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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
81/132

77話 底

 ドオンッ! ボチャンッ、ガラアンッ、ボチャアッ、ガラガラ……。


 ヒュウウウウ――――。


 ――ドサァッ!

 ???「ギャオゥッ!」


 ゴロンッ、ガチャアンッ。


「……む」


 どれくらい意識、を失っていた?

 落ちた?


 体が痛む。

 生きているな。

「けほっ、うっ」

 頭が痛いが。


 ズズンッ。

 地響きがしてあたりが揺れている。


 どこだここは、暗い穴の、遥か底か?


 洞窟?


 水か?

 手で触れると、ぬるっとして、見ると赤い。

 これは血だ。


 水ならそこら中に遥か上空から流れ落ちて来て、辺りに溜まっている。

 今も大小の瓦礫が落ちてきている。


 ガラガラアッ!

 ドガラアッ!


 いかんっ!


 ズズズウンッ!

 ボチャアンッ!

 ドオンッ!

 手をかざし瓦礫を防ぐが、倒れている瓦礫の山さえも崩れて体が埋まってしまった。


「ぐぅっ」

 上は、灯が見えない。

 まっすぐ上から落ちたわけではないようだ。

 ずっと上が斜めになって、瓦礫が転がり落ち現れてくるのが見える。


 ボチャアアアアンッ!

 巨大な瓦礫の塊が水しぶきを立てて沈んでいった。


 直ぐ見えなくなる。

 水は土砂で汚れて濁っている。


 それにあたりは灯一つない闇の中だ。

 夜目でなんとか見渡せられるが。


 ここは池みたいに水が溜まっていて、瓦礫の山の上に私は居たのか。

 ズズズ……。


 体は問題なく動くようだが、頭をぶつけ、落下時にもあちこちぶつけたからか、消耗、しているようで多少だるい。


 おまけに動けなくなったぞ。


 目を覚ますと下水の落ちてゆく先、はるか底の水の溜まった場所で、瓦礫の山に倒れていた。


 石材で作られた上の下水道ではなく、元々ある洞窟の様だな。

 はて。


 最初、何か弾力のあるものに落ちた気がするが。

 それがよい緩衝かんしょう? になって助かったようなものだが。

 ふむ、臭いが残ってるな。


「……?」

 目をやると、溜まった水が流れてゆく向こうに、大きな穴が開いていた。

 奥に何かいる。

 大きい。


 目を凝らすと、大きな白い尾が消えていくところだった。

 トゲトゲだった。


 巨大な、蜥蜴か?

 辺りを見ると、巨大な何かがここを移動した痕跡があるな。

 私はどうやらそいつの背に落ちたのかもしれない。

 命の恩じ……恩蜥蜴だな。


 これは後々知るが、その大蜥蜴はわにという生き物だったらしい。


 ちらほらとスライムが浮いてたり、穴に流されてゆくのもいる。

 増やされた毒スライムが流れ着いたのか?


 それとも変異した奴なのか、元々ここに居るものなのか、わからない。

 

 他のみんなは落ちてきていないから、無事なのだろう。

 意識を失う寸前、退避していたのは気のせいではなかったようだな。


 うーん、彼らの背後に、ビクターかソニーらしき、緑の髪の毛が見えた気もするが? ……。


 ミシッ。

 出ようともがき動くと、引っかかっている弓が嫌な音を立てた。

 これはもう折れる寸前かもしれない。落下時に痛めたのか。


 鞄の中の買った瓶や魔法薬等は、モゾモゾした感じ、割れてはいないようだな。


 全部布で包んでおいたのが良かったのかもしれない。


 離れた所に鉄槍が突き刺さっている。


 ドボオンッ!

 ズズズン。

 さっきから振動が続いているな、まさかここ、全部埋まってしまうのではないだろうな。


 足元が冷たい、瓦礫の崩れた山に周囲の水が入り込んで来たのか。

 違うか、底に溜まった水場に、瓦礫が沈もうとしてるのか。


 脱出を急ごう。


 む、何かいる。


 ズル……ズル……。

 上だ。

 左の岩壁の、あそこの亀裂か?

 奥からこっちへ何かが近づいてきているな。


「! 

 ズガラアンッ!


 上空からかなり大きめの瓦礫が落ちて来た!

 どうする――咆哮を放つか!?


 いや、大丈夫だ。


 ドボボオオオオオオオオンッ!

 すぐわきの水場に落下した。


 水が吹き上がり、波が押し寄せた。

「っぷ!」

 ザバアアアンッ!

 

 ズルッ――――トポォオンッ!

「ぺっ……」

 どさくさ? の最中に、瓦礫じゃない何かが、さっきの亀裂の下あたりに落ちたな。


 ズブブブ、ゴポポポ、コポコポ……。


 水中に響く振動と、“気泡”がたくさん浮いて来る。

 こっちはそれどことではなく、瓦礫が沈んで池に埋まろうとしていた。


 ガラアアンッ。

 沈む!


「ぅおっ――!」

 瓦礫が崩れて、少し動けた!


 ガラ、ジャラアッ!

 瓦礫や水を掻き分けもがき出る。


 ズズズズンッ。

 うっ、沈む瓦礫に足が挟まれた。


 ゴロンッ、ズズウン。


 ゴボボボボボ……いかん。

「っ! ハアーーッ……」


 息を吸う。


 沈んだ。

 頭まで水に浸かってしまった。


 流石にこうなると夜目でも辺りが良く見えない。

 ゴガラグシャズズ。

 四方八方から瓦礫が押しつぶそうと、下に引きずり込もうとして迫り、身動きが取れなくなる。

 ズズズズゥゥゥゥ。

 バギッ!

 弓がとうとう折れた。


 咆哮を使うか、いや、もはや息も吸えん。

 だめだ、剣も抜けない。


 腕はまるで魔狼に食いつかれたかのように瓦礫に圧迫されて動かない。


 反対の手で殴っても、水中で弱まり、瓦礫が砕けない。

 拳当てを付けていれば……。


 魔力で何か、できないか、息はまだ持つ。

 考えろ。


 !

 手先に硬い金属がっ……槍かっ?

 なんとか掴めるかっ!?

 ああ、だめだ。


 ズズゥン。

 これは。


 くっ、ここまでか?


 ガラアンッ、ズウン。

 水底に、着いたようだな。


 ゴゴゴォオオンッ。

 っつう!

 少し崩れたがしかし、足が巻き込まれて、激しく痛んだ。


 鉄槍を、指先で、なんとか、掴んだぞ。


(ゴボッ)


 いかん、意識が、暗く――


 さ、最後に残った息で、全力で咆哮を腕に吐けば――。



 ――ゥ~ナぁ~――。


 光が…見える?


 ドボオオオンッ!


(ガボボボルーナァ!)

 ベル!


 ベルだ。

 彼女がこんなところにいて、優しく光って瓦礫と水の暗闇を照らしている。


 怪力でみるみる私を引っ張り上げてくれる。

 掴んでいる皮鎧の襟がミシミシ、ブチブチいっている。


 痛っ、追いすがり挟み込んで引き留めようと食い込む瓦礫で、体が切り裂かれた。


(んぬぬぬぬう~!!)

 ふふ、大した力だ。



 ゴポポポ――――バチャアアアアアアアアアアアアン!!

「ぷはあっ!」

 ベル「っぷふぁー!」


 ジャバアッ。

「けほけほっ……ぅう、んん、ベル! 助かったぞ!」


「はぁ、もーっ、勝手に、迷子になっちゃ、だめでしょー?」

 ふふ。


 ベルに持ち上げられ浮かび上がったそこは、瓦礫の山が崩れ水に沈み、土砂で濁って暗闇の地底の濁湖と化していた。


 はるかに大きな私をぶら下げ、煌めく鱗粉を引くほのかに輝く小妖精のベルが唯一の光源だった。



 むっ!


 何か来る!

 水の中から“鞭”がっ。


 ザシュッ!

 腰に差した中剣を抜きざまに斬った。


 水中で何かが悲鳴らしき声を上げたな。


 鞭じゃなくて生き物の触手? だ。

 切れたそれはよくわからない色の血を流して急激に水中へ引っ込んでいった。

 水面に血らしき黒いものが濁水に消えていっていた。


 ギュルルウンッ!

 少し遅れてきたもう一本が足に巻きつく。

 っつう、痛んだ足だ。

 しかもヴァインの火の鞭で焦げた、同じ場所にまただ。


 上手く動かせなかった。

 しかも、剣の振り難い方向からだった。


 足首に巻きつくそれは、やはり鞭じゃない。

 生き物の触手だ。


 血が巡って浮き出てて、収縮して蠢いている。

 ぬめって鈍く光を反射し、おびただしい毛のようなものが細いのがところどころに生えているが、その一本一本まで小さな触手のように蠢いている。


「何ー? 邪魔しないで!」

 上昇するベルを引き留めるように引っ張っているな。

 引きずり込む感じではないが。


 ザバァッ!

 両脇から更に大きな触手が濁水から出て来た。

「わあっ、何? スライム?」


 先端が平たいモーニングスターのように膨れていて、こちらを向いた片側だけ、牙の様な棘がびっしりと生えているな。


 どこかで見たことがある。

 ああ、ソニーがよく使っている櫛に似ている。

 一瞬の観察の後、根本が蠢いて、外側へと傾いた。


「ベル、私を一旦落として離れるんだ!」

 襟を頑張って掴んでいる小さな手を撫でた。

「え? うん、ほいっ」


 両手を合わせるようにして、巨大触手がお互いをこちらに向かってぶつけ合った。

 バギャアアアンッ!


 やはり押しつぶす気だったか。


 私は寸前でうまいことすり抜け落ちた。

 中剣と小剣を両手で思い切り振りかぶりながら。


 ヒュオオウン!


 そして、足に巻きつく触手にもだ。


 ズシャシャ!

 斬られた大触手が遅れて落ちていく。


 切断されて血をまき散らしながらぬめった太い触手が暴れている。

 痛みを感じてるのだろうか。


 水面が泡立つ。

 今度の悲鳴は大きい。

 あぶくが濁水面からはじけ飛んでいる。


 正体を見せてくるか?

 

 恐らく岩壁の亀裂から出て来た奴だろう。

 同じようなぬめりが亀裂から下にきらめいている。


 ベルの灯はとても助かるな。


「気を付けてねー! もうすぐお昼ご飯だよ!」


 まかせろ。


 落ちる先は目を付けてある。

 瓦礫は沈んだものの、濁水からかろうじて見えていた。


 浅瀬になっている。

 着地できるはずだ。


 バシャアンッ!

ぐらっ。

 下の方で瓦礫が少し沈んだが、大丈夫そうだ。


 バシャンッ。

 肩にぶら下がる折れた弓を放り投げ、足元の瓦礫の隙間を殴り壊すようにして、手を突っ込んだ。

 ジャボォッ!

 すでに小剣を腰に戻し、拳当てを取り付けてある。


 ボボボボゴゴッ!

 泡がさらに激しさを増す。


 丁度、触手が飛び出ている大元ら辺だ。

 何者かが顔でも出してくるのか?


 お、あった!

 掴んで思い切り引っ張った。

 ガラガラザバアアッ!!


 同時に、濁った水中を、魔力の線が高速でこちらに突き進んで来るのを感じた。

 三本か。


 ポタポタ、やっと沈んでた魔法の力を持つ鉄槍を、瓦礫の中から回収した。

 カチャ。


 む、槍の柄の模様の部分、これ、文字か?


 ザバシュシュッ!!

 三方向、水中から刺すように触手が飛び出してきた。

 ああ、これは周囲を囲うようにして私を巻き掴もうとしてるのか。


 ニュルウウウ――ヒュオオオウウンッ――ビシイッ!

 寸前でしゃがむようにして、空を切り交差する三本の触手を、からめとるようにして槍を回転させ、まとめて槍に巻きつける。

 触手の突撃より高速で。


 すぐさま肘で“てこ”を入れて、引っ張った。


 大蛙の舌でもやったな。

 奴よりはぬめりは少ない。

 足場が不安だが。


 さぁ、出て来い!

 グッ、ググウーーッ!


 ゴポポポ、ザバアアアアアアアッ。

「キュロロロロォーーンッ!」

 化け物が濁水の中から水を噴き出しながら飛び出してきた。

 一部ちぎれているが、他にも何本も触手がぬめっている。


 スライムみたいな不定形? な丸みのある体に、人の顔のようなものが天辺にあり、目玉が大きくギョロギョロと動き回って、こちらで止まる。

 その目の間に、大きく縦に割いたように開いた涎と棘だらけの口で叫んでいる。


 ジャプジャババッ。

 引っ張った勢いでそのまま私に食いつこうと、瓦礫の浅瀬を触手を動かして迫って来た。


 ズパアンッ!

 “つっぱり”が緩んでなくなる前に、素早く中剣で三本まとめた触手を斬り、槍と共に構えた。


 ジャキッ!

「食う気なら、勝負だ、来い!」



 アリエスタ『どけどけー!』


 ドゴオオオンッ!!


「!?」


 身構えてたら、寸前で、アリエスタの声をした“巨大な大蛙”が、怪物の真上に降って来て、潰してしまった。


 読んでくださりありがとうございます。

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