65話 古王詩
ルーカス「……上にある」
上?
首を傾げたのを子供たちも真似していると、彼は顎を上にやった。
厨房の天井だな?
レイア「父ちゃんそれじゃわからないにゃ、ルーナちゃん、こっちのカウンターの上の壁に、木の板があるにゃ」
ビクター「ルーナさん、その旧王諸国の挨拶って、ある歌の部分なんです」
ソニー「“一節”だよお兄ちゃん、古王詩って皆呼んでるんですよ」
ルーク「……その板に詩が彫ってあるっす」
ふむ。
なになに、うん、読めるな。
あれ? これは寝る前に呼んだ本の序文とやらにも書いてあったな。
「一つの、国の――」
ミウ「あ! おうただ! おうたうたえるよみう。ひとつのくにのー♪」
歌?
お、歌い始めた。
あぁ、古王詩と知ってる歌が結びついていなかったんだな。
フィンも、ソニーも一緒に歌い始めたな。
客も、ビクター達も、レイア達もだ。
――――
古王の詩
“汝の道を照らすように”
“一つの国の王が贈る”
“果てるは極北星の洞穴に”
“日出る東の大樹の根本に”
“あらゆる種族を友にして”
“十二の詩歌を寄せ集め”
“我らをまとめて束ねた王が”
“鋼と大丈夫産まれし闇へ”
“古竜と交わした約束が”
“巡る回廊封じ込め”
“割れた星海縫い留める”
“あらゆる熱に恩寵を”
“上の女王の息吹は幸福を”
“全ての尾が一つに振られ”
“石の文字が大地に新芽を”
“全ての技は伝えられ”
“聖者の祖霊微笑む霊廟の”
“箒落ちたる虫巻く渦の神殿の”
“水は一つの流れになって”
“全てが歩き別れた道へ”
“汝の道を照らすように”
――――
ほう、全く意味がわからん。
こういうのは寝るときに歌えばすぐ眠れそうだな。
おお~パチパチパチ!
子供たち「「キャッキャッキャッ」」
歌い終わると、皆で拍手をした。
思わぬ大合唱となったな。
詩の彫られた板が振動していた。
歌声に釣られたのか、客も入って来た。
「見事だった」
皆、古王詩が好きなようだな。
一つわかったことがある。
冒険者達が歌っていたのはこれだったのだ。
連中、ところどころ間違えて歌っていたが。
レイア「上手にできたにゃ、すごいにゃ~」
ミウ「えへへ~」
フィン「あ! これが古王詩ってことかぁ!」
おかみさんが子供達を褒めた。
レン「にゃにゃん!? 朝から賑わってるにゃ!」
長女が起きて来てびっくりしていた。
髪に、寝ぐせが出ている。
「あぁ、幸せの風のとこがわかったぞ」
上の女王がわからないが。
朝食が運ばれて、ベルとチビ達が食べ始めた。
ベル「わーい! いただきまーす!」
フィンとミウ「まーす!」
レン「お母ちゃんあたしも朝ごはん食べたいにゃ」
「顔洗うのが先にゃ、汚にゃいのは食堂だめにゃ、しっしっ」
「フーッ」
裏に戻って行った。
レイア「むかーし昔、ここら辺は一つの国と王様しかいなかったにゃあ、それが古王様にゃあよ。そんで、エルフ様は獣人達を一つにして幸せにするのにゃ」
ルーク「……王様もっすよ」
ルーカス「……王もな」
彼女は食事を終えた私たちに、お茶を出してくれた。
ソニー「えーと、人族、蜥蜴族、魚人族? 獣人族、ドワーフ族、エルフ族、あと他の思い出せない亜人も……あらゆる全ての種族が古王様と共に、平和に暮らしていたと言い伝えがあるんです、うん」
まだ知らない種族が居るようだな。
ビクター「もうバラバラになっちゃいましたけどね。僕ら旧王諸国人は皆その子孫なんですよ、村の爺様の受け売りですけど……」
レイア「でもちょっと眉唾だにゃ、あたしは“あちこち見て来て”、どこ行っても戦争ばっかで皆仲が悪いにゃよ」
フィン「よこすにゃ!」
ミウ「や~! みうのとらにゃいで~!」
レイア「こらっ!」
「あ痛っ!」
フィンがミウの皿の食べ物を取ろうとしたのでレイアがコツンと叩いた。
そこに、話を聞いていた客の連中がしゃべりだした。
客の蜥蜴人「エルフ様、我ら蜥蜴族は遥か昔に女王様に救われた歴史がちゃんと残っていまスゾ」
相席してるもう一人の蜥蜴人「女王陛下に栄光あれ!」
ガタガタッ
客の蜥蜴人「女王陛下に栄光あれ!」
うお、またか。
衛兵団事務所でもやってたな。
窓の外から私を見て入ってきたのはわかっていたが、どんどん集まって来てるな。
ベル「あははは!」
レイア「はいはい、わかったにゃ」
ああ、詩にある“女王”とはそれのことか。
“上”が意味不明だが。
「女王の息はいい匂いなのか」
ソニー「ルーナさん、そういうのは物のたとえと言うんですよ? えっと……ベルちゃんの目玉焼きを見てください。お月様みたいですね?」
ベル「はむむゅ?」
「ああ、なるほど」
ベル「んぐ、食べたよ! お月様おかわり!」
レイア「あいよー」
「その王国があったのは、いつなんだ?」
ソニー「……何千年も前ですね」
ビクター「え、一万年じゃなかった?」
ほう、ガストンから学んでいるが、それはかなり前だな。
私なんて目覚めて一週間もたっていない。
それと、なんでなくなったのだろう。
ルーカス「……エルフの故郷に当事者が住んでるはず」
なに。
レイア「にゃんて? あんた?」
聞こえたぞちゃんと。彼の声は低くて聞き取りやすい。
それほど長寿なのか?
気が遠くなるようだな。
セレナールは幾つなんだろう。
思いのほか楽しい朝食となった。
そろそろ出かけようか。
ベル「もぐむぐ、ほまわり(おかわり)!」
レイア「こらっ、ちゃんとお口を空にしてから言うにゃ」
宿泊代より食事代の方が高くなりそうだな。
読んでくださりありがとうございます。
古王詩は予言でもあります。
古王の詩
“汝の道を照らすように”
“一つの国の王が贈る”
“果てるは極北星の洞穴に”
“日出る東の大樹の根本に”
“あらゆる種族を友にして”
“十二の詩歌を寄せ集め”
“我らをまとめて束ねた王が”
“鋼と大丈夫産まれし闇へ”
“古竜と交わした約束が”
“巡る回廊封じ込め”
“割れた星海縫い留める”
“あらゆる熱に恩寵を”
“上の女王の息吹は幸福を”
“全ての尾が一つに振られ”
“石の文字が大地に新芽を”
“全ての技は伝えられ”
“聖者の祖霊微笑む霊廟の”
“箒落ちたる虫巻く渦の神殿の”
“水は一つの流れになって”
“全てが歩き別れた道へ”
“汝の道を照らすように”




