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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
129/134

125話 計画

 ヴヴヴヴ……。

 皆魔封じで身動き取れない中、敵達が集まって来ていた。


 魔人、帝国人、髭、そして何故か神父と、最後に盗賊が現れた。


 リゾット「あ、どうも親分、お邪魔します、さっきぶりですね? スライムは順調ですからね、たっぷりブツも頂きやしたし、へへへへ」

 始めて見る感じだな?

 へこへこしてる。


 ベル「リゾットだ、変なの」

 魔封じで潰れた格好で彼女もそう言う。


 黒衣「その親分と言うのは不快だからやめろと言った筈だが?」

「あっ、いや、へへへ、すいません……黒頭巾様」

 痩せ魔族とかも言ってたな?


 あんな奴より隣にいる神父だ。


 ブラッダー「ありゃりゃ、これは予想外ですよね」

 流石に彼も驚きを隠せていないな。


 ゼラ「そんなバカな!!」

 レックス「ま、まサか、神父様!? 嘘だ!」


 オフィーキュス「シュルゥ!? ……ゲホッ! ゲホゲホッ……」

 クリオス「……え……神父様?」


 マイケル神父「おや、羊族の少年……君は、クリオス君ですか? 受け入れを準備していた所で行方知れずだったのですが、こんなところに……」

 うん?


 受け入れ?

 少年は教会と関係があるのだろうか?

 彼に少しある魔力と関係してるかもしれない。


 リゾット「そんなことよりこいつら――」

 神父「ちょっとあなたは黙っててください、邪魔です」

「んなっ!?」


 ……そうだ、猫屋のフィンが草の匂い、と言っていたな。

 盗賊拠点を出入りする男の正体はその臭いがする彼に間違いなかったようだ。


 本当にこの神父も裏切っていたのか?

 そんな感じではなかった気がするのだが。


 感じる気配では神父はこの状況に怒っているようだが、魔封じのせいであまり感覚が効かない。


 マイケル神父「一体どういうことですかな? 外まで聞こえていて少し耳にしましたが、湖の汚染と言い、民や衛兵の襲撃と言い、あまりの暴虐は、私はこれ以上協力はできかねませんよ!?」


 神父は黒衣の男を睨んでそう言った。


 何だ? 仲間じゃないのか?


 シュトレイ「貴様は黙って従っていればよいのだ水教徒」

 ヴァイン「裏切もんのクセにごちゃごちゃうるせえ爺だな」

 帝国の連中とは仲が悪いようだな。


 というか、こいつらと仲の良い者なんて存在するのだろうか。


 ギャレス「そ、そうだ! 儂も疑問があるぞ! オークの軍勢で攻め込むのではなかったのか!? 一体どうなっておるのだ黒頭巾殿!」


 べらべらとリゾットの様に喋ったな。


 オークの軍勢か、奴も水槽のとこでそう言っていたな。


 リコア「は? 何? 攻め込む? ちょっと、領主の暗殺で終わりなんじゃないの? どういうことよ?」

 ふむ?

 急に彼女も焦り始めたな。


 それと、暗殺とはっきり言ったぞ。


 ゼラ「暗殺って、そんな、嘘だリコアちゃん……」

 オークの軍団とやらより別の事にゼラが衝撃を受けているな?。


 レックス「オークの軍!?」

 ブラッダー「……あー、オークの目撃情報が増えていたのは、そういうわけですか」

 オフィーキュス「な、なんてことでシょう……」

 クリオス「ええ!?」


 シュトレイ「ごちゃごちゃと文句ばかり言いおってからに今更」


 ヴァイン「ねぇ? “王国人”ってやっぱどっか異常な民族なんですよ、てんでおつむが弱いんだから」

 お前が言うのか?


 黒衣「……それは吾輩の方が問いたいところだ、貴様ら、どうやらそれぞれこの鼠共を知っておるのか? 特に盗賊、貴様に問おう」

 キシッ。

 奴はいつの間にか現れた背の高い椅子に腰かけ変異導球とやらを眺めながらそう言った。


 周りにあんな椅子はなかった。

 やはりあいつも魔法袋を持っているようだな。


 リゾット「うぇ!? 俺すか!? あ、いや! 違いますよ!? 俺は言われた通り、街道の連中を襲ってただけですから、へへへ、オークの馬鹿共がへましたもんで」

 何だか言い訳じみているが、知ってると言ったな。


 ゼラ「クソ野郎っ」


 そして、戸口でのぞき込んでいる、集まったオーク達がブゥブゥと不満そうに文句を言っている。


「オーク達は戦った、お前は逃げただろ」

 彼らの味方をしてるわけではないが、戦った相手の名誉は守ろう。


 リゾット「っ! てめえ! 黙ってろブス!」


 ゼラ「! 今なんつった帽子野郎! ルーナさんは美人だろこのボケがぁ!」

 ブラッダー「ブスはないでしょう、どういう“審美眼”でしょうね」

「アリエスタの杖を返せこのボケ」

 ベル「そうだー、ボケー」


 レックス「!? ルーナ様?」

 まさかのルーナまで真似して乗っかったことに彼は驚くのだった。


 リゾット「なっ!?」


 ブラッダー「ちょっと、抑えてくださいゼラ君、ルーナさんもしいっ、ですよ」


 ギャレス「……このボケめがおめおめと敗れ逃げたのをその小娘が追って、森の拠点の一つが見つかり、あげく潰れたのですぞ! 儂がわざわざ動いてもみ消したのだ! 処刑だ処刑!」


 リゾット「くっ、何だよっ、ボケボケ言いやがって……」


 ゼラ「やっぱり……“押収品”がごっそり消えたのも、そういうことかっ」

 何?

 盗賊アジトの戦利品のことか?


 リコア「あたしも働いたわぁ、やれやれよねぇ」


 ゼラ「リコアちゃん……」


 リゾット「いやだって、強敵は帝国の騎士様の役割じゃないですかぁ!? だから森に騎士団を――『ボオウッ!』――ひゃあっちいい!?」

 シュトレイが突然、手の平から炎を噴き出した。


 皆「「?」」


 まるで炉から漏れ出る炎のように、リゾットに向けて燃え上がってすぐ消えたが、熱がここまで感じた。

 奴は帽子を落としかけて、顔は一瞬で汗だくになった。


 今、僅かに聞こえたが、“森に騎士団”と言いかけたな。


 襲撃した帝国騎士団とやらが、森に居るのか?

 こいつらの計画も段々わかってきたな。


 シュトレイ「その臭い口を閉じろ! ごろつきめがっ!」

 ばっとリゾットが口を手で塞いだ。


 ブラッダー(ふ~ん)

 ゼラ(騎士団? マジかよ……)


 黒衣「そんなくだらんいち拠点の話ではない。貴様がこそこそと何かしていた、街の下水道での話だ……帝国人共以外も全員居ったようだな?」

 あぁ、そっちか、これは、リゾットが隠れてやっていたことがバレそうだな。


 何故知っているんだろうか。

 魔法か、セレナールのような使い魔でもいるのだろうか。


 そして、ここから脱する機会がなさそうだ。

 ここで皆殺されるようなことを言っていたが。


 外の拠点の時の、魔法陣の罠と違い、一向に柱の力が弱まらない。

 なんとかして破壊しなければ。


 バチッ……ジジッ……。

 さっきからレックスの背の中何か、おそらく、あの魔力塊だろうが、変な音を出しているな。


 リコア「……あたしは知らなぁい」

 シュトレイ「ほう? 聞いておりませんなそれは」


 チャキッ。

 ヴァイン「……おい、どういうことだぁ? 腐れ盗賊シーフ


 リゾット「ひっ」


 ギャレス「ああ、あの臭い、ここの前の拠点の話か? 崩落など起こしよって、いらん仕事が増えたわっ!」


 ゼラ「くそ、のうのうと味方の振りして検分について来てたな貴様っ」


 マイケル神父「こ奴が勝手に変異丸を使用し、スライムで儲けていた件ですな」

 あ。


 リゾット「あっ! この爺ってめえどっちの味方だぁ!!」

 神父がバラしたな。


 マイケル「私は“今は”あなた方に協力していますが、永遠に水神様の僕ですよ。これまでも、これからも……」

 そう言って神父はこちらを一瞬見たな。


 うん?

 意味が解らん。


 シュトレイ「ハッ! 女々しい水神の信徒めが、炎神様の業火に焼き尽くされるがよい」


 レックス「めめっ――シュ~ッ水神様を侮辱スるのか火教徒共!」


 オフィーキュス「シュ~ッ! ……なんて不敬なっ……と、取り消シなサいっ、帝国、人っ」

 こっちも怒り出したな、蛇女もクリオス少年も睨んでいるぞ。

 ゼラもあまり面白くなさそうな顔をしているな。

 皆水神が好きらしい。


 ヴァイン「ははっ、あのでかトカゲなんで立ってんだ? 動けてねえじゃねえか、“でくのぼう”かよ」

 商人宿の時のお前だろう。

 それに何だデクノボーとは。


 ブラッダーは天井が気になるのか、あまり目立たないように僅かに見上げて鼻をヒクつかせていた。

 何か振動でも感じているのか?

 私は照射のせいで、感覚が鈍くなっていてわからない。


 マイケル「なんですと? ……大海の大海原の前で、くすぶりかき消される矮小な“焚火教”如きが、パチパチとうるさいですね」

 彼も言い返したな。

 水教会を馬鹿にされるのは嫌らしい。


 ヴァイン「何だぁ? 爺い」

 またキレたぞ、殺意が判りやすい奴だ。

 シュトレイ「ほう? その身が焦げて灰になるまで感じて見るか?」


 帝国人達がキレたな。

 マイケルと敵同士で喧嘩のようになっている。


 どうやら、水と火の教会はお互い仲が良くないようだな?


 リコアなんて連中の話などさっきからまるで無視して、壊れた機材や実験の道具を拾って眺めたり、踏み潰したりしていた。


 あっ、金らしき素材を見つけたのか、こっそりと、素早く懐に仕舞ったな。

 皆の視線をうまく躱してだ。

 私でさえ、仕草でしか感じておらず、実際に仕舞ったのかは見れていない。


 黒衣「やめよ人間共……ふむ、“昼前のあの爆発”は、その時の戦いの余波か?」

 リゾット「え? は、はい」


「勝手に使用した変異丸の試験結果についてはおいおい聞くとしよう……それで、この混血の娘とその他について、他の者は何か言うことは?」

 リゾット「うっ」


 逃れられないようだな? さっきも盗んでいた変異丸や、濃縮毒や酸は没収されるかもしれないな。

 待て、奴はどこに隠すと言っていた?


 シュトレイは口を閉じている。

 昨日会っただろう?

 ヴァイン「……俺達なら、昨晩食事の時に会っただけですけどね」


 黒衣の男が他の連中に私達の事を知る理由を話せと促すので、奴が答えた。

 会ったというか、戦ったというか。


 シュトレイ「ハァ……ケイラッドの奴めが邪魔に入りましたが、そのエルフの娘、その蒸気兵装のヴァインと、なまくら剣で斬り合いましたな」


 ヴァイン「あそうだっ! 勝負の最中にテーブルを投げつけてきた、“ベルとか言う大女”はどこに居やがる!?」

 何言ってるんだこいつは?

 大女?


 ……あの時気絶して、起きた後にでも、卓、テーブルを投げたベルのことを聞きつけたのか?

 もしかしたら小妖精だと聞いて、信じなかったのかもしれない。


 ベル(……え? あたし? あたしが、大女~? 変なの)


 動けず倒れている彼女が少し反応したが、声が小さい。

 長いこと倒れていて辛そうだ。


 黒衣「……ほう、我輩が少し手を付けたその兵装とか? ふむ……」

 なに、こいつがいじった鎧だったのか?


「このスチームアーマー、なんだか使い勝手が悪いな、すぐ動かなくなるしよ」

 シュトレイ「生意気言うなヴァイン!」

 すちーむあーまー?


 黒衣「……(妙だな、蒸気兵装が過負荷によって停止状態となる程斬り結ぶというのは、対ケイラッド戦を想定した上限値、限界値であり、通常戦闘時にそれは起こりえない筈だ)」

 ブツブツ……。


 奴が私を見て顎髭を触って思考に及んでいる、よく聞こえないな。なんだ?

 私達の近くにある、首無しの肉屋の死骸も眺めているな。


 ゼラ「おい魔族! ルーナさんをジロジロ見るな! いやらしい!」

 レックス「……ノーデント様、落ち着いて下サい」


 黒衣「……? うん? ノーデント? そこの人間、いや混ざり者は貴族なのか」


 シュトレイ「ええ、旧王諸国の“十二貴族家”とやらの一派ですな。水蛇の――スイレーン領主ケイラッド・マーチと同様の」

 ?


 リゾット「それ調べたのは俺ですからね」

 ヴァイン「うるせえ下っ端」


 あぁ、そう言えばケイラッドはこの街の長で貴族でもあったな、そう話してる人が確か言っていた。

 他にも十個貴族の家があるのか?


 ギャレス「こ奴の素性は少しは槍使いができるだけのただの孤児で、しかも蜥蜴とのおぞましい混血。養子に過ぎず、ただの肩書以外の何者でもありませんなっ」


 リゾット「へへ、皆そう陰口言ってますぜっ」

 ゼラ「なんだと!」


 レックスの喉が低い音を立てて鳴っている。彼も怒ってるな。


 シュトレイ「ハッ! 由緒正しき帝国貴族とは、格が違いますな」

 ヴァイン「ゴミ貴族ってこった」


 レックス「クズ共、旧王家とケイラッド様を愚弄スるか! なんたる侮辱か!」

 旧王家? 十二貴族家の別の言い方だろうか。


 ゼラ「……流石にちょっとカチンときちゃうね?」

 ブラッダー「……どっちが古い貴族かは歴史で証明されてるんですけどね」


 ふむ、その言い方だと、ゼラの貴族の方が古いようだな、旧王諸国とやらと関係してるのだろうか、古王だったか。


 黒衣「(下等種族が貴族だと? 笑えん冗談だな)……ふむ、その人間の瞳と目元の変異はその血によるものか(エルフはまた違うようだが)……それで? 他の者は、何故こ奴を知ってる」


 奴はそう言ってゼラを見つめた後、私を見て話を変えた。


 神父「はて、私は下水道で出会ったばかりでよく知りませんな?」

 む、セレナールとのことや、毒を治療したことは言わないのか?


 ギャレス「この娘は“流れの”冒険者で、下水道の地下底で偶然にも迷宮門を発見したのですぞ、現在我々衛兵団が調査中ですな」


 ゼラ「あんたはもう衛兵なんかじゃない!」


 シュトレイ「何!? 何だそれは?」

 ヴァイン「迷宮門ラビリンスゲートだぁ? ハッ、こんな魚臭ぇド田舎に?」

 らびりんすげーと。


 レックス「シュウゥーー何だと!? ぶち殺すゾ! クソガキ!」

 ヴァイン「うるせぇんだよ蜥蜴リザード野郎! ねえさっさとぶち殺しませんこいつら?」

 シュトレイ「ええい黙ってろヴァインっ! いちいち引っ掻き回すな!」


 黒衣「あぁ、“アレ”を見つけたのか? 随分目ざといな?」


 一同「「なっ!?」」


 何っ、何故知っているんだ?


 そう言って奴は、原因だと察したようでリゾットを睨んている。

「!? エ、エヘヘヘ……」

 彼が爆破させたから見つかったようなものだからな。

 にらまれて畏縮いしゅくしている。

 

 ギャレス「なっ!? め、迷宮の存在を……ご存じでおりましたのか?」


 リコア「あらびっくりぃ……」


 オフィーキュス「迷宮が、この、街に?」


 マイケル神父 (なんと、ルーナ殿が発見者ではなかったのですか……)


 シュトレイ「……説明してもらおうか、黒頭巾殿」


 皆それぞれ驚いてるな。

 やはりすごいことなんだな、迷宮とは。


 黒衣「やれやれ、質問してるのはこっちなのだが、まぁいいだろう……」

 キシ。

 呑気に座ってるのは奴だけだな。


「この湖とその周辺全体や地下に張り巡らされた古代遺跡と、施設されておる素晴らしい水の浄化機構、そして我が研究室のこの罠、今も動いておる魔封これの動力源、それがどこから来ていると思っておる? 魔力は無限にあるわけではないぞ下等種族共よ」


 何だと。


 ヴァイン「はぁ? ……だめだ。全然ちんぷんかんぷんだ」

 マイケル神父「っ!?」


 レックス「!? ジョ、浄化の仕掛けもだと? ……」

 ブラッダー「へえ~、勉強になりますよね」


 この罠、迷宮にある魔力か何かから、力を得ているのか?

 だから、門が休眠中だったのだろうか?


 シュトレイ「あぁ、迷宮からエネルギーを得ているのですかな? 成程……帝国でも研究されている分野ですな」

 えねるぎー? 魔力のことだろうか、よくわからんが納得したようだな。


 黒衣「フンッ、貴様ら下等種族にはもったいない話だな……しかし、“想定値より出力が低い”のが解せぬ、“別の出口”から漏れ出ている可能性等が考えられるが……ブツブツ」


 ヴァイン(あぁ? 下等下等といちいちイラつく野郎だな)

 奴の舌打ちが聞こえてきそうだが、してない。魔人に攻撃しそうな顔をしてる。


 リゾット「お宝ざっくざくってだけじゃなくて?」

 ギャレス「よくわかりませぬな?」


 マイケル神父「……迷宮門の事を知っていて、そして迷宮から魔力を何かしらの手段で引き込み、この罠が動いていると?」

 神父がまとめたぞ。


 黒衣の男「……」

 奴は変異導球を自慢げに上下に浮かばせ遊ばせながら邪悪に笑った。

 何か、まだありそうだな?


 それに、別の出口があるかもしれないのか? いずれにせよ休眠中で入れないんだが。

 なんにせよ、こいつはあの迷宮をずっと利用していたようだな。

 帝国も同じようなことを調べてると。


 私とベルが第一発見者だと思ってたんだが……。

 ベル(えー? あたし達が最初に見っけたんじゃなかったんだぁ……)


 ブラッダー「は~、今日は退屈しない日ですよね」

 彼は呑気なものだな。


 魔法も封じられて不安はないのだろうか?

 球の時は寝てたし、凄いやつだ。


 モードに学んで、努めて冷静になっているかもしれない。


 私も突破口を探そう。


 黒衣「ふむ、なかなか邪魔をしてくれているようだな? まぁ、貴様程度の剣士はどうでもよい(やはり最後は王朝のエルフ共に行きつくわけか……人間共を帝国を利用し潰し合わせた後の最後になるが)」


 むぅ。

 私達を知る理由を大体聞き終わったようだ。


 レックス「なんだと! ルーナ様を侮辱スるな!」

 ゼラ「そうだ! 強いんだぞ!」


 シュトレイ「黒頭巾殿、先程よりその手に浮かばせている魔道具は何ですかな? 異常なエネルギーを感じますが」

 エネルギーとはやはり魔力の事か。

 それとも奴が言ってたエーテルだろうか。


 黒衣「そうそう、こいつだこいつ。捕まえた鼠共の事よりも、本題に移ろう。計画を早めるぞ、貴様らも各々の作戦を速やかに実行するのだ」


 奴は変異導球を改めて見て、そう言った。


 シュトレイ「……まだ計画は先では?」


 ギャレス「かしこまった。実行に移すとしましょう」

 髭はそう言って、同僚であったブラッダーとゼラを邪悪な笑顔で見た。

 団長の、ケイラッドを殺すつもりなのか?

 できるとは思えないが。

 リコア「別にぃ? 報酬はもらってるしぃ」


 マイケル神父「……」

 リゾット「えっ、あっ、あのまっ、まだ全然スライムを増やせてないんですが……」


 黒衣「ふん、“これ”さえあれば、スライムの増減はカバーできる、全ては結局、エネルギー量なのだよ」

 変異導球を浮かばせながら、奴は溶けたスライムの残骸を見た。


 スライムと何か関係してるのか?


 ゼラ「くっ絶対にできっこないさ!」

 ブラッダー「計画を立てて“できる”という御方ではありませんがね?」

 レックス「ソうだ! きっと貴様ら全員、返討ちにシて下サる!」

 蛇のオフィーキュス「あぁ、スイレーンの、英雄様を、ソんなっ」

 クリオス少年「グスッ……」


 ベル(なんの話ー?)

「ケイラッドを倒すんだそうだ」

(あー、あの強そうなおっちゃんかー……無理じゃないー?)


 ギャレスの眉間に血管が浮き出て真っ赤になってるな。


 黒衣「“オークの長”にもしっかり伝達して急がせておけ、さもなくば奥地の山ごと、破壊し尽くしてくれるわ」

 奥地の山……。


 リゾット「わ、わかりやしたおやぶ――黒頭巾様」


 リコア「……あたしぃ、オークの軍団なんてちょっとごめんなんだけどぉ?」

 ?

 反対みたいだな。


 ……彼女もこの街に住んでるからか?


 マイケル神父「そうです! 魔物を入れる等、許さる事ではありません!」

 神父はどうも、敵側じゃない気がするな。


 ヴァイン「あ~うるっせえ!!」


 ギャレス「心配するな傭兵、制圧するのは奴の屋敷と詰め所に、周辺の金持ち共だけだ、“貴様の臭いねぐら”なんぞ誰も目もくれておらぬわっ」

 リコア「ふぅん、ならいいんですけどぉ……」

 臭い? ……貧民地区だろうか?


 シュトレイ「? おい衛兵、どこで拾って来たのだ、その獣人の傭兵は」


 ギャレス「言うのも嫌ですが、貧民地区ですな」

 リゾット「お、俺が手引きしたんすよっ」


 ヴァイン「うわっ、スラムの奴かよ!? 汚ったねえなぁ、変な病気移すんじゃねえぞ? 叩っ斬るからな! ……それと、いちいちアピールしてんじゃねえぞ三下ぁ!」

 すらむ? あぴいる?


 リコア「あらぁ? ……はぁい、気を付けまぁ~す」

 む、鋭い殺気が溢れたが、一瞬で消えたな。


 だが私は黙ってられないな、その地区には小さな知り合いもいるんだ。

「おいヴァイン、その汚い口をいい加減閉じろ、臭いし、ここまで臭って来てる。できないならこの剣で塞いでやるからさっさとかかって来い」


 リゾットやゼラ「「ぷっ……」」


 ヴァイン「ってめえええええ!!」

 ボオオウッ!

 ぶち切れて魔法剣を燃やして突っ込んで来たな? また倒れるぞ?


 同じ場所に倒れるようなら、かろうじて剣を投げたら届くから、本当に塞げるかもな。


 その時だ、黒衣がリゾットに目配せした。

 盗賊が外套から蒸気銃らしきものを抜いた――。


 ボオオオッ!!


 ヴァイン「ひっ!」

 急にヴァインの目の前に炎の壁が出現して、慌ててこっちの魔封じの中に突っ込んで来る暴挙を止めた。


 これはシュトレイの放った火魔術だな。

 奴の手の仕草とあふれ出た魔力でよくわかる。


 早く、そして強力な熱だった。

 その場に立っていたらすぐに焼け死ぬな。


 ギャレス「なんだ急に! 鎧がっ!? 熱っ」

 そして、驚くヴァインより離れたギャレスの方が汗だくだ。


 ヴァイン「チッ! わーってますよ」

 冷静になったな。


 何故こいつは目の前の炎の壁の熱さが平気なんだろうか?


 黒衣「ふむ、その熱量にしては、中々効率の良い魔術だな?」


 シュトレイ「……畏まった黒頭巾殿、こちらの仕掛けは設置済みで、後は作動させるだけですな。おい衛兵と傭兵、計画の成否に関わらず“起動はする”から、“巻き込まれて死んでも”文句は言うなよ」


 何事もなかったようにヴァインを無視して話を続けたな。

 いい加減注意するのが疲れたのかもしれない。


 リゾットは放とうとしていた蒸気銃を仕舞った。

 シュトレイが止めなかったら、リゾットはヴァインを撃ってたのだろうか?


 設置済み、作動させるだけ……何を?

 どこに?

 ケイラッドの暗殺で何か仕掛けているのか。


 リゾット「はぁ、オークもスライムも増えてんだか減ってんだか、大変な役回りだぜ……」

 恨めしそうに睨まれたな。

 お前のせいでこっちの方が大変なんだぞ。


 マイケル神父「……これ以上の汚染は看過できませんな! 湖が駄目になれば、占領したとしても住めませんよ!」


 黒衣「“これ”ですべては解決する手はずになっておる、今の汚染は一時的なものだ、心配する必要はない、信徒共ごと皆殺しにされたくなくば、黙って従うのだ」

 ふむ?

 そう言って奴は変異導球を回転させて見せた。どういうことだ。


 それに神父は脅されているのか?


 マイケル神父「……」


 黒衣「フン、疑っておるのか? 我輩だってスライム混じりの毒水など飲む気はない。この地は我ら魔族が地上進出した際の重要な国土になるのだからな(貴様ら下等種族は全て奴隷にしてくれよう、まぁ、ほとんどオーク共に食い殺されるだろうがな)」


 僅かに聞こえたぞ、奴隷? オークに食われる? それに、地上進出?


 魔族は、地中に住んでるのか?


 シュトレイ「……そういう約束の同盟でしたな」

 ヴァイン「……」

 同盟?


 しかし、面白くなさそうな顔をしてるな帝国人達は。

 魔族と仲良しと言うわけではないようだ……。


 レックス「己、魔族めが!!」

 ゼラ「くっ、団長が黙ってないからな!」


 ブラッダー「すいませんが、もう少し計画について教えてくれませんかね? どうせ殺すんでしょう?」

 そうだな、もうちょっと説明してほしいな。


 黒衣「何故わざわざ死にゆく鼠にそうする必要がある? 我輩は愛玩動物等を飼って話しかけるような趣味は持ち合わせておらん」


 ブラッダーが肩をすくめた。

 魔封じでロクに動けてないからほんの僅かにだったが。


 ヴァイン「へっそうだそうだ、これから死ぬ奴に話す馬鹿がいるかよ? それともお前ら、ここから生きて帰れると本当に思ってんのか?」


 クリオス「ひぃっ」

 オフィーキュス「だ、大丈夫でスよ、クリオス……」


 ブラッダー「おや、残念ですよね」


「思ってるぞ? 必ず抜け出し貴様ら全員を倒す。それに馬鹿はお前だろうヴァイン」


 レックス「ソうだ!」

 ゼラ「レグトス王国を舐めんじゃねえぞ!」

 ベル(そーだよー)


 ヴァイン「! っぐぎぎぎぎっ!!」

 お、耐えたぞ。


 黒衣「フンッ、どうでもいいが、我輩の発明した罠からは絶対に逃れられんぞ? では諸君、我輩は儀式の準備に取り掛かる。各自、事を進めよ」


 ボッ。


 奴から黒炎が現れ始めた。

 転移か?

 あれも闇魔術なんだろうか。


 シュトレイ「むっ頭巾殿、こ奴らの処遇しょぐう如何いかがするのだ?」


 黒衣「うん? 貴重な材料だからな、ちゃんと“取って置いて”おればよい」


 ヴァイン「……死んでても?」

 にやりと笑って私達を見た。

 クリオス「ひいっ!?」


 黒衣「まぁ……新鮮な状態が望ましいが、“腐食を抑えられる”のならば、どちらでも構わん、どうでもいい」

 奴はこちらを見もせず、転移魔法陣を足元に出している。


 ボボボボ……。


 転移の準備が終わったのか、最後にこちらを見た。


 黒衣「ハーフエルフの小娘よ、貴様のおかげで変異導球が充填され、計画が早まった。一応、礼を言っておこう。先ほどのたわむれも中々有意義だったしな」

 たわむれ? 随分本気になっていたようだが?


「必ず貴様の企みを潰すぞ」

 ベル「ベ、ベーっ、だぁっ」


 どうやら、ベイリ村やスイレーンだけの話ではないようだな。


 黒衣「フンッ、愚かな下等種族だ。その“擾乱波動じょうらんはどう”に生体は耐えることができない。そういう仕組みなのだよ、生きている限りはな? では死体になってから再会してやろう、さらばだ、ハッハッハッハッハッ」


 よくわからんが、多少は動けるし、四つの柱を三つに減らせば、どうだろうな?


 ヒュッ――カラァンッ。

 投げた短剣が力なく床に落ちた。


「くっ!」

 しかも、全然奴が消え去った場所に届いてない。

 だめだな、柱にも届かなそうだ、直接移動して壊すしかないようだ。


 ヴァイン「あっ、てめえ!」


 奴が転移して去った。


 儀式とか言っていたな。

 私のせいだ。

 あの球にエネルギーとやらが溜まったせいだ。


 スイレーンを滅ぼす計画とやらが早まってしまった。


 ゼラ「俺達の事なんか目もくれず、行っちまいやがったっ」

 レックス「己っ!」

 ブラッダー「衝撃的でしたよね」

 オフィーキュス「お、恐ろシい、あれが、魔族……」

 クリオス「ぐすっふえぇん……」


 シュトレイ「さて、魔族も計画の大詰めに向かったことだし、我々も実行に移ろう。その前に」


 ボオオッ!

 ヴァイン「皆殺しタイムだなぁ!」

 たいむ? 


 奴の小剣が勢いよく燃え盛り、炎の長剣となった。

 そこから刃は届かないぞ。

 あぁ、そういえば鞭にもなるんだったか?


 どうやら皆殺しにされるようだな。


 マイケル神父「……」


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