118話 潜入4 檻と球
囚人達「……エルフ?」「え、エルフ様?」「た、助けが!」
「やっ、やった! はは、これで食われずに済むぞお!」
「だっ、ここからっ、出して下さいぃ!」「……え?」
「もう大丈夫だぞ、あと少しで終わる」
囚人たちと、最後に泣き腫らした羊の、多分少年を見て言った。
隣の吊り篭檻の蛇族らしき女が、うなだれながらも尻尾をぴんと伸ばして驚いて見ていた。
蜥蜴族と同じような反応だな?
モード「大きな音を出しちゃいましたネ、増援が来る前に彼らを出しておきますネ」
あ、しまった。
「……すまん、頼む」
モードはさっきの戦いも譲ってくれたようだな。
それなのにずいぶん騒がしくしてしまった、他にどんな敵がいるかわからない敵の本拠地なのを忘れていた。
食堂に強そうなのがいるみたいだが、まずアルマジロの獣人を助けよう。
入れないようだが……。
その檻の方では、ゼラと槍オークが格子の扉越しに、槍を突き合っていた。
ゼラ「やれやれ、中々うまいじゃないのっ、フッ」
キンッ、カンッ!
ベル「もーっ、どいてよ!」
上から彼女が怒っている。
檻内のオーク達「フブゥッ! 返セ!」「矢ヲ返せ! ふェアリー臭いフェアりーっ!」
別のオークが棍棒を振り回すが、届いていない。
彼女を臭いと言っているな? 私達とは鼻の作りが違うみたいだな。
ちなみに最初は茸や花の香りがしていたが、最近はいつもおいしそうな匂いをしている。
ヴン――オークの大剣を仕舞い弓矢に持ち替え、木矢をこちらを見てない槍持ちの急所ではない、適当な背中に当てた。
こちらを茫然と見ていた盾剣と曲剣、弓を放り捨てた棍棒オークの間を縫って。
ズドッ!
槍オーク「グうっ!?」
戦いに卑怯も何もないが、格子越しだったしな、こちらも格子越しに、せめて邪魔くらいはさせてもらおう。
ゼラ「(しめたっ)ハッ!」
ズンッ!
槍オーク「ガッ、まっ、負ゲたぁ……」
ガシャアアンッ!
しまった、扉に倒れこんでしまった。
余計なことをしてしまったか。
オーク「ばっバケもんエるフだ!」「ひイっ、弓撃ッて来ルゾ!」
「ガルンゾさんヨリ強イのはムリ!」
盾持ちの影に隠れたな。
完全に立てこもっている。
魔力を籠めてミスリルの矢を撃てば貫けるだろうか。
ダロム「あっとっ少シっ!」
彼は、転がって来た球を、格子越しに手を伸ばしてぐるぐる巻きの紐に片腕を伸ばして掴みかけようとしていた。
ゼラ「ルーナさん愛してますよっ旦那っ!」
レックス「ハッ」
ドッ! グググッ。
ゼラとレックスが扉を押すが、槍オークの死骸が重たく開かない。
引いて開ける扉じゃないようだ。
モードが次々と吊り篭から人々を助け出す。
旅装の女「たっ、助かりましたわっ鼠ちゃん、あの美しいエルフの御方は一体……怖いぐらい奇麗ね」
大柄の男「助かった、助かった! やっ、奴ら、同僚をっ、仲間を殺してっ、たっ食べ、あの姉ちゃんが来なきゃ今頃……」
ガアンッ! ガアンッ! ガアンッ!
そんなルーナは、檻を何度も蹴って壊そうとしているところだった。
モードは自分はこう見えてもいい年だと訂正しようとしたが、ルーナを見惚れるように顔を向けて見たその光景に、助けた人達が皆、唖然として押し黙ったので、今はやめておいた。
ドワーフの妙齢の女「はぁ~いてて、なんだい、意外と荒っぽいね? 冒険者らしいやね」
ガアンッ! ……ズズッ……。
オーク「ヒイっ!」
檻を蹴るが、僅かに全体が揺れるだけで、びくともしないな。
ベルの怪力でも、この太さは無理かもしれない。
ギィンッ!
曲剣で軽く切ったが、僅かについた傷から、断ち切ることは簡単ではないのが分かった。
ゼラ「ルーナさぁんっ、こっち回って手伝ってくださいっ、一緒に押し合いっこしましょう」
レックス「ノーデント卿っ言い方が妙でスゾ」
「いいぞ」
ゼラ「よっしゃ、行きますよ、せーのっ!」
檻を回り込んでゼラとレックスと共に槍オークが死んで塞がっている扉を押す。
回り込む際、隙あらば矢を射ろうと思っていたが、完全にオーク達は盾を構えて私を睨んでいた。
オーク達「サセルかぁ!」「フゴおオッ」
連中が槍オークを反対側から抑えて邪魔した。
ズズッ!
ん? 檻全体が今ズレたか?
この檻、固定されてないようだな。
「ベル、手伝って」
「わぁっ、押し合いっこ? えーと、ダロムっ、これ持ってって」
ずっと矢筒を奪い上の方に逃げていたベルを呼ぶ。
棍棒オーク「オラの矢ヲ返せふェアりー!」
「やーっ!」
彼女は檻の中に手を伸ばして球を取ろうとしていたダロムに少し飛んで寄って、矢筒を投げ渡した。
「ぬおっ? 畏まりまシた」
曲剣オーク「あっ! アノ片腕蜥蜴、球を取ロウとしてるブぅ!」
盾オーク「ヨせっ、エルフガ狙っテるド!」
む、もう少しで飛び出した一体を撃てたのだが引っ込んだな。
ベルがこちらに飛んで来た。
矢筒を受け取り腕を引っ込めたダロムのところから、球が転がり離れる。
ゼラ「これで百人力だね、よし、せーのだよ?」
ひゃくにんりき?
ベル「うん!」
大声になってしまった彼女が耳元で返事して、耳が痛いような顔をゼラがする。
ゼラ「せーの――」
「――待ったっ、持ち上げよう」
レックスとゼラとベル「「え?」」
ガアンッ!
オーク「アレ? 押して来ナいブ!」「何ナンだ?」
また押してくると思い、オーク達が槍オークの死骸に突撃して抑えようとしたが、私達が結局押してこなかったので、無駄に死骸と扉に激突しただけだった。
せーのっ!
すると、人間達が遅れてまた襲おうとしてきたので体勢を立て直す、が。
ギギッ、ギギギッ。
急に、辺りが斜めに歪み始めた。
オーク「う、ウオオオッ!?」「もっ、持ち上ゲテるブウ!?」
ゼラ「うおおおっ」
レックス「セイイイイッ」
ベル「うーーんっ」
「ぐううっ」
ギギギギッ!
巨大な檻が、持ち上げられ斜めに傾いていく。
ドワーフの女「あたしも手伝うさね! それ!」
む、助けた女の一人か、元気だな。
頬がこけて、痛めてるようだがその足取りはしっかりしている。
ギギィーッ。
オーク「ブヒイイイィッ!」「ウワアッ!」
ガシャアンッ! ガララアアンッ!
オーク達が床の格子を掴む。
掴み損ねた盾持ちが転がって反対側に落ちた。
そして、ベルが飛び持ち上げ続け、どんどん傾く檻。
ダロム「フンッ!」
彼も片腕で手伝い持ち上げる。
ザ、ザザアアアーーッ。
槍オークの死骸が連中の上から滑り落ちてぶつかっていった。
曲剣オーク「プギャ!」
ドカッ!
棍棒オーク「オイッ、こっち来ルナ! ブホオッ!」
ギイガラアアンッ!
重しのなくなった扉が開く。
ボオンッ!
オーク「ヤメろ、クソ人間っ!」
転がり落ちて来た球を掴んで、こっちに投げて来た。
ゼラ「ぐはっ! 痛ってえっ」
凄い顔で力一杯檻を持ち上げる彼の顔に球が当たった。
寸前で身構えて額に当たったが。
レックス「ノーデント卿っ! 何をスるオーク共がぁ!」
彼の顔に当たり跳ね飛んだ球を巨体の彼が腕を伸ばし素早く掴み上げ、投げ返した。
ボコンッ!
オーク「ブゴオッ! いだイッ!」
球がせっかく出て来たのに、また中に落ちていった。
ゼラ「あっ」
ダロム「投げ返シてはダメだレックス!」
「! シまった」
ギギギギィッ!
レックスが一瞬手を離したため、檻がのしかかって来た。
ベル「重ーい!」
「レックスっ、持ってくれ」
ちょっと重いな。
そもそも、持ち上げる場所や位置取りが持ちづらい箇所だからか。
「はっ! スみまセんルーナ様」
「押し上げろっ!」
レックス「セエイッ!」
ゼラ「こん野郎っ!」
ダロム「ハアッ!」
思い切り上に上げ放った。
ギギギッ!
ザザーーガッシャアンッ!
全員落ちたな。
ボオンッ! ガアンッ!
球も落ちて跳ねている。
ドオオオオオオンッ!!
檻も転がった。
扉は天井で、ブラブラと揺れていた。
しかし、思った以上に大きな音がしてしまったな。
モードの顔を見るのが怖いぞ。
「よくやったぞ皆」
レックス「はあっ、はあっ、」
ゼラ「すぅ~、はあ~」
ダロム「か、かなり重かったでスな」
ドワーフの女「はぁ、はぁ、重いってもんじゃないよこんなの」
モード「お疲れ様ですネ」
彼女は助け出していた囚人達を診ていたようだった。
ドワーフの女「あんた達、一体なにもんだい? 特にエルフの嬢ちゃん? あの雷公様じゃあないんだよね?」
? またそれか、違うぞ。
そう言う彼女も何者だろうか、力が強いな。
ドワーフ族だからか?
それに、何でもないような素振りだが、足を怪我しているようだ。
「いや、私も知らん」
「ええ?」
オーク「ウう~ッ」
ベルが格子の隙間から入り、底の方で塊になって痛みに呻くオーク達を横切り、転がっている球を掴んで、天井の出入り口へ持ち上がって来た。
「球取って来たーっ!」
ゼラ「ベ、ベルちゃん、声、声っ」
ベル(あっ、えへへっ、ほいっ)
私に向かって投げて来たな、それは人だぞ?
この感じだと膝に手をついて俯いて休んでいるレックスの頭にぶつかるので、飛んで受け止めた。
(むぐっ……)
ん、球から声が漏れ聞こえた。
ゼラ「ブラッダーさん!」
モード「無事ですかネブラッダー?」
助けた人々を引き連れモードも来た。
大柄な人族の男――ガストンやゼラより下か? なんだか視線が嫌な感じだな。
旅装の人族女――若い女だ、魔力も僅かにある。空腹そうだ。
犬獣人の娘――ソニーやレン、マギーたちと同じくらいか。
多分羊獣人の少年――ニコや、更にフィンよりも少し年上のようだ。
蛇族らしい弱っている、商人の女――年はわかりにくいが、手伝ってくれたドワーフ族の女、猫屋の女将レイアより年上だと思う。ドワーフは同じくらいか。
――の六人か。
ベル「あっ、助けたの? みんなもう大丈夫だよーっ」
彼らの周りを飛び回っているが、驚くことは驚いているが、なんだか反応が薄いな。
「……おじちゃん」
羊の少年が犬獣人の娘の服を掴みながら球を見ている。
知り合いか? 牢屋に居た時に話したのだろうか?
球状態のブラッダー「……」
皆が集まった。
む、蛇の女は随分消耗しているな。
両脇を大柄な人族の男と、犬獣人の女が運んできた。
大柄男「座長、しっかりっ」
犬獣人の女「助かったんですよ、オフィーキュスさん」
オフィー……?
関係や雰囲気を見ると、どうやら彼女は皆の長のようだな。
座長と呼んでいる、名前は覚えにくい。
ダロム「むっ! 私が代わりまス」
咄嗟にダロムが動き、犬の娘と交代した。
片腕で支えられる立ち位置だったし。
(……お久シぶりでス、オフィーキュス様)
呟いてるな、知り合いか? 彼女は答えることができないようだが。
犬獣人の女「……あ、ど、どうも、きゅぅん……」
とさっ。
む、力尽きたのか、気がゆるんだのか、急に座りこんだぞ。
モード「あらら、一旦座りましょうかネ」
治療術が使えればよいのだが……。
椅子でも用意するか。
ゼラ「旦那」
彼もそう思ったようだ。
レックスと目配せして、転がった卓と、壊れかけの長椅子を傍に用意し始める。
騒いだから敵が来そうだが。
む? 犠牲者の遺体、料理が散らばったはずだが消えているな。
……モードが回収したのかもしれないな。
スチャッ、私は転がる球に取り出したナイフを向けた。
ゴトンッ。
ダロムが蛇女を男と共に介抱しながら、皆も座らせた後。
モードはレックスが元に戻した卓に杯と次々取り出して置き、水筒から水を出し入れ飲ませた。
「それで、どのくらいここに囚われていたんですかネ?」
彼女は長らしき蛇族の女に話しかけるが、話せる状態じゃないな、水も横で介抱する犬娘が頑張って飲ませている。
視線を彼女に移して語り掛ける。
犬娘「わふ、えと、わっ、わからないですわん、何週、何月も居るような、ででも、まだ、数日かも、まだ一人しか食べられてないから……きゅうん」
そうか。
ゼラ「どうぞこの水を飲んでくださいご婦人、本当に無事でよかったです、僕は衛兵団副隊長のゼラと申します」
「え、ええ、ありがとうございますわ」
旅装の女に彼は声色を代えて話しかけている。
何だか最初に会ったときに聞いた覚えがあるな……。
アリエスタ(何この状況で口説いてんのあんた!?)
うーん、またアリエスタの幻聴が聞こえてきたな。
ベル「?」
彼女はゼラの頭の上に乗り、首を傾げてそれを見ていた。
それとこの人族女、ほんの僅かだが魔力があるな、腹の辺りにだが。
魔力が弱いからか?
ブラッダーといい、蛇女といい、魔力の形はそれぞれ違うようだな。
この時ルーナは一括りにしてそう思っていたが、後でそれが違うことがわかるのだった。
依頼書の荷馬車の行方不明の日付を見てなかったからいつからかはわからないが、最近さらわれたようだな。
蛇の女「……ぅ、ゴプッ! ゲホゲホッ!」
犬娘「座長っ」
モード「ちょっといいですかネ? まぁ、背中が酷い怪我ですネ、少ないですが薬草がありますネ」
レックス「モード殿、この丸薬と塗り薬を」
「ありがとうございますネ、レックスさん」
彼女らが治療をしようとしている。
どうやら蛇の女は大怪我をしているようだ。
ダロム「ドワーフのご婦人も足を怪我シてらっシゃいまスな、レックス」
「む、ソうだな」
「あたしかい? いいんだよっ、こんなの唾つけときゃ治るさねっ、座長に全部使っとくれよ」
レックス「……塗り薬はたっぷりある、黙って儂に足を見セろ」
そうだ。
「モード、この魔法薬を」
ブラッダーの拘束を解く手を止め、鞄の奥から割れないように包んで仕舞ってあったポーション、を取り出した。
出掛ける前に道具屋で安く売ってもらった上等な品だ。
それに前にケンウッドにもらったのもあるぞ。
ゼラ「あれ? 他にも魔法薬あったんですか? うおっ、めっちゃ良いやつ……あっ、ルーナさんは(あん時)気絶してたっけか」
レックス「流石、ルーナ様でス」
モード「……いえ、それは取っておいてくださいネ、有難うございますルーナさん」
? 何故だ?
ベル「使わないの? この人、痛がってるよ?」
大柄男「そ、そうだっ、副座長――じゃなくて、座長に使ってやってくれよ!」
ゼラ「あー……酷なようですけど、まだ誰も死にかけてないですからね、その時に使いましょう。今薬草を使いましたからね」
モード「ええ、ゼラ副隊長の言う通りですネ。それに、その時は戦える人間を優先しますからネ?」
ほう。
犬娘「わぅん……」
ステラ「もちろんさ、あたしはそれで全然文句ないさね、ここから生きて出る為だもんさ」
ダロム「ええ、帰還シた際にはシっかり治療をかけまシょう」
レックス(儂に使ってシまったからな、役立たねば……)
ベル(はむむぐ、みんなこれ食べるー?)
そして、私は彼女に干し肉を多めに出して渡した後、ナイフでブラッダーの封印を解き終わろうとしていた。
バキバキっ! ハグハグッ!
捕えられていた皆は、干し肉を受け取るや否や、硬いのに皆すごい勢いで齧りついて食べ始めた。
余程空腹だったのだろう。
ゼラ「くそっ、まじかよ……」
しばらく扉で外の様子を探っていた彼も来て手伝うが、傷だらけのブラッダーの甲皮を見てそう言った。
札付きの縄を解いていく度、 彼の身体、甲羅? はあちこち傷だらけで、酸で溶かしたような跡もあった。
散々傷めつけられたようだな。
どうもこの球体になることで守っていたようだ。
生きているのは聞こえているが、随分弱っているようだ。
「ルーナさん落ち着いて、皆が休まりませんネ」
うむ。
モードはルーナから出る殺気をまた抑えろと言うのであった。
オーク「……フゴッ、出ラレないゾッ」「ブヒィ」
「騒ぐと殺ス」
レックスが檻の方に寄って、中で囚われの身になって、意識が戻ったオーク達にそう言っていた。
脅しもあるが、中の連中に手を出しにくいからな。
最早戦う気もなく怯えて固まっている連中を矢で射殺す気もあまりない。
オーク達はこの時、まるで巨大な虫籠のように出られずにいたのだった。
唯一の出入り口は開いてはいるものの、高く届かなかった。
ちなみに連中の得物はベルが飛び回って持って来てくれた。
皆の装備が良くなっている。
木の棍棒はレックスが水槽で拾ったし皆剣を手に入れたので誰も拾ってない。
囚われていた人々では戦斧を、ドワーフの女が何故か担いでいた。
私はたまたま持っていた大剣だけ、魔法のケープに仕舞った。
そろそろ魔力が減って来たな。
犬娘「わぅ、ブラッダーさんは、一番拷問を受けてたんですぅ」
ごうもん。
耳を下げてそう言う彼女。
羊の少年「おじちゃんがわざと騒いで、僕達は苛められなかったの……」
震える声で言う少年、彼は猫屋のフィンより上で、ビクターより下の様だな。
判別し辛かったが男の子で間違いなかった。
羊少年「……見たの、おじちゃんはね、ずっと僕らを励ましてくれてたの、一番ひどい目にあってたのに、僕、僕、ミゲルさんがた、た、食べられるの、見たの」
ベル「はむぐ、よしよし」
彼女が少年の頬を、肉を頬張りながら撫でている。
気が付いたら少年が傍に立って見ていたのだ。
ちょっとびっくりしたな、油断していた。
どうもとてつもない体験をしたようだな。
「わかった、もう大丈夫だ」
突然震え出したので抱きしめる。
私も落ち着く必要があった。
モード「ところで皆さんはどうしてこの遺跡に囚われて?」
犬娘「そ、それが……」
ゼラ「(ぐぬぬ、なんて羨ましいっ)……あ、取れましたよ、生きてますかー? ブラッダー副隊長?」
解き終わり現れた鎧の様な硬皮をぱんぱんと叩くゼラ。
魔封じが解け、ブラッダーからけっこうな魔力を感じる。
本当に強いようだな。
魔力量はモードより上かもしれない。
今は彼女は少なく、彼は全然たくさんある状態だから、ちゃんと比べられないが。
モード「ルーナさん、干し肉有難うございま……ブラッダー?」
彼女も来て彼を見た。
卓の人々も、レックス達も心配そうに見ている。
あ、この音。
ゼラ「ぬぐぐ、かっ、硬いっ! 副隊長ってっ」
彼が球体の継ぎ目を無理やり指を突っ込んで押し開いた。
ブラッダー「……すぴ~~」
少し開いた中で、丸まっている彼の顔や手足が僅かに見えた。
寝てるな。
モード「これ、寝てますネ」
ゼラ「ですよね、ほらぁ、やっぱり無事だったでしょ?」
この騒ぎとあの球遊びの中でこれか。
鎧の感じで心配するほどじゃなかったようだな?
羊少年「……あれ? おじちゃん?」
抱きしめている中で枯れたはずの涙を流していた少年が驚いて離れて行って、中をのぞき込む、涙は止まっていた。
ベル「ん-? はむはむ、寝てる! きゃはははは!」
羊少年「うわっ!?」
彼女が傍に飛んでって一緒に見て、大笑いした。
ブラッダー「っ何ですかぁ!?」
彼女の大声に飛び起きたな。
人々「「あ! ブラッダーさん!」」
わあああ! 喜ぶ捕えられた仲間達。
モード「相変わらず呑気ですネぇ」
ブラッダー「あれ? モード隊長? もう朝の訓練ですかぁ? 嫌ですよね~……」
皆、もう違うのに彼女を隊長と呼ぶな。
寝ぼけてるな、衛兵時代の頃の話か?
モード「そろそろ夕方ですよ? それと私はもう隊長じゃありませんからネ」
そう言いながら、魔封じの札縄を彼女は嫌そうに持ち上げ回収する。
ブラッダー「……」
ゼラ「あれ?」
彼はつぶらな眼をぱちくりしてモードを見た後、また丸くなってしまった。
寝息が聞こえて来たな?
ゼラ「寝ぼけちゃってますねこれ」
ベル「あ! また寝た! きゃはははあうっ、……あははははっ」
ブラッダーが仕舞い忘れた小さな尾に彼女が笑いながら転んで、更に笑った。
羊少年「……ふふっ、あははははっ!」
彼もベルを見て笑い出した。
うむ。
ベルが今まで抑えていた声が牢屋に響き渡った。
やれやれ、ちっとも静かにしないな。
読んでくださりありがとうございます。




