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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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78話 底の……

 うっぷん晴らしの戦いだったのだが、見事にアリエスタに邪魔をされた。


 実はあちこちボロボロだったので、ちょっと助かった。


 街の入口で見たことのある大蛙に変化したアリエスタが、すごい勢いで降って来て、触手の怪物を下敷きにしてしまった。


 その勢いで瓦礫が崩れ、水面が揺れ、浅瀬が深くなった。


 怪物は明らかに内臓や黒い血を吐き出して死んでいる。

 まだピクピクとうごめいているが。


 体が柔らかいのかこの魔物は。

 向こうの岩壁の亀裂より大きいわけがこれではっきりした。


 ズドッ、まだ動いている心臓、らしき臓器を槍で刺してとどめを刺した。

 よく戦った。


 アリエスタ「うわっ、でっけー“下水蛸”だな! 気色悪っ!」

 下水、だこ? たこ、か。

「助かったぞアリエスタ」


 蛙『ようルーナ、な? やっぱ無事だったろ? ってひでえ怪我だな。治療かけてやんぜ』


 おお、治療術が心地よいな。


 いや、頭もいいんだが。

「左足を頼む、ちょっと痛い」


 蛙『おう、……え? お前がちょっと痛いっつうことは、けっこうやばいんじゃ?』

 そうか?


 ベル「アリー! 遅い!」

 蛙『いや変な細っそい瓦礫に引っかかってたんだよずっと! 飛び込んだ時より怖かったわ!』

 どうもぶら下がってしまっていたらしい。


 飛び降りて助けに来てくれたのか、やるじゃないか。

 無理したのか、魔力があまりないぞ。

 さっきよりもしんどそうにしてるな。


 喋りながら、蛙がアリエスタに変化した。あ、ローブが一部ちぎれてるな。

 大鷲か、スライムにでもなって落ちて来たのだろうか?


 蛙のままでこちらに長い舌を出して来て治療し始めたのでちょっとびっくりしていたんだ。

 舌が杖に代わったな。

 あれ?

 これは、ソニーの杖では?


 ああ。

「ガストン達がもしかして来てるのか? 子供達は一緒か?」


 アリエスタ「お、その通りよ。お邪魔なガキんちょ共をソニーの奴に放り投げて、その間この杖を俺が持っててやってるってわけよ、へへ」

 ちゃんと返すんだろうな。

「あ違えやガストンの奴はいなかったぜ? 緑兄妹と、副隊長のおっさんだけだったぜ」


「あたしが連れてきてあげたんだよ? ルーナの匂いを追いかけたの! ねーフィンミウの内緒の場所に一人で行っちゃだめだよっ」

 内緒だったな。

「はぁ? 犬かお前は!?」


 よかった。

 ちゃんと無事だったか。

 そして、合流できたわけはそう言うことだったんだな。

「そうか、すまない」


 うん? 副隊長? 衛兵のことか?

 あ、臭いでわかった。

「ざ……ゼラか?」


「お前も!? 犬族かよ!? なんでお前らくんくん嗅いでわかるわけ? あと今ちょっと間違えかけたな?」

 彼がなぜ一緒にいるんだろう。


 盗賊の拠点の戦利品の話だろうか?

 それとも、街に入ってきた羽蛇の話だろうか?


「ゼラを知ってるのか?」

「ああ? ほら、丘向こうの、盗賊のアジトん時に居たじゃねーか」



 うん?


 野営地に戻って彼と会った時、お前はとっくに逃げていなかったはずだが?


「ああ……緑のオークの時で、か?」

「あっ……やっべ。お、おいっ、内緒だかんな!」

「わかってる」


 ベル「ひみつだね!」

「お前が一番不安なんだよな~」


 やはりそうだったか、私達に助けを呼ぼうと、変化して衛兵達を引き連れて来てくれたのだな。


「あの時は衛兵達を呼んで来てくれて助かったぞ、ありがとうアリエスタ」

「お、おう、かまやしねーよ、まあ貸し借りはごめんだからな」

 ベル「あ! そうそう! 逃げたんじゃなかったんだね!」

「そんな恩知らずなことするか!」


 どういうわけか彼が一緒にいて来ているようだが、話題にならないガストンは、まだ組合に来てないようだな。


 寝てるのだろうか?


 アリエスタが魔法をかけながら、何やらベルに言っている。

 金よりも大切なものがあるんだぞとかなんとか。

 それをお前が言うんだな。

「何だその微妙な顔はよ?」


 あ、治療が終わった。

「ありがとう、助かった」

 足は治ったようだ。

 食事で補わないといけないな。

「おう、さっさとこんな臭ぇとこ出ようぜ。俺ぁいい加減、疲れたわ」

 

 ベル「ねー、これ食べるの? 臭いけど」

「食べるかんなもん! “変化の材料”にだってしねえぞこんな“ゲテモノ”! 獲るもんとって売っぱらえばいいんだよ」

 そう言ってローブに貼りつけた様々な生物の素材をつまみながら彼女にベルに“つっこみ”? を入れるアリエスタ。


 ああ、変化術の謎がちょっとわかったかもしれない。

 ローブに新しく、“蛙の素材”が縫い付けてあるな。

 ふむふむ。


「素材は売れるのか? いや、全部は持って行けそうにないが」


「うーん、でっかい牙と、触手の筋繊維? が確か売れる気がしたな。多分皮も。伸びるところとか。全部剥いでおこうぜ、あ、“ぬめり”も瓶に入れよう、薬になったはず。なぁ、こいつも山分けだかんな!」

 急に元気が出て来たな。


 ちょっと時間がかかったが、素材を取って鞄に入れた。

 魔石も回収した。

 潰れてはいなかった。

 皮が守ったんだろうか。


「お前一度やったことは次めっちゃ早いのな! 解体屋でもやってけるんじゃねえの?」

 それは褒めてくれたのか?


 ベル「早く帰ろー? お腹減ったー、ここお魚いないね? あれ? ねー、あれ何?」


 そろそろなんとかして上に戻ろうかと思っていたら、彼女が何かを見つけた。


 瓦礫で濁っていた水がトンネルへと流れて行き、少しはきれいになり何とか見通せるようになっていた。

 それでか。

 ベル「きらきらしてるー」


 水に浸かった岩壁の底辺りをベルが指さしている。

 アリエスタ「あん?」

 何だ?


 僅かに光っているな。


 ……扉?


 アリエスタ「あああああ!!」

 バシャアッ!

 急に、濡れるのも構わず瓦礫に膝をつき、水面ギリギリに顔を近づけそれを見た。


 ベル「わっ、何? 漏らしちゃったの?」

「違うわ! “ダンジョン”だぜあれ! ダンジョン!」


 ベルと私「「だんじょん?」」


「だからダンジョ――“迷宮”だよ! 迷宮の入口! お宝ザックザクの!」


 ベルと私「「めいきゅう?」」


「はぁ~~」

 揺らめいてよくわからないが、僅かに青白く光る、魔法陣の紋様の様なものが浮かび上がっている扉――いや門が、水底の壁にあった。


 水で小さくなってるが、僅かに妙な音も聞こえるな。


「俺ちょっと潜って見てくるわ」


「待て! リゾットが最後に投げたあの強い毒が、水に混じってないか?」

「ええ? ……ああ、毒スライムを瞬殺したやつか。うーん」


 興奮してたのが落ち着きを取り戻し、立ち上がり水にぬれた手をこすり合わせて考え始めた。

 む、指先に魔力が流れてるな。水を魔法で調べているのか?


 大量の水に薄められているだろうし、さっきから触れているが、口に入ったらどうなるかはわからない。

 私はたっぷり浸かっていたが……。


「まぁ、問題ないんじゃねーの? あれ毒スラから採取して“濃縮”した薬品だろ? 散々罠で解毒しまくったけどよ、毒スラの“分泌毒”って、すぐに分解するんだよね、水で」

 バシャッ。そう言って水浸しの辺りを蹴る。

「それにさぁ、上から常に流れて、あっこのトンネルに出てってるだろ? 耐性あるお前も全身ずぶ濡れの傷だらけで平気にしてるしよ、行ける行ける! 行くわ!」


 アリエスタが説明しながら最後、飛び込もうとしたが、私は上から来る何者かの気配に顔を向けていた。


 ???「こら! よくわからんが行くなー!」


 上から誰かが叫んだ。


 瓦礫が落ちて来た斜めになっているところから、垂らされている縄を掴んで立っている男がいる。

「ちっ、なんだよ?」

 ベル「あれー? ゼラも降りて来たー!」


「降りて来たじゃないよ! ったく止めるのも聞かずに飛び降りるんだから。近道があんのに! 何で無事にたどり着いてんだよ?」


 シュルシュルシュルバチャッ、ボチャアンッ!

 しゅるしゅると縄を浅瀬まで落として、素早くゼラが縄を滑り降りて来て、私達の元へ着地した。


 いいな、縄。


 ゼラ「うえっ、それ下水蛸か? 大物だな!」


 そして、槍も持って降りて来ている。

 専用の帯で袈裟懸けさがけ? に背後に付けて両手が開いている。

 それもいいな。


「また会えましたね! ルーナさん! おお、怪我が! 大丈夫ですか? おいこらアリなんとか! さっさと治療術をかけて差し上げろ!」


「アリエスタだ! もうかけたっつーの! 頭のは血の跡だろ」

 む、血の跡が付いているのか?

 ほんとだ。

 水の中にいたが、髪の根元に落ち残っていたようだな。


「痛かったー? ぶつけたの? 岩?」

「ああ、ここに落ちる前にちょっとな」


「あれがちょっと!? お前の頭よりでかかったぞあの瓦礫」

 そうだったか?

「まったく、石頭かよ、心配して損したぜ!」


 ほう、さすがに心配してくれたのか。


「あぁ、なんて素敵な笑顔だ。こんな不浄な場所でもあなたの美しさは少しも損なわれていませんね、ずぶ濡れなのもすごくイイ!」

「何だこのスケベ親父は! あれ? おっさんあんたハーフか?」

 お、気が付いたか。

 ゼラの蜥蜴族の眼と、目元の鱗を見つけたな。


「ああ! じゃあおっさんノーデント家に拾われたっつう孤児貴族か! すっげえじゃん! サインくれ!」

 こじき、族? 何の一族だ。


 ゼラ「んお? そ、そう? 別に構わないぜ!」


 アリエスタはローブからいきなり羊皮紙を取り出したな。

 硬めで、四角に成型? された特別な仕様? に見える。

 サインとやらをする為の羊皮紙だろうか。


「お絵描き? あたしもする!」

「お前のはいらねえ」


 どこから出したんだろう。


 魔法の袋を持ってるのか?

 さっきは没収されたような様子だったが……他にも持っていたと言うことだろうか?  とするとあまり入らない、自分用のものだろうか。

 サインとは、あぁ、名前を書くことを言うのか。


 ゼラは孤児貴族と言われ最初身構えたが、悪意がないとわかったようで戸惑いつつも照れながらサインをしてやっている。

 アリエスタの顔を見るに、多分それ、売られるぞ。


 しかし、何故アリエスタは彼を本気で誉めているのだろうな。


「うっひょー! さんきゅう! 俺も孤児出身なんだよ、あんたその槍の腕一つで貴族入りしたんだろ? すっげーよなぁ、やっぱ“ゲイル”は」

 そうだったのか。

 さんきゅう? 三十九か?


 ところで、孤児とは何だろう? 孤独、な子?

 ゼラ「おー、小っこいのによく知ってるな、アリ、アスタ、って言ったっけか? 坊主」

「アリエスタだっつうの! あと俺はこう見えても大人だ! ハーフリングなの!」

「なんだ、ははは悪ぃ悪ぃ」

「だぁ~っ、頭撫でんな!」


 ベル「わるいわるいっ!」

「あぁもうお前まで! やめろやい! おいコラルーナ! その伸ばした手を止めやがれ!」

 むう。


「って呑気にサインしてる場合じゃないよ。ベルちゃん達が下水道に入ってくのを部下達と追ったらさ、爆発が起こるわ、崩落音がずっと響き渡るわ、下水道がぶっ潰れるのかと思ってヒヤヒヤしたんだからね?」


 アリエスタ「全部盗賊野郎のせいだからな、俺達は犠牲者だからなっ」


 ゼラ「そんで見てなかったけど、子猫や緑の兄妹が言うには、ルーナさんが崩落の遥か下に落っこったって言うし、盗賊やら魔物やらと交戦しただって? 今頃外は大騒ぎだぜ? あと、ガストンは一緒じゃないのかやっぱ?」


 アリエスタ「なんだ緑の兄妹って、自然の申し子かよ! あー、なんか説明すんの面倒くせえから、金くれたら話すわ。ガストンなんていねえし」


「こら。大体ゼラの言った通りだ。リスの子の泣き声を聞いて歩いてたら、彼が盗賊達を追っていたので手伝ったら、大体全部終わった。ガストンは最初からずっといない」


 ゼラ「うん、全然わかんない、とりあえず上に行って僕と二人でおいしいお酒でも飲みながらゆっくり聞きましょう」

 アリエスタ「一体何言ってんのおっさん!?」


 ゼラ「俺はおっさんじゃねぇから! まだ若いだろが!」

 アリエスタ「ガストンと同じこと言ってるし!」


「あいつはおっさんだろが!」

「意見が合ったな?」


 ベル「ねぇ、孤児ってなーに?」

 私もわからないんだよな。

 ゼラ「うん? 身寄りのない子供達のことを言うんですよ。こほん、もとい、親のいない子供のことを言うんですよルーナさん」

 ふむ。


「えー……かわいそうっ」

「なんだか大変そうだな、早くに亡くしたのか」


 ゼラ「まぁ、大体はそうですね、俺達がガキの頃は酷い戦争がありましたからね」

 そうなのか。

 戦争とは、大きな戦い、のことだろうか。

 楽しそうな反面、何か、恐ろしい言葉な気がするが……。


 アリエスタ「ふん、捨てる場合もあるぜ! クソみてえな親から産まれちまったらな!」

 ゼラ「お前さん、捨てられたのか?」

「? いや? 俺じゃねえよ、孤児院のチビ達さ」

「ああ、守護都市出身なんか、アリ、アリウェスタは」

「……俺の名前そんな覚えづらいか?」

 守護都市?


 ゼラ「あ、ルーナさん、守護都市ってのはフロストピラーって言う、北に行ったとこにあるでっかい都のことですよ。すっごく寒いんですからね」

 ベル「寒いのや!」


 アリエスタ「あんな汚ったねぇとこ、人の住む場所じゃねーから」

「そこまで言う? そりゃここよりごった返してて、治安は悪いけどさ……」

 守護都市、フロストピラーか。

 アリエスタの出身地、らしいな。


 ベル「子供を捨てるの?」

 彼女が悲しそうにそう言う、ちょっと衝撃的、だったか。

 いつも元気に飛び回っていたが、羽を畳んで肩に降りてしまった。

 ゼラ「ベルちゃん、人間てのはネズミほどじゃないけど、増えるのが早いからね、他を助けるために一部を犠牲にするもんなのさ」


「うーん、じゃあ、しょうがないなぁ」

 アリエスタ「えっ、マジかよお前」

 ほう、森育ち? の妖精族は、すんなり受け入れたな。

 自然の世界ならではなのだろうか。


「? 他の生き物に育ててもらうんでしょ?」

「ああ、そういうこと? 甘いね! そんなこと考えずにゴミみたいに捨てる奴らがいるんだぜ! あと人間の街に子育て動物はいねえ!」

 なに。


 ベル「ええ? 本当? ひどい! 許さないよそんなの!」

 アリエスタ「い、いや、俺に言うなよ! こっちに迫ってくんな! 俺は面倒見る側だっつーの! なーっ! てゆうかこんな寒くて暗いとこで水ん中突っ立ってないでよ、蛸がまた出る前に、さっさとあそこに入ってみようぜ?」


 酷い話だが、なんとなく、アリエスタがいつも怒ってるわけが分かってきた気がするな。金を欲しがるのもそこらへんの事情があるのだろうか。

  

 ゼラ「そうそう、さっさと上に昇りましょう、見えないですけど、あそこのすぐ上の縄をかけたとこが、下水道の一番下の階なんですよ、ちょっと昇ればすぐ帰れますからね。みんなが待ってますよ」

 ベル「うんっ、帰ろルーナっ、ごはんごはん♪」

 そうか。


「おいこらっ、無視すんな! ゼラのおっさんよう! ほら! あれ! ダンジョン!」

「だからおっさん言うなって、何だ? さっき見てたやつか? あれだよな? ん? ……あれ? なぁ、何かあれさ、“迷宮の門”に見えるんだけど?」


 迷宮の門とやらの説明をしてもらったが、どうやらこの世界にはダンジョン、迷宮という地下洞窟のようなものがあって、お宝と魔物と罠がわんさかあるそうだ。


 それは、装備を整えたら、是非行かねば!


 光る紋様、文字だろうか?

 水が揺れて見え辛いな、街で見かける文字と全然違って、おまけに読みにくい。


 湖……地中? ……いや、底かな? ……大?


 読んでくださりありがとうございます。


 最後のは逆読みで大地底湖ですね。

 昔は文字って逆読みだったようでしたから、そんな感じです。

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