 ゼラ「いつから閉じちまったんですかね下の門は」


 モード「ゼラ副隊長、あなた迷宮都市まで上り詰めたのにそこらへんを把握してないのですか?」

「いや、ははは、他の奴に任せきりでした」

 ふむ、では一月前に閉じたなら、今頃開くのかもしれないな。


 アリエスタ「え? じゃあもしかしたら明日にでも開くんじゃねえの? 一月前に閉じたとかならさ」

 同じことをアリエスタが気付いた。


 モード「そうだったらそうでしょうが、門がいつ生まれたかも開放周期どころか、危険度さえわかってないんですよ?」

 さっきからまるで生き物のように言うな。


 パタタ。


 む、丁度青い鳥が穴の底から戻って来たな。

 ミウ「とりさんもどってきたっ」

 モードの肩に留まり、首を振っている。

(ご苦労様です)

 鳥にそう囁いてモードも首を振った。


 マイケル神父「だめですか」

 モード「ですネ」


 皆「「?」」

 やはり二人はこの小鳥がセレナールの使い魔だとわかっているようだ。


 ゼラ「? あっ、その鳥は!」

 お、彼見当? がついたようだな。


 ギャレス「何だ? 鳥が入りこんで来ておる」


 レガリア「いやはや、少シ安心シまシた。ならば今は確認だけシて少数を配置シ、他は崩落の方に対処できまスな」


 マイケル神父「ええ、今は湖の異変で忙しいですからな、私は“また港の騒動に”戻らないといけません」

 ふむ?


 アリエスタ「何だぁ、つまんねえの!」


 ミウ「にゃんだー」

 フィン「でも見てみたいにゃ!」

 ルッコ「下は危ないよー?」


 ビクターもがっかりしてるな。

 ソニーは逆に、ホッとしているようだ。


 ギャレス「フンッ、期待させおって! ゼラ! こんなとこは番け――守護隊にまかせて団長に報告に戻るぞ! 詰め所に戻るのだ!」

 また番犬と言いかけたな。この髭は。



 ということで、入口まで戻ることになった。


 誰も下まで降りて門を見に行こうとは言わなかった。

 ちょっと大変な道のりだとは説明したしな。


 崩落が落ち着いたら団長を呼び、迷宮に詳しい者達を呼んでまた集まって見に行くそうだ。


 レガリア「シかシ、完全に逃走路が塞がれまシたな、今頃リゾットめはどこへ逃げたのでシょう」

 ギャレス「フンッ、もたもたしとるから爆破なぞされて逃げられるのだ!」


 ゼラ「奴は逃げるの上手いですからね、“辺境のたんこぶ”ですよ」

 ということは、今までにも何度も取り逃しているのか?


 マイケル神父「下水道の構造としては、あちらは元々老朽化して未使用の、廃墟同然何ですがね、街壁の外になりますし、どこか隙間から張り込んだのでしょう。恐らく今頃街の外の、地上へ出て、森に逃げ込んでいるでしょうな」

 そうなのか。


 モード「外壁の外ですか……あ、神父様、港で何かあったのですか?」

 マイケル神父「ええ、それが……」


 ここで起きたことの説明は終わり、崩落現場を確認したので、玄関口に戻ることになった。



 ミウ「なにそれ」

 抱えているミウが、モードの後ろに付いていこうと私の足元を通り過ぎる、兄のフィンを見下ろす。

 拾った盾を抱えている。


 ルッコ「わー、何フィン、盾? へこんでるー」

 飛び降りてフィンの元に駆け寄る。

「べっこべこだね」「べっこべこにゃ」

 彼らには大きすぎるようだな。

 体が隠れてしまっている。


 部屋を横切り、階段を上り、玄関口の部屋に付き、盗品部屋の扉を開け兵を配置する話をレガリアとモードが話している。

 回収する人を呼ぶとかなんとか。

 プールに溶け残った武器等もだな。


 神父やギャレス隊の二人の後を、兄妹と子供達に挟まれ下水道の出口を通り、外でようやく出たのだった。


 その時それは起こった。


 読んでくださりありがとうございます。

 門の話をして帰るんですが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ