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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
116/133

112話 青

 スイレーンの街、崩落現場のすぐ近く、地下下水道の出入り口にて。


 「あっケイラッド様だ!」「お疲れ様です団長!」「きゃー街長様~」「領主様だっ」

「誰だって?」「あのでっかい優男が領主だぁ? 冒険者じゃねえのか?」

「おいそこの貴様っ、衛兵団長をバカにしておるのか!?」

「へいへいすいやせ~ん」「このやろっ、待てこらっ!」


「あ、あれが元冒険者のスイレーン領主、団長“水蛇”か……強えぞありゃ」

「あっ! 青い蛇が居るよかぁしゃまっ!」

「何言ってるんだい坊や? いないよそんなの」「ギルマスも居んぜ?」

「ロムガル組長ーっ」「すっげ~、“水蛇”に”四ツ裂き”が二人して歩いてるぜ……」


「二人ともでっかいなぁ~」「うむ、お二方とも、イイ肉体をしてイルッ」

「なんだこいつ」「またモードさんのお使いですかい組長ー?」

「やめろよっ、ギルマスが切れたら組合なんてぺしゃんこになるんだからなっ、俺はもう人が四枚に降ろされんの見んの嫌だかんなっ!」「何言ってっだおめー?」

「ほっとけ! 若造は知らねぇんだよ、ギルマス普段は優しいからなぁ」



 ケイラッド「よぅお前ら! はぁ~っ、やっと上がって来れたぜ、臭っせーのなんのって、ははは、空気が美味えっ、なぁっ! ロムガル」


「グルゥ、やれやれ、案内もなしで、見て来いとは、良い部下に恵まれたものだ、だがまさか本当に、この街に、迷宮ができるとは……」


「皆忙しいんだって、俺達みたいなお飾りなんてそんな扱いで十分なのさっ、しっかし盛り上がって来ていいじゃねぇか! これから忙しくなるぞぉー?」

「グルル、それが嫌なんだ、儂は、もうギルドマスターを、辞めるっ」


 若い衛兵団員「……え? なんかすごい会話をしてるんですが班長?」

 班長らしき中年の衛兵団員「しっ、黙って聞かなかった振りをしていろっ、ああやって軽口を仰い合っておられるがあの二人こそ、この街最強戦力だからな」


 ケイラッド「? どうした? スピネル?」

 スピネルと呼ばれた青い蛇 《……》

 彼の背から突き出た柄に巻きつく蛇が、くねくねとどこかを見ている。


 英雄を眺め歓声を挙げる人々は、まるでそれが存在しないかのように、視線をそれに向けもしなかった。


「奥地か? 向こうで何か感じたのか?」

 スピネル《……ワカンナイ》


 その男の背にある大剣の柄に巻きつく、一部や全身を透けたりを繰り返す不思議な青色の蛇は、明後日の向こうを眺めたまま、もたげた鎌首をわずかに傾げただけであった。


「? ったく、たまにしか喋らんねお前さんは……」



 ――――


 そしてはるか離れたモッカ湖の奥、魔物の多い危険地帯、奥地の湖底洞窟内、遺跡通路奥の一室にて。


《るーなおきて》


「……うん?」


 なんだ? 今、辺りが青く光っていたような。


 一同「「おおっ!」」


 ベル「起きたー!」

 近くで大声がして、ハッと意識がはっきりする。


 彼女の顔がとても近くにある、のぞき込んでいたのか。


 うう、口の中が変な感じだ。

 ジャプッ、ゴクン。

 ベル「わっ」


 ルーナは無意識に水球を作り出し口の上にもっていって、放り込んだ。


「?」

 あれ、水球が作れる?


 モード「ほっ、やれやれ、本当に今日魔法を覚えたんですかネ?」


 ゼラ「むまっま、むまっま~」

 レックス「儂は驚きまシたゾ、まるで教会の司祭様の様な高度な治療でシた」

 ダロム「感謝いたシまス、水神様」


《……これでもう、おまえたちはよそものじゃない、とおっていいの》

 祈るダロムをフーケが見ているな。

 

 すると。


 バシャアンッ。

 レックスとダロムの身体に巻きつく水が、溶けるように垂れ、ただの水に戻ったようだ。


 ベル「やったね! 仲間だね!」


《でも、あまりここへはこないで、ここは、かにのこたちがうまれる、だいじなとこなの》


 レックス「勿論でス、儂ら漁師はこういった孵化場や、稚魚等をみだりに獲ることを禁ジていまス、ネレイド殿」

 ダロム「感謝いたシまス、フーケ様」

《そう?》


 ゼラ「んんむ?」


 む、またフーケが音を出した。


 ザアアアアアアアアッ。

 呼応するように、部屋中の水が揺れ動き、少なくなり始めた。


 最初の廊下ギリギリまで水位が下がり、更には階段が徐々に表れ始めた。


 ゼラ「……んむ、むっむむまう?」


 モード「おや? ルーナさん、爪が元に戻ってますネ……」


 む、本当だ。

 だが、まだぷにぷにして柔らかいな。

 ゼラ「あっ、触っちゃダメですよルーナさん」

 ベル「早いよね~ルーナ」


 ゼラ「むむぅ?」


 レックス「? 生え代わりがどうシたというのだ? (よくわからんが魔法で治シたのもあるんだろうが)」

 ダロム「レックス、蜥蜴族と他種族を一緒にスるな……(エルフ族もソうだとは聞いたことはないが……)」


 モード「ふむ? (報告の通りですかネ? セレナール様と比べて見たいものですネ)」


 なんだかゆっくりだな。

 時間がかかっている。


 階段の先に、奥に行ける穴が見えてるがまだ沈んでいるな。

 穴の上に彫られた変な彫刻が見えて来たところだ。


 あと、ゼラの口の水だけ取れてないのは何故なんだろうな?


 ベル「すごいね~、こんなとこがあるんだね~」

 子蟹「キーッ」


 レックス「ダロム、あの壁の彫刻を見てみろ」

「うん ……池鰐か? いや、細いな……ハッ」

 何か話してるな。


 モード「フーケさん、お聞きしたいのですが、“まもりて”とは、何の守り手なんでしょうかネ?」


《フーケはみずうみのいきものの、まもりてなの》


 子蟹「キッ」

 ベル「きゃはははっ」

 蟹が鋏をかっこいい感じに構えたな。


「そうですか……そこに街の住民――人間も入っていますかネ?」


《にんげんはよそものだから、ちがう、とかげはすこしにてるけど、ちがう》

 うん?

 レックス「少シ……」


 ダロム「似てる? でごザいまスか?」


 モード「ふむ……」


 彼女は顎の毛をいじりながら、背後の閉まった扉を見ていた。

 半魚人らしい彫刻の。


《フーケもききたいの……ねえ、かたうでのとかげ、すいじんさま、って、ウンディーネのことをいってる?》

 なに。


 ダロム「私でスか? いえ、水神様は、“アクア”様と呼ばれておりまスが?」


《ふーん、へんなの》

 みな頷いてるな。水神アクア……。


 ベル「ウンディーネ? まほー?」

 ゼラ「んんむむんう?」

 レックス「ソの名は水教会の詠唱で聞いたことがありまスが……」


 モード「そうですネ、一般的な水魔法の呪文の一つですよネ、水の精霊の名とも言われていますけれどネ」


 セレナールに教わった呪文だな。

 確か水の精霊のはずだが、フーケはそれだけじゃない風に聞いて来たぞ。

「アクアはウンディーネじゃないのか?」


《? るーなはしってるの、へんなの》

 うん?

 知らないんだが……。


 この名を呼ぶと、何かが水の中からこちらを見つめ返してくるような気がするのだが。


 ダロム「……私が“幼体”の頃、長老様方がそういった話をシているのを聞いたような気がシまスが……」


《そう、にんげんはわすれっぽいね》


 皆はよくわかってないみたいだった。


 モードは考え込むような表情だが。


 そう言いながら、水を操りフーケは遊んだ。

 跳び上がった魚のように水の球が跳ねて、音もなく下がりゆく水面に落ちた。

 なんだか寂しそうだな


 そして今のやり方、良いな。

 私もやってみるか。


 モード「ウンディーネは、癒しと水を司る存在、精霊ですネ、あと、私も専門ではないのでよくわかりませんが……古い神々と精霊の名に、似たものがあるのはいくつか耳にしたことがありますネ」


 お、彼女が教えてくれたぞ、だが、精霊自体がよくわからないな。

 聞いたところ、水神アクアと同じようだが。


 ダロム「……水神様と同ジようでスな?」

 レックス「ソれが、ネレイド殿の水の神なのでスか? 別名か何かでシょうか」


《くすくす、かみさま? このこたちは、そうゆんじゃないの》

 達?


 幾つもの水玉が曲芸、のようにくるくると飛び回る。


 ベル「わぁーっ、きゃはははっ」

 子蟹「キキキーーッ」

 む、私の水球も引き寄せられて一緒に回り始めたな。


 レックス「? 儂にはサっぱりわからぬ」


 モード「……まるで見えているみたいに言うのですネ……」


 水と遊ぶ子供達の中に、ベルと子蟹の他にも、混じっている気配がするな?


 精霊とは、水そのものなのか? 司るもの……。

 そしてたくさんいる……。


 そう話していると、ついに水が底まで下がった。

 ポチャ、ピチャ……。


 そして、奥の通路への道が開けた。


 フーケはずっと水に浮かんでいたが、今は体中から水を滴らせながら両足で立っているな。

 む、底に残っている水を大きな水球に浮かばせてそれに座ったぞ。


《……》

 ピチャピチ、コクン。

 水がなくなった部屋の底を珍しそうに眺めて、跳ねている小魚を拾って丸呑みした。


 ゼラ「んむう、ぶはぁっ、やっと取れたっ、忘れられてたのかと思ったよぉ……」


 彼の水も最後に取れたようだ。


 フーケを見ると、本当に忘れてた気がする。


 ベル「あっ! 出口ー?」


《みずはとめてる、さようならるーなと、べると、いろんなにんげんたち、でていったらみずをもどすの》

 ん? 水をせき止めているのだろうか?


 あと、よそもの呼ばわりしなくなったな。

「ありがとうフーケ」


 ベル「ねぇ、フーケはここに棲んでるの?」

《ねどこはここじゃないの、ひみつなの、しりたい? なにをくれる?》

「知りたーい!」


 ダロム「ベ、ベル殿っ」


 ゼラ「それについては寝所でゆっくりお話ししましょうかお嬢さん?」

《おまえはこっちにこないで、ちかいの》


 モード「ゼラさんは黙っててくださいネ、ルーナさん、さっさと行きましょう、これ以上取引するのは危険ですネ」

 レックス「ソうでスな、次は爪や猛毒では済みまセん」


 ダロム(……ノーデント様の呼び名が簡単になっていまスな)


 ベル「ねぇルーナ、あの石出して? メダルにしよっかなー?」

「また今度な」


 石?

 ひょつとして、ゼラに投げる気か?


 出て来た奥への穴、それは長年水に沈んで使用されてない、隠された通路のようだった。


 ベル「そっかー、もう行かなきゃだめなのかー……」

 子蟹「キュゥー……」



 «シュルルル……»

 ?


「うん?」

 階段を降り、そこへ入ろうとしたとき、水底の、横のすみに何かがあるのに気付いた。

 何故か、そちらから蛇の様な声が聞こえた気がしたからだ。


 皆ルーナの動作に気が付き、彼女が向いた方を見た。

 レックス「なんだあの箱は」

 ダロム「随分古いな、地面と同化シておるゾ」


 ずっと水に沈んでいた水底と同化するようにして、アリエスタくらいの、変色した木箱の一部がわずかに見えていた。


 ゼラ「おおっ、宝箱? フーケちゃん、あれ放ったらかしみたいだけど、中に何が入ってるんだろうね? ちょっと中を見てみたいなぁ」


《? しらない、おぼえてない》

 フーケも興味深そうに眺めているな。

 今の今まで、あることも忘れてたようだ。


 周りと同化してて見つけ辛いからな。


 中に魔力を感じるな、魔法の何かか、甲羅蟹でも入り込んで寝てるのかもしれないぞ。


《……るーなほしい?》

「うん? ……中の物によるが」


 また爪でも欲しがるのだろうか。

 モードが心配してるから、取引はしたくないな。


 ベル「石と交換するフーケ?」

 一同「「石?」」


《いしはやだ、それがいいの》

 彼女は青白い指の尖ったつめ先を、私の耳に刺した。


 ゼラ「ひょえっ、ルーナさんの耳!?」

 ダロム「違いまスノーデント卿、恐らくソの耳飾りではないかと」


 モード「急に簡単になりましたネ」


《なつかしい声がするの》

 こちらに近づいて目をつむって耳を澄ませている。


 ? ああ、貝から出る音だろうか、それとも海の気配を感じ取ったのだろうか?


 うん?


 懐かしい?


「大事なもらいものだからな……片方だけならいいぞ」


 私はゼラの片耳にだけある小さな粒の耳飾りを見て、片方だけも良いと思って外して渡した。


 ゼラ「あっ、ルーナさん、僕のピアスに気付いてくれてました? これ、けっこう値が張るんですよ? 魔法効果もあるし」

 ほう。


《やった、ふふふ》

 彼女の手はとても冷たく、触れ合った時、フーケの方が驚いたくらいだ。

 私の方は熱があるからか?


 モード「……ひょっとして、もう何かの取引はしなくてよいことになってませんかネ?」


《さぁ、どうかしら……あれ? るーな、つけて》


 いたずらっぽく笑うな、うん?


 子蟹「キッ?」

 フーケの頭の上に蟹が乗っている。

「む、まかせろ」

 やはり難しいようだな、ソニーたちに教わったやり方を練習できるよい機会だ。


 左耳の耳飾りを、同じフーケの左の耳へとなんとか取り付けた。


《るーなありがとう、ふふふ、~~♪》


 モード「まぁ、なかなかお似合いですネ」

 ベル「お揃いだね! いいなぁ~」


 機嫌よく耳飾りを揺らし水球を操り、回りながらフーケが鼻歌、を歌い始めた。

 なんだか、聞いたことのある歌だな。


《……こりゅうとかわした……やくそく……かいろう……ふうじ……まくうずのしんでんの……みずはひとつの……ながれと~~♪》


 ベル「あっ、それ知ってる、猫屋の歌だっ、ららら~~♪」


 パンッパンッ。

 ゼラ「はは、うまいうまい」

 彼は合いの手、を叩いている。


 ダロム「これは、古王歌でスかな? 水妖にも伝わっていたとは……」


 レックス「モッカ湖の守り人か……“汝の道を照らスように”」

 フーケに警戒を解かずにいた大柄の蜥蜴族が、歌を聞くや、彼女に軽くお辞儀をしていた。


 モード「はい、この宝箱、罠はないようですネ」

 彼女は木箱を調べていたようで、そう言って何やら細い道具を懐にしまいながら、私を見た。

 ベル「わーいっ」

 彼女が飛んでいった。


 箱を開けてみるか。

 フーケも歌うのをやめてこちらに来た。


 箱の中央に、三又の銛らしき紋様がある。

 モード「そこの出口の壁にある彫刻の、背景と同じ紋様ですネ」

 ダロム「水神様の矛でスな」

 そうなのか?


 ギッ。

 む、硬いな、くっついている。


 ガッ、パキッ、ボロッ。

 短剣を蓋の継ぎ目に刺し割り、付着している石みたいな硬いのを削り開けた。

 ギギィッ。


 一行は固唾を飲んで中を覗き込んだ。


 ベル「じゃーん!」

 彼女が中に居たな。


 バチャッ。

 ゼラ「のわ!? べ、べるちゃんがもう一人?!」

《びっくりしたの》


 ダロム「いえ、ノーデント卿、ベル殿 (本人)でスな」


 レックス「くっくっくっ、後ろに穴が開いておったのか」

 だな。


 こそっと入り込んだのは感知していた。


 モード「何ですかネこの泥だんごは?」


 中にそれしかなかった。

 残念だ。


《かにのごはんの、あとなの》


 ゼラ「ああ、海辺の蟹がこんなの作ってたね、何だっけ、栄養?」

 ?


 モード「ああ、確か……砂ごと、砂の中にいる小さな生き物を蟹が食べて、残りを吐き出してできたものですネ、つまり、ただの砂ですネ」


 ベル「ええー?」


 子蟹「キッ!」

 自慢する様にしてるな、お前かこのだんごの山を作ったのは。


 それと、秘密の場所だったのか?

 あまり見てほしくないように感じる。


 ん? 何?


 ベル「あげるって」


 わかるのか。

 彼女の方が“蟹の声”がわかるみたいだ。


 ゼラ「だんごを? でかいねそのだんご」


 レックス「……何故わかるのでスかな?」


「くれるのか?」


 子蟹「キキー」

 蟹の子供が、奥から大きな古い団子を小さな両手、いや両鋏で持ち上げ運んで私のとこにとことこと来た。


《すなだんごなんて、だましたみたいなの、しょうがないから、ふーけのたからものをあげる》


「……いや、これでいいぞ、ありがとう子蟹」

 この大きな団子の中に感じていた魔力があるんだ。

 フーケの宝とやらも面白そうだけどな。


 グシャッ。


 子蟹「キイーーーーッ!?」

 ベル「あーっ!」


「っつ」

 ちょっと痛いな、何だ?

 泥団子を握りつぶすと、手の平に何かが刺さった。


 チャリ。

 中に、三又の銛の穂先のような銀の様な金属の装飾品? が入っていた。


 首飾りの様で、まとまった紐も通してある。

 銀に囲まれた三又の中に、青い石、結晶、が取り付けられている。


 レックス「なんとっ!?」

 ダロム「三又の、首飾りでスかな? 尖った部分が刺サりまシたか? 大丈夫でスかルーナ様」

「ちょっと刺さっただけだ」


 ゼラ「ルーナさん、蟹の子の贈り物を握りつぶすから罰が当たったんじゃないの?」


 モード「……ブッ! す、すいません……」

 彼女が向こうをむいて噴き出したな。


 子蟹「キゥーッ」

 あれ、怒ったのか? 中の事を知ってると思っていたが、どうやらだんご自体が大事だったようだ。

「すまん、子蟹」


 だんごを元に戻そうとしたが、崩れ落ちて、とっくに足元の、浅い水中内の砂と一緒になってわからなくなってしまった……。


 子蟹「キキーッ」

 気にするな? 器の大きいやつだな。


《あれ? “こんなとこにあったんだ”……これって、あげていいんだっけ?》

 これを知っていたようで、フーケが何やら、出口の上の彫刻を見てそう言った。


 その変な彫刻は、さっきレックス達が見ていたものだな。

 池鰐でも、蛇でもない変な生き物で、鰐をもう少し細くして、顎から腹を大きくした感じの彫刻だ。

 青色の塗料が塗られていた。

 青い蛇? ロッカ様か? どっちだったかな?


 何故かフーケは話しかけるようにして見つめた。


 彫刻の中で、僅かに水を泳ぐようにヒレが揺れているな。



 ォォォーーーン……。



 その時、どこからか、周りの崩れた壁の、幾つもある湖へ続く穴の奥の、ずっと向こうから、鳴き声が聞こえた気がした。


 ベル「あれ? なんか聞こえた?」

 私は頷く。


 ゼラ「へ? 何も聞こえないよベルちゃん」

 蜥蜴族達も首を振っている。


「あの彫刻は何だ?」

 水神様とやらだろうか?


 レックス「……池鰐ではありまセんな、細身で魚に近い」

 ダロム「大蛇でも、竜でもありませぬ、我らの知らぬ生物でス、ルーナ様、ですが……」

 あれ?


 ゼラ「ね、あれモッカ様の伝承の姿に似てますよね、くじらにもですけど」

 蜥蜴たちが頷いて彫刻を眺めた。

 ほう。


 後、くじら?


 ベル「モッカ様ー?」

 確か、姉のほうだったか?



 モード「フーケさん、この首飾りを頂いて構わないんでしょうかネ?」


《……うん、いいよ、るーなから“わたして”ね、このさきでつかうかも》

 ?

 後半、囁くように言うのが聞こえたが、よくわからない。


 そしてモードから私の顔を見て言ったな。

 

「ありがとうフーケ」

 首飾りをとりあえず首にかけた。

 いざというときはこれで突き刺すのに使えるかもな。


《それはぶきじゃないの》

 む、フーケにも表情を読まれてしまった。


 魔法の道具らしいが、効果がまるでわからん。

 鑑定が必要だな。


 モード「帰還してからの鑑定がたのしみですネ」

 彼女も察したようだな。

 魔法使いなら感じ取れるのかもしれない。


 手の平は三つ刺さった跡ができたが、ちょっと真ん中のだけ長かったから赤くなっているだけだった。


 モード「……この先に、何かあるんですかネ?」


《よそものがたくさんいるの、たまにわるいやつもでるよ》


 む、明らかに嫌悪感を丸出しにして“わるもの”と言ったな。

 まさか、この先にリゾット達の拠点があるのか?


 ゼラ「ええ? 何ですって?」

 レックス「よソものがいる? こんな奥地に、シかもたくサん?」

 ダロム「奥地だゾ……人か?」


 ベル「わるいやつがいるんだっ、やっつけておくね!」


《だめべる、みたらにげるの、“わに”よりつよいから》


 一同「「ええ!?」」

 なに?


 ……黒衣の男か?

 

 ダロム「モード様、ルーナ様、もシや例の……」


 モード「これは、“大当たり”かもしれませんネ」

 彼女は腰に差した風羽短剣の柄に触れた。


 読んでくださりありがとうございます。

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