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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
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136話 封鎖2

 魔力薬、マナポーションを飲んだが魔法薬よりかなりまずかった。


 ジミーのとっておきの高い薬だからか?

 おまけに、鼻が利かなくなったぞ。


 体の調子も悪くなったが、魔力がどんどん生み出されてるのかすごく増え続けている。

「うぅ……もう二度と飲みたくない」


 ゼラ「えぇ、そんなに?」

 レックス「お疲れ様でス、ルーナ様」


 ベル「ドキドキ、ちょこっとだけ……ぴ!?」

 ファサッ。

 クリオス「?」


 騒ぎの中、フェアリーがルーナの頬に跳ねた飛沫ひまつの小さな一滴を見、小さな指でつついて口に恐る恐る、興味本位で舐めてみた。


 すると、全身が痺れたように震え、なんと近くの“外の壁の苔”から、小さな茸が生えたのだった。

 誰も見ることはなかったが。


 ズガガガガッ……。


 クリオス「ひっ!?」

 ベル「? 上?」

 外で蜘蛛ゴーレムが密集して何かやっているな。


 天井の部分だ。

 密集部分の中央に魔力が集中している。


 急いだほうがいいかもしれない。


 ガッ。

 ブラッダー「え?」

 彼を掴んで魔力を渡す。

 というか、彼に飲ませればよかったな……。

「ブラッダー、手を合わせてくれ」


「あぁ、“並行瞑想”の要領ですか、どうぞよろしくお願いしますよね」

 へいこう瞑想?


 両手を合わせて魔力を巡らせる。

 彼の手は小さいので、私の手の平に全部が収まっている。


 未だに回復し続けている魔力がブラッダーの手を通して流れ込んでゆく。

 ぐるぐると。

 彼と私の発動体の指輪が丁度良い流れを作り出していた。


 クリオス「わ、わ、光ってる……」

 オフィーキュス「ま、まぁ、なんて強い魔光でシょう」


 ゼラ「ぐぬぬぬ、何で僕は魔法使いじゃないんですかね!?」

 槍使いの男は彼女と両手を繋いで魔力譲渡し合えない自分を呪った。

 レックス「こ、これが魔力譲渡……」


 ブラッダー「こっ、これはっ、こんな!? あなた、なんて魔力量ですかっ……(どうりでセレナール様と団長に近い圧力を放っているはずですよっ……この人は明らかに、英雄か何かの類ですよねっ! これならっ!)」


 ガガガガガガッ。

 ボシュウゥゥゥ……。


 ベル「! ねえ上!」

 レックス「ぬっ!? いかんっ、奴らが入ってこようとシてまスゾ!」

 一番背の高い彼の頭上、そこに座るベルの二人が、天井の土球が赤熱し始めたのに気が付いた。


 クリオス「うわあっ!」


 ゼラ「ちょっとお二人さんいつまでも仲良く手繋いでないでっ!」


 ブラッダー「これなら詠唱要らずですね、まぁ見ててください……土魔術はある意味、水よりも流れるんですよね」

 ? 詠唱が要らない?


 ズズズズズ……。

 すると、土球が振動し始めた。


 ブラッダーの魔力が、足元から周囲へと広がって行く。


 何だこれは。

 杖――じゃなくて指輪から、発動体? から魔法を放つんじゃないのか?


 詠唱も、魔力の集中もない、ただ“流れて”いる。

 さっき彼が、流砂を避けてたのもそうなのか?


 ズズズズズズズズズ!!


 ベル「わあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙~~」

 皆が揺れる。

 地震?


 流れる魔力が土球外に溢れる砂に張り巡らされて行く。

 まるで、魔力の景色が見えるようだ。


 目をつぶり魔力譲渡をしているからそれはとてもはっきりと見えた。


 外の景色、向こうの通路、砂の中に眠るゴーレム、外を歩き回るものすごい数のゴーレム、土球に取りつき、天井で光弾をそれぞれ交差させ太い線にして天井を溶かそうとしている連中の姿をはっきりと。


 ――ブツブツブツ……――


 誰だ?

 ブラッダーじゃないな。


 魔力の景色の向こうで、外で動き回る蜘蛛ゴーレム達のこもった音でもなく、土の奥深くから響く様な声がする。


「うーん、仕事がしやすい……必殺技を言わせてもらいましょう……石監獄いしかんごく!」


 ベキベキベキベキベキベキ!!!!


 外の砂が全て、石になった!?

 そして更に変化し、空いた空間に向けて埋め尽くすほどの石の柱を伸ばし作り出した。


 ボウンッ! ボボオウンッ! ボンッ! ボボボッボオンンンッ!!


 ッメキャベキバキャボゴボグンッ!!


 [[ピゴギュッ::;:;;;……]]


 何かが弾けて炸裂し、そして同時に潰れて壊れるような金属の悲鳴音があちこちからした。

 最後に、ゴーレムが壊れた独特な鳴き声のような音がして静かになった。


 クリオス「わあああっ!?」

 ベル「ひっさつわざー!」


 ほぼ全ての蜘蛛ゴーレムを完全に破壊したぞ。

 砂の中に眠っている者などは、バラバラに潰れていた。


 砂山が石化時にひっかきすり潰すように動きながら石化したからだ。


 池鮫いけざめの喉に氷の棘を炸裂させたアリエスタの氷もすごかったが、こっちの石の監獄もなかなかの技だった。


 ベル「ねえ! 必殺技だって!」

 クリオス「石監獄?」

 ゼラ「え、何今の?」

 レックス「ソ、外からの音が一切、消えまシたゾ」

 クリオス「倒したの?」


 あ、皆には見えてないのか。


 ドザアアアアーーッ。

 土球が溶けるようにして解けて、周囲の足元に土塊になって積もった。


 一同「「うわぁーーっ……」」


 外は魔力で見た通りの光景だった。


 石の大小の柱が上下左右、あちこちから滅茶苦茶に乱立して横切り、串刺し、立ち、交差し合い、網の目状になっている。


 固まって石となった砂の川の上に群がる蜘蛛ゴーレムを貫き、潰し、破壊し尽くしていた。

 こっちも、奥の通路もだ。


 ブラッダー「あー気持ちよかった。ですが、ちょっとやり過ぎましたね? いつも節約しようしようとは思ってるんですけどね……でも勢いって大事でしょう?」


「ああ、見事だ、ブラッダー」


 ベル「うっひょー! すっごーい! 必殺技すごーい! アリよりすごい!」


 レックス「なっ……」

 ゼラ「なんじゃこりゃあ!?」


 クリオス「みんなやっつけた? すごい!」


 オフィーキュス「……こ、これが“暴れ球”様の土魔術、なんて美シいのでシょう」


 実際にこの眼で見ると、その通りだな。

 土というか、石魔術じゃないのか?


 アリエスタより凄いとベルが言ったな。

 氷とか炎と違ってトゲトゲしてるのがいいのかもしれない。


 ゼラ「こんなすごいことができたなんて聞いてないっすよブラッダーさん」


「あれ? ゼラ君は“戦時中”に見ませんでした?」


「見たら忘れませんからね? こんなえげつない魔法!」

「あー……“担当区画”が別だったときですかね」

 ふむ? 昔の戦争の話か? 大体皆、戦争を経験してるようだな。


 レックス「……ルーナ様、衛兵団は元々、戦時中は竜兵団という名前だったのでス、ダロムの奴もソの時は入っていたようでスが」

 ああ、そうだったのか。


 ダロムが言ってたな。

 スイレーンの戦士達で結成された軍とかだったな、戦後にそのまま全部衛兵団になったのか、なるほど。


 ゼラ「いつも球になって暴れ回ってるじゃないですか? なんで今までさっさとこれを出して片付けなかったんですか」


「こんな燃費の悪い魔術、滅多に使うわけありませんよね、当時も“塹壕ざんごう”が丸まる潰れて上官に叱られましたし」

 ざんごう。

 ここみたいな通路だろうか?

「ルーナさんが魔力を提供してくれたからこそこんな“贅沢ぜいたく”ができたわけですよね、普段ならへとへとになるはずが、僕の魔力、全然減ってないんですよ?」

 ぜいたく。

 商人館の料理の時に聞いた言葉だな。


「いや、ブラッダーに丸まる持ってかれたんだが……」

 アリエスタとは半分ずつだったぞ?


 なんだか、土魔術の“独特の流れ”に吸われた感じがする。


 彼も魔力が半分程度に減っていたのだが、今はそれ以上に増えている状態だ。

 最も、元々足元から魔力を吸収しているようで、徐々に回復していたようだが。


 レックス「これではソもソも、通れまセんゾ」

 壊して進むのだろうか?


 ブラッダー「まぁまぁ、今どけますから」


 真ん中だけ、溶かすようにして石を砂状に柔らかくして左右にかきわけ、細い通り道を作ってくれた。


 そうやって、廊下を通ることができた。


 ゼラ「うわぁ、ホントの虫みたいですね」


 魔石を壊せず一部まだ動いているものが石に半分埋まったまま蠢いていたが、たが、丁度本体にはまっている色の薄い魔石が見えていたので、つまんで取り除くと、見る間に変化した石の手足が崩れ落ちて、涙状の本体だけになった。


 ブラッダー「無視してさっさと抜けましょう、この先の階段上が、配置的には隠し部屋の筈ですよね」

 ゼラ「……えっ」

 ベル「むしをむしーっ」


 ふむ。

 クリオス「持って帰るの?」

 一つ鞄に仕舞ったところをじっと見ていたクリオス少年に見られた。

「お土産にな」


 ザ、サク。


 蜘蛛ゴーレムがびっしりと眠っていた廊下を奥まで行くと、砂に埋もれた階段だった。

 ここまでブラッダーの土監獄とやらで固まって石になっていた。


 ブラッダー「この上を登れば行けるようですね」

 ゼラ「随分狭くないですかこの螺旋階段らせんかいだん

 彼は背後の巨体を見てそう言った。


 レックス「下は全てが、上もほぼ、砂で埋まっておりまスな」

 オフィーキュス「……ま、またゴーレムが、潜んでいるのでシょうか」


 クリオス「下には何があるんだろ?」

 ベル「なんだろねー?」


 ……。


 ゼラ「やだやだ、やめてったら。想像するのも嫌だからね?」


 この上下のぐるぐるしたらせん階段とやらの中央の壁、“中が空洞”だな。


 竪穴のようなものなのだろうか。


 ブラッダー「まぁ、見てみましょう……」


 彼が手を振ると、石や砂がどんどん柔らかく、溶けるように流れ出して足元に広がった。

 ザァーーーーッ。

 上への階段部分のものだけを。


 彼の魔力は、減っているようで減ってないな?

 何故だろう、集中してみると、やはり、彼の足元から魔力が巡って昇って来ている。


 やはり、彼は地面から魔力を集めているみたいだ。

 どうやってるんだろう?


 しかし、魔法使いは頼りになるな。

 土魔法も学んでみたいものだ。


 今は風球をなるべく作り続けよう。水も。


 そして、見る間に上の階段が現れた。


 バキバキパキバキッ!

 そして、下りの砂に埋まる階段を更に埋めようとするかのように集めて、一気に石にして固めて封鎖した。


 レックス「?」

 ゼラ「ブラッダーさん?」


「この下り階段、ゴーレムで埋め尽くされてるようでしたんで、蓋しときました、ね、ルーナさん」

 皆「「!」」 クリオス「え!」


「うむ、多分だが、石だらけだったように感じた」


 レックス「ゴーレム共でスかっ」

 クリオス「ひい!」


 知らなければ別にだが、知ると怖いものな。

「大丈夫だ、もう出てこない」


 ブラッダー「……ええ、そういうことですよね」


 多分。


 ゼラ「くわばらくわばらってやつだよもぅ」

 レックス「くわばら?」

「あ、迷宮で会った奴がよく言ってたんすよ」


 ……桑、原?

 何だ?


 ふむ、実は更に下に、“大きな石”がゴロゴロと埋まっているのは言わないでおこう。


 皆で一人ずつ狭い階段を上った。

 隠し部屋が近いらしい。

 もしかしたら、真ん中の竪穴をモードたちは縄等で昇ったのかもしれない。


 しかし、大量の蜘蛛ゴーレムはなでここにあったのだろうな?

 昔に何があったんだろう。


 ブラッダー「この階段を上り乗り切れば、隠し部屋にたどり着きますよね、合流して、一旦そこで休みながら脱出の作戦を練りましょう」


 クリオス「コーギー姉ちゃん達が居るの?」


 オフィーキュス「あぁ、やっと皆の元へ戻れるのでスね……無事でシょうか……」

 レックス「……ダロムが居まス」


 しばらくぐるぐると砂まみれの螺旋階段を昇ると、扉があった。


 ガチャ。


 ブラッダー「またですか」

 扉を開けると、さっきのように封鎖された壁が塞いでいた。


 ……向こう側は部屋になってるようだな。

 隠し部屋のようだが……誰もいない?


 まだ隠し部屋じゃないのか?

 それに……。


 いや、更に奥の方か、別の部屋で、じっとしてるだけかもしれない。


 ブラッダー「あまり物音を立てたくないですね、僕がどかしましょう」

 ザアァァーーーッ。

 彼は呪文を詠唱し、壁を瞬く間に砂状に変化させ、封鎖を解いてくれた。


 ゼラ「な!?」

 レックス「なんと!?」

 一同「「ええ?」」


 隠し部屋らしき部屋の中には、腹に血をにじませ短剣の刺さった旅装の女、ヴェッサの死体が倒れているだけであった。


 読んでくださりありがとうございます。

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