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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
117/133

113話 屑

 無事卵の部屋を抜けれることになった。


 部屋に水が戻って来ている、長居し過ぎたようだ。

 モード「うわっ水が、それじゃ進みますかネ皆さん」


「ああ、世話になった、さらばだフーケ」


《るーなはへいきそう、ねずみも、とかげはしなないで、あついの》


 レックスとダロム「「熱いの?」」

 二人は喉を鳴らしたな。


 ゼラ「はは、さらっと怖いこと言うなフーケちゃんは。溶岩でもあるのかな?」


 ベルとレックス「「ようがん?」」

 なんのことだろう。


 モード「? ……酸とかですかネ? スライム等の魔物にでも注意しろ、と言うことでしょうか?」

 あぁ、そういうことか。


《しょうがないの、よそものじゃないから、ふーけがおまじないをしてあげる》

 チュッ。

 そう言うと、フーケが次々と私達の額に口づけをし始めた。

「む」

 ベル「きゃあー冷たいっ、ふふふ」

 モード「ひゃあ」

 レックス「いや、わっ、儂はっ!? むぅ……」

 ダロム「っ、有難うごザいまス、フーケ様」


 ゼラ「フーケちゃんっ、ここに! あれ?」

《おまえ、やなの》


 彼は唇を示して呼び蚊の口のようにとがらせて変な顔をし始めたので、フーケは嫌がり、素早く自分の唇を手で触れ、ゼラのおでこを指でぱしりと叩いて、間接で口づけをして済ませた。


 何だか私の血を飲んでからか、誓を立ててからか、フーケの感じが柔らかく、そして人間ぽくなっている気がする。


 蟹に変化している部分もさっきから割れるような音を出しているしな。

 何かがおきている最中なのかもしれない。


 私も、魔力は減ったが、猛毒の汁を飲んでから妙に調子が良い。

 栄養とやらがたくさんあったのだろうか?


 ベル「ねぇ、フーケは来ないの?」


《ふーけはまもりてだから、おるすばんしてまってるの》


 守りて?


 随分長い時を過ごしているようだが、そこに寂しさや孤独は感じなく、ただ、待ち続けるという変わらぬ意思のようなものを感じた。


 体が変化して、何かを忘れても。


 いつまでも。


 ベル「ふぅん、誰を?」


《おうさま》


 ふむ、よくわからんな。

 モード「ええっ?」

 レックス「?」

 ダロム「……?」


 ベル「そっか、また来るねー!」

「また来る」

《わかったるーな、べる、ばいばい、きゃっ、ふふふ》

 子蟹「キイィーーッ」

 水をフーケのようがやったように、彼女の傍で小魚のように飛び出させて驚かせてみた。


 ゼラ「おうさま!? えっ、今の、えっ? いいの? もう行くの?」



 そう言って手を振る蟹の鋏のように変化した手が、パキリと音を立てて、彼らが去った跡、水が戻り始めた部屋にパシャリと落ちた。


 殻のけたその右手には、うっすらと青い鱗がにじみ出るように浮かんでいた。

 一行の消えた闇の穴を見つめるその目は、蜥蜴族の様にたての瞳孔へと変化していたのだった。



 パシャンパシャン。


 誰も訪れることのなかった、水に埋まっていた真っ暗な通路を進む。

 足元に水がゆっくりと戻って来ていた。


 後ろを振り返ると、フーケが手を振っていた明るい入口はもう見えず、真っ暗だ。

 ここはゆるい坂になっているようだな。


 モードが灯の魔法をまた創り出してくれ、真っすぐに作られた遺跡の通路を照らす。


 とても長い時間沈んでいたのか、至る所に水草や苔や、藻がびっしりと石壁を覆い尽くしていた。

 廊下の脇のへこみに溜まった水に、様々な生き物が蠢いていた。


 大きいのは水が引いた時にそのまま流れていったのかもしれない。


 ゼラ「うわぁ、なんだかねちょねちょしてるね、こりゃ魔物と出くわしたら戦いづらいよ? 皆気を付けて歩いて――ツルッ! おわっとぉ!」


 ベル(きゃはははっ!)

 彼女にはこの先危険かもしれないので静かにするように言ってあるので、再び静かにしゃべってくれている。


 モード「水は苦手ですから、そこには同感ですネ、さっさと地上に出たいですネ」


 む、通路の先、またさっきと同じで壁、いや一部扉の壁があるみたいだ。

 ダロム「ルーナ様、やはり?」

「ああ、同じだ」


 行き止まりにたどり着いた。

 同じ半魚人の彫刻があるので、背の鱗の一部が押せるのも同じだ。


 ただ、水にずっと浸っていたのか、劣化して、やはり向こう側と同じように色々なものがくっついていた。

 向こう側に何かの気配は、ないな。


 水が溜まって来たな。


 モード「じゃあお願いしますネ。あ、ルーナさんは見ているだけで結構ですからネ」

「む」

 ガンガンバキッッ、パキッバキャッ。


 皆で叩き割ってから鱗を押すと、音を鳴らして同じように彫刻が下に降りて床の一部となった。

 ズズズンッ……。


 ゼラ「階段じゃないの」

 モード「階段ですネ」


 ドアの向こう側は、入口と同様の広さの階段が上の闇の中に続いているだけだった。


 ただ、脇に格子、が作られていて、増え出た水が流れていっていた。


 光球の光が届かないその金属の格子の奥は、更に下の奥底から上がって来た冷えた空気が、僅かに足元に這い寄ってから、開いた扉の背後へと出て行った。


 ダロム「む」

 レックス「くん……なんだこの臭いは?」


 む、空気が、なんだろうか、下水道と同様の臭いがするし、古く乾いた感じも階段上から漂っている。


 モード「上がりですか、地上口ですかネ?」

 少し喜んだ感じで光球を上に上げ見て、彼女はそう言った。

 だが、私の感覚では、まだ湖の水面より深い位置にいると感じるが……。


 ベル(ねぇ早くっ)


 レックス「ベル殿、先に行ってはだめでス、儂の頭にでも乗っててくだサれ」

 ベル(えー? ちょっと飽きて来たから、えいっ)

 ゼラ「わっ、今度は俺かいベルちゃん?」

「……っ!?」


 ゼラの頭の上に乗ったな。

 陣形的にはモードの次で、モードは罠を警戒して集中しているから乗り辛いから、次点として彼か、先が気になって仕方がないようだな。


 ゼラ「痛てて、髪の毛引っ張っちゃだめだからねベルちゃん」


 私も気になる、この首飾り以上の大きな魔力の塊を感じるからだ。

 多分、生き物ではない。


 ザザザ……。


 通路からどんどん水が増えて、流れて来ていた。

 モード「うわっ、行きましょう。濡れますネ」


 ズズズズンッ!


 ゼラ「あれ? これ勝手に閉じるんだ?」

 レックス「前の扉もこうシて閉ジていたのか……」

 そうだぞ。


 ザァァァン……。


 向こうで水が溢れている音がするな。

 さらばだフーケ。


 慎重に階段を上ると……。


 そこは、がらんとした、こじんまりした何もない部屋だった。

 ゼラ「何もないじゃないの」

 モード「何もないですネ」


 少し天井が低いか? 乾いて錆びたような、古い空気と臭い、それに部屋の右手のすみくずやがらくたの破片やゴミが散らばっているようだ。


 魔力の塊はその陰にある。


 モードが光球を上に昇らせ、詠唱をして、更に光を強くした。


 ゼラ「いや、便利ですね、助かります隊ちょ――じゃないや、モードさん」

「ふふ、ちょっと昔が懐かしいですネ」

 ああ、確か彼女は元衛兵団隊長だからな。


 部屋は左手にまた階段らしき出口があるが、嫌な予感がする。

 そちらから空気が流れてきてない。


 そして、目の前の壁の奥から水音と、空間がある気配、もっと集中すると、下水の空気が僅かに漏れている。

 壁の向こうに何かあるな。


 ベル(あれ虫? でっかいね)


 ゼラ「え!? どこ!?」

 レックス「むっ、ダロムっ、右だっ」


 ダロム「! ……いや、死んでおる」


 ベルが見つけた虫、らしき生き物の死骸があった。

 部屋の隅のごみが散乱していた所だな。


 モード「何ですかネ?」


 よく見ると、二匹の、靴ぐらいある、金属の様な大きな虫の死骸だった。

 だんご虫に似てるが、ずっと大きいし棘があって歪な形をしている、足も水グモみたいに長い。


 ゼラ「うわっ、“錆び食い”だ。しかも共食いして死んでますね、これいつからここに居たんだ?」

 ほう?


 レックス「ああ、これが錆び食い虫か。スイレーンでは見かけませんでシたが……」


 ベル(あたしもこんな虫始めて見たー)


 ダロム「戦場跡地によくうろついていまシたな……ここにある物を食いつくシて飢えたのでシょうか」


 モード「何を食べたんでしょうネ? そもそもこの部屋は何ですかネ」


 壁を見ると、何かを掛けていたらしき金具があったり、壁沿いに、座れるような長椅子状の石が設置してあった。

 何か、作業の準備か何かをする場所だろうか。


「錆びを食うのか?」

 ゼラ「ああ、ルーナさん、こいつら金属を食べるんですよ、こいつらの出すつばはそれだけ腐食させて、瞬時に錆びたそれをバリバリ喰っちまう、最悪の冒険者殺しの害虫なんですから」

 モード「体液ですネ」


 ベル「柔らかくなるの? 鎧って食べれるの?」

 ゼラ「お腹壊すよ!?」


 レックス「ふん、鉱物の採れる地域に湧きソうだな」

 モード「その考察は正しいですよネ」

 ふぅん。


 ダロム「ルーナ様、対峙スれば、得物、武器を駄目にサれまス」

「最悪だな」

 まるでスライムと逆だ。

 ベル「フーケが言ってのってこの虫かなー?」


 モード「となると糞が……」

 ダロム「ええ」

 ?

 もしかして、スライムの糞みたいに集まるのか? ということは……。


 そう言って彼は虫の近くのゴミや屑をどけると、糞らしき塊を発見した。

 大きな魔力の正体だった。


 これが糞?

 ゼラ「はあ?」


 錆び食い虫の糞は、色とりどりの見事な輝きを放つ、魔石のような大きな塊であった。


 ベル(すっごい奇麗なうんちだねっ)

 ダロム「? 普段の錆びの屑玉ではないでスな?」

 ゼラ「ええ? 何食ったのこれ?」


 レックス「皆サん……これは、宝箱の残骸でスかな?」

 彼が散乱したごみの中から、僅かな布切れや、木片の枠組みらしき残骸を持ち上げて見せた。

 なんだかさっきフーケの部屋にあった木箱でも見たような気がするな?


 モード「どうやら、この部屋に隠されていた宝箱を、中ごと丸ごと食べてしまったようですネ」

 ゼラ「わお」

 レックス「この塊は宝石のような輝きを持っておりまスが、金属以外も食うのでスかな?」

 モード「みたいですネ、共食いし合うぐらい飢えていたようですし」


 ゼラ「え~、お宝全部を食ったってことですか?」

 ダロム「残念でスな、貴重な品だったのかもシれまセん」


「多分、魔道具だと思うぞ。この塊、すごい魔力がある」


 一同「「ええ?」」


 ベル(うんちになっちゃってるよ?)


 知ってる者もいるが、改めて魔力を感知できることを話した。


 ダロム「セレナール様と同ジ“魔眼”を……いや、あれは魔術でシたか」

 モード「ホントに便利な眼ですネぇ」

 レックス「流石でス、ルーナ様」


 ゼラ「滅茶苦茶便利じゃないですかルーナさんっ、こりゃ付いて来て正解でしたね、お宝は塊になっちゃってたけど……」


 モード「まあ、錆び食い虫の溶解液も手に入りましたし、得だと思っておきましょうネ」


 と言いながら、調べていた虫の隙間に短剣を刺しこみ、それらしいのが中に入っていそうな素材を回収している。


 レックス「一体何の魔道具でスかな?」

 モード「もう溶け固まって壊れてるでしょうが、恐らく地形的に、湖と関わりがある品かもしれませんネ」

 よくわからないな。


 モード「例えば、港には漁の道具が置いてありますネ? そういうのの魔法の道具かもしれません」

 ああ、なるほど。


 ゼラ「ルーナさん、発掘される魔道具って、大体が古代に使われてた道具が多いんですよ」

 なんだ、武器じゃないのか……。


 ゼラ「ちょっと試しに使ってみましょうよ?」


 ダロム「ソもソも、動きまスかな?」

 レックス「雷石のように破裂サれても困るゾ」


 モード「えぇ。溶け固まっているので危険です、誤作動する可能性がありますネ、帰ってから調べましょう」


 その後、彼女は虫二匹を懐にしまって、塊を持ち上げようとして、やめた。


「……すごく重いですネ?」


 そして、懐に片手を当て、もう片方を塊に触れると、塊が消えた。

 ベル「消えたー」

「あら、もうほんとに袋が一杯で何も入らないですネ」


 何だ?

 まるで私のケープにしまうのに似ているな。

 ああやって、魔法袋に直接しまったのか?


 レックス「ああ、鮫に捕まって追った時、前から流れて来た鮫の牙も、ソうやってシまったのでスな、いきなり消えたので驚きまシたゾ」

 ほう。


 モード「このやり方、魔力を必要とするのであまりお勧めはできませんネ、ルーナさんは平気そうですが」

 ふむ、魔力の量もそうだが、ケープと魔法袋は少し違うようだな。


 ゼラ「お勧めも何も、魔法使いじゃないですからね僕らは」


 モード「あら? 衛兵時代、演習で教えた筈ですけどネ? “戦士でも内在魔力を用いる術”があると」

 何。


 ゼラ「……あっ、そうでした、あははは」

 モード「やれやれですネ」


 レックス「? 内在魔力でスか?」

 ダロム「誰シも魔力は宿っているということでスな。でないと、魔法の道具を使うことサえできない、という話でス」

 ああ、そういうことか。


 ベル「あたしも? あたしも使えるのー?」

 ダロム「えぇ、勿論でスよベル殿」


 やはりそうなのか、しかし、魔法使い以外の魔力はなんというか、感じにくいんだけどな……待て、本当に魔力なのだろうか?


 モード「まさに、大体ダロムさんの言う通りですネ、詳しいことは無事帰還して組合酒場でお話ししましょう」

 どうも、魔法に関してはちゃんと学ばなければいけない気がする。


 アリエスタがうらやましいものだな。

 それなのに何で修行を抜け出すんだろう?


 その後、出口の階段を見るが、見事に崩れて潰れており、上がれなくなっていた。


 モード「ええ、そんな」

 ベル(あたしが通れるすき間もないよ?)

 ゼラ「ベルちゃん、もういいからこっちおいで、近くにいると崩れるかもしれないからね」

 レックス「完全に行き止まりに出くわシまシたな」

 ダロム「フーケ殿はご存ジなかったようでスな」


「なあ、ここの、壁の奥に空間と、水がある」

 コンコン。


 拳で叩くと、響きでやっぱり、向こうに空間がある。

 狭いな?


 ゼラ「おおっ! 流石ですルーナさん! ……モード隊長も、落ち着けばわかるんじゃないですか?」


 モード「……ええ、風も漏れて来てますし、下水らしき臭いも、どうやら水で冷静さを欠いていたようですネ、面目めんもくないです、あと私はもう衛兵団じゃありませんネ、ゼラ副長」

 ゼラ「あ、いけね」


 レックス「壊シまスか?」


 モード「ちょっとお待ちを、敵の気配を探りますネ」


 ああ、音でもしかしたら察知されるかもだな。

 モードが小声で詠唱し、辺りに風がそよぎ始めた。


 ダロム「ルーナ様、向こう側がどんな構造かわかるのでシょうか?」


「向こうに細くて長い縦穴がある。上から水が少し流れ落ちているようだ。ここの壁だけ、それほど厚くない」

 耳を当てて、コンコン叩いてより詳しく調べて教えた。


 レックス「なんとっ」

 ダロム「素晴らシい、流石でスルーナ様」


 ゼラ「すっご」

 この時ゼラは蜥蜴族の妙齢みょうれいの男達が揃ってルーナに信奉しているにも合わせて感嘆かんたんして言ったが、誰もそれに気が向いてはいなかったのであった。


 モード「うーん、補足すると、随分上まで続いているみたいですネ、そして、大量の水……近くに何もいないようですが……」

 何?


 上はもしかしたら、水を溜めた水槽でもあるのかもな。

 またスライムだろうか……。


 彼女も私と同じ箇所の壁を叩いた。

「確かにルーナさんの言う通りですネ、ここら辺だけ薄いです、素晴らしいですネ」


 ベル(叩く?)

 彼女が小さな拳を振り回した。


 レックスの拳とどっちが強いんだろうな?

 彼はわかっていないようで、首を傾げている。

 わかっているダロムはちょっと引いている。


「念の為静かに開けましょうか、ゼラさん、ちょっと突く用意をしててくださいネ、行きますよ」


 ゼラ「え? わっ――ハッ!」

 言うや否や、モードは腰の風刃の羽を抜いて、四角く壁を風の刃で音もわずかに切った。

 カコッ。

 むっ、四角く切り取られた壁が落ちるぞ。


 ゼラ「ヒュッ」

 ガッ。

 ゼラの鋭い槍の一突きが、それを捕まえた。


 ベル(わーっ、すごいねっ)

「見事だ」


 ヒュオオ……。

 中を覗き込むと、やはり、縦穴だった、はるか上まで続いている。

 水が流れていて、臭う。


 その時だ、首からぶら下がる三又矛の首飾りが落ちるように縦穴に揺れた。


 上から落ちる水のわずかな飛沫しぶきが、彼女にかかるのを風壁のように防いでいた。

 だが、だれもそれには気付かなかった。


 ゼラ「うわっ、臭っ! これ、ゴミ捨て穴か、排水溝じゃないのかな?」


 モード「上が僅かに明るいですネ?」


 ダロム「……壁伝いに手足を突っ張っていけば、昇れソうでスな」

 レックス「むぅ、狭いな」

 ゼラ「水が落ちてるから滑っちゃいそうですけどね、下は? 見えないけど」


 ベル(見てこよっか?)

 モード「上に行くことだけ考えましょう、縄を持ってますけど、ベルさんに運んでもらって、上で結んでもらいましょうかネ?」


 狭い縦穴を流れる水を見る。

 ベル(いいよー、ね、“結ぶ”ってどうやるの?)

 ゼラ「ええ?」


「ちょっと試したいことがある」



 ベル(そいじゃ行っくよー)

 ゼラ「なんでベルちゃんが言うの? あぁ、なんか不安だな~」

 モード「い、一度に全員じゃなくても」

 ダロム「よろシくお願いシまス、ルーナ様」

 レックス「狭いゾ、は、挟まらないか?」


「行く」


 狭い縦穴を、徐々に上に昇る一行。

 落ちてくる水はモードが風壁で防いでいた。


 流れる水を集め、切り取った壁板の下から押し上げる。


 それに私とレックスが乗っていた。

 ダロムトゼラとモードは、レックスに乗っていた。

 ぶっつけ本番ではなく、実際にやってみせたりはした。



 ――少し前――


 さっきの部屋で、皆を背負ったレックスを私一人でまず持ち上げた。


 担ぐときが重たく、両手で思い切り掴んだ部分をレックスが痛がったが、持ち上げてからは普通に持てたな。

 床石が少しひび割れたが。


 モード「まぁ、力持ちですねぇ」


 レックス「なっ!? ……どおりで、儂ら全員を叩きのめセたわけでスな」

 ダロム「流石でスルーナ様、こうシてベイリ村への街道で、馬車を溝から戻シてくだサったのでスな……」


 ああ、あの時より動かせるようになってるぞ、だが――。


「ベルの方がもっと力が強いぞ」

 ゼラ「まじですか!?」

 モード「しっ、静かに」


 そして、水球でこの集団を私が持ち上げられるかだが、大きくした水球に私が沈んだだけだったので、アリエスタが酒場でやっていた、足裏に水球をくっつける奴をやってみた。

 それを切り取った板の裏でだ。


 私だけ乗ってみたが、横に移動したとき、私だけ落っことして、水球が付いた板だけ飛んでいった。


 モード「上に行くことだけ考えてくださいネ」

 上に移動するのはできた。

 レックスも乗せて、狭いのを考えて、皆は彼の上に乗った。


 ミシッ、ズズ……。

 レックス「……壁板の強度が不安でスなルーナ様」

 動かして見ると、無事、上に動いた。


 ベル(わぁーっ、すごおいっ!)

「おおっ、できたな」

 だが、魔力がすごく減るな。

 長くはできないぞ。


 ゼラ「ちょっ、とめてとめてっ」

 モード「ルーナさん止めて下さいっ、天井にぶつかるっ」――。


 ――――


 そして、縦穴をゆっくり移動する。


 ゼラ「ねぇ旦那、ダロムも、もうちょっと右に寄ってくれませんか? 壁が汚くて、汚れそうなんですけどね」

 彼は左の壁スレスレから避けるようにして屈んでいる巨体の蜥蜴族にそう言う。


 レックス「……狭いから無理でスな」

 ダロム「位置を逆にシていればよかったでスな、私の右腕がない側に居れば……」


 モード「皆さん、上に着きそうですネ」

 上の明かりが近づいて来た。


 ベル(がんばー、もうすぐだよーっ)

 先を飛ぶ彼女がこちらを見て笑っている。


 ミシッ……パキッ。

 ゼラ「あれ? 今なんか割れるような音しなかった?」


 レックス「ルーナ様っ」

「ああ、急ぐ」


 バキィッ!

 途端、足元の壁板が割れた。


 読んでくださりありがとうございます。

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