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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
79/133

75話 透明

 ばらばらになった元巨大毒スライムにとどめを刺そう。


 ジャポ、槍を拾う。

 ポタポタ……。


 アリエスタ「待て待てその振り上げた槍を投げんなよルーナ、いつまでもぶら下げてねえでそこの瓦礫に俺達を降ろしてくれよ、ほんでとどめ刺そうぜ」


 あ、うむ。

「ってか今毒水に手ぇ突っ込んだな!? 何してんの!?」


 いや、あまり効かないぞ? ずっと浸してるとヒリヒリしてくるが。

 怪我はないし、勿論それには付けないから。


 巨大だった毒スライムが泡立っている音がする。


 突っ立ってる盗賊は大丈夫だと思うが警戒はしているぞ。

 まだ逃げないな?


 昇った方が投げやすいか。

 ザバ、私も瓦礫に上がって槍を構えると、また待ったがかかった。

「なんだ?」


「いや、おまえ魔石砕く気満々だろ!? なんてもったいない!」

「そうだ。もたもたしてると復活する」

 リゾットも追いかけたいのだが。


「俺に任せろ! 魔力もまだ残ってる、っていうか戻ったしな!」

 ふむ?

 アリエスタが得意げに、瓦礫の天辺までよじ登りスライムを睨み、呪文を唱えた。


 私はそれを横目に、中剣を持ち替えつつ、戸口の方を見上げた。

 これを投げて、丁度盗賊の顔面に“柄”が当たる目算? を立てながら。


 だが、一足遅かっただろうか、様子がおかしい。


 フィン「姉ちゃんあれ!」

 彼も気付いたな。

 この子はよい目をしてる。さすがローグだ。


 盗賊の男はもがき苦しむようにして崩れた足場から毒の水に落ちるところだった。

 バチャアンッ!


「む?」

 起き上がった男の口に、毒スライムが入り込もうとしていた。

 飛び散って身体についていた奴か?

 あと、毒液が目に入ったのか真っ赤だ。


 捕えた後でアリエスタを呼ぼうか。


 盗賊「むぐぅ~っ! んぐむぅ~!」

 毒スライム「……ァ」

「おいっ、“掴んで”引っこ抜け!」


 聞いてないな。


 だめだ、口の中に入ってしまった。

 あの大きな腹をこの拳当て当てでぶん殴れば出てくるだろうか

 

 男は暴れて走って、水をバチャバチャ言わせながら、ウロウロし始めた。

 窒息してるのか、まるで地上で溺れているようだ。


 ミウ「なにしてるの? おどり?」

 フィン「スライムを食べちゃったよ!」

 ルッコ「えー、あれ毒だよ?」


 ミウ「ねぇ、ルッコはここでなにしてたの?」

 アリエスタ「ブツブツ……っ今それ聞くのかよ!?」


 ザバ、ザバ。

 瓦礫から降りうろつく男に近づくその背後でそう言ってのを聞くが、だいぶ落ち着いたようだな。


 ルッコ「助けるの?」巻き付いてる彼が聞いてくる。

 ああ。

「あ」 


 盗賊が落ちた。


 目を瞑ったり転びかけたりした際に壁に足がぶつかり、頭を壁にぶつけるかと思いきや、そのまますっと魔法であいた大穴に落ちていった。

 そこに壁はなかった。


 むう。


 毒スライムの欠片、あの大きさにしては魔力の感じが妙だったな。


「何なんだよ今の?」

 アリエスタも見ていたようだな。

 詠唱しながら器用な奴だ。


 いや、もうすでに魔術を放っている。


 見ると、毒スライムがこちらに引っ張られていた

「暴れるんじゃねぇ!」

 彼の両手の動きは、こちらに引き寄せるような仕草だな。

 魔力の流れもそうだ。


 私の眼には奴と彼の手が、“縄”に繋がれているように見える。


 奴は壁際から離され、一部分がこちらにぐいぐいと引っ張られるようにして近づいて来ていた。

 毒の水が波打って飛沫しぶきが飛ぶ。


「ちびっこ共反対側に離れてろよ! ルーナ! 魔石取り除けるか!?」

 なるほど。


「やってみる」

 中剣を構えて近づく。

 迎撃してこないな?


 フィン「あっルッコ戻って来るにゃ!」

「ミウもいきたいー」


 ひしゃげた盾の影になっているのを剣先で素早くえぐり取り払い、隠れていた魔石の場所をすかさず三角に斬る。

 ルッコ「わー」


 あった。

 そこに手を突っ込んで魔石とおぼしき硬い物体を取り上げた。

 以外と抵抗なく、簡単に魔石を取り出せた。

 ルッコ「? なんかある?」

 ある。


 毒スライム「……」

 巨スライムの破片は、力を失くし死んだ。


 どんどん色合いがよどんでしなびていく。

 毒液に浸かってるのに。


 なかなか良い戦いだった。


 カチャ、剣を掲げる。

 ルッコ「?」


 ポチャン。

 この魔石、やはり透明な表面だ。

 掴んだ指が透けて見える。


 ルッコ「え? え? わー!」

 おもしろいだろう?


 だが、思ったより小さいな……。


 それと、周囲の魔力がこれに取り込まれ、奴の身体に残った魔力は水の波紋のように広がって消えていった。

 毒水やそら――空気中にだ。

 ふむ。


 アリエスタ「あれ? 逆らってた割にゃ簡単だったな? もう力尽きてたのか?

てゆうか小っちゃくねえかそれ?」

 だな。


 ミウ「なにそれ? 見えない?」

 フィン「にゃに? 隠れてるにゃ?」


 ルッコ「とーめいなんだよ」

 む、首に巻きついてる大きなふわふわしっぽがぴくぴくしてちくちくしてるんだが。

 アリエスタ「マフラーかよおい」


 フィン「姉ちゃんと兄ちゃん! 悪者のボス追いかけにゃいと!」


 アリエスタ「そうだよ! このままじゃ賞金の首が一個もねえし、働き損なんだけど!」

「うむ」

 待て、賞金首とは、本当に首を斬って持ってこないと駄目なのか?


 魔石を鞄に仕舞い、鉄槍を鞄から出した皮帯で改造皮軽鎧にくくりつけ、中剣は腰帯にむき出しだが差す。片刃だからまぁ問題あるまい。


 少しひしゃげているが、盾も拾っておいて持ち手を背中の槍にかけておいた。

 流石に色々持ちすぎて、ちょっと身動きしずらいな。


 どっちが仕舞うかアリエスタと少し話したが、“今は”たくさんは持てないらしい。

 杖も持っていないし、そういうことなんだろう。


 師匠にしぼられたようだな?

 修行中の身、とかだったな。


 戸口のある崩れかけの足場は建物の二階より高く、皆は昇れなかったので、下まで行って、アリエスタをまず投げた。

「うおっ、っと! 上手いな!?」

 うまいこといって着地した。

 彼に子供達を受け取ってもらおう。


 ミウ「みう! みうにゃげて! にゃあーーきゃははは」


 アリエスタ「任せろっよいしょお! へへへ、楽しいか?」

「うん! もっかい!」

「あっ待て待て降りるな降りるなっ」

 怖がらず投げられてくれた、受け取ったアリエスタと上で何やら楽しそうにしてるな。

 さて。


 フィン「ひうっ」

 怖がってるな。

 ルッコ「早くしてーフィン」

「おいで」

 フィン「ぼ、ぼ、僕、おお留守番してるにゃ!」

 抱っこしようとしたのだけどな。


 しょうがないから首根っこを掴んで、首に捕まってるルッコと三人で上に飛んだ。


 バチャアッ!


 フィン「わあああ」

 ルッコー「おー!」

 ちょっと飛び過ぎたな、上手く体を動かし、速度と高度を落として戸口の扉ギリギリに着地した。

 スタッ。


 アリエスタ「え? 俺らを飛び越えてそこまで飛ぶ?」

 ミウ「うさぎみたい!」

 ほう、こんな風に飛ぶ“兎の獣人”がいるのだろうか?


 ズガラッ! ヒュン、チン。

 壁に刺さった小剣を片手で、いや両手で引っこ抜いて腰鞘に納める。

 ずいぶんめり込んでいたな。

 アリエスタ「それさっき大の男二人で引っこ抜こうとうんうん言ってたな?」


 こうして、スライムの湖だった広場を脱出した。



 戸口の向こうは、上への階段と、別の扉がある狭い部屋だった。

 壁にある小さな穴から外の明かりが見える。出口が近そうだな。


 アリエスタ「どっちだ? 俺探知の魔術はまだ知らねぇぞ」

 探知魔法とやらもあるのか。

 フィン「僕らはね、あっちの階段のとこの(部屋の)入口で捕まっちゃったにゃ」

「ふーん、そっちが玄関か」

 出口か。


 ミウ「ねえ、ルッコはにゃんであそこにいたの?」

 ルッコ「えっとねー、あそこの穴から入って探検してたらプールに落っとこされたの」

 フィン「落っ“ことされた”、にゃ」

 ミウ「おっととされた?」

「もうっ違うにゃ!」


 アリエスタ「おっとっとみたいになってんぞ」


 見ると、隅の角に穴が開いている。

 外に通じているのか。


 まぁ、そっちへ行くと思うが、奴の匂いというか、気配は扉の方だな。

 よく見ると扉の手前に水が滴った後がある。

 奴の膝にかかっていたものと同じ匂いだ。魔法薬の香りだろうか?

 私の持ってるのを嗅いで確かめてみようか。


 それと、水の落ちる音がそちらから聞こえていている。

 

 アリエスタ「え? そっち?」

 罠がきっとあるだろう、子供達はここに置いて待たせた方が良いかもしれない。

 ミウ「みうもいくの!」

 フィン「ここまで来てそりゃにゃいよ姉ちゃん!」


 ルッコ「お腹すいたー、もう帰ろー?」

 フィン「悪者退治が先にゃルッコ!」

「まだ何も言ってない」

 

 鞄からベルの非常食の干し肉を首に捕まってるルッコに食べさせる。

 カリカリと少しずつちぎって口に入れて食べている。

 ルッコ「おいしい、お姉ちゃん、これあげるー」

 首に巻きついて干し肉を食べるルッコがお礼なのか、ずっと手に握っていた何かを渡してきた。

 アリエスタ「あ、それ認識票じゃん。クッソ野郎共が」

 フィン「わぁ、冒険者のやつにゃ!?」

 ミウ「?」


「ありがとう。よく見つけたな」 

 ルッコ「さっきのとこで拾ったー」

 冒険者がここを見つけたのか知らないが、捕まって犠牲になったようだな。

 溶け残っていたのか。


 子猫の幼女がさっきから服を引っ張っている。

「るーな! みうも!」ミウにもあげた。

 後でベルに肉が減ったと見つかりはしないだろうか。

 フィンは欲しそうにしてるが言い出さないようだな。

 涎が出てるぞ。


 ガキんちょが遠慮なんかすんじゃねえと、アリエスタが私の鞄を勝手に漁ってり出した干し肉を口に突っ込んでいた。

 

「しょうがねえから俺が間に入ってやるよ、ホラっ、行け! ルーナ隊長!」

 誰がだ。


 ミウ「たいちょー」

 フィン「姉ちゃん兄ちゃんベル隊長はいないのにゃ?」

「あれ、そういやいねえな?」


 子供達まで隊長隊長と騒ぎ出したので隊長命令で静かにさせて、扉を開いた。


 開けた先は妙な部屋だった。

 水を溜める四角のへこみが両側に三つずつある。

 通路の先に扉も。


 灯がないので暗い、開けた扉から入る光でかろうじて視えるくらいだ。


 アリエスタ「なんだこの部屋? 水槽か?」

 フィン「空にゃ」

 右奥は水が少し残ってるな。

 罠の線も張ってないな、進むか。


 フィンとミウの眼が僅かな光を反射して、ギラギラと暗がりの中で光っているな。

 

 ミウ「なんかいる!」

 ルッコ「あ! あそこの残ってる水なんかいるー!」

 アリエスタ「へ? なんもいなくね? 振動で揺れたんじゃん」


「うん?」

 ごくわずかだが、魔力の感覚がそこから見えた気がした。

 粒の様な。


 一番小さなミウの高さだから、何か違って見えたのだろうか

 近づいて見る場所を変えて水槽に残った水を見てみた。


 かなり臭う汚水だ。

 例の焦げ臭いもする。


 いた。


「小さなスライムがいるぞ」

 水槽の底に残ったわずかな水の中に、透明な小さいスライムが潜んでいた。

 よく視ないとわからない。


 ここは入って来た扉から漏れる灯しかなく薄暗いからな。

 この子たちは夜目が効くようだ。


 アリエスタ「はあ? 透明なやつでもいるってのか? 馬鹿言ってんじゃ――んん? あああ!!」

 ミウ「ふにゃあ! うるさいアリアス」

「アリエスタだ。ルーナ見ろよ! 透明なちっせえスライムがいんぞ!」


「見えないが見てるぞ。よく見つけたなミウにルッコ」

 えへへー。

 と喜んでいる二人。


 ミウ「つかまえてかう」

 飼う?

 フィン「僕見えにゃい!」


 ルッコ「あそこー、ちゃんと見てフィン」

 アリエスタ「いやいや大発見じゃん! あれ? あの鼻くそ玉を湖にばらまくとかなんとか言ってたな? 違ったっけ? スライムにちまちま使うとか? んん? ……変異?」


 フィン「鼻くそ玉じゃないにゃ、変異丸にゃ」


「そうそれ、よしっ、へへ、捕まえたぜ。しかしきったねー水だな、妙にヌルヌルしてるし」

 アリエスタが小瓶に水ごとスライムを入れて掲げて揺らした。


 見えないがいるな。

 水面に丸い透明な体が浮き出ている。

 フィン「あ! 居たにゃ! 透明にゃ!」


 ミウ「みせて! みえない!」

 低くして見せてやっている。

「くらくてよくわかんない、おそとにいこう?」


 アリエスタ「おいおい盗賊はどうすんだよ」


 水槽にはもっと水があって、大量にいたのかもしれないな。

 乾いている他の水槽も、やはり同じ匂いがする。

 全て汚水だったのだろうか。

「これも変異させたスライムで、増やしたりしていたのか?」


 ルッコ「ねぇねぇ、湖にばらまくスライム? に全部使うのはやだって言ってたー」

 こしょこしょと私に教えてくれた。

 ふむ。

 

 アリエスタ「ふーん、どんだけスライム好きなんだよあの変態は……なぁ、最近湖で妙なことが起きてるらしいな?」

 そう言って大事そうに小瓶をしまった。


 ああ。

 重要な証拠品かもしれない。

 あの中が焦げた魚や、大羽蛇は、もしや……。



 先へ行こう。


 読んでくださりありがとうございます。

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