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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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62話 猫屋

 夜の街を兄妹に案内され、南通りとやらをしばらく進む。


 街灯に照らされた並木道、でここら辺は大通りより自然が多く、虫の声が聞こえる。 生き物が多いな。


 通りの向こうを素早く横切ったのは、あの羽のある小蜥蜴か。一瞬止まってこちらを見る目が光った。

 猫族のようにしなやかだ。

 そして猫 (族)っぽい。


 ベルは街灯の灯を飛び回っている蛾を追いかけたりしている。


 畑、が民家の間からちらほら見えてきだす頃、たどり着いたようだ。


 ソニー「はい、ルーナさんベルちゃん、着きましたー、猫屋です」

 ビクター「あ、食堂は夕飯かな? いい匂いがする」

 この少年も、ベルほどではないが食べる方だな、あれだけ食べたのにもう何か食べたそうにしている。

 私も。


 せっかくごちそうを食べたのに怪我してしまい、治療で無理に治したからな、アリエスタが言っていたように食っておぎなう? 必要があるかもしれないな。


 ベル「ついたの? なんかいい匂いする!」

 ふむ、これは、例の甘水草と他にも、それと焼いた魚の香りだろうか。

 彼女の顔が謎の鱗粉まみれなのは、なんだろうな。


 猫屋は森の中の小屋のように、植木、いや小さな林に囲まれているが、縦に大きく伸びていた。

 アプルは成ってない、代わりに小さめの黄色いのがなってる。


 そういえばこの建物、さっきから見えていたな。

 四、五階建てだろうか、天辺てっぺんはアリエスタぐらいしか泊まれなさそうに小さいが。

 あとちょっとそこが傾いている。


 通りから続く暗い小道に入ると、誰か戸口に来てるな? ちょうど灯のぶら下がる入口の戸が開いた。

 この足音は、覚えがあるような……。


 レン「あ! やっぱりにゃん! お帰りにゃん!」

 あ、猫娘レンが顔を出し目を光らせた。


 お互い、耳が良いということか。

 兄妹「ただいま~」

「あれ? お姉ちゃんもいるにゃん!」

 耳をぴくぴくさせて喜んだ。


「こんばんわ」

 ベル「来たよー!」


 レンに案内され入ると、冒険者組合の半分ほどの広さの食堂があった。

 天井が商人宿より少し低めだ。

 奥が長机カウンター厨房ちゅうぼうで、右が階段だ。

 猫人の男女が店員で、何人か客がいる。


 猫男「……らっしゃい」

 猫女「いらっしゃいにゃあ――ありゃ? ビクターとソニーにゃ、お帰りにゃ。ずいぶん大きな声がしたにゃ、小さい子とお客さんが上で寝てるから、静かにしてくれると助かるにゃよ」

 ベル(寝てるの? はーい)


「いい子にゃね、フェアリーかにゃ? かわいい子にゃね」

 前掛けを着けた大人の猫人族の女性がやって来て、ベルを優しくなでる。

 細いが“色々”大きい。

 ガストンより少し高いかもしれない。

 毛並みは縞模様で焼き立てのパンみたいだ。


 レンの母親だろうか、身のこなしはさすが、猫人だ。

 多分強いぞ、現役? ではないようだが。


 厨房からこちらをチラと見て兄妹の後、私達をしばらく見つめて、また料理に戻った男は父親だろうか。彼女と同じ色合いの前掛け姿で恰幅? がよく大柄だ。

 彼は普通の街人な気がする。

 ちなみに毛並みは真っ白だ。同柄の布を頭に、鉢巻? にして巻いている。


 猫女「にゃ~、旅の戦士のエルフ様にゃ? 珍しいにゃね。でもあたし等みたいな眼をしてるにゃね? セレナール様とは違うのにゃね。ありゃりゃ? ひょっとして、レン達を助けてくれたエルフ様にゃ!?」


 やはりセレナールのようなエルフ族と私は違うのか。そしてレンから聞いていたようだな。


 猫男「……そりゃそうだろ」

 ほう、気付いていたか。


 レン「そうだよ母ちゃん、ルーナさんと、ベルちゃんって言うにゃ」


 ビクター「あ、そうだった、紹介しなきゃ。おかみさん、この人はガストンさんと僕らも助けてくれた、ベイリ村、から来たルーナさんです」

 とりあえず村から来たことにされた。


 ソニー「ルーナさん、こちらの方はおかみさんのレイアさん、厨房にいるのはだんなさんのルーカスさんです」

 紹介された。

 彼女はレンと両手同士を触れ合わせ交互に上下を“てこてこ”し続けながらそう言った。


「こんばんわ、私はルーナだ」

 ベル「こ――ぁ(こんばんわーっ)」


 レイア「ありゃりゃそうなのにゃ? 父ちゃんこっち来てお礼するにゃよ」

 尾がくるっと回転して彼の方へ向いている。


 ソニー「レイアさんは私達と、あとガストンさんと同じ村出身なんですよ」

 ほう。

 強者が多い村なのだろうか?


 キィ、ルーカス「……娘が助かった、感謝です」

 片羽の半扉を腹で押しやって厨房から父親が出て来た。

 手際よくできた料理を更に盛り、待っていたらしき客に出しながら。


 む?

 二人のの話し方が全然違うな。


「父ちゃんは口下手なので許してくださいにゃ、どうも娘を助けてくれて大変ありがとうですにゃ、ついでにお隣のマギーちゃんも、ありがとうですにゃ」

 ああ、犬娘のマギーか。

 お隣とやらに住んでるようだな。


「いや、間に合ってよかった、ギリギリだった」


 レン「そうにゃ! “危機一髪”だったにゃ」

 猫娘が蛙の舌の話をし始めた。



 ルーカス「……レン、その前に、お客さんに何か聞く」

「はっ! いけにゃいいけにゃい! 皆さん、ご飯にゃ? それともお泊りにゃ?」


 ベル(えとねー、ご飯! まだ食べられるよっ)

 ビクター「え!? あ、ぼ僕もっ」

「うむ、私も食べよう」


 ソニー「ええ? ベルちゃん、お兄ちゃんも!? あんなに食べたのに?」

 レン「? みんなどっかで食べて来たにゃ? それにゃのに食べるのにゃ?」


 鼻をヒクつかせて匂いながらそう言った、わかるのか?

「あと、にゃんでソニーちゃん、ルーナお姉ちゃんには聞かないにゃ? エルフ様はたくさんは食べにゃいはずにゃけど……」


「ああ、私は魔法剣で焦げたのを(魔法で)治したから、食べないといけない」


 猫屋の人々「「にゃんて?」」



 色々説明する前に卓に座って飲み物をもらう。

 熱くない、少し甘いお茶だ。衛兵事務所で飲ませてくれたのと似ている。


 ここは装具は別にそのままでもよいようだ。

 だが、冒険者の酒場とは少し違い、手入れの良さや、細かいところにこだわりを感じる。

 草があちこちに干してあったり、植えてあったりして自然が多い。

 全部食べられるのだろうか。


 ソニー以外の我々は食事を他の客と同じ、名物料理とやらを頼んだ。


 ベルに食事している客を飛んでって間近で見つめないよう言いつけ皮鎧のポッケに入れる。

 直ぐに抜けだしたが。

 ソニーも同様に見ていた兄の顔をこちらに動かす。


 お茶を持ってきてくれたレンは、どうやら給仕? の仕事をしているようだ。

 レイアは、私が泊まりたいと伝えたので、部屋を準備しに上に昇って行った。


 レン「ええ? 帝国の騎士ともめたにゃって? ケイラッド様が止めた? はにゃあああ!?」

 ソニー(レンちゃんしぃっ! フィンくんとミウちゃんが起きちゃうでしょっ! お客さんだって)

(ふにゃあ、しぃにゃ、びっくりしたにゃ)

 む、他に家族でもいるのだろうか。


 彼女は驚いて毛が逆立ち、その後、顔を、手を舐めて顔を洗い始めた。

 蛙のとこでもやってたが、面白い仕草だな。

 ベル(くすくす、しぃーっ)


 部屋の準備ができたとレイアが戻って来て説明を受けた。

 料理は別料金とか、食堂をやってる時間とか。

 時計がここにも置いてあるな。


 お湯や桶は言えば用意する、裏の井戸に体を洗う場所が用意してある等、トイレの場所や、細々とした決まり、部屋は余っているので長期滞在も可能だと。

 一週間ほどの硬貨《料金》を渡す。


 ちなみにベルの分は含まれていない。


 ビクターに頼んで、商人宿での出来事? を話した。

 客たちも聞き入っているな。

 ケイラッドの人気と、帝国の連中が嫌われているということがよく分かった。



 その頃には、料理が出来上がり並んだ。

 ルーカス「……お待ちどう」

 ふむ、レンの父親は、(盗賊の)アジトにいた“猫人の衛兵”に、なんとなく似てるな。


 魚と香草の包み焼きという料理らしい。

 パン生地に包まれた中に、様々な草の香りをさせた焼き魚が出て来た。

 魚の旨味と、塩味や、色んな草の味がパン生地と一緒に食べると、合わさっていて、食感もよい。

 うまい。


 恐らく、山羊の乳も使われているな。

 調味料だったか、アプルに使用したものとは違う粉も多分ある気がする。

 様々な物を合わせる味の深みを感じた。


 戦いにもそういうところはあるな。

 これだけのものを作るなら、採集しに行かねばならんだろうな。


 レイア「おいしそうに食べるにゃあ、よかったにゃね」

 ビクター「むぐ、おいしいですっ」

 ソニー「もぅ~パラパラ零して、お兄ちゃんっ」

 ベル(あたしこれ好きっ)

「うまい、見事だ」


 レン「不思議にゃ~、ベルちゃんは食べた物、どこにいったにゃあ? そのお魚、ベルちゃんよりおっきいよ?」

 彼女は茶を自動でお替りしてくれている。

 トププ……。


 別の席では酒の匂いがしている。


 あ、そうだ。

 土産の酒を開けて一口飲んだ。

 おお、これはうまい。

 酒精、を感じさせない飲み口と果実の味だが、その実は強く、水のようなさわやかさだ。


 ビクターがフォーク、をかじりながら見ているが、お前はまだ飲んではいけない年らしいから、駄目だぞ。

 私は謎だから構わないんだ。


 レイア「お酒飲むにゃ? うちも出すにゃ?」

 ああ、くれ、飲み比べてみよう。

 勝手に持ち込んだのを飲んだことは特に何も言われてない。


 レン「ふぁ~お姉ちゃん大人の女みたいにゃあ」

 レイア「ありゃりゃ、まるで冒険者みたいなエルフ様にゃね」


 ビクター「そうですよ?」


 こうして、湖の町スイレーンの怒涛の一日が終わるのであった。


 読んでくださりありがとうございます。


 今更ですがこの世界には犬や猫はいないのです。猫族と犬族が居ますから。

代わりにマモットや羽の生えた猫みたいな蜥蜴が居る……。

 でも人々が猫と名指す存在は、実は他にいるのです。

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