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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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64話 精髄

「ありゃりゃ、お姉ちゃん達が遊んでくれたのかい? よかったねぇ」


 レイアが上がって見に来た。


 朝の挨拶をした後、朝飯を食べるか聞かれたのでたくさん食べると答えた。


 フィンとミウはベルとあっという間に仲良くなって遊んでいる。

 怪力でぶっとばしやしないか心配で少し見守ったが、そんなことは起きなかった。

 ミウ「……にゃいしょだよ?」

 フィン「……でも臭いんだよすっごく」

 ベル「ふぅーん、そうなんだぁー」


 何か話してるな。


 兄妹も起きて来たので下に降りて、井戸水で顔を洗った。

 ソニー「うぅ、冷たーい」

 ビクター「ほらソニー、あーすっきりした」

 む、顔を拭く布か。

 道具屋とかで買えるのだろうか。


 ソニー「あぁあ、ルーナさん、駄目です服で拭いちゃ、これ使ってください。今日一緒にお買い物に行きましょうね」

 武器の他にもか?


 目が覚めてすっきりしたビクターが、手を握ったり開いたりしている。

 ビクター「ルーナさん、身体の調子はどうですか?」

「ん? 体が軽いな……なにかあるのか?」


「やっぱり……ゴブリンキングの後もそうだったんですけど。先輩や(冒険者)組合ギルドの人からも聞いたんですが――」


 カラララッ――ボチャアンッ。

 ソニー「あっだめだよっあ~ん落としちゃったぁ」

 井戸に縄でくっついてる木桶がまた落ちていった。

 最初は縁に置いてあったから使った後はそうしておかないといけないみたいだ。


「……えと、倒した相手から抜け出た“精髄せいずい”? とかいうものが、周りの皆に“宿る”ことがあるそうです」

 なに?


 ソニー「あ、魔法協会でもそれは習いますね、“位階”のことだよね? お兄ちゃん」

「うん。ルーナさん、僕達、何回も続けて強敵と戦ってきましたよね? それで僕たち、多分たくさん精髄を宿してるんだと思います、多分ですけど」


「あたしは一晩過ごすと、“マナ”が身体に馴染むって教わりましたよ。あ、精髄のことです」

 マナ、せいずい。

「それで位階とやらが上がったというのか?」

 なんだか、今までの自分の変化のワケが分かって来たな。


 ビクター「はい、まだ組合でもよくわかってないんですけどね」

 ソニー「魔力も増えちゃうんですよルーナさん、前よりも私達、強くなってるはずですよ!」

 彼女は両手を胸元に上げ握りこぶしを作った。


 なんと。


 ソニーの魔力を見た感じ、言われてみれば、増えている様な気がする。

 いや、増えているな。


 それに、以前より精彩さ? を増し良く見える。気がする。

 自分の手元の魔力も同様だ。

 

 ほうほう。


 感覚が良くなってるのは気のせいじゃないのか、子供らが来るぞ。

 裏口を横切る。


 裏庭の井戸に佇む私達は、戸口の向こうをフィンとミウをそれぞれ片手に持ち上げて移動するベルを見た。

 釣られて兄妹もそちらを向く。

 兄妹「「ええ!?」」



 レイア「ああ、レベルアップってやつにゃねそれは」

 兄妹「レベルアップ?」

 別の言い方だな。

 話の続きをしながらいい匂いの漂う食堂に入ると、レイアがそう答えた。


 朝の茶を出してくれた。

 うまい。

 食堂には他にも客がいるが皆眠そうだな。

 もしかして、ベルが起こしてしまったのだろうか……。


 ルーカス「……帝国語は好かん」

 む、やはりか、別の国の言語だったか。

 小鬼とゴブリン、これはそういうことだったんだな。

 あからさまに彼の機嫌が悪くなった。


 レイア「帝国なんちゃら何てあたいは知らないにゃ、言葉は言葉にゃ、位階とかより全然言いやすいにゃ」

 ほう。

「ギルドとかギルマスもそうにゃよね? 言いやすいから使うにゃ、ナイフも、武器もそうにゃ、命がかかってるからにゃ」


 レイアはそう言って、ナイフとフォークを交互に放り投げて交互に受け取り、繰り返しながら言う。

 なんだその技は、食堂のおかみさんの芸当ではないぞ。


 ところでレンはまだ起きてこないのか。


「そうだな、すごくそう思う」

 ビクター「おお、ルーナさんがすごく頷いてる」


 ルーカス「……フン、使うなとは言ってない、俺が好かんだけだ。もうすぐ出来上がるぞ」


 む、誰か入って来るな。

 猫人かな、歩き方でなんとなくだが。

 ミウとフィンの笑い声で音があまり聞こえない。


 ガチャ、バタン。

 ???「ふぅ……ただいまっす」


「ルーク! お帰りにゃんっ、朝ごはんかにゃ?」

 む、レイアが嬉しそうだ。


「うん……うん? あっ! ……ど、どうもっす」

 どうやらまた別の家族の様だが、何故か私を知ってるようだな。誰だ?


 普通の猫人族の灰色の毛並みの青年だな。服装も町の人と変わらない。

 ビクターより少し上ぐらいだろうか。


 丁寧にお辞儀をされているが……。


 フィンとミウ「あっ、兄ちゃんお帰りにゃ!」「にいにおかえりにゃあ!」

 ベル「増えたね! あれ?」


 ビクター「あっ! ルーナさん、ホラ! 盗賊のアジトで……ほら、衛兵の彼ですよっ、オークと戦ってた蜥蜴人の中に、一人だけいた彼です」


「あっ」

 今の姿と見分けがつかなかった。

 鉄兜に鎧の、衛兵の姿ではないからだ。尻尾も何故かないな?


 レイア「にゃんだって? 無事だったのかにゃ?」

 ルーク「……ルーナさんが、助けてくれたから」

「ありゃりゃ! うちの長男までお世話になってたにゃあ! こりゃあ大変だね父ちゃん!」


 ルーカス「……ちょっと、今、料理中だ」


「……お待ちどう、息子のこと、ありがとう」

 レイア「本当にありがとうにゃよルーナちゃん」

 ちなみに昨晩、ルーナ様呼びするレイアを説き伏せて、呼び名を変えさせてもらった。


「あ、ああ。最後に少し手助けしただけだ。彼らは良く戦ったぞ」


 ビクター「おお、ルーナさんが少しびっくりしてる」

 ソニー「お兄ちゃん、もういいから」

 兄妹はルークのことはあまり知らないようだな。

 

 うん?

 では衛兵団は盗賊アジトから帰って来たのか。


 出来た料理をルーカスが自ら運んで来て置いてくれ、息子のルークに話しかける。

 ああ、父親譲りか、二人とも尾があるが、短い。

「……朝飯、同じのでいいか」

 ルーク「……自分もそれでいい」

 似ている。


 他の子達はレイアゆずりなのか。

 ふうむ。


 ビクターとソニー、私の朝食が来たな。

 ベルはこの次だろうか。

 気にせず二人は食べ始めたな、私ももらうとしよう。


 なんだか彼らは冒険者特有の所作があるな。

 食べれる時間があるうちにさっさとかきこんでおく必要があるのだろう。


 ベルがこちらに来たら少し分けてあげようか。

 大きな一皿に目玉焼きに芋をつぶしたものに、丸いパンや野菜が色とりどりに盛りつけられている。

 肉はない。


 レイア「皆いっぱい食うにゃ、うちも大飯ぐらいにゃ、おかわりもたくさんあるにゃよ」

 ベル「わぁっ、ごっはっんっ♪ ごっはっんっ♪」

 フィンとミウ「ごっはっんっ♪ ごっはっんっ♪」

 力を増したらしいベルは、更に食べるようになるのだろうか。


 衛兵団の事が気になるな、両親に近い、カウンターに座るルーカスに聞いてみる。

「ルーカス、ゼラは」


「ゼ!? ――……はい、ノーデント副隊長は、皆、隊と一緒に撤収したっす」

「そうか」

「……っす」


 ゼラと呼んだら少しびっくりされたな。

 彼は確か、貴族とかだったからな。


 レイア「ゼラ君にゃ? 半蜥蜴のゼラ君のことにゃ? ルーナちゃんも知り合いにゃんね」

 ルーカス「おい……貴族の名を人前で軽々しく呼ぶな」

「ゼラ君はそんなの気にしないにゃ」

 どうやら彼女も知ってるみたいだな?



 ルーカス「……ベル、できたぞ」

「うっきゃーーー!! ごっはっんっ♪ ごっはっんっ♪」

 フィンとミウ「ごっはっんっ♪ ごっはっんっ♪」

「……子供らは今作る」


 ビクター「な、なんだか三人《ルーナさん達》の感じに似たものがあるっ」

 ソニー「チビちゃん達もだねお兄ちゃん」


 レイア「ふふふ、なんだか賑やかににゃったにゃ~エルフ様はやっぱり“幸せの風”を吹くんだにゃあ、“道を照らす”んにゃね」

 ふむ?


 前も聞いたな。

 ”汝の道を照らすように”だったか?

「にゃ?」


 ソニー「あっ、レイアさん、ルーナさんは記憶がなくて、“古王詩こおうし”を知らないんです」


 ベル「なにそれー?」

 フィンとミウ「にゃにそれー?」

 ソニー「あれ?チビちゃん達もまだだったんだ」


 古王詩?


 読んでくださりありがとうございます。

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