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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
84/133

80話 騒ぎ

 下水道の底から帰還した私達を、ビクターとソニーや子供達が衛兵と待っていた。


 あのリゾットの仕掛けた罠の爆発による下水道の崩壊で、街はちょっとした騒ぎになったようだ。

 衛兵守護隊が辺りを封鎖し、街民が入って怪我しないようにしているそうだ。


 上の地表の、用水路? 街で見たあの川の辺りが崩れて、あの通路が外にのぞいているらしい。


 入口の外に、衛兵が数人並んでいるのが見える。

 さらに向こうには人々がこちらをなんとか見ようと集まっていた。


 騒がしかったのはこれか。


 ズブ濡れだった私達を見るや、ソニーが魔法で風を起こし、衣服を乾かしてくれた。

 普通の風と違ってどんどん乾いて来るな。

 ……もしかしてアリエスタが鷲で突っ込んで来てスライムに変化した時、渇いたのはこういう種類の魔法なんだろうか?


 頭の血の跡を心配されたがアリエスタの治療で治してもらったと話している。

 まだ残っていたか。


「なんだか今日は調子がすごくいいんですっ」

 ふむ、やはりソニーも位階レベルが上がったのだろうか、魔力の量と、制御? が高まっているようだな。

 アリエスタ「なぁ、俺も」

「も~先輩は自分でできるしょう?」

「ちぇっ」


「すっきりした、ありがとうソニー」

「いえいえ、どういたしまして」


「いやいや、ルーナ様、少シ離れた崩落現場の方は大変な騒ぎでスゾ。

どこまで崩れるかわからないので我々守護隊――第二中隊が封鎖シていまス。

ここへは第三中隊――ゼラの部下から報告を受けた参った次第でス」


 と、街入り口で会った、守護隊長の蜥蜴族レガリアが言う。


 外の崩落現場? からゼラの部下が呼んで来てくれた。

 第二に三中隊か、前も言ってたが色々あるんだな。


 フィン「にゃあ~」

 彼は装備とかを目をキラキラさせて見ている。


「ゼラとは、別の隊だったか? 何故かここにいるが」


「ああ、そんなルーナさん! 僕はあなたの危機を察知して、真っ先に駆けつけて来たんですからね!」

 ミウ「にゃあ~」


 アリエスタ「いや、ベルと緑兄妹がここを見っけて入って来たとこにたまたまで出くわしただけだろが!」

 ビクターとソニー「緑兄妹!?」


 さっきから猫達をみんなで撫でている。

 話してる間、私が抱きかかえているからだ。


 腕を組んでいたらそこに二人してよじ昇って収まって来た。

 ルッコは頭の上に乗り私の血の跡を、もう治っていると言ったのだが舐めている。


 ビクター「ルーナさん、衛兵団は任務ごとに隊が別れていて、ゼラさ、いや副隊長様は第三中隊で外を哨戒、レガリア隊長は第二中隊で街を守ってるんです。皆守護隊って呼んでます」

 お、ビクターが耳元で教えてくれた。

 フィン「ビクター兄詳しいにゃ」


 レガリア「こんなのに様呼びは無用だゾ」


 ゼラ「こらビクター、俺なんかを様呼びなんてしなくていいんだって、寒気さむけがするからやめて。ガストンと同じくらいの扱いで頼むわ。ちなみにルーナさんはどんな呼び方がいいですか? 僕はあなたの奴隷も同然ですからね。恋の奴隷ってやつです、ふふ」

 恋の、奴隷?


 ビクター「あ、はい」


 ソニー「えええ?」

 それを聞いて、彼女が口元を塞いで真っ赤になってるな。

 ああ、それは照れてるんだな? 怒ってるのではないと知ってるぞ。

 ゼラは私に向かってそう、よくわからないことを言ったのだが、何故ソニーが照れたのか謎だ。


 ミウ「ゼラはどれい? にゃんで?」


 レガリア「シュゥ、おいノーデント卿、ルーナ殿を侮辱ぶじょくスるな! 『誤解であります!』ふザけてないで説明シろ! 一体全体、何が起きたんだ? 貴様の隊長も組合ギルドの者も現場に来てるんだゾ」

 ゼラの隊長? あぁ、あの“髭”か。

「もシかシてここから爆心地に入れるのか? ソれと、ガストンは何でいないのだ?」


 ミウ「にゃんで?」

 フィン「知らないにゃ」


 ゼラ「ええ? あの髭――いえ、うちの隊長も来てるんですか? 結構な大事になってますね」

 レガリアが怒ってるな。

 蜥蜴族の怒った顔は迫力があって好きだ。

 でも、あまりやらないで欲しいな、子供達がおびえてるんだが。


 ミウ「しっぽぴったんしてる」ミウは別だ。

 確かにレガリアの尾が床にビタンと音をさせたな。

 別の隊とはいえ、彼は隊長だからだろうか。


 話をしたからか、なんだか外の衛兵に怒鳴ってる髭っぽい奴が、こっちに入ってこようとして衛兵《守護隊》と揉めているな。


 ベル「盗賊とスライムとキュロローンと戦ったんだよ! ルーナが水の中でがれきに埋まっちゃったのも助けたよ!」

 子供達「「キュロロオン?」」ルッコ「すごーい!」

 ベルと子供達が話し始めたな。


 アリエスタ「そんな雑魚なんていいんだよ、リゾット盗賊団のアジトがここにもあってよ! 俺とこいつでぶっ潰したのさ! ついでに下水道の底で迷宮を見っけたんだぜ!

へへへ。おいっ、報酬は山分けだかんな!」

 アリエスタが肘で私を小突いた。


 ゼラがあちゃーといった感じで、顔を覆ったな。

 隠しておきたかったのか?

 ……隠せるものなのか?


 レガリア「え? 盗賊団のアジト? 迷宮だって!?」

 ゼラ「……そうなんですよ、いや、俺も詳しくはまだ聞いてないんですがね? そこの階段降りた下の――何だ?」

「ソんな馬鹿な――ん?」


 ザワザワッ、ズカズカッ。

 誰かが衛兵をどけて無理やり入って来たな。


 同じ衛兵だが、兜に羽が付いている、隊長の証だったか。


 ギャレス「ここなんだろう崩落現場への入口は? ええい、良いと言っているだろうが! 儂を誰だと思っておる、どけい! “番犬部隊”風情の下っ端トカゲめがっおいそこっ! 今なんだと? 迷宮だと言ったか? うぅしかし臭いなこは!」


 本当にギャレスだった。

 外の盗賊アジトにいた、髭の隊長だ。

 リコアはいないようだが。


 入ってくるなりうるさい、唾を飛ばすな。


 アリエスタ「何だこのうざってえ奴はむぶっ、むぅぅ! ――」

 ビクターがアリエスタの口を塞いだ。

 やるな、あらかじめ彼の背後に回って準備していたぞ。


 彼なら何かしら言うと思ったのだろうか。

 そういうビクターも今までとは表情がまるで違うな、嫌悪、というやつだ。

 ソニーはギャレスを見もせず笑顔は消えた。


 番犬部隊とはなんだろう?

 聞いた途端、レガリアの表情も消えたな。

 これは多分、かなり怒ってるぞ。


 ゼラが直立して敬礼した。

 部下達も、猫たちの兄ルークもだ。


 レガリア「ギャレス隊長、聞いて来たか」

 そう言いながら外の部下を向いて頷いているが、この髭を通してしまったことかな。


「おい、レガリア! 番犬隊の指揮を放っておいてこんなとこで何をしておるのだ!」


 ベル「もー、なんなの? お腹空いてるのにこのヒゲむぎゅむぐっ!? ――」

 彼女が何か言おうとしたのを、今度はソニーが両手に包んで抑えた。


 しかし、ギャレスには私達が目に入っていないようだな、鎧を着た衛兵しか見ていない。


 レガリア「シュー、まズ、守護隊に対シて“ソの呼び方”をやめてもらおうか、団長もやめろと言ったはズだが? “貴兄きけい”こソ何用か?」

 む、レガリアの口調がガラリと変わったな。

 “最初の高音”は威嚇音いかくおんに見て取れたが……あぁ、番犬隊とは侮辱? の呼び名なんだな。


 ん?

 まだ外でもめてるな、また誰か入ってこようとしている。

 が、止められているな。

 関係者以外、立ち入り禁止? と衛兵が言っている。


 ギャレス「フンッ、こんな大事に部隊がどうの等、小さな事であろうっ貴様は警備で忙しいであろう、ゆえにここは直ちに儂率いる第二中隊が指揮を執り、調査するべきであるな」


「マイケル殿! 何をしておるのだ、早くこちらへ! 良いから通せっ! 迷宮が出た等言っておりますぞこやつら――こやつ……な!? き貴様は!? エルフ娘ぇ!!」


 ジャキン!

 皆「「!?」」


 私に気付いて、いきなり抜剣したぞ。

 うるさいし忙しい奴だな。


 フィン「ひうっ」

 ミウ「フャーッ!」

 ルッコ「ひっ!」

 子供達を抱えてるし、蹴っとばしてしまおうか。


 抱えてなかったら、抜いた瞬間にあの魔法の剣を奪っていたのだがな。


 ずっと壁際で立っていた兄のルークはあわあわしている。

 大丈夫だ、何かあったら子供達はそっちへ投げる。


 レガリア「ギャレス隊長!? 何事だ!」

 間に彼が入った。


 ゼラ「! やめてください隊長っ彼女は敵ではありません!」

 同時にゼラも立ちふさがったな。


 む、いつの間にか槍を背から抜いてある。

 しかも奴に隠れるように構えているな。


 勉強になる。


 ちなみに、レガリアも槍を持っているが、来た時からずっと脇に挟んだままで、存在してないかのように携帯? している。

 確か、会ったときもそうしていたな。


 良かった。

 私は子供達を抱えていたからな。

 ちょっと動き辛い。


 そのままやっつけて構わないぞ。そしたらゼラが隊長になるな。


 兄妹はベルとアリエスタを抱え、ちゃっかり壁に下がっている。

 ゼラの部下達もだ。


 そんな時に、さっき言っていたマイケルとやらが入って来たな。


「おやおや、物騒なことになっていますね? やめなさいギャレス隊長。頭は大丈夫ですかあなた」

 この人族の中年、いや高年の男はかなり大柄で、屈んで入って来た。

 顔も大きい。


 外の光が背後から照らされて威圧感があるな。水模様の入ったきれいな白と青のローブ姿で、外していた高い帽子を着けたら、更に大きいと思う。

 あと、“妙な草の臭い”をさせているな。


 優しそうな顔をしているが、目を細く閉じていて、読み取りずらい。

 そして、今の成長したアリエスタの魔力量を越えている。

 中々の魔術士だ。


 そういえば、街でちらほらと同じような青白ローブの魔術士達を見かけたが、彼の部下なのかも。


 ミウ「おっきいにゃ!」

 ルッコ「あー、神父様だ」


 フィン「ええ? このでっかいおじいちゃんが?」

 顔をしかめて鼻を動かしている。

 神父様?


 ギャレス「フンッ、ちょっと興奮しただけである」

 スチャ、納剣した。


 レガリア「これは、神父様」

 敬礼した。


 ゼラ「神父様」

 彼もゼラも敬礼した。

 槍は仕舞ってはいないが、隠さずに持っている。


 このマイケル神父とやらは、偉い人なのか。


 ソニー(ルーナさん、この方が水教会の“司教”の、マイケル様です)

 水教会、しきょう……。

 ビクター(あれ? あ、ルーナさん、水教会ってのは水魔法を教えてくれて、治療もかけてくれるところですよ)

 何。

 私も教えて欲しいぞ。

(お兄ちゃん違うっ、それもだけれど、水の神様をお祀りして、水を清めるお仕事を担ってらっしゃてるんだよ)

 ふむ?

 まつる、清める……。

 

 マイケル「皆さん、ごきげんよう、水神様のご加護を。そうじゃない方は”清き水が得られるように”」

 私が説明を受ける終わるのを待ってたかのように、彼が何か言った。

 何か決まりごとの様な仕草をした。

 すると、ソニーとレガリア、部下達の一部だけが真似をした。そしてそれは全て蜥蜴人だ。

 水神様とやらをまつって、敬っているのだろうか?


 ソニーはベルを包んだまま腕を動かすので中のベルが何か言っている。


 他はお辞儀をしただけだ。

 子供達はキョロキョロしてから、真似をした。


 アリエスタ(へんっ)

 ちなみに、彼とギャレスの二人だけが、馬鹿にした表情をしているのは何でだろうな。


 あ、これは祈り、というやつだな。

 本を読んでいたから知ってるぞ。



 私はガストンは今頃何をしてるのか考えていた。


 マイケル神父「むう、エルフ族ですか……あ、おや、ルッコ、久々ですね、元気にしていましたか? 何故こんなところに居るのですか? 子供達も、ここに入って遊んじゃいけないですよ、“とても危ない”ですから。今度入っているのを見たらお尻ぺんぺんです」

 ミウ「やー!」

 フィン「ごめんなさいにゃ、悪者に捕まったのにゃ」

 ルッコ「ごめんないー」

 ”さ”が抜けてるぞルッコ。


 マイケルは一瞬、私を見て表情が変わり、目つきが鋭くなったが、その後は頭の上のルッコを見て、他の子供達にも、穏やかな感じに戻って話しかけたな。


 それと、“とても危ない”という言葉に何か感じたが、気のせいか?


 あと、さっきからこの男は話の最後に鋭いことを言うな。


 ギャレスがそわそわしている。

 なんなんだお前は。

「マイケル殿! そんなことより! 迷宮ですぞ迷宮!」


 アリエスタ「むぐ、わかったから離せってビクター! そうそう! メイキューって言う名前の、こいつが飼ってたドブネズミがやっと見つかったんだよ」



 皆「「……え?」」


 ミウ「ビクター、みせて!」

 フィン「そんなばっちいの飼ってるんにゃ? うちの宿に入れちゃ駄目にゃよ?」

 ルッコ「えー、ちゃんと焼けばおいしいよ?」


 ソニー「ちょっと、お兄ちゃん!?」

 ベル「もがっ、ぷはぁ、何―? 食べ物の話? 行くの? お昼ご飯?」


 ビクター「ぼ、ぼぼ僕が、飼ってるんですか? ね、ネズミを??」


 ああ、嘘か。

 ゼラが噴き出しそうな顔を我慢している。


 嘘じゃないが、何故嘘をついてるんだろうなアリエスタは。


 マイケル神父「はぁ、“問題児”め……ギャレス隊長?」

 む、アリエスタとは知り合いか?

 ああ、癒しの魔法を習ったのかもしれないな。


 だとしたらそれに助けられた私は、彼に恩があるといえるな。


 ギャレス「え? い、いや! ど、どういうことだ小僧! ゼラ! 説明せんか!」

 ゼラ「え? いや、ちょっと待ってくださいね」

 困ってしまってるなゼラが。


 こっちに来た。怒ってる。


 ゼラ(おいコラ! どういうことだ!? 何考えてんだアリエスタン?)

「アリエスタだ! いや、別になんも考えてないぜ、冗談だよ冗談! ハハハ! おっさんたちの顔!」

「っこのガキ~~っ!」


 レガリアは困惑して私とアリエスタを交互に見てるな。

 私もわからん。


 わからんが、彼に任せよう。

 まぁ、なんとかなるだろう。


 また調書を取るのは苦手だが。


 ギャレス「こ、小僧~~!」

 ゼラ「隊長! こ、子供の言うことですから!」

 なんだか彼は間に挟まれて大変そうだな。

 副隊長は大変なんだな。


 アリエスタ「ハハハ、はぁ~。俺はガキじゃねえしハーフリングで協会の魔術士で、冒険者だよ。なぁ、冒険者組合呼んでくれよ! 魔法協会も! 衛兵だけの問題じゃねえ、けっこう厄介なことになってんだよ」

 お。


 ゴソ、チャポンッ。

「あとおっさんたちには悪いけど、今回の大戦果、俺達のパーティのもんだからな!」


 と言って、私の鞄から例の透明なスライムを取り出して掲げて見せた。

 

 ベル「そうだそうだーっ!」

 子供達「「そーだそーだーっ」」


 おや、私はどうやら、アリエスタのパーティに入ったようだな。

 ふふ。


 そう笑い合う若者達の様子を、青い鳥の小さな瞳が見つめていた。


 読んでくださりありがとうございます。


 スイレーン衛兵団の大体の構成

・第一中隊 砦に詰めている? 団長の指揮下?

・第二中隊 (通称守護隊) 町の警備が任務 隊長は蜥蜴族レガリア 副隊は魚人 蜥蜴族が多い

・第三中隊 外の哨戒が主任務 隊長はギャレス、副隊はゼラ・ノーデント 猫屋長男ルークも所属

・第四中隊 (通称遊撃隊)新生された荒くれ部隊。主任務は第三の補佐 隊長は獣人、副隊はアルマジロで行方不明中

現在隊員が大量に行方不明でその捜索に出たまま帰還せず報告もおざなり中……。

小隊でよかったんですがもう書いちゃったし。

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