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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
66/133

63話 早朝

 ととと。

 ててて。

 チリン。


 目を覚ました。

 久々にぐっすり寝た気がする。

 というか、これほど長く寝たのは初めてかもしれないな。


 時計がないからわからないが、部屋に案内された時は十時頃だった。

 

 昨日の夜は、三階の、兄妹が二人で使っているところの隣の部屋に案内され、装具を外して、小剣のみで素振りをして、瞑想して、部屋を出て裏の井戸水で体を拭いた。


 灯なしで洗っていたので裏にやって来た女将レイアに驚かれ、その後部屋に戻り、灯の仕組みを見て点けて、明るいので本を読んでみて、寝た。


 ベルはずっと寝ていた。


 ひそひそ。

 てててて。

 チリン。

 

 確か、窓の暗闇が明るくなってきたから、いかんと思って寝たのだ。

 だから数刻しか寝ていないはずだ。

 本が面白かったから。


 最初は字を思い出すのが大変で遅かったが、だんだん読み進められるようになって、半分くらい読んだ。


 異国の、“砂漠を旅する旅団の旅行記”だった。

 挿絵という絵もとても良い、砂漠やさそり、ラクダを見た。


 何故この絵は色々動くのだろう。

 文字も呼んでいると“絵”が浮かび上がってくることがある。

 不思議だ。


 あと、本位出てくる旅人の“頭の中の絵”で記述される、海の思い出とかも面白い。


 続きは今晩読もう。

 楽しみだ。

 寝台横の棚に置いておく。


 今日は店に行くのだったか、装備はどうしようか。

 着ておこう、逆に着ていないと違和感があるしな。


 考えるまでもなくもう籠手を装着していたし、今更だな。


 カチャ、シュル。

 皮の改造鎧、帯、下履き、靴、大剣と長剣は折れたから、鞘は置いておこう……。

 外していた短剣や、幅広小剣を腰に着ける。

 そして弓、は後でいいか。


 こしょこしょ。

 かさこそ。

 チリン。


 しかし、今日は体が“いつにもまして”軽いな。

 疲れが取れたのだろうか。


 ベルはまだ枕の横で寝ている。


 さて、そろそろ小さな足音の正体を確かめてみよう、丁度私の部屋の扉の下のとこにしゃがんでこちらの音に聞き耳を立てているしな。

 すき間からも見えている。


「……」

 私は足音も、木床の踏み鳴る音さえもさせず戸口へ近づいた。

 連中もたいがいに耳がいいからな。


 勢いよく扉を内側に開けた。

 ガチャッ!


「みゃうっ!」

「ひうっ!」


 仰天し身をすくませ、口をめいいっぱい開けて驚き見上げる小さな猫人の子供が並んでいた。

 しゃがんで耳を扉に当てていたようだ。


 二人とも小さくてとてもかわいい。

 レンの家族にそっくりだ。

 弟のフィンと、妹のミウ、だったか?


 レンより少し小さい男の子と、ニコと同じくらいの幼女がびっくりして毛を逆立てていた。

 大きな兄の方は母親と同じ茶猫で、妹らしきちっこいのは父親と同じで真っ白だ。


 多分フィン「にゃ、にゃ、にゃにゃ……」


「おはよう、“ローグごっこ”か?」

 逃げないようになるべく優しく話しかける。


 こくこくとフィンが頷く。


 多分ミウ「おねえちゃん、おミミがよこにあるよ? にゃんで?」


 ? ああ、この子らは上に付いてるものな。

 あ、私を同族と思ってるのか、眼でか。


「私はエルフ、らしいからな」

「えるふってにゃあに?」

「よくわからん、猫人とは別の種族だ」

「おねえちゃん、だあれ?」


 見上げるのが大変そうだな、しゃがんで話そう。


「私はルーナだ。お前たちはミウと、フィンだな」

 フィン「ばれたにゃ!」

 ミウ「すごおい! にゃんで? まほう?」


 ミウが私の手や、髪の毛を触って調べている。

 フィンの方はまだおっかなびっくりしてるな。


「昨日、レンが口を滑らしていた」

 フィン「レンの奴め!」


 ミウ「おくちをすべったの?」

 コテンと首を傾げた。

 チリン。


 髪を結わえている紐に付いた鈴、が鳴った。

 うーん、ニコより下の子だろうか、まだまだとても子供だ。


「レンからお前たちの名前を聞いたんだ。外れたか?」

「にゃあ~あ、そうだよ、僕フィン。十一才にゃ」

「そうだよミウだよ! “ごしゃい”だよ! おねえちゃん、ぼうけんしゃ?」

 ニコの、確か一コ下だな。


「ああ、よくわかったな」

「すっげえ!」

 普通の恰好ではないからな。

 フィンは冒険者が好きなようだな。

 食いつきが変わって来た。


 腹の短剣に触ろうとするミウの小さい手を捕まえる。


 ミウ「えへへ、ママが“かり”にいくのとおんなじだもんっ!」

 かり? 狩りか。

 ほう、レイアはやはりやるのか。

 昨晩は襲い掛かられそうになったしな。


 フィン「姉ちゃん、お客さん? ビクター兄の仲間?」

 ここを宿にしている兄妹とは知り合いの様だな。


 まだ朝早いようで、どうやら誰も起きてきていないようだ。

 いや、階下、食堂で両親が起きているような気配を階段から感じるな。


 “妙にはっきり”とわかる。


「それも正解だ。やるなフィン」

「ふ、ふん! そんにゃのわかるもん! だって僕、起きて下を偵察てーさつしてたんにゃもんね」

 ほう。

 昨晩、階段からのぞいていたのか、気づかなかった、油断していたな。


 ミウ「あぁ~ふぃんいけにゃいんだ、ずるうい、ねてないといけにゃいんだよ?」

 フィン「だって悪い奴がうろうろしてるんだからしょうがにゃいの!」

 ふむ?


「悪い奴?」


「嘘じゃにゃいよ! ホントだよ!」


「みうはみてにゃいもん。ねぇおねえちゃん、あっこでおねんねしてるちっちゃいのだあれ?」

 ベルに気が付いたか。

 まだ薄暗い室内で、柔らかく光って目立つからな。


 丁度、目を覚ましそうだ。

 むにゅむにゅ言って動いている。


「あれは私の仲間のベルだ、フェアリー族らしい」

「ベルって、鐘のベルにゃ?」

 あぁ、そういえばそうだな。


「ふぇありー? おとぎばなしの? みう、みたい!」

「ミウ、もう少し待てるか? そろそろ目を覚ます」


「じゃあみう、もうすこしまてる。これはゆみや?」

 フィン「ママも持ってるにゃ」

「ままももぉ」


「そうだ、危ないから触るな」

 今度は肩にかけた弓に触ろうとするぞ。

 しかし大変だな小さな子は。


「フィン、どこで見たか覚えてるか?」

「え~、極秘情報ごくひじょーほーだからにゃぁ~」


 ふむ、鞄から銅貨を一枚出して見せてみた。

「だめだめ、それっぽっちじゃ足りにゃいねっ」

 それじゃあ、三枚だ。


「わあっ毎度あり!」

 手を伸ばしてくるが、ミウ「あ~いいにゃあ、ずるぅいふぃんばっかし。それなぁに?」

「ばかだなぁみうは、お金も知らにゃいの? これは銅貨って言うの!」

「みう、ばかじゃにゃいもん! ばかふぃん!」


 むっ。

 ぱすっ。


 フィンがミウを殴る拳を素早く摑まえる。

「わっ!?」

 ミウ「みゃうっ!?」


 お、更に蹴ろうとするので、首根っこを摑まえ持ち上げる。

 まったく。

 フィン「ふにゃあっ、離せにゃ!」


 お、ぱったりと大人しくなったぞ。

 口以外は。


「やっぱり、情報を買うのはやめよう、悪い子のようだから」

 銅貨を出す手を引っ込める。


「ふぃんはね、すぐぶつんだよ、わるいこふぃん! レンねえにいいつけるからね! フゥ~ッ!」

 チリン。

 おお、ミウも持ち上がっているフィンを蹴ろうとするので、抱き寄せてやめさせる。


 元気だな。


 あ、フィンが泣きそうだ。

「だ、だってミウが馬鹿って言うからいけにゃいんだもん!」

「うぇ、ばかっていうのがばかにゃんだもん! ふぇ~」

 釣られてミウも泣きそうだな。


 やれやれ。


 ベル「も~うるさいなぁ~、だぁれ~? ケンカしてんのは~」

 起きて飛んで来たな。

 眼を半分閉じて飛ぶのはやめたほうがいいぞ、そっちは棚だ。

 

 ベルを見てミウの表情が明るくなった。

 フィンは話を聞いていなかったようだな、眼をまん丸にして驚いている。

 また毛が逆立ったな二人とも。

 しっぽも膨らむんだな。


 さて、ベルの大声で兄妹も起き出したようだ。


 読んでくださりありがとうございます。


 ルーナはここら辺から一気に語彙力ごいりょく? が上達じょうたつ? してきています、なんとか表現ひょうげん? できてればいいんですけど。

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