120話 潜入6 肉屋
そいつは巨大な片刃の曲剣を片手で軽々と持っていた。
先程手に入れた出刃包丁に形が似ているが、刃がぎざぎざで池鮫のようなのこぎり状だ。
逆の腕には黒い刺の様な突起が幾つも生えていた。
組合の食堂にいた料理人のような前掛けをしているがそれは血まみれで赤く、奴の角は捻じれて大きく変化し、体色も赤黒くなっていた。
その腕の筋肉も体つきも通常のオークより巨体で強靭で、眼は全てが黒く、開きっぱなしで涎を垂らし続けるその口の歯も同じだ。
変異した強力なオーク、肉屋に見つかった。
奴の背後に見える厨房に、垂れさがったいくつもの鎖の中に、人間の死体らしき、手足の欠けた、さばかれた胴体の肉がぶら下がっていた。
他にも幾つもの得体の知れない死骸がゆらゆらと揺れていて、血みどろの真っ赤な部屋が厨房の火に狂気的に照らされていた。
一部の者達「きゃああああ!!」「うわあああ!?」
息をのむ者達の中で、耐えられない者は目を見開き悲鳴を上げた。
驚いたのは、奴の速度だ、以上に素早くこちらに突っ込んできた。
ズドドドドドッ!
肉屋「新鮮ナ肉ウウウウッ!!」
ゼラ「ちょっ!?」
一直線に私達の元に迫る。
大曲剣を振りかぶりながら。
囚人達「「うわあああっ!?」」
ブラッダー「皆さん避けてください!」
モード「ブラッダーっ、土壁、いや槍壁をっ」
「了解しましたっ」
レックス「ダロム!」
「オオオ!」
彼らが大三又銛とメイスを構える。
ブラッダーが壁を出すようだが。
間に合わなそうだな。
私も大剣で跳ね返すか。
いや、水球で邪魔してやろう。
(ウンディーネ……)
剣を出すのをやめて、集中する。
奴の異常に素早く動く足元の、突っ込んで来る先に大きくしながら魔水にするのも意識し、水たまりを想像して飛ばした。
完全に無防備だが、失敗しても、仲間がいる。
バシャッ!
見事に中水球が石畳に飛び広がり、そこを奴が居に介さず踏み抜くと、勢いよく転んだ。
肉屋「肉ウゥゥッ!?」
ズシャアアッ!
かかった!
だが、真っすぐ勢いよくこちらに滑って来たな。
棚にぶつかる。
ガッシャアアアンッ!!
そのまま破壊し棚の物ごとこちらに吹っ飛ばしながら滑り迫る。
レックスがその巨体で、飛び交って来る物から女達を守った。
通り過ぎざま奴を斬ろうとしたが、割れたガラス片が傍の羊少年や倒れている蛇商人に降り刺さりそうだったので、大剣を呼び出しその広い刃の面で防ぐ。
何だ?
魔法のケープの中を意識し、頭の中に浮かぶその絵から、仕舞っていたオークの大剣を選んで呼び出す際、何かが横切るように絵が乱れた。
皆が左右に飛び避けたそこを突っきってゆき、反対側の棚の密集した場所に突っ込んだ。
ガラガラガシャバラアアアアアッ!!
ベル「うるさーいっ!」
皆、防げるものは耳を塞いだ。
とてつもない音の洪水が響き渡る。
敵の本拠地中に聞こえるようだ。
ヴンッ!
少し離れた。
大剣を仕舞い、ミスリルの矢も取り出し、魔力を籠める。
モード「こっちに入ってくださいっ」
ベル「こっちこっち!」
隠し扉を開けたままにして、そちらへ飛び避けていた彼女が手招きする。
見ると、開いた扉の向こう側に、穴が空いて壁の中に空間があった。
真っ暗だが、そこから冷えた空気と、僅かに肉の匂いが漂って来ていた。
扉側に飛んだテルギウスやヴェッサ、ステラが入る。
テルギウス「ひいいいっ!」
ヴェッサ「ここ、本当に入って大丈夫ですの?」
ステラ「いいから入んなっ、あんた達も早くおいでっ」
振り返ったドワーフ女が私達を呼ぶ。
犬娘コーギー「わぅ、ざ、座長を……」
彼女は倒れている蛇商人と、通り過ぎた肉屋が散乱させた、様々な物が落ち散らかる扉への道中を慌てふためいて見比べた。
ガラス片も落ちていて彼女を運ぶのは難しいのだった。
レックス「儂が運ぶ、先に行け」
彼は蛇商人を軽々と持ち上げる。
オフィーキュス「……っうっくぅ……」
そっと抱き上げたが、背中の傷が痛むようだ。
ベル「しっぽ持つよっ」
長い彼女の尾が瓦礫に当たるのを、ベルが飛び寄って持ってくれた。
レックス「ほら小僧、儂の背中に乗れっ」
クリオス少年「う、うんっ」
羊の少年も瓦礫で通れない為、レックスが背中を上りやすいように屈んで見せる。
ドオンッ、ガンッ!
肉屋「にっ、クウウゥゥッ!!」
奴が暴れているな。
どうやら棚が絡まりあって瓦礫の山から出られないようだが、怪力のようで、次々と破壊して身体が見えて来ている。
ゼラとダロムは肉屋が突っ込んだ瓦礫の山を警戒しつつも、瓦礫の平気な場所を選んで扉に向かう。
私はその渦中、意識の奥で妙な気配を感じていた。
肉屋でも、向こうのオーク達でもないな。
何かが、変だ。
コーギー「わん、ありがとです、座長をお願いしますっ」
彼女は軽々と瓦礫を飛び越え、扉に着地し振り返るも、ステラに押されるように中に入った。
見事な足だな。
ブラッダー「ステラさんもさっさと入っててください、足を怪我してるでしょう?」
やはりか、彼女はずっと無理して立っている節があったからな。
「はいはいはいよっ」
モード「ルーナさん、奴が起きそうですよっ」
ステラと扉にいるモードと目が合う。
そうだな。
私は最後で良いぞ。
体の周りに突然現れ始めた、“黒い靄の様な煙”を見てそう思った。
レックスの背に昇る羊の少年。
ゼラとダロムが扉の方へ次々と着地し、彼がこちらを振り向き私やレックスに来いと口を開こうとして、私達も瓦礫を飛び越えようとした時だった。
「行くゾ、シっかり捕まってろ小僧」
クリオス「は、はい」
ドガアアンッ!!
とうとう出て来たか。
皆で隠れるのは間に合わなかったようだ。
クリオス「うわああっ!?」
丁度レックスが瓦礫を飛んだ時だった。
羊少年が驚くあまり、レックスの背から滑り落ちる。
ベル「あっ、落ちた!」
下は折れた棚の木片が、槍の様に尖って上を向いていた。
クリオス「わぁー! っあれ?」
「っ!」
後ろにいた私は咄嗟に少年を掴む。
魔力を貯めていたが矢は仕舞った。
少年を落とさず両手で掴んだが、踏み出した足の裏に、痛みが走った。
何か踏み抜いたな、革靴の裏を貫通した。
釘か?
更に――ビュルンッ!
両手で少年の胴体を掴み上げ、無理な姿勢で何かを踏んでいたその時だ。
奴が何かを振り回すのが横目に見えた。
遠くだから平気かと思っていたが、それは異様に長く、ここまで届いたそれは最後は見ることもできない程早かった。
それが腹に襲い掛かった。
――ビシイッ!
ゼラ「あっ! ルーナさん!」
ダロム「ルーナ様!」
レックス「ぬぅ? 小僧!? はっ、ルーナ様!」
扉側に着地し女を抱えた彼がこちらに振り向き驚く。
ベル「なに? 蛇?」
違う。
やはり鞭か。
確か突っ込んできた肉屋が腰に下げていたな。
恐らく、マルゴスの武器だ
今扉に向かうと、壊して入って来そうだな。
ここで決着をつけるか。
クリオス「あっ、あっ」
ぶるぶると震えているな。
少年を背後の石床に降ろす。
肉屋「しんっせんっな――」
瓦礫を飛びチラシながら素早くこちらを射るように見る肉屋。
鼻が効くようだな。
ヴンッ!
「――うるさい」
取り出していた弓矢を放った。
さっき仕舞ったが、矢にはまだ、魔力が蓄えられていた。
イイイイイ。
逃げ隠れる際に捨てるつもりで、ずっと魔力を籠めていた輝くミスリルの矢が放たれる。
シュヒイイィンッ!
その寸前に、創り出した水球を奴の顔面にぶつける。
いつしか、水筒の水なしで、できるようになっていた。
バシュウッ!
水球の奇襲を、当たる寸前に奴は素早く首を竦めて躱す。
だが、銀に光る矢が狙いの奴の喉元の魔石へと吸い込まれた。
肉屋「ハグゥッ!!」
ガキイイィィィンッ!
なに!
なんと奴は素早く体ごと首をひねり、矢尻を避けるようにして、横から黒い牙で飛び去ろうとするミスリル矢に食らいついた。
バボオッ!
だが、無事では済まなったようで、その牙の幾つかが黒い血と共に弾け飛び口内で矢の魔力が炸裂したかのようにして、口周りが破砕した。
レックス「何て奴だ!」
ゼラ「ルーナさんに鞭が!」
すでに私の身体中を、謎の黒い靄が覆い始めていた。
なんなんだろう、奴の魔術か?
曇っててこちらを見るゼラ達が見辛いが、彼らには見えていないようだ?
魔力の何かか?
とりあえず、ケープに仕舞ってある短剣を取り出し、体に巻きついた鞭を斬ろう。
胴鎧の短剣は、鞭が邪魔で取れない。
ギリギリギリッ、ペッ!
――キイィィンッ。
ミスリル矢が吐き出され離れた石床に音を立てて落ちた。
「アグゥアッ、マズヴヴッ、イィッ!!」
一瞬痛みか、それとも味にかのけぞったが、異常な素早さですぐに戻してこちらを見た。
眼が爛々と光り怖気をもたらす黒い眼だ。
ボオオンッ!
瓦礫を蹴散らしこちらに襲い掛かる。
大曲剣とは別の手に持った鞭を引っ張った。
ザザッ!
巻きついた鞭が私事奴に引き寄せられ地面を滑る。
踏ん張ってもなんとか速度を落とすことしかできない。
これでは飛んだり避けたりはできないな。
ダロム「ルーナ様っ!」
レックス「フウゥンッ!」
ブオンッ!
巨体の彼の剛腕が、オークから手に入れた中剣を思い切り投げつける。
ギイインッ!
目前に迫り来る肉屋は目にもとまらぬ速度で大曲剣ではじき返す。
レックス「くソっ! ソこのドワーフっ、ソの斧を貸シてくれっ」
そして返す刃で私の首を狙う。
すぐ後ろに少年が居る!
「クリオス下がってっ!」
ガギイイイィンッ!
出していた大剣と大曲剣の衝撃が、周囲に落ちる軽い品を飛ばす程の圧を放った。
クリオス「わあっ!?」
だが、辺りに漂う黒い靄はまったく動かない。
魔術の何かか、幻のようなものか?
それは私の周りにどんどん広がっていた。
肉屋「ニクウウゥッ!!」
奴の曲剣が続けて何度も、高速で降り被られ叩きつけてきた。
ガンガンガンガァンッ!!
ガギガギガギイイイッ!
暗い倉庫を火花が幾つも弾け照らす。
大剣と大曲剣が高速で何度も衝突し合った。
ジュッ。
クリオス「うわあああっ! あちっ!」
弾けた火花が、驚き尻もちをつく少年の足に落ちた。
こいつ、片手でこの威力と速度かっ。
私は両手で襲い掛かり続ける大曲剣を受け弾く。
避けるのはやめている、鞭を引っ張られ体制が崩れて、きっとマルゴスの様になるだろう。
だが……。
ズグッ!
肉屋「グアッ!?」
飛んで来た戦斧が奴の背中にめり込んだ。
レックスが振りかぶった体制をしている。
ドワーフ女から受け取ったのか?
だが、大曲剣を叩きつけ続ける膨れ上がった筋肉に食い込む斧の刃は浅かった。
ブズッ!
ズンッ!
肉屋が怒り、飛んで来た先を振り向いた途端。
ダロムがオークの槍を、ゼラはオークの弓矢で肉屋の腹や足を狙い放ったものが次々と襲い掛かる。
肉屋「ウガアアオウッ!」
片足が膝をついたっ。
奴が怒りに任せて、大曲剣の腹で私を邪魔だとでも言うように横なぎに叩きつけて払って来た。
彼らを襲う気か。
羊の少年には当たらないか?
石床スレスレに倒れるようにしゃがみ避け、大剣を叩きつけるっ。
肉屋が鞭を大きく振りかぶった。
大剣が奴の腹を叩き斬る前に、揺れ降られた鞭が私の身体を引っ張る。
「うおっ!」
ザザザア――ガラガシャアアンッ!
瓦礫を弾き飛ばしながら隠し扉の皆の方へ吹き飛ばされる。
私を彼らにぶつけるつもりだったのか。
一同「「うわああっ!?」」
すぐさまナイフを出して鞭を切り裂く――私はそのまま彼らに突っ込むことなく、上に向かって飛んで行った。
ガランガシャァンッ……。
ゼラ「あれ?」
ブラッダー「消えた!?」
レックス「ルーナ様?」
ベル「ルーナ飛んでった!」
部屋を横切るように飛んで行き、みるみる迫る石壁に叩きつけられる。
「っ!」
ダアンッ!
――――
一方、驚いて斬られた鞭を首を傾げ眺める肉屋、そこへ。
「このクソオークがあっ!」
レックスはその巨体に似合わず瓦礫を飛び越え大きく跳ね、そのまま手に持つオークの棍棒を思い切り奴の頭に叩きつける
ゴシャアアッ!
肉屋の硬く長い角が邪魔をしたのか、木の棍棒は簡単に叩き割れた。
「んん? 肉ダっ!」
更に首を傾げてから、大曲剣を、降り立つ彼に振り下ろす。
急ぎ背中の三又銛を取り出し防ごうとするも、間に合いそうになかった。
モード「レックスさん、しゃがんで!」
「!?」
ドシュシュシュシュッ!
――――
壁に叩きつけられるルーナ。
ダアンッ!
が、そのまま壁に着地し踏ん張る。
釘を踏んだ足裏の傷から血がまた噴き出す。
「っ」
黒い靄は離れても、私の周りに渦巻いていた。
タアンッ!
そのまま壁を蹴り上げ飛ぶ。
ヒュオオ――ガンッガラアンッ! ガッシャアンッ! ドオォンッ!
棚をいくつも降りそこを飛んで、棚伝いに飛び皆の元へ戻る。
見ると、肉屋に、氷弾のような岩らしき中型の鋭い礫が幾つも刺さっていた。
レックスのしゃがむ上スレスレだ。
ブラッダーから放たれたようだな。
「ゴプッ、に、ニク」
ブラッダー「料理長を料理してみせましょう」
土魔法か。
更に追い打ちをかけるようで、より大きな礫が作られていた。
止めか?
ベル「食べるのあれ?」
クリオス「や、やだっ!」
そして、黒い靄が肉屋周辺から、扉の方まで覆い尽くそうとしていた。
なんなんだこれは。
私からじゃないのか?
場所になのか?
いや、私にも相変わらず靄は漂っている。
辺りに魔力が渦巻いている。
これは肉屋がやってるんじゃないな?
メキメコッ……。
む?
肉屋の片腕に生えた黒い刺がさっきより伸びているような。
その手も黒く、まるで蟹の鋏のように、だが槍の様に鋭く変化していた。
いかんっ。
「壁を作れ!」
ブラッダー「!?」
出刃包丁を取り出し、両手で振りかぶり奴のその腕に飛び降り斬る。
ズバンッ!
肉屋「グアアアッ!!」
ドサァッ。
斬られた片腕が床に落ちる。
ピキピキメキ……。
だが、棘がみるみる伸びて、突然、弾けた。
ドシュシュシュシュッ!!
ベル「きゃあ!?」
レックス「ルーナ様っ――」
大丈夫だ。
ヴンッ!
ガギギギッギギギイイッ!!
チュインチュインチュインッ!
咄嗟にレックスと切れた腕の間に入る。
大剣も取り出し、鞄のカニの甲羅も上手く使い、間近ではじけ飛ぶ黒い棘を防いだ。
バキイィンッ!
出刃包丁がトゲで割れた。
ズブッ!
ブスッ!
レックス「ぐうッ!」
「っつぅ!」
漏れた棘が彼の足や、私の腕にかすり、刺さる。
だが、小さいし、私達なら大したことはないだろう。
ドシュウッ!
しまった。
そして、変化した手の大きな黒く長い棘が、その突起の方向へ、まるで槍の投擲の様に隠し扉の方に放たれ飛んでった。
辺りを濃い黒い靄が包みこみ、最早、目の前がかなり見えない。
ベル「こんにゃろっ! ああん!」
彼女が小さな拳を振り殴ったが、早すぎて飛んでいった。
スガアアンッ!
ブラッダー「余裕ですよね」
棘は、そう言う彼の作り出した土壁に、見事に刺さり止まっていた。
あの大き目の土礫を変化させたのだろうか。
見事だ。
ベル「ブラダーえらい!」
壁の横から顔を出したゼラが驚き刺さる棘を見ていた。
クリオス「座長っ、座長っ」
ゼラ「そっと奥に運んでやろうな?」
少年が彼らのすぐ近くで蛇女に呼びかけているのが聞こえる。
肉屋「イダアアイッ!! コの肉ウゥ!!」
膝をつき、片腕からどぶどぶと黒い血を流す奴が、大曲剣を私達に振りかぶる。
いつもより遅いぞ――ヴン――。
――ザンッ!!
折れた出刃包丁と大剣の柄から手を放すや、滑るように肉屋の首元へ飛び越えた。
中剣を呼び出し振り抜きながら。
急激に靄が濃くなり、もう何も見えない。
見え辛いが、感覚でわかる。
奴の首が切れ飛ぶのを感じる。
魔石より上だろうか。
狙いが外れた。
避けようとしたのかもしれない。
わー!
やったー!
ベル「ルーナ? あれ? 何これ――」
皆の歓声が聞こえるが、遠くなっていく。
タンッ!
これは、まさか。
着地したその床が紫に光っていた。
狭い石棺の中で明かりを灯したように靄内が明るく照らされていた。
魔法陣だと?
奴だ。
奴の転移術だ!
目の前に突然、黒い、炎が吹き荒れ始めたっ――。
――ドサッ!
肉屋の首が石床に落ちた時、ルーナとレックス、肉屋の首なし死体が忽然とそこから消えていた。
そこには、生首だけが転がっていた。
ステラ「……ええ?」
ダロム「……なっ、レックス? ルーナ様!?」
コーギー「わぅ? ブラッダーさん? わんっ! クリオス君と副座長もっ!? あ、あのあのっ衛兵の人もいないわん!」
ダロム「なっ、こっちも、ブラッダー様の周りも!? も、モード様……」
ヴェッサ「え、どうしたんですの? 終ったんですか?」
テルギウス「なんだどうなってるんだ? 早くそこ閉めて、隠れないと!」
モード「……消えましたネ、転移術? ……魔族に、見つかっていた?」
境界線は、扉の境目だった。
彼女とダロムが立つ、戸口の外の全てが忽然と姿を消した。
外に居た皆が、まるごと転移したのだった。
読んでくださりありがとうございます。




