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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
128/132

124話 拘束

 怪しい企み、汚染を探りに湖へと調査に出たものの、変異型や原住魔物との激戦を迎え、ひょんなことから奥地の遺跡に迷い込んだ一行、敵の本拠地だと判明し捕らわれていた囚人を救助し脱出しようと交戦するも、黒幕の黒衣の男の魔術に捕まりパーティは転移し分断され、実験檻に囚われた。


 檻を破壊し起死回生の反撃を成功させたかに見えたが、逆にそれを利用され、得体のしれない魔道具が充填じゅうてんされた。


 更には、より困難な拘束状態となった。


 ヴィイイイイイイッ。


 部屋中、いや、中心の私達に向けて部屋の角の四方に出て来た柱から、紫の光と振動音が浴びせられ怪しく照らされていた。


 振動がずっと出ているせいか、ボロボロの部屋中からパラパラと瓦礫が落ちている。

 大きく崩れかかった天井から砂埃が落ちてきている。

 天井が落ちてきそうだ。


 ヴィイイイイイイッ。


 魔封じの強力なものなのか、あっという間に体が重くなり動けなくなった。


「うぅ、またこれぇ~?」

 大の字になって倒れているベルが、力が抜けて困惑した表情でこちらを向いていた。


 レックス「か、身体に力が入らんっ」

 ゼラ「なん、だこれっ!?」

 ブラッダー「まさか、魔法を封じられるとは……」


 魔力がなく、魔術士ではないレックスや、ゼラまで動けないでいる。

 クリオス少年は蛇女オフィーキュスそばであおむけに倒れていた。

 彼女も怪我でなんとか意識を保ち座っていたのが、今や倒れてより激しく息を荒くしていた。


 黒衣「本来は結界障壁と連動しているのだが貴様らが壊したからな、だがまぁ、よくぞ動力の核石を見つけたな? “方陣織ほうじんおり”で検知できない筈だったが……フンッ、鼻が利くようだな、どうでもいいが……ブツブツ、やはり結界内ではなく、遠隔に設置するべきか…」

 方陣織? 絨毯の事か?


 ヴィイイイイイイッ。


 全員が動けなくなっている。


 さっき長々としゃべっていた、内在魔力とやらのせいなのか?

 私やベルに、ブラッダーのような、魔力持ちだけがそうなると思っていた。

 モードもそれについて話していたな。


 ブラッダー「これ、協会で盗まれた魔法封じと同じものですよね?」

 何?


 彼は小さな手と、嵌められた指輪を見つめ、四方に立つ光っている柱の魔術文字を見てそう言った。

 彼の魔力も乱れていて、魔法が封じられているのを感じているようだ。


 ゼラ「魔法封じが何で俺達までっ!? 槍も持てないんだけど」

 彼は手に持つ槍で腕が床から動かせなくなって、膝を付いていた。

 反対の肩は怪我もあるのか、だらりと下がっている。


 レックス「う、動けぬっ、鞄が重たい……」

 ゼラ「旦那はまだ平気な方か?」

 彼は普段から重たいあの塊を背負っていたからな。拾った武器も入っていた。


 私も鞄が随分と重たい。


 黒衣「……まぁ、その障壁がない分、出力が上がったようだな? 判るか下等種族共? 内在魔力、すなわち、エーテルと呼ばれる万物に宿る力場を乱している波動照射型なのだよ、魔法陣型や檻型よりも、より限定的かつ効果的に、こうして小汚い害獣の拘束が可能になったというわけだ……」

 エーテル? 魔力の別の言い方なのか?


 ゼラ「な、なんだって?」

 槍を杖替わりにして立ち上がろうと頑張っているが、難しいようだ。

 ベル「あたしは、がいじゅーじゃないっ、もんっ!」

 レックス「……貴様は、必ズ、コロスっ」

 む、踏ん張って佇んでいる彼はなんとか動けるようだが、武器を触れる状態ではないな。


 ブラッダー「随分と魔道具に詳しいですよね」


 私も、走ることはできないが、柱に歩いて行って短剣であれを壊すことくらいはできそうだ。


 魔力の巡りがなくなり、身体の中が、まるで湖に落ちるたくさんの水滴が作る波紋だらけみたいになっている。


 黒衣「……エーテルは我ら魔族の間でも研究されており、最近では迷宮産の特異な魔道具にも……」


 奴は自分の考えに没頭、しているようで、拘束した私達を無視して一人でウロウロ歩き始めた。

 ブォン、ブォン……その手に光るからくり球を浮かべて見つめながら。


 柱を壊せるか?


 むっ、誰か、いや、何人も扉の向こうにいるっ、入って来るぞ。

 この気配は……。


 コンコン。


 皆「「?」」


 黒衣「うん? ……入れ」


 赤いローブの男「失礼しますぞ、黒頭巾殿。会合の頃合いですが、今日の研究は随分と騒がし――なっ!? 何だ!? 部屋中が荒れ放題では――何かまた実験で!? うおっ!? なっこいつらは!? きっ、きき貴様はっ!? 昨日のエルフだと!?」


 なん――こいつ! “会合”?


 赤い鎧の青年「シュトレイさん、早く入ってくださいよ、一体中で何を――なあ!? て、て、てめえは!?」


 なんと、帝国とやらの魔術士シュトレイが入って来た。


 戸口を塞いで滅茶苦茶驚く男の背後から背を伸ばし、こちらを覗きこんだ奴は帝国騎士のヴァインだった。


 こいつら、魔族と繋がっていたのか!


 驚き滅茶苦茶になった部屋と、拘束されている私達を見ながら入って来る二人。

 昨晩商人宿で獣人を斬り殺そうとした短期な赤い機械鎧の青年と、食堂の全員を焼き殺そうとした火使いだ。

 旧王諸国の一つであるこの国の人々や特に亜人を嫌う、二人の帝国人達であった。


 ヴァインの奴は外套の前を後ろにして背中にかけるようにしていて、蒸気機械の仕掛けがある例の赤い鎧がよく見える。

 シュトレイ「おいっ!」

 私を見て驚き奴を少し押し入って来て睨んだ。

 奴の方は、昨晩の上等な赤服の上に、更に真っ赤な、血みたいな、魔術士のものらしきローブを着ていた。


 レックス「な! 帝国人だと!?」

 ゼラ「なっ帝国の炎術師レッドメイジと、騎士!?」

 そう呼ぶのか。

 ベル「あれー、昨日の悪い子?」

 ブラッダー「あれ? って、帝国の人間ですよね? おやおや、お仲間ですかね」

 ケイラッドが牢屋にでも入れてたんじゃないのか?

 しかし、しんどそうだな皆。


 クリオス「赤い、鎧……」

 少年が目をまん丸にして驚いているな、こいつらを知ってるのか?

 オフィーキュスも辛そうにしながらも、奴らを見て驚いているな。

 彼女も、奴らの赤い服や鎧しか見てない。


 ヴァイン「おまっ! 昨日俺の邪魔したエルフじゃねえか!」

 チャキッ、


 シュトレイ「ハッ! 昨日はよくも恥をかかせてくれたな下賤な冒険者めが!? ――」

「――見られたら生かしちゃおかねえ! 死ねぇデミヒューマン!!」

「なっ、おい! やめろヴァイン!」


 魔族と通じているのが知られたのかわからんが、いきなり抜剣して襲い掛かって来た。

 ボオオッ!

 抜いた小剣から炎の剣を燃え盛らせながら、すごい勢いで炎剣を斬りこんで来る。

 だが多分――。


 ヴイイイイイイッ。


 ボシュゥ~~~ッ。

 ガシャアアアアンッ!

 ヴァイン「うぐぺっ!」


 魔封じの波動に入って来て魔法剣と、からくり鎧の力を失ったのか、燃え上がった炎の刃がすぐに掻き消え煙となってしまい、その身体は転ぶようにして私の数歩手前で倒れた。


「なっなにが!? 何で!? てめぇ! 卑怯だぞぉ!!」

 私じゃないぞ。


 ブラッダー「帝国騎士って、頭が悪いんですね」

 ベル「えへへ……」


 ヴァイン「何だと亜人デミヒューマン野郎! 叩っ斬ってやるからな! お前ら全員だ!」


 レックス「なにを――」

 ゼラ「へっ、来れるもんならな!」


 黒衣「やれやれ、否定が出来ぬな、下等種族以下の知能か帝国の?」


 シュトレイ「ぐぬ……“魔封アンチスペルの光”が目に入っておらんのかヴァインっ! すでにこ奴らは囚われの身だと一瞬で見抜けっ! 愚か者め!」

「んぐぐぐ、くっそ、何でだ!? 体が重てぇ!」

「何を馬鹿な、“鎧が停止中”といえども、立つことぐらいはできるであろう?」


 うん?

 停止したあのカラクリが仕込まれた鎧が止まると、立つのがやっとなのか? 


 そうか、だから昨晩は追撃して来なかったのか。


 黒衣「帝国人よ、この“魔封”、魔力擾乱波まりょくじょうらんはは吾輩が改良しておってな、人体を動けなくすることができるのだよ」


 シュトレイ「チィッ」

 黒頭巾に、帝国人か。

 こいつらは名前を持ってないかのようだ。


 だからレックス達も動けなくなったのか。


 ゼラ「ざまーみろ」

 レックス「でスが、我らも、動けんでスゾ」


黒衣 (……最も、ここにしか置けない代物で持ち運べず、計画に使えぬからな、だから更なる改良型はそれをクリアしたわけだ。改悪点としては、限定的な範囲となったがな)

 うん?

 独り言になり過ぎて、聞こえ辛い。

 持ち運べるものも作ったのか?


 シュトレイ「おお、では、この仕掛けで、“水蛇”の奴めを?」

 水蛇?


 ゼラ「! 今団長の……」

 そうだ、ケイラッドが来た時に誰か言っていた。二つ名か。

 ブラッダー「ですよね」


 黒衣「うん? いや、それはまた別の話だな、貴様の後ろの者が……さっさと入らぬか“衛兵”」

 奴が入って来ない、帝国二人の戸口の向こうにいる何者かにしびれを切らせてそう言う。


 奴らの背後に居て入って来ない者が入って来た。


 衛兵の鎧姿に、兜に隊長の赤い羽根飾りの付いた……。


 ???「う、うむ、失礼する……小娘、こんなところにまで入り込んで来よったのかっ」


 入ってくるなり髭のそいつは、私を睨んだ。


 ゼラ「な!? ギャレス隊長!? 何で!?」

 帝国の連中どころじゃなく一番驚いてる。上官だからな。


 レックス「衛兵隊長だと!?」

 ブラッダー「!? こんなところで会うとは……」

 流石にブラッダーも動揺が激しいな。


 ベル「髭の人ー?」

 ちょっと彼女からは見え辛い位置に居る。


 オフィーキュス「衛兵の鎧……ソんな」


 クリオス少年はずっとヴァインの赤い鎧を見て震えているな、大丈夫か?


 しかし、髭はやっぱり悪党の類だったか。


 裏切者と言うやつだな。

 やはりさっさと斬っておけばよかったか。


 ギャレス「……やはり声の主はゼラだったか、何故エルフの小娘とこんなとこにいるのだっ、団長の元へ“迷宮”を案内しに行ったのではなかったのか? それに……ブラッダーまで居るとは! ……まだ生きておったのかっ」

 なんだと。


 黒衣「……」

 奴が迷宮と聞いて反応したな。


 部下のゼラが居たから、入るのをためらっていたようだな。

 それにブラッダーが“生きてここに居ることに”驚いている。


 ゼラ「なんであんたが!?」

 ブラッダー「? 生きてる筈がないみたいに言いますよね?」


 ギャレス「フンッ、何を、行方不明者なぞ、死んでるものと思っていて何が悪い」

 こいつ、何か知ってるのか。


 そこに立ってる時点で、教えているようなものだが。

 黒衣の男の企みに加担しているのなら、仲間である衛兵団を襲ったのかもしれない。


 ブラッダー「それと迷宮って、何の話ですか?」

 レックス「迷宮?」

「あぁ、下水道の……」

 ベル(あたしもいたよっ)

 簡単に下水道の地下深くの水の中に門を見つけたのを話した。


 ブラッダー「えぇ……これは本当に驚きましたよね。さっきモード隊長言い忘れてましたね。地元に迷宮ができたなんて、最高ですよね」

 ほう?

「あぁ、帰還出来たら衛兵なんてやめて、冒険者に鞍替えして迷宮に潜ろうかなぁ」


 彼は囚人だったから外の事情はまるで知らないからな。

 迷宮と聞いて目の色が変わったな?


 ギャレス「何を呑気にしゃべっておる! この状況が理解できんのか土鼠つちねずみがっ」


 む、背後にリコアが立っているな。

 昼前の崩落現場では一緒じゃなかったが。


 私に笑顔で手を振っているが、あの笑顔は本当に喜んでいる笑顔ではないな?

 ゼラ「リ、リコアちゃんまで!? 何で……」


 シュトレイ「落ち着け、こ奴らはこそこそと入り込んだが頭巾殿に捕縛された、侵入者だ。そこの死にかけの蛇と、羊と、魔物もどきの鼠は、捕えた囚人だ。貴様には関係ない」

 魔物もどきの鼠とは、ブラッダーのことだろうか。


 ギャレス「貴様らあ! 仕損じたのかっ! 殺す手筈であったろう!?」

 髭が帝国の連中を睨んだな。

 ヴァイン「うるっせーなぁ」


 仕損じた? 殺す手筈だった?

 こいつ、同じ衛兵の、仲間だろう? どういうことだ。


 ゼラ「なっ!? どういうことだギャレス隊長!」


 ブラッダー「説明も何も、自分で吐いてますね、私の部隊に帝国の襲撃があったのは事実ですよゼラくん、彼も知っていたようですね?」

 何と。


 襲撃は小鬼ゴブリンやオークとかの魔物じゃなかったのか?


 ゼラ「ええ!? 帝国にやられたんですか!?」

 レックス「なんと!? これは……大変なことをきいてシまいシたな」


 ギャレス「し、知らん知らんぞ! 儂は関係ないわ!」

 ヴァイン「今更いい子ぶってんじゃねーぞじじい、気色悪ぃんだよ」

「儂はまだ爺ではないわ小僧っ!」


 ブラッダー「……後で話そうと思ってたんですけどね、私からいい感じな時に言って、もっと驚かせたかったのに、残念ですよね」

 こんな時でも愉快そうに言っている、やるなブラッダー。


 ゼラ「またそんなこと言って……国際問題ですよ!? 戦争になります!」

 こくさい問題? 戦争だと?


 ブラッダー「ゼラくん、もうとっくに始まってるんですね……」


 ゼラやレックス達「「!」」

 そうなのか。


 ギャレス「いくさ、大いに結構ではないか、商機じゃぞ? なぁ傭兵」

 リコア「……そーですねー?」


 私達を無視して奴らの会話は続いている。


 シュトレイ「馬鹿な、我が騎士団に失敗など存在しない。奴も処理しようとしたが、硬すぎてな、黒頭巾共も良いサンプルになると、捕えることに賛成しておいでだ」


 黒衣「まんまと侵入者によって解放され、逃げ出しよったがな」


 ヴァイン「うわっ、このガキ漏らしやがった! 汚ったねぇな!」


 クリオス「……ぅ……ぁ……」

 なんと羊少年が尿を漏らして、震えながら赤い鎧を見ている。

「大丈夫かクリオス?」

 オフィーキュス「く、クリオス……」


 まさか。


 黒衣「うぅ、汚らわしい獣めが、我輩の研究室を汚しおってっ」


「貴様は黙ってろ」


 黒衣「なっ(……ふむ、あの瞳、明らかに猫科や蜥蜴科とは違うな……)」


 シュトレイ「その汚らわしい亜人デミヒューマン共の商隊キャラバンも、“同様の手筈”で捕えたのだ(この小娘、魔族を威圧しよったぞ?)」

 キャラバン、商隊の帝国語だな。

 やはりそうか。


 ゼラ「そうなのか?」

 レックス「外道共めがっ」


 ブラッダー「やはり、ドワーフのステラさんの足や、彼女の背中の切り傷、焼かれて火傷にもなっている切り傷だったんですよね、帝国の火の魔法剣による傷と同じですよね」

 それだ。


 私の靴と革鎧の焦げめとも同じだ。奴の、帝国のそれか!


 商人宿で会う前から、人を襲ってたのかこいつら!!


 オフィーキュス「……うぅ、赤い鎧の、集団に、瞬く間にっ、私達商隊は、壊滅、サセられまシたっ……」

 ブラッダー「残念ですよね、私の部下も同じです……」


 赤い鎧の“集団”だと?


 ゼラ「ゲス共!! ギャレスっ、あんたも知ってたのか!!」

 レックス「貴様ら、タダでは済まんゾお!」


 ブラッダー「王国に警告する状況ですよね、まず団長に言いつけてやります」

 じゃあ帝国と争いになるのか?


 ヴァイン「馬鹿な王国人共だな、そんなことさせないために“街道封鎖”したんだろうが? 通る奴は皆殺しさ! 水蛇だか英雄ケイラッドだか知らねぇがそいつも俺が斬り殺してやるよ!」


 街道封鎖……ベイリ村とスイレーンの道に小鬼が隠れていたような感じだろうか。

 水蛇とは、ケイラッドの二つ名だな。

 それに、英雄なのか彼は。


 一緒にいたあの青蛇と関係があるのだろうか。

 だが。


「お前には無理だ」


 ヴァイン「何だとクソエルフ!」


 ギャレス「ええいうるさい! お前ら全員、黙っておれ!」

 シュトレイ「いちいち挑発に乗るなヴァイン、やかましい亜人デミヒューマン共だな、この魔封アンチスペルの“照射”は、声等は封じられないのか?」


 ヴヴヴヴ……。


 黒衣「そんな意味のない仕掛けは作らん」


 ヴァイン「馬鹿な衛兵だぜ、詠唱できなくなるじゃねえか」

 うん? 魔封じされてるから意味はないんだぞ。


 ギャレス「なんじゃと小僧っ!」

 シュトレイ「はぁ……もう黙っていろヴァイン、“魔封”について貴様は一から学び直す必要があるな」


 とうとうわかったな。

 こいつらが、衛兵や皆を殺して捕えていたのか。


 許さん。


 グググッ。

 雷石の痺れはとっくに消えているが、身体が前の魔封じの魔法陣罠の時より重たい。


 ヴァイン「……っ!?」

 動けず倒れる帝国の若者は、この拘束下で動き出すエルフの底力と、発せられる殺気に目を剥いて見上げた。


 黒衣「む(……ふむ、出力に変化はないな、小娘だけ“エーテル乱れ”が浅いのが原因か? 他のゴミ共と比べて異常に魔力値が高い弊害へいがいだな、まだまだ改良の余地がある……)」


 奴は私を見て、柱の仕掛けを調べて顎髭あごひげを触っている。

 何かまた考えているようだ。


 シュトレイ「我々“騎士団”は職務を全うしている。この“砦”の防衛に関しては頭巾殿の責任下ですな」


 黒衣「フン、低能のオーク共に期待し過ぎだ。だからこうして我輩自ら捕えておるであろう? この我輩の眼から逃げられる者などおらんのだ」

 そうか。

 やはり見られてる感覚はこいつだったのか。

 あの片眼鏡の魔道具とかでか?


 ギャレス「侵入者……囚人だと? 聞いておりませんぞ儂は」

 髭が帝国人達と黒衣を睨む。


 シュトレイ「ハッ! 言う必要がないからな、貴様は自分の仕事だけやっておればよいのだ」

「ぐぬぬ……」


 ヴァイン「おいっ髭野郎っ、俺をそっちまで引っ張りやがれ!」

 ギャレス「なにを――何をやっとるのだこの若造は?」

「うるせぇ! 早く助けろ爺!」

「衛兵隊長たる儂に向かって、何たる言葉使い――『シュトレイ「いいからさっさとヴァインの言う通りにしろ、帝国の犬めが』――ぐぬぅぅっ」


 奴に言われて大人しくヴァインを引っ張る。

 どうやら逆らえないようだな。


 黒衣とシュトレイは同じ立場のように見えるが、髭は低いようだ。


 奴の足の所には、仕掛けの波動は当たっていなかった。

 ガシャ、ズルズル……。


 ブラッダー「残念でしたよね、裏切者のギャレス第二中隊隊長。団長の処刑がこれで確定しましたよね」


「ぬぅ……う、うるさいっ! もうじきいなくなる団長等、恐れることはないわ!」

 なに?

 ヴァイン「おいっ、もっと引けよ爺!」

「ぐぬぬうっ自分で立てんのか若造!?」


 ゼラ「どういうことだギャレス!?」

 ブラッダー「はい? この街最強の団長がいなくなる? どういうことでしょうね?」


 シュトレイ「おい衛兵っ、その軽はずみな口を閉じろ!」

 む、奴がさすがに喋り過ぎを注意したば。

 あのリゾットよりは賢いみたいだ。

 

 ギャレス「フンッ! どうせこ奴ら殺すのだろう? もう関係ないわ!」


 ゼラ「あんた、衛兵団の誓いを忘れたのか!」


 衛兵団には誓いがあるのか、誓いは大事だな。


「儂はこんな辺境の田舎国家等とは、もうじきおさらばするのだ、くだらん衛兵如きの誓い等、忘れたわい」


 辺境の田舎、そうなのか?

 しかし、どんなことだろうと、誓いを違えることは許されるないぞ髭め。


 レックス「なっ」

 オフィーキュス「まぁっ」

 ゼラ「レグトス王国が田舎だと!?」


 ブラッダー「そういうのは“我が国の王都を一度見てから”言ってもらいたいですよね」

 違うようだな?

 このレグトスの王都とやらは凄いのだろうか。


 ヴァイン「ふぅ、やっぱり壊れてねぇな? フフン、そうそう、殺すのは俺さ!」

 ウィィィ……どうもこの中に居るからか、蒸気鎧の音も聞こえ辛くなった。

 ボオウッ!


 クリオス少年「ひいっ!!」

 拘束の波動から逃れ、鎧も動くようになった奴が立ち上がり、復活した。

 炎の魔法剣とやらも。


 シュトレイ「ヴァイン、命があるまで動くなっ!」

「……チッ」

 大人しくしなって、魔法剣の炎が小さくなった。


 いや、収まったが赤熱する魔法の刃は長剣のままだな。


 クリオス少年やオフィーキュスが赤い剣におびえている。


 シュトレイ「それで? 貴様の計画はちゃんと進んでおるのか衛兵」

「ふんっ、手筈は準備できておるわ、“そろそろ研ぎに出す筈”、あの剣さえなければ……」

 リコア「ハーイ、できてまーす、うふふっ」


 研ぎ? 剣? ……ケイラッドのあの魔法の大剣のことか?


 ケイラッドを殺す計画とやらの話か?

 リコアも関わっているのか?

 そのシーフの使う黒い刃で、後ろから刺すとかしそうだな。

 ケイラッドには通用しそうにないが……。


 ギャレス「おい傭兵、ちゃんと物は用意しておるな?」

「えぇ、“盗賊”からもっと良いのももらったしぃ」


 シュトレイ「あぁ、自慢していた濃縮薬とやらか」

 ?

 濃縮? まさか濃縮毒か? ケイラッドにそれを使うつもりか!

 盗賊だと?


 黒衣「はぁ、騒がしい夜だな。そろそろ会合の時間だ。役者が揃ったな、おい衛兵、さっさと外の神父を入れろ、オークの長は何をしている?」


 たくさん出してる魔法陣を見て言ったぞ。時計とやらも出てるのか? 見辛いが魔術式の文字は見たことないものだ。


 部屋を見ると、壁にある小さないくつも並んだ穴からの明かりが暗くなっていた。


 もう夜なのか?


 ギャレス「ぐぬ、儂は隊長なのに小間使いのようにっ……もう時間ですぞ、さっさと入って来てくだされっ、……後は、ブロンコスはどうした豚共!」


 ……神父だと? まだ外に居る連中の中の、この気配はまさか?


 フゴ、ブヒィ。

 外にオーク達が居る。


 ギャレス「……オークロードの奴めは今忙しいようですな、神父と、それと盗賊が入りますぞ」

 オークロード、戦将の、ブロンコスとかいう奴の別の呼び名か。


 (オークの)長もこの集まりに来るようだが、外に集まっているオークが言うには、戦闘で死んだ部下を見つけ、追跡したりと、騒いでいるようだ。


 モード達は大丈夫だろうか。


 聞こえてきた言葉から、ギャレスと同じ言葉を話せるオークもいるようだな。

 明らかに皆と同じ言葉で喋っているオークの声が聞こえた。


 一同「「!」」


 驚いたのは、扉を頭を下げてくぐるように背をかがめて入って来た大柄な、特徴的なローブの男。

 マイケル神父が入って来たのだった。


「……皆さん、こんばんわ、水神様のご加護を……やれやれ、気まずいですねぇこれは。今まで最悪な会合です」


 リゾット「馬鹿ついてくんなっ、てめえらは外で待ってろ、ったく、さっさとどけよでっかい図体のじじいだな――ん? あ!! てめえええ!? こんなとこまで追っかけて来やがったのか!? なんで生きてんだよ!?」

 盗賊を引き連れた黒い外套に帽子の男が入って来た。

 いや、一緒に入ってこようとした部下を蹴り飛ばしているな。

 

 マイケル神父「おやこれは失礼、触らないでください下水臭いです」


 ギャレス「やかましいわごろつきめが!」

 リコア「うるさぁ~い」


 リゾットだった。

 奴もしれっと背後からひょっこり顔を出して、私を見るなり叫んだ。



 そうして、裏切者が勢ぞろいした。


 読んでくださりありがとうございます。

 勢ぞろいしましたね。

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