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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
83/132

79話 下の……

 衛兵隊副長のゼラも迷宮の門とやらを確認した。


 迷宮の門の向こう側は、水の中のせいか感じ取れないな。

 多分、中も水なんだろうが。


 ただ、集中するとより聞こえてくる、“鳴り続けている妙な音”が気になる。

 呼んでいるかのような……。


 ゼラは目を何度もこすったり、顔を水に浸けて見ていたりした後、大層驚いて、少し動かなくなったが、お宝お宝連呼するアリエスタを見て、かえって冷静になったな。


 顔が濡れてるが、毒の話は今はよしておこう。


「う~ん、欲に溺れたお前の顔を見てると頭がはっきりしたよ」

 アリエスタ「何だそりゃ!」

 ベル「これが欲に溺れた顔なんだ!」

「やかましいわ!」


 ゼラ「まぁ聞けよ……」

 今この瞬間も数々の迷宮が、幾つもの命を吸い続けているそうだ。


「吸われるのか」

 入らなくてよかったな。

 アリエスタ「何言ってんの?」

 ゼラ「あ、違います違います、例えですよルーナさん、何人も入って死んでるってことです、魔物とか罠とかで」

 ああ。


 それに、今からどうこうするという言う話でもないようだ。


 水中にあるし、中がどうなってるのか、ここら一帯は安全かさえも不明。


 また妙な魔物が出没するかわからないし、瓦礫が時間経過? で崩れ落ちるかもと言うことで、諸々の報告もあるので、いったん縄を登って戻ることになった。

 そういえば白くてでかいのもうろついてたしたな……。


 アリエスタ「じゃあさ、ちょっと潜って、少しだけ開けてみようぜ!」

 ゼラ「駄目だ、どんな代物かわからん、準備してからだ。てゆうか団長に報告しないとだ」

「ちょっとだけ!」


「だーめ! おまえ迷宮のこと全然知らねぇだろ? 一旦近づくか入るかすると吸い込むように引きずり込まれて、扉が閉まって開かなくなっちまって、大量に襲ってくる強力な魔物を死にかけながら潜り抜けて、奥まで潜って、すぅ……そんでそこの謎解き付きの仕掛けを解かないと二度と開かなくなる、って迷宮もあるんだぞ? これ聞いてあの門に触る気、あるか?」


 アリエスタ「一気に言ったな!」

 息継ぎはしたぞ。


 ベル「なんか怖そうだね」

 だが、楽しそうだな。


 謎、解き? がよくわからないが。


 アリエスタ「……それ、脅かす為の嘘だろ?」

 ゼラ「昔挑戦した“迷宮都市”に、同じような門が幾つあるか俺は知ってるぜ? ちなみに“俺らの時は”それは全部避けたぞ」


 迷宮都市? 幾つも?

 昔の挑戦とは、旋風ゲイルパーティでだろうか? マルコと、ガストンと、ニコの母親ニルーナとで、迷宮に潜ったということか?


「迷宮都市とは何だ、もしかして迷宮がたくさんあるのか」


 ゼラ「そうですよルーナさん、迷宮だらけの国が外国にはあるんですよ。でもあなたには、きらびやかな王都や、南方の“海都シージュエル”の方が似合いますからね」

 ほう。

 かいと、海の都か? 南方……。


「迷宮都市に行きたい」

「おおうっ、やる気のあるルーナさんも素敵ですね!」

 ベル「おいしいものもあるなら行ってもいいよ? お腹空いたねー」


 アリエスタ「なぁっ、俺は目の前の“あの迷宮”に行きたいんだけど!」

 ゼラ「おいこら、迷宮法に近い規定はこの国にもあるんだからな、勝手に領主に知らせず入って何か下手しでかしたら、おまえ一発で縛り首だからね」

「なんだその悪法はあ!?」


 ※これはルーナ達は後で知ることになるが、偶然でも故意にでも、入って問題が起きた場合、それを咎められることはそうはない。

 迷宮探索者の自由が規定の最初にまずあるからだ。

 失敗すれば死、あるのみで、地域の権力者が裁定を下すまでもなかった。

 しかしこれは新発見か道の迷宮に限り、発見者や地域の者に管理されている、所有者が居て許しなく勝手に入ってしまうのはまた別である。


「いいから、上に戻ろうって、今どうこうすることはできないんだからさ」

 ベル「戻ろう♪ 戻ろう♪」

「ちっくしょ~~」


 ロープとやらは、樹より細くて揺れるが、掴みやすいので簡単に昇れた。

 長さの基準か何かなのか、ところどころで“結び目”が出来ていて、それも登りやすくて良い。


 アリエスタはしんどい中でなんとか昇ってきているが、大変そうだな、背負った方がよいかもしれないが、問うたら意地になって怒りそうな気がする。


 限界が来て落っこちる時に素早く掴んで背負おう。

 ソニーの杖は、腰のベルトに刺してるようだな。


 

 ベル達としゃべって怒る余裕はあるみたいだが?

「フィンミウ達とお昼食べるの! 早くして!」

「んしょ、えいしょ、はぁ、いいよなぁ飛んでる奴は! あと合体したみたいに呼んでんな! はぁ、それと、ルッコのやつはいいのか?」


「あ! ルッコってあのリスの子? かわいいよね! いいよ一緒で! ねぇ、昇るの大変? アリも飛べばいいじゃん」

「バカっ、しぃっ! お前はあいつらの隊長かなんかか?」

「え? そうだよ?」

「まじかよ」


 ゼラ「いやいや、あんなに小っちゃい子達を連れまわしちゃだめだよ、親御さん達ん家に帰してやらないと、今頃探し回ってるんじゃないの?」


「そうかぁ? 昼飯だーって呼んでも帰って来ない程遠くに遊びに行ってんなら、そいつらが悪いんだぜ」

「何、守護都市の孤児院ってそんな感じなの?」

「いや? 飯時に遠くに行くわけないじゃん」

「なんだよっ!」


 ベル「あの子達なんで居てたの?」

 アリエスタ「俺が聞きてえよそれは」

 ううむ、子供たちは私を追って危険な目にあったから、私が悪いかもしれない。

 ルッコはまた違うんだが。


 上の斜めになっているとこまでついた。

 ここはもう縄を掴みながらだが歩ける。


 見ると、縄の先は岩壁ではなく、石材で組まれた人口の壁と通路が広がっていて、建物だった。

 下水道のやつか?


 そこの、同じ感覚で立っている柱の一つに、縄が結びつけてあった。


 水が流れて滑りそうな崖になっている地面に、大小の瓦礫が転がっている。


 辺りの暗闇には、蝙蝠コウモリが飛び回っているが、ずいぶん興奮しているな。

 いつも以上に騒々しい音を出している。

 小型だから、魔物ではないようだが。


 だがそれもそうか、さっきまで瓦礫の雨が降って来ていたからな。


 さらに上を見上げると、岸壁が出っ張っていて見えづらいが、わずかに明るい。

 恐らく、あそこが崩壊した通路だろう。

 ちなみに、出っ張っている箇所にちぎれた小さな布が揺れている。


 よくもまぁこの距離を落ちて生きていたものだ。


 兄妹と子供達は上だろうか? 奥に階段が見えるな。

 居てこっちを見ているのは、一緒に来たと言う衛兵の連中だ。

 手を振っているのは蜥蜴人だろうか。


 衛兵達「あっ上がって来た! ゼラ隊長―」

 あ、あの灰色の猫人族は……猫屋の長男の、ルークもいるな。


 ゼラ「はぁ、迷宮門なんて見つけちまって、それは嬉しいけど、書類仕事が大変だろうなぁ……嫌んなるぜ」


 アリエスタ「はぁはぁ、お? 着いたか?」

 彼も崖に到着したな。

 むっ。


 アリエスタ「っと、おわああ! っとお!」


 ズバシャアアアッ!


 アリエスタが濡れた地面に滑り崖から落ちようとしたので、とっさに滑り込んで槍を伸ばし、掴まらせた。

 流れの少ない地面を滑るようにして、片手に掴む縄を緩くつかみ、アリエスタの手元辺りに槍の石突を出したところで、ギュッと掴んだのだ。

 ふう。


 アリエスタ「ひひひ、ああ、危なかったぜ~」

 ゼラ「だいじょうぶか!」

 ベル「落ちても大丈夫だよ! 下、水だから、ボチャンした後で拾ってあげるよ?」

「ってめ! ――」

 ピキッ! メキメキメキッ!


 ゼラ「……あ」

 バキィッ!

 アリエスタ「がっ! がが崖が!」


 私たちが立っている崖の切り立った地面に、亀裂が入った。


「大丈夫だ、掴んだまま、ゆっくり動くんだ」

 アリエスタはその切っ先に斜めになって落ちかけたまま槍を掴んでいる状態だ。


 ベル「え? 折れるの? 落ちるの?」

 心配そうにゆらゆらと飛び回っているが、アリエスタは眉間に血管が浮き上がって彼女を睨んでるな。


 煽っているわけではないぞ? 本気で心配してるんだ。


 ベルはそう言うが、水場に落ちれば大丈夫だが、ここの崖ごと崩れ落ちたり、中央の瓦礫の山に落ちたら、多分潰れて死ぬぞ。

 パキィッ!


 ゼラは立ち止まって、部下達に別のロープをくくって投げるよう叫んでいるな。

 これは、動いたら亀裂が広がってしまうのだろうか?


 アリエスタはなんとか崖に戻ったが、がくがく震えてるな。

 あんな先っぽで落ちかけると、ああなるのだろうか? よくこの遥か上から飛び降りて来たな。

 向こうの下水通路まで走ればなんとかなりそうだが……。


 あ、そうだ。

「アリエスタ、今こそ水魔法の出番では? 足元を見るんだ」


「なっ? え? ……あ!」

 水がたくさん流れてるのに気が付いたようだな。

 ベル「あー、冒険者のとこでケンカしてた時のあれ? あれやるの?」

 ゼラ「おーいお前ら動くなよ! 今縄投げてやっからな!」

 バキキッ!

 アリエスタ「ひっ」

 別に、彼を捕まえて向こうに投げてもいいのだがな。

 その後、ゼラに突っ込んで一緒に通路に飛び込めば何とか……。

 

 ふむ、もう一押しするか。

「まぁ、できないならじっとしていてもいいぞ? 縄を投げてくれるそうだし」


「ってめ! よーし、見てろ!」

 目をつむったな。

 ん? 杖を出さず、私が伸ばした槍を両手で握ったまま瞑想し始めた。


 ゼラ「おいっ、何始めようってんだアリエッタ!」

 アリエスタだぞゼラ。


 あれ?

 ゼラにつっこまないな。

 大した集中だ。


 今はそれどころではないが、“槍の模様”のような文字に、吸う、引き寄せる、みたいな文字があるな?

 全く意味がわからん。


 あ、魔力が体内で見事に巡り始めたな。

 足元にも。

 そして、この辺りの流水にも。

 バキッ!


 足裏だけじゃないのか?

「キイイィッ!」

 蝙蝠たちが警告を発して離れていったぞ。魔力の放射、に感付いたのか?

 

 バギャアッ!


 いかんっ!

 崖が!


「崩れるぞ!」


 アリエスタが目を見開いた。

 その時、水の流れが止まった。


 一瞬の後、私たちの浸かった足ごと、一帯の水が全て逆流し、通路へ向けて早い速度で流れた。

 バギャガガガラアアアッッ!!


 逆流する水と私達とは反対に、崖が崩れバラバラに砕けて、岩や土砂の塊となって下に次々と崩壊して落ちていった。


 残るのは空中に浮かんで逆流する水の川だ。


 ベル「落ちるよー!」

 アリエスタのローブにベルが追い付いて降りた。

 もしもの時は持ち上げてくれる為か。


 だが、さすがに全部とはいかず、水がボロボロと落下してゆく。

 私達ごと。

 しかし、もう通路に流れ着くところだ。部下達が皆、手を出して掴めと叫んでいる。

 アリエスタ「おらああ! そこどいてろお!」


 続けて練られていた魔力が放射されたな。


 すると、アリエスタから周囲の水が全て変化して出して、かなり巨大な水球へと変わり、ゼラと私ごと包み込んだ。

 そして、逃げる部下達に突っ込んだ。


 ドバアアッシャアアンッ!

 衛兵達「ぎゃああっ!」

 ドサアッ!


 ベル「わー! ぐちゃぐちゃだ!」

 一塊になってびしょびしょになった私達の元に飛んできて感想を言うベルだった。


 ガラアアアンンンンッ。


 下水道下層の通路の向こう、崖が崩れてほぼなくなっている。

 見通しがよくなったな。


 底が見えるぞ。


 また水が濁って迷宮門のうっすらとした光も見えなくなった。

 

 さっきまで衛兵達が持っていた松明も巨大水球で消えて、今や真っ暗な底となっている。


 折り重なるようになって通路で水浸しになっている面々が口々にしゃべり出す。


 衛兵達「ひえええ、何なんすかぁ隊長~」「いって~落ちた冒険者ってこの人達ですか?」「うわっ、ホントにエルフだ!」「今のはその少年が?」「ハーフリングの魔術士だろ」

「すごい美人じゃん!」


 ゼラ「ゲホゲホッ、何だ今の? 水魔法か?」

 ルーク「……重いっす」


「見事だアリエスタ」

 私は水の中で彼らにぶつかる直前に素早く体を動かし、少し滑ったものの、無事着地している。

 腰に差した中剣が剥き出しで、ぶつかると危険だからな。


 アリエスタ「ペッ、あー、水飲んだ。も、もちろんよ! ゲホッ。おっさん、下敷きありがとな」

 倒れるゼラから立ち上がるのであった。



 その後、落ち着いてから、彼らと通路の奥の階段を上って、上まで上がった。


 あまり人が来ないようで、蜘蛛の巣や鼠がウロチョロして、手入れされておらず不潔な様子な廊下や階段を何度か歩き回ってだ。


 そして、見知らぬ場所にたどり着いた。


 出口のある部屋だ。

 外の明かりが差し込む扉が開かれ、すぐ傍に檻がある。天井の仕掛けから降りて来たものだろうか?


 外は何やら騒がしいな。

 大勢の気配がする。


 戸口のある壁の、上の方にある小さな窓には、青い鳥が留まっていた。


 別の戸口から見えている下りの階段は、多分、スライム池を出た時に見た階段だろう。


 さて。

 この檻が恐らく兄妹を捕まえたのだろう。


 檻の中に何故か“衛兵が閉じ込められている”からわかった。


 中の衛兵「うむ、動作は確認シた。危険はないようだが、降りてくる檻にぶつからないよう、ちゃんと中央でジっとシてるんだゾ? 引き続き、動作を調べるのを許可スる」

 蜥蜴人の兵だ。


 ああは言っているが、尾の揺れ方で、楽しんでいたのを隠せていない。


 その周りにビクター、ソニー、猫の兄妹とルッコがいた。

 キャッキャッキャッ!

 にこにこと笑って手を叩いている。


 さっきから金属の何かが落ちる音が聞こえていたが、多分これだ。


 ミウ「つぎみう! はやくあげて!」

 フィン「ビクター兄早く巻いてにゃ、次の次はまた僕にゃ!」


 ビクター「またやるの? 飽きないなぁ」

 檻を巻き上げる仕掛けを動かすようフィンが急かしているな、どうやら力が必要なようだ。

 緑髪の冒険者の剣士ビクターが、子猫達に急かされて仕掛けを動かしていた。


 私達はその様を茫然ぼうぜんと見ていた。

 一番後ろでベルと話していたアリエスタが、早くどけと手前の衛兵を杖で突いているっぽいな。


 ゼラ「はぁ、お前ら一体何やってんだ?」

 衛兵「あ! ご苦労様でス!」

 天井へ巻き上げられる檻から自由になった男が直立し、敬礼? をする。


 ソニー「あ! ルーナさん!? 先輩とベルちゃんも! あ~~よかったぁ~~!

お兄ちゃん! ゼラさん達と一緒にみんなが帰って来たよ!」


 兄妹の後ろ、ルッコをだっこして何か食べさせながら座って見ていた、ビクターの妹魔術士ソニーが、階段から昇って見ていた私達に気が付いた。

 そして泣き出した。


 ミウ「ルーナ! おかえり!」

 フィン「おかえりなさいにゃ! ルーク兄も! 皆にゃんで濡れてるにゃ?」

 ルッコ「あー、無事だった―? 頭へいきー?」

 ビクター「よかった! やっぱり無事だったんですね!」


 アリエスタ「よお! だから俺にまかせとけって言ったろ? それよりよ! 迷宮の入口を見つけちゃったぜ俺ら!」


 皆「「……え?」」


「すまん、心配かけたな」


 読んでくださりありがとうございます。


 迷宮都市、いつか、きっと。

 六章くらいで……。

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