81話 陰謀
アリエスタの要望通りになって、守護隊員の一人が崩落現場にいた組合のモードを呼んで来てくれた。
恐らく魔法協会の一番偉い彼も、あの“使い魔”で見ている。
呼ぶ前からずっと居たようだが。
例のいかつい護衛の男達も一緒だが、私たちが集まっていて手狭なので、戻って外で待機している。
もうすでにこの部屋には十……十二人以上居るからな。
団長のケイラッドとギルマスのロムガルは来ないのか、どこかで忙しくしてるのかもしれないな。
ガストンもそうなのだろうか?
また飲んでやしないだろうな。
そういえば、ベイリ村での騒ぎの翌日は、泥酔して中々起きなかったなマルコは。
呼ぶ間、小瓶の中身についてあれこれ聞かれ、アリエスタは“はぐらかしていた”が、何故か最後には昼食に何を食べるかの話になっていた。
モード「お待たせしましたネ、今日はまた何をしでかしたんですかルーナさん達は。おやおや、お歴々がお揃いですネ、神父様、ギャレス隊長、ゼラ副隊長様」
やはり、彼女の洞察は速いし確かだな。
すぐさま私達を見て、何かしたとばれた。
そしてこの場にいる大人達の立ち位置を瞬時に理解したっぽい。
多分、偉い奴から順に言って会釈、をして挨拶した。
アリエスタ「あっ!」
ずっと壁の小窓にとまっていた青い鳥が外に飛び立っていったと思ったら、当然のように彼女の肩に留まっている。
どういうわけだろうか?
フィン「わぁ~」 モードを見るや、目をキラキラさせているな。
ミウ「かわいい」
ルッコ「ミウしぃっ、モードさんだよ、偉い冒険者の人なんだよー?」
マイケル神父「こんにちはモード室長、お元気そうですな。その肩にとまっている鳥は、小腹が空いたとき用の食事ですかね」
室長? あぁ、モードの肩書か。副組合長とかではないんだな。
ギャレス「むぅ、おのれ、モードか」
何だか苦手そうだな。
ゼラ「モードさん、だから普通に呼んでくださいって言ってるじゃないですか」
「もう新人でも冒険者ですらないんですからネ、そんなあなたでも貴族の仲間入りしてるのですから、偉そうな方々がいる場では一応、それなりの応対になりますネ」
「はぁ、隊長は――じゃなくてモードさんは厳しいや」
?
ビクター(あ、ルーナさん、モードさんは元々衛兵団の隊長だったんですよ)
ほう。
では、冒険者から衛兵になったゼラと逆なんだな。
ギャレス「おいモードっ元々所属してたとはいえ、我ら衛兵団に対して何だその無礼な言い方は! これだから組合はごろつきの集まりと言われとるのだ!」
「おやおや、これは大変なご無礼を致しましたネ。ゼラ・ノーデント男爵閣下様と、ただのギャレス様」
だんしゃく? かっか?
「っぬぅ~~貴様っ!」
ゼラ「まぁまぁ隊長」
貴族の名と敬称? か。
わざと仰々《ぎょうぎょう》しく挨拶をしたな。
ビクター達が思わず背筋を正してしまった。
アリエスタ「へっ、それがどうしたってんだよ? なぁ?」
ビクター「ぼっ、僕!?」
あぁ、それを聞いてまたギャレスが真っ赤になってきたな。髭がプルプルと揺れている。
また抜剣でもして来てしまうぞ。
マイケル神父「ギャレス隊長、いちいち目くじらを立てないでください、普通に邪魔です」
「っ!? ぐぬぬ」
ギャレスを大人しくさせるマイケル神父という男は、やはり一番偉いみたいだ。
もしかして街長で団長の、ケイラッドと同じくらいなのかもしれないな。
魔法協会は人をやって呼びに行ったが、朝から盗みに入られた騒ぎで忙しいそうにしてるから、わからないと聞いたが。
大丈夫な気がする。
モードの肩に青い鳥が止まっているから。
神父はあの鳥が、アリエスタの師匠の、彼の使い魔だと知っててさっきは嫌み、を言っていたのだろうか?
エルフ族にも、何か苦手な感じを出していたし。
青い鳥の存在にアリエスタも、そしてソニーも今気が付いたな。
小声であっ、会長の、と言いかけた。
どうやら魔法使いじゃない者には、秘密なのかもしれない。
部外者? と言ったか。
アリエスタ「まぁ、どうせどっかで魔法で見てるんじゃねえの? 師匠なら。盗品はばっちり取り戻したぜ! いくつか盗賊のせいで割れたけどな! ほんじゃちゃちゃっと現場を見せてやるよ」
彼はやはりセレナールが見ていることに気が付いているようだな。
思えば彼の変化の魔法も隠していたし、そういうものなんだろうか。
ゼラ「おいコラ、何でお前が指揮ってるんだよ?」
ギャレス「そうだ小僧! 儂に指揮権があるのだぞ!」
レガリア「シュー、ギャレス隊長、ソれはまだ決まっておりまセんゾ」
マイケル神父「まぁまぁ、下水道のことなら、管理を任されている水教会の長として、私も何か言う権利がありますなぁ」
ほう?
モード「はぁ。皆さん、指揮権どうこうの前に事実確認ですネ。まず、その小瓶の説明をしてくださいアリエスタさん」
そう言われ、アリエスタが入口の日差しに見えるように再び小瓶を掲げた。
「ああ、それがさぁ、種も仕掛けもないこの瓶の中に、なんと透明な――ん? おいルーナ! こいつ」
なんだ?
小瓶を掲げた彼が驚いて中を見ている。
強く振って何かを確かめている。
なにっ。
スライムが増えている?
確か、生き残っていた一匹だけ汚水ごとすくい獲ったはずだが、二匹になって、そして少し小さくなっている。
汚れもさっきより濃くなっている気がする。
モード「? ずいぶん薄い、いやかなり透明なスライムですネ、変種でしょうか」
ゼラ「何々、スライムが分裂するのは普通の事だろ?」
ギャレス「ええい、ちょっと珍しいスライムを捕まえたから何だと言うのだ!」
レガリア「いや、こんな小サな個体は普通分裂なんてシまセんよ、大きくなり成熟シきったものが繁殖行動で別れるのを、分裂と言うのでス」
ふむ。
分裂、増えるのかスライムは。
マイケル神父「守護長の言う通りですね、ロッカ湖の“スライム浄化場”でも確認されていますよ」
ロッカ湖?
ええと、小さい方だったな?
確かモッカ湖の傍にあるという。
スライムで浄化してると聞いたが、それか。
「変異丸の影響か?」
アリエスタ「うーん、かもな。てゆうか湖にばらまくスライムってこいつじゃねえの? あの水槽の数見たろ? 一体どこに消えたんだと――うわ! また増えたぜ」
むう。
モード(変異丸ですか? もしや今回の件も?)
事情を知る彼女が私の耳にささやく。
頷いておいた。
ゼラとレガリアもこちらをチラリと見たな。
彼らにも話していたからな、ゴブリン暴走の変異する肉塊の事は。
皆で小瓶を見つめる。
見ていると、どんどん分裂してるな。
そしてどんどん小さくなる。
水がどんどん濁って行くな。
増えると水を汚すのか?
しかし、急に何故? 強く振ったからか?
魔力も減ったな。
ベル「わー、お日様で元気になったね? おっきいとこに移して増やして食べるの?」
うん?
アリエスタ「またかよ! こんな気味の悪いもん腹に入れて増えて膨れ上がったら怖いわ!」
ゼラ「何で生きたまま食べてんだよ、酸で胃の中が焦げちまうだろが」
「ハハハそりゃそうだ! って違うわ! スライムなんて食わねえから!」
レガリア「ソうでスか? 私はよく食べるんでスが」
マイケル神父「意外とおいしいんですよ? 教会でも皆とおやつ代わりに食べてますね」
ベル「ほらー!」
スライム好きがここにも居たな。
ギャレス「おい! 何で食べ物の話になっとるのだ! この変種がどうしたといのだ!」
トププポポポポ……見てる間に、瓶がスライムだらけになった。
もはや爪みたいな大きさでうじゃうじゃと真っ黒な水の中に溢れている。
魔力が細かくなりすぎて一匹一匹を確認できない。
全体を見るようにしない限り。
あと、きれいな水に移したら、多分このうじゃうじゃを見ることはできないんじゃないか?
ミウ「じゅるり」
フィン「うえっ、うじゃうじゃで気持ち悪いにゃ!」
ルッコー「おもしろいねー」
マイケル神父「水の汚れが濃くなった? なんという冒涜ですか」
神父は水が汚れるのは嫌いなようだな。
モード「体内で焦げる? 透明で、日光で増える? “成体”なのに小型で、今もどんどん小型化している? 汚染が増大する……」
そう呟く彼女の言葉を聞いて、何かが繋がった気がする。
わからんが、最近街で起きている異変と関係ある気がする。
より深いところと。
ゼラ「妙なもんは冒険者時代から沢山見てるが、こいつはとびっきりですよね。
どこで見つけたの? “あの”底?」
アリエスタ「いや、崩落した通路の手前の部屋だぜ」
見に行くことになり先を進んだ。
階段を降りると、そこはやはり池、スライムプールから出た部屋だった。
さっきまでいた入り口はもう子供たちの内緒の場所じゃないな。
人が集まってしまっていたから。
見ると、さっきより埃やひび割れで荒れている。
崩落の影響だろうか。
報告も兼ねて、プールの扉を開いて中を見せて、簡単にプールで起きたことを説明する。
大量の毒スライムや巨大スライムと盗賊団との戦いの顛末を。
再び手に入れた透明魔石も見せた。
リゾットがペラペラ話した内容もだ。
ギャレス「なんだ、ただのガラス片ではないか?」
マイケル神父「これは、透けているだなんて」
中の大部屋だが、アエリエスタの魔術で開けた穴が崩れて更に広がったようで、残っていた毒液が、幾つか残っていた毒スライムごと穴の中へ流れ込んで空になっていた。
あ、いや、瓦礫の影にまだ引っかかって残っているな。
人質のくだりでようやく弟と妹達がここに居た理由にやっと気が付いて、兄である衛兵ルークにとても感謝された。
「……ご飯、奢ります」
ゼラ「礼は別のにしとけルーク、ベルちゃんは十人前は食うんだからね」
ベル「ご飯の話?」
私達「「違う」」
しかし、アリエスタは青い鳥を見て自慢するように話すな。
多分、見ようとして見てるのではないと感じる。
だが、鳥の向こうにいる者を意識した話し方だと思う。
さっきから鳥は特に何の反応を見せていない。
そもそも生き物の鳥ではないようだ。
ただ、私達を見つめている。
フィン「めっちゃ怖かったにゃ!
ミウ「ルーナかっこよかった」
ルッコ「ずっと寝てたけど、起きたらすごかったねー」
証人? の子供達も会話に参加する。
ゼラ「ええ? とんでもないこと聞いちゃったんだけど。確かに退屈しないや」
モード「はあ、今度は変異丸と盗賊団の拠点ですかネ、“二つ目”の」
レガリア「素晴らシいでスなルーナ様っ、アリエスタ君の魔術も実に見事だ。あぁ、ソの場で見て見たかった」
マイケル神父「し、施設に穴が……ですが、それは、本当ですか? 滅ぶ等と……」
アリエスタ「へっへっへ、こりゃ等級が上がるのも間近だな」
等級? あぁ、ガストンが外に出た時、帰りに話してたな。
ギルドランクとも呼んでたな。
報酬が上がるとか言ってた気がする。
組合の話で思い出した。
ルッコが拾った冒険者認識票をモードに渡す。
そうだ、ごろつきから取った奴も。
「溶け残ってる金属の中に、まだあるかもしれない。回収した方がいい」
モード「これは……よくやりましたネルーナさん、任せてください」
彼女は、認識票に書かれている冒険者の名を読んで、悲しそうな顔を一瞬したな。
知り合いか。
モード「こっちは……随分前に姿を見せなくなった者の名前ですネ、やれやれ」
ごろつきの認識票を見てそう言った。
ひょっとしたら組合全員の事を彼女なら把握? してるかもしれない。
モード「その槍も、ひょっとしてここで?」
お、目ざとく私が背にかけているこれを見つけたな。
「ああ、大変助けになったぞ」
魔法の槍なんだ。
「そうですか」
どうも彼女の眼鏡の奥の眼と鼻は槍の魔力を捕えていそうな気がする。
ギャレス「フン! そんな大層な話、大言吐きの盗賊ごときの戯言だ、信じるに値せんな! そのなんとか丸の証拠もないのだろう? ここはスライムプールとやらではなく、汚水とスライムがうろついとるただの下水道の一部屋ではないか」
池は穴で全部零れ落ちて言ったからだ、何を見てるんだ。
壁にもたっぷり溜まっていた“跡”があるだろう?
「それにそれは魔石ではない、質の悪いガラスだ馬鹿者! スライムから魔石が取れるわけないだろうが! 嘘だ嘘! 簡単に乗せられおって! それが奴らの手口なのだ!」
ガラスとこれの区別くらい着くぞ。
馬鹿なのかこいつ。
アリエスタ「マジで言ってんのあんた? 説明聞いてた?」
ミウ「にゃんで?」
レガリア「シューッ、子供らを救ったルーナ様とアリエスタ君の戦いを信ジられぬと?」
モード「いいえギャレス隊長、話にあった巨大酸スライムからも同様の割れた物が取れましたし、ちゃんと魔力精査もして調べました。これはとても特殊な魔石ですネ」
彼女が言い返してるな。
もっと言ってやれ。
魔力せいさ? 私が視るみたいな感じだろうか。
ギャレスは頑なに認めないな。
嫌われてるからか、聞く耳、というやつを持ってくれてないのだろうか。
まぁ、こいつが信じようが信じまいがどうでもいいのだが。
話をするうちに、どうやら落とし穴の部屋はさっきの入口の部屋にあった扉の先にあるようだった。
プール壁にある穴から上だとすると、確かにそうだ。
構造もあっている。
マイケル神父「やれやれ、盗賊達は勝手に入りこんで改造までしていたようですね。修繕費を請求したいですな」
アリエスタ「なんだ、じゃあ盗んだ薬は全部さっきんとこの扉の向こうにあんだな」
彼はそう言ってモードの肩に乗っている青い鳥を見た。
盗品のそれは、全部落ちたんじゃないのか?
「んでこの部屋が透明スライムのいた空のプール跡の部屋だぜ」
その先の、空の浴槽が並んだ部屋の扉を開けてなかをのぞくが、瓦礫が散乱しヒビが多く入っていた。
向こうの扉の先が、崩れ落ちた廊下だな。
進んでも大丈夫だろうか。
また崩れ落ちるのはちょっと嫌だな。
……。
「アリエスタ、本当に行くのか?」
「? 何で? 別に大丈夫だろ? 崩落もだいぶ収まったしよ」
ソニー「……私達、子供達とここで待ってましょうかルーナさん?」
ミウ「やー、みうもいく!」
ソニーにだっこされていたミウが私に飛び移った。
今、鉄の胸当てにゴンと額をぶつけたが。
あと尻尾がいきなり膨らんで、前が見えない。
仕方ないな。
ちなみにルッコはずっと頭の上に乗っていて、フィンはモードに憧れてるのか、ずっと後ろをついて回っている。
マイケル神父が灯の魔法らしき魔術を唱え照らしてくれた。
ローブから出した水色の杖先の宝玉が輝き、部屋を白く照らしている。
もちろん俺だってできるぜこんな簡単なもん、とアリエスタが私に向かって言うので頷いておいた。
すごいぞ。
今はいらないが。
お前はむしろ、できないことの方が少ない気がするが?
浴槽が六つ、枯れた跡、スライムを入手した箇所の底にわずかに残った汚水。
やっぱり、瓶の中の汚水の方が濃くて汚れている。
リゾットがここでないやら変異丸でスライムを増殖していたらしいこと、拠点を移したこと、湖にばらまくという発言から、この透明なスライムと関係があるのかも、と言うことを話した。
アリエスタ「こうやって整理して話してるとさぁ、もう確定なんじゃねえの? もしかしたらこの見えないのが今モッカ湖に大量にいるんじゃねえ?」
私もそう思う、港の魚の騒ぎを思い出すな。
レガリア「なっ!?」
ギャレス「フンッ、馬鹿を言うなっ、飛躍しすぎだ」
ひやく、それは、話が飛ぶとかいう意味だな?
モードが言うので、底に残っている汚水も採集した。瓶は懐から出して渡してくれた。
彼女も衣服の裏に魔法の袋を持ってるのかもしれないな。
私も、そういうの欲しいぞ。
さりげない感じがとても良い。
ビクター「終わったら道具屋に行きましょうね、ルーナさん」
何、売ってるのか?
「? あ、いえ、ああいう瓶なら並んであったんで……」
そうか。
ベル「お昼ごはん食べるのー!」
ミウ「おなかへった」
ソニー「ふふ、皆でお昼にしましょうね?」
ギャレス「おい小童共! 現場検証中だぞ! はしゃぐなら出て行け!」
なに中だって?
しかしこいつは、この先の穴に蹴落としてやろうか。
背後で睨んでいるレガリアの視線が、そろそろ殺気を出しそうだな。
皆は彼の出す威嚇音が聞こえてないようだな。
けっこう大きくなってきているんだが。
しかし同じ隊長でこの差か……。
マイケル神父「これギャレス隊長、子供に怒鳴ってはいけない、諭すのです。ここは私が責任を取るのでもう上の現場を指揮しに行っては? さっきからうざいです」
おお。
ギャレス「ぐぬぬ、い、いえっ、げ、現場を確認せねば!」
アリエスタ「でもさあそれって守護隊だろ? 部下じゃないじゃん」
モード「お腹すきましたネ、猫屋のお昼の定食の時間には間に合わないでしょうかネぇ……」
ギャレス「ぐぬぬ」
彼女は見事に髭を無視するんだな。
ルッコ「うん、母ちゃんのご飯に間に合わなかったにゃ」
ミウ「いやぁ、おこられるー?」
どうだろう、聞かれたが、私はわからない。
飯抜きにはなるんじゃないか?
アリエスタ「……あれ? お前らひょっとして、レイアさんのガキんちょ達だったのか? 俺師匠と食いに行ったことあるぜ?」
うん?
フィン「そうにゃ? 兄ちゃん、お外で遊んでる時にうち来てたにゃ?」
ミウ「アリ、おきゃくさん?」
「家っていうか、飯屋にな」
何と、知り合いだったか。
まぁ、同じ街だしな。
ルッコ達とは会ってなかったのか。
私は一応周囲が崩れないか警戒してるのと、ギャレスがまた抜剣するか手を出そうとしたら、壁に蹴り飛ばすつもりでいる。
ルッコ「そこがいいー」 ミウ「にゃ~」
それにルッコやミウをなでるのに忙しいのだ。
その後、乾いてある浴槽に水を垂らしたりして何かモードが調べていたが、先を急ごうと、検証は後でゆっくりしようと言うことで、崩落した通路を見ることになった。
マイケル神父が協力的だな。
水に関しては汚すこと自体に怒っているようだ。
下水の汚れとは違う、不自然なことに対してだろう。
こだわりを感じるな。
さすが水教会か。
魔法の事を聞きたいが、何故か私から離れて歩くのでできていない。
先に進み、浴槽とスライムの話をして、先の扉を開けると、見事に崩れていた。
ガラガラッ……。
ルッコ「わぁー、外が見えるよ?」
ミウ「なんかおちてる」
フィン「水浸しにゃ」
モード「ちょっとここから先は行きたくないですネ」
彼女は眉をひそめてそう言った。
水が通路に流れてしまっている。
そして途中で崩れてなくなっており、端っこにかなりひしゃげた盾が落ちているな。
両脇に流れていた壁のような水はひび割れ崩れ、倒壊した壁のせいで止まったり、バラバラに流れ、通路を濡らし、下の大穴に消えていっている。
奥のリゾットが逃げたと思われる扉も崩れた瓦礫で埋まっていた。
天井も崩れて瓦礫で埋め尽くされているが、一部、地上が見えており、そこから日差しが差し込み大穴の崩壊跡を照らしてていた。
明りの向こうから、人々の声が少し聞こえる。
抱いているミウの耳も反応してそっちを向いているな。
後は、下水の臭いの中に、妙な紙を燃やしたような焦げ臭さが混じっている。
マイケル神父「ああ、なんということだ。上の用水路が完全に崩落していますね、これでは修繕はできないですね。上の水路は封鎖して、使用してない地区の水路を補修して使わなければ、幸い、街壁近くでよかったですが……」
神父がなにやら一人で言っているな、本当に水関係を管理しているらしい。
上は街の中を流れるあの人工の川だったのか、だから水が流れていたんだな。
今私たちが立っている通路が、崩れ落ちた時にアリエスタが水球で防御していた場所だろうか。
落ちた時にちらりと背後に見えた緑の髪は、やはり、本当に今もそこに立っている兄妹だったようだな。
結局みんなで崩落跡まで来た。
あの毒の瓶の破片は落ちてないだろうな?
だが足元は両脇の水が流れ込んでいてびしょびしょだ。
それでも、子供達は歩かせたくないな。
ミウ「はしっこからみたい」
この子は怖いもの知らずだな。崖だぞ?
レガリア「なんということだ。一体どんな戦いを……サスが、ルーナ様でス」
いや、これをしでかしたのはリゾットの罠なのだが。
アリエスタ「いやてゆうかこれ全部、盗賊野郎の罠のせいだから」
うん。
ゼラ「あれ、隊長? 来ないんですか?」
戸口から動かないギャレスに気が付きゼラが振り向いた。
「バカッ、しいっ、あまり声を出すなっ! 崩れるやもしれんっ」
髭は何故か体を竦めて、穴に近づこうとしない。
声が大きいのはお前だ。
ゼラ「はぁ、で? 何すりゃこんなことになるんだ? 爆発魔法でもぶっ放したのか?」
アリエスタ「そんなもん撃てるか! うん? 撃てないよな? いや、じゃなくてよ、天井に仕掛けてあった爆発術式の書かれた巻物をあのクソ野郎が発動させやがったんだよ」
爆発術式。
アリエスタがこちらを見て確認したが、知らんぞ。
あぁ、もしかして魔力譲渡すれば撃てると思ったのだろうか、それは次の戦いでぜひやってみよう。
ソニー「それっ、て爆発の巻物ですか先輩?」
アリエスタ「おうそれそれ、ルーナわかってるか?」
よくわからん。
モード「くん……確かに、爆炎術の巻物が焦げた臭いがしますネ」
あぁ、この焦げ臭いのはそう言うことか。
フィン「クンクン」
兄も真似し始めた。
ビクター「ルーナさん、魔法の書かれた巻物というのがあってですね、スクロールとも言うんですが、それを使えば僕でも魔法が使えちゃう便利な羊皮紙が売ってたりするんです。ちょっと高いですけどね」
レガリア「治療の巻物等、衛兵団の支給品とシて配備シてありまスよ」
マイケル神父「毎度、購入をありがとうございます。水神様のご加護を」
アリエスタが渋い顔をしてるな。
ああ、金絡みか。
お前も作って売ればいいんじゃないか? よくわからんが。
ゼラ「爆発スクロールなんて冒険者も僕達衛兵だって使わないですよ、戦争かやっかいな工事ぐらいでしか見かけたことないんですからね」
ビクター「あっ、わかります、素材まで吹っ飛んじゃうし、そもそも巻物って高いから」
「お~、まだ若いのによく勉強してるね、ガストン仕込みか」
ふむ。
倒せるが、高い品だし、戦利品がここみたいになって意味もないか。
それは、稼ぐどころか、金を失ってないか?
む、モードの後ろをついて来ていたフィンが、目ざとく通路端にぎりぎり落ちていた盾を見つけて拾っている。
前よりかなりひしゃげているな。
ああ、爆発で天井の瓦礫が落ちて来た時にやられたのか。
亀裂が入ってしまっている。
そういえばとんでもない強力な毒瓶を逃げる間際に投げてきたが、盾で塞いだのだったな。
水で全て流れてもう大丈夫だろうが。
アリエスタ「おい、落ちんなよー」
彼も特に何も言っていないしな。
ギャレス「おい! 冒険者! それで迷宮とやらは一体どこにあるのだ?」
アリエスタ「へいへい、そんでこっから落っこちて、下水道より下の洞窟の底に…? んお!? やべえ溢れるっ!」
スライムの瓶を持った手の指を指して、身振り手振り話すその手に日差しが差し込み、瓶がきらめく。
その時だった。
落ちた底の話をしとうとした最中、彼の持つ小瓶内のスライムが増え過ぎて瓶にぎゅうぎゅうに溢れて出していた。
上からの日差しのせいなのか?
日影を移動していて忘れていたが、分裂は止まっていなかったのか!?
ミキミキパキ……バリィンッ!
読んでくださりありがとうございます。
現場検証回。




