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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
137/144

133話 抗う7 星

 ヴヴヴヴヴヴヴッ。


 最後の一本となった私達を照らし動けなくさせていた魔封じの光は、突然点滅したと思うと最後の力をしぼり出すかの様により強く輝き、部屋中を照らし始めた。


 そして、何かが起きてあたりが、遺跡中が多分揺れた。


 パラパラ……。

 強い振動で崩れかけの天井やぼろぼろになった部屋のあちこちから土埃が落ちた。


 ベル「ふぇ~?」

 ゼラ「うおっ! 何よこんな時に?」

 レックス「地震でシょうか?」


 ブラッダー「爆発の様な音と強い振動がしましたよね」


 クリオス「何? 怖いよ!」

 オフィーキュス「……大丈夫、でスよ、きっと大丈夫……」


 彼女は視線の先の、集中しているルーナを見た。

(この方はどこか違う、今まで見たエルフ族とも、他の誰とも……)


 ――やってみたいことがある。


 そう述べて、彼女はひたすら集中していた。


 奇妙な塊に両手をえ、足を組んで、汗をかきながら、必死に集中していた。


 魔法も体も封じられ、前よりも強くなった光の中で、這いずるように動き回って、魔力がなくなったという空の魔道具らしきそれに魔力を込めていた。

 パチッ。

 その証拠に塊がまた光り火花を出していたのだった。


 ズズズンッ……パラパラ……。


「……」

 難しい。

 アリエスタとやった時と全然違うぞ。


 魔封じのせいなのか、魔法使い相手じゃないからか。

 混ざり合った歪な塊となったからなのか。


 ズズズズ……。


 魔力が巡っていかず、とても循環じゅんかんし辛い。

 十を注ぐと、二ぐらいしか入っていかない。

 残りはどこにいったんだろう?


 塊の中の流れもぐちゃぐちゃで、ひっかかったり急だったりで、まさにいびつだ。


 ゴゴゴゴゴッ。


 少なくなっていた私の魔力は、更にみるみるとなくなって来ていた。

 私もモードのように気を失うのだろうか。

 魔力水を飲む時かもしれない。


 ガラアアアアンッ!!


 一同「「うわああっ!?」」


 ドガアアアンッ!

 天井が崩落して、大きな岩になってゼラのすぐ傍に落ちて砕けた。

「ひえっ、いっ、今のはやばかったっ」


 レックス「ルーナ様ァ!」

 クリオス「わああん!」

 オフィーキュス「……土神様、ど、どうか、お、お鎮まり下サい……」


 ブラッダー「こっちの方へ集まってください! 天井がましなほうですからっ ハイハイしてハイハイ!」


 ドオオン!


 クリオス「えぅ、だって動けないよお!」

 レックス「っ儂の手を掴めっ」


 ガランッ! ズウンッ! パラパラパラ……。


 元々崩れかけていた天井が崩壊し、大きな亀裂が広がっていた。


 ズズ……。


 皆「「~~~~!」」「…………?」


 ブラッダー「……収まったようですね?」


 ゼラ「何だったの今の!?」

 

 ベル「ねえ、あのキノコがさ~どっかで弾けたんじゃないの~?」

「ええ? あれこんな威力なの? ってんん!?」


 ブラッダー「皆さん上を見て下さいっ、ホラッ」

 ゼラ「ああ!? 星だ! 上! ほら! 天井!」

 レックス「おお!? 地上への亀裂が!?」

「誰か、煙筒とか持ってないですか? あの大きさなら――」


 パチパチッ、ジジッ。


 魔力が溜まった!

 目を開けると、汗びっしょりだ。


「ふぅーっ、はぁ、はぁ」

 塊がちゃんと柱に向いているか、最後にもう一度確かめる。

 念のため、皆から離れて魔力譲渡をしていた。


 更には、塊と私の間に、真っ二つになっているオークの死骸を引き寄せておいた、そこに隠れるようにしながら手を添え魔道具を使ってみる。


 念には念をと、誰かが言っていたからな、線に捕まり、柱と私の体の一部を入れ替えられては困るぞ。


「やるぞ! (“入れ替え”ろ!)」

 ゼラ「え? あっ、まっ待ってルーナさん、僕心の準備が」


 レックス「下がってくだサいノーデント卿、伏セて!」

 ブラッダー「ご武運をルーナさん!」


 触れていてわかった。

 これは、初めて漁船を操れと言っているようなものだ。

 無茶を言うなだな。


 鞭とか槍とか色々の武器なら何故かできるが、他は全然だめだ。

 これもそうだ。


 魔力を注いだ瞬間、周りが突然ゆっくりになった。

 弾ける火花が樹の枝の様に広がるのがきれいだ。


 そして、その塊から、太く光る線が二本、飛び出して来た。


 最初の線はゆっくりの中を素早く柱へぶつかった。

 それは、そう考えていたからだろうか、すうっと行った。


 だが、二本目だ。


 これは、私に飛んで来た。

 早い。


 ゆっくりな中で魔封じの光もあって体が上手く動かない。

 魔力も。


 ならば、魔道具を止めるっ。

 なっ! 止まらないっ。


 止められない!

 線を操れない!


 盾にしてるオークの死骸を無視して、胸元へ線が来る。

 まっすぐの線じゃなくて歪に曲がった枝だから。


 いかんっ。


 だが……入れ替わる瞬間ならっ、胸当てのっ、身体のっ、表面だけをっ、肉の外側だけをっ、瞬時に飛びのいてっ、魔法薬を使えばっ!


 動け! ぐううううあああっ!!


 線が、彼女の首の根本に、金属らしき首飾りめがけて刺さろうと――。



 シュパッ!



 ヴヴヴヴヴツンッ! ……。


 ガラアアンッ!


 成功していた。

 魔封じの最後の柱が崩れ落ちたのだった。


 まるで、途中でダルマ落としの様に一部が消えたかのように。

 もしくは、柔らかな何かが急に入れ替わり、上部分がバランスを崩して倒れたかのように……。


 ベル「あれ~?」

 ゼラ「おお? おおおお!?」

 レックス「ぬお!?」

 ブラッダー「成功しましたよね!? 体が軽い!」


 クリオス「あれ? わぁっ! 軽い軽い!」

 オフィーキュス「あ、ああ、なん、て楽なんでシょうっ」


 ベル「わーっ、やったー! わっひゃーー!」

 ぶんぶん飛び回るベルに、大喜びする皆。


 ゼラ「ぶっ壊れやがった! やったぜえええ! 自由だああ!」

 レックス「うおおおお!」ビタンビタンッ。


 ベル「食べ物ー!」

 ボフッ。

 鞄の中にベルが飛び込んだ。


 ブラッダー「フフフ、あっ、隊長っ」

 彼はようやく倒れたモードの元へ駆け寄ることができた。


 ゼラ「やってくれましたねルーナさんっ」

 ベル「ルーナ! もぐもぐ、やったね! ルーナ?」


 ゼラ「おっとお! ルーナさんっ、ルーナさ――」

 ゆらりと崩れ落ちるルーナを、走り寄って抱き留めるゼラ。

 “逆巻く風に”額にかかった髪をのけて、そして目を見開いた。


「フーーッ……フーーッ」

 彼の目の前で、意識のない彼女が荒く呼吸をしていた。

 すぐ傍のオークの死骸に、魔法封じの柱の一部が四角くはまり込んでいるのも見えた。


 ヒュオオッ。

 パシャッ、パシュッ!

 辺りに風が吹き、辺りに水球が現れては消えていた。


 ゼラ「冷たっ、ま、まさか、や、やばくないこれ?」

 突然目の前に小さな水泡が弾けて、眼をまたたく。


 レックス「何でスか? ぬお!? ま、またか!」


 ベル「ルーナ? また寝ちゃったの?」


 皆走り寄った、が、オフィーキュスはクリオス少年を抱き留めて離れさせた。


 モードの状態を見ていたブラッダーも来る。

「はいはいルーナさんはまたどうしましたか? どれどれ……うーん、これは、やはり魔力干渉ですよね」


 ゼラ「なん、何て? 内なるルーナさんの野生が爆発するんじゃ?」

 レックス「す、少シ離れては? あ、危なげな気配が……」


 ブラッダー「ええ? 全く、何を言ってるんですか、さっきも変な感じでしたけど、モード師匠を守ってくれていたでしょう? “うちの隊長”そっくりですよね」


 レックス「隊長……あの“狂暴女”のことでスな?」


 ベル「ふーん?」

 彼女はまた、レックスの頭の上に落ち着いた。

 ルーナの鞄から干し肉を取り出したのか、かじりながら。


 ゼラ「え、ええ、いやでも、変な感じって言うか、オークロードを拳でぶっ飛ばしてましたけど……」

 ベル「そうそう! 炎をガオゥって消したのすごかったねー!」


 レックス「……柱も咆哮で壊れまシたな? う~ん、見事でス……流石ルーナ様」

 彼は少しおっかなびっくりしていたが、痛感して覚悟したのか、どっしりと彼女を抱くゼラのそばひざまずいた。

 ゼラ「あはは、うん、かっこよかったけど、ちょっと怖かったかな?」


 ブラッダー「まぁわからないでもないですよ? ただ、魔術士側から見て、今この子は魔力酔いとも呼ばれる、魔力使い過ぎの症状ですよね」

 レックス「?」

 ゼラ「はあ、魔力を使い果たしちゃって、魔法使いの卵がよくぶっ倒れる、あれですね?」


 ブラッダー「そうそれです、それでですねこの症状、“合わない属性”を酷使こくしするときにも大体なるんです」

 そう言ってブラッダーは現れては消える水球を指さした。

(まちょっとこの現象は妙ですけどね……)


 といってももう、収まり出てこなくなったが。

 ベル「なくなったね」


 オフィーキュス「? 合わない、属性……」

 ベル「水のことー?」


 レックス「? ルーナ様は、水使いでは?」

「風ー? さっきから使い出したよ? それのせー?」

 ゼラ「それもおかしな話だけどね、じゃ、じゃあ、そういうことですか?」


 ブラッダー「うーん、僕の見立てでは、この子は風に適性がありますよね」


 この時、彼は、下水道から帰還した際にセレナールから水魔法の呪文を伝授してもらった際にルーナの周りで起きた出来事を見ていなかった。


 シルフを唱えて起きた同様の現象を見てそう判断したが……。


 一同「「え?」」

 ゼラ「あれ? 風の魔術を使ったせいじゃないんですか?」

 ベル「てきせー? よくわかんない」


 レックス「ならば、ルーナ様は一体、何のソれだというのでスか」


 ブラッダー「さぁ? それは彼女の“親にでも”聞いてみないとですよね、こんな話をしてないで、脱出することにしましょう」

 パンパン。

 そう言って彼はルーナを屈み診た後、甲鎧をはたいて立ち上がった。


 この時、彼は彼女の異変と、その根源にかすかに気が付いていた。

 最も、魔法使いの素質が子に引き継がれることはよくあることであった。


 ゼラ「ええ? 知らないってそんなぁ!」

 ベル「ルーナー! 起きてーー! ご飯だよー!」

 彼女はぺしぺしとルーナのおでこを叩いた。

 レックス「!? ベル殿!」



 ガバッ!

 ゼラ「うおっ――」


「はっ!? ……」

 入れ替えは? どうなった? また意識を失ったのか?

 あぁ、入れ替わってないようだな。


 チャリ……。

 胸元を見ると、例の三又首飾りがきらめいていた。


 それは部屋の魔石灯の反射にしては色が妙で、僅かに違和感を感じさせた。

 ここら辺の肉を全部入れ替えられたのと思ったが、何か……“跳ね返した”ような気がする。


 いや、入れ替わったようだ。

 オークと、柱が壊れてる。

 崩れた柱はよくわからないが、オークの死骸の一部が、四角く魔封じの柱に入れ替わっていた。


 糞の塊も魔力がなくなり静かになっていた。


 体が軽いな。

 ギュッ、拳に力が入る。


 そして魔力の巡りがかなりおかしい。

 うぅ、気持ち悪い……。


 治れ治れ治れ……。

 魔法封じのせいみたいだが、“入れ替え”の時よりはるかに制御しやすい。


 はっ、そうだ! 皆は無事か!?

「? ……皆、どうした? 無事か?」


 気が付くと皆無事に動けるようで、集まって私を見ていた。


 ゼラ「ルーナさん、大丈夫ですか? 気持ち悪そうですけど」

 レックス「ルーナ様、ご苦労様でス」


 ブラッダー「わかりやすいですねぇ、ルーナさんて」

(あれ? 入れ替えの前後で、背中の斧の痣の感じが……もう、消えてかかってますよね)


 ベル「疲れた? ちょっと干し肉一緒に食べよう?」

 クリオス「お姉ちゃんありがとう!」

 オフィーキュス「ルーナ様、この度は有難うごザいまス」


「あぁ、皆よく頑張ったな、絶対に脱出しよう」


 クリオス「うんっ」

 ゼラ「勿論ですよルーナさん!」

 レックス「ハッ!」


 ブラッダー「ルーナさん、“煙筒”って、持ってません? 天井が崩れたんで救援を呼びたいんですよね」


 ゼラ「あ、ホントだ」

 レックス「湖の中ではなかったのでスな」


「なに?」


 ふわりと風が通った。

 皆は森の木々の匂いを確かに嗅いだ。


 夜の闇の中に浮かぶ月の光が、かすかに彼女に降り注いで、淡く彼女を輝かせた。

 一瞬、錯覚の様に皆がそれを見た気がした。


「ああ」

 ……くん……大勢、近くまで来てる気がする、何故かはわからないが。


 聞いたことのある音がする……何か、走る様な音……馬? 衛兵?

 何でだろうか。


 なんだか風が感覚を手伝ってくれているような感じだ。

 魔封じが一気に消えたせいか?


 そう言う彼女の傍に、水球が当たり前のように静かに浮かび、風に揺れていた。



 鞄から道具屋で買った煙筒を出してブラッダーに渡すと、すぐさま彼は赤い部分を床にこすりつけるようにした。


 ッボシュウウウウ。

 筒から赤い煙が瞬く間に噴き出た。


 ベル「わぁーっ」


 ブラッダー「はいっ、レックスさん、いやっルーナさん、亀裂の外に思い切り投げてください」

「? よし、わかった」


 ベル「けほっけほっ!」

 シュウウウウウウウウ。


 天井の亀裂に向けて、思い切り振りかぶった。

 グググッ。


 ふんっ!


 ――ウウッ……。

 煙筒が天井に開いた亀裂からのぞく星空へと煙の線を描きながら遠くに消えていった。


 一同「「おおっ」」


 風に吹かれ煙の線が崩れていく……。


 風……。


(シルフ)

 優しく呼びかけるように唱える。

 ヒュオ~。


 できたぞ、風球だ。


 魔力越しに見えるが、それが無ければ見えないかもしれない。

 しかし、かなり作りやすいな、初めてなんだが……これも水球を作り続けていた練習の成果だな、どんどん練習しよう。


 ベラ「飛んでった―!」

 ゼラ「一気に見えなくなっちゃったよ」

 レックス「お見事でス」

 ブラッダー「うんうん、いい肩してますよね」


「投擲なら任せろ」


 オフィーキュス「こ、これで街から助けが来るのでシょうか?」

 クリオス「そうなの?」


 やはり、皆には見えてないみたいだな。

 一緒に水球も浮かべているが、もはや慣れたものなのか、皆が見ることはない。

 というか、天井を見ている。


 ベル「ねぇ、これでアリとかガストン達が来んの?」

 ブラッダー「(蟻?)ベルちゃん、見ててください、そろそろ……」


 ――パアンッ! アァァァァンンンン……。


 ベル「わーっ、 明るくなった! 落っこちてるよ!」


 クリオス「どこ? わっ……あっホントだ!」

 立っている場所からは見え辛いようで、ゼラがどいて、レックスが持ち上げて見せてくれた。


 亀裂の向こうの空で、大きな音がした。

 筒が弾けた音か。


 そしてこだまする様に音を広げて、その後真っ赤な光が瞬きながら、ゆっくり赤い煙を出しながら落ちていくのが見えた。


 うん? 光の手前を、何か黒い影が横切ったな?

 遠すぎてよくわからないが、すごく小さかった、鳥か?


 ゼラ「ええ? ものすごく高くで光ってません? すごいなルーナさん」

 レックス「あの高サなら恐らく、港からも見えてまスゾ」


 ブラッダー「あれだけ合図すれば、嫌でも誰かここに来るでしょうね」

「必ず来る」


 ベル「ねー、こっから出られない?」

 彼女は一人なら飛んで出て行けるが、そんなことは意味がなかった。


 レックス「……」

 彼は巨体で無理だろうな、それに怪我人も、隠れているダロムと囚人達も探さねば。


 いや、無理やり壊して、さっさと出た方が良いか?


 少年と蛇女だけでも担いで……待て、外は奥地だ。危険な魔物が居る筈……。


 ゼラ「う~ん、ベルちゃんだけでも逃がします?」

「そんなのや!」

 そう言って私のほおに抱き着いた。

 ペシイッ!

「むゅっ」

 ちょっと勢いがついていて痛かった、首も。


 後で他の者には同じようにするなと注意しておかなければ。

 ゼラ「なぁっ!? (なんてかわいい声が今ルーナさんから最高かよっ!)」


 レックス「……ここは奥地の、既に夜分でスから、大変危険でスゾ」

 やはりか。


 ベル「やぶん?」

 ゼラ「夜ってことだからね」


 ブラッダー「ふむ、それは隠し部屋で合流してから考えましょうかね、まずはできることに集中しましょう」

 ゼラ「あ、倉庫の? 場所分るかな?」


 ほう。


 読んでくださりありがとうございます。

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