105話 調査依頼7 湖底
水中を逃げ泳ぐ巨大鮫に捕らわれてしまったルーナ、モードとダロム、助けようと取り付くゼラ、夢中でついて来たベルに、救助に潜り追って来たレックスだったが……。
モッカ湖中を逃げ泳ぐボロボロ巨大鮫の流す血を嗅ぎつけ、奥地の魔物が次々と群れ集まって来て、外にこびりつく小さな獲物に襲い掛かる。
暗い湖の奥は見通しが悪く、あっという間に消え去って見えなくなった。。
が、急にそれらが泳ぎ散っていった。
何故なら。
自分が獲物になるからだ。
それは悠然と、光がその明るさを届けきれずにいる薄暗い辺りの更に暗い深みから、浮かび上がり並泳し、襲って来た。
ドブウゥゥンッ!!
ダロムとモードの間の網がちぎれて別れた。
咄嗟に片腕の蜥蜴族は手に持つナイフを鮫の外皮に突き立て、流れ去る網から逃れた。
彼とモードの間は大きく肉が縦に割け、おびただしい血が流れ出してダロムは目に入らぬよう、しかし閉じないよう、顔を背け攻撃元のそれを見た。
同時に、巨大な質量を伴う壁の様なその影が、目前に迫って来た。
ガオオンッ!
先を並泳していたレックスが影に向かって流れも利用し体当たりをする。
それはまるで浮かぶ岩のように見えた。
ズレたそれがダロムらを潰さず、後方の巨大鮫の身体にぶち当たる。
取り付くダロムとモード、そして口から出て来たルーナとゼラが鮫ごと大きく水中で揺られる。
鮫 (ボオオオッ)
ベル(でっかい亀だー!)
それは、巨大な亀の魔物だった。
大きすぎて最初理解できなかったが、巨大鮫にぶつかりバタつく手足と伸びてこちら見やる亀頭でやっと判別できた。
モード(水泉亀ですっ甲羅の中央から出る魔法に気を付けてくださいっ)
水泉亀と言うらしい巨大な亀の魔物は、硬くて重そうな甲羅を背負っているくせに、その遊泳速度は素早く、手足は巨大鮫同様に水を掻くのに優れたヒレ状の形状であった。
そして、モードが警告したらしき場所、甲羅中央に火山の河口のような穴が空いていた。
そして突然、亀がその手足と頭を甲羅の中へと引っ込めた。
竜眼の娘には魔力感知によって魔力が集中しているのがわかったのか、ゼラを急に掴んでモードの方へと引っ張り投げた。
(えっ、そんなルーナさんたら強引なあああ!?)
ドブウウゥンッ!!
その途端、穴から高密度の水が射出され、鞭のようにゼラが今までいた場所に通り過ぎた。
巨大鮫の表皮がぱっくりと割れ、血が噴出した。
鮫「ボオオゥッ!」
それはモードとダロムの間を引き裂いた攻撃であった。
間近にいたルーナと辺りは血が煙のように広がり覆いつくした。
咄嗟に目を腕で守ろうと上げたが、辺りは一瞬赤く染まったものの、風防により顔面は守られていたことに気が付く。
彼女は鮫の口の中から、刺さっていた銛を抜いて持って出て来ており、その場に銛を刺し、支えにして流れゆく水中からその身を維持していた。
レックス(む? あの銛、ラプトの小僧の失くした銛か?)
目を丸くして、ゼラはモードの近くの、ぷっつりと千切れた網を掴んで、それを見ていた。
今頃あそこに居れば左右に真っ二つになっていたかもしれなかった。
モード(っ、皆掴まってっ)
バグンッ!
巨大鮫がさすがに反撃しようと急激に身をひるがえし亀に逃げる間も与えず噛みつく。
が、逃げ込むようにまた全てを甲羅の中へ引っ込め、挟まれた亀の甲羅はびくともしていなかった。
ガグガゴガグッ。
ゼラ(ぐええっ)
急激に動く体に皆が振り回され、皆は高所から地面に落下したかのように体表に押し付けられた。
レックスは体表に膝をついて戦いを見る。
竜眼の娘は銛を突き刺し平然とした様子で体を支えながらも、ベルを手で包み守り、その戦いと、踏ん張っている皆を交互に見ていた。
泳ぎをやめ戦いが巻き起こる。
下には湖底が見え、幾つもの大小、巨大な水草や、岩や苔が満ちていて、戦いとは対照的に暗く静かに横たえ広がっていた。
ドブジュブブウウンッ!!
容赦なく亀がまた穴から斬撃かのような水流を噴出し、巨大鮫の唇がない左上、上顎が、驚異的な水の噴射で肉と骨を砕かれ、幾つもの歯をまき散らし水が湖中へと血柱を作り出した。
巨大鮫「ボオオオッ!」
吐き出すように甲羅を放したかあと思うと、今度はお返しにと鮫の魔法が放たれる。
水が急激に変容し、大亀の辺りを激しい回転が襲い掛かる。
ガンガンガンッ!
水槍も創り出しているのか、幾つもの水の線が甲羅を襲うが、びくともしていなかった。
モード(強力になった牙でも噛み砕けないんですネ)
「ゼラ、無事か、皆も」
ベル「あー、モードビチョビチョだねっ」
(ええ、水は大嫌いなんですよネ)
ダロムとレックスは、ルーナ様よくぞご無事で!
といった感じであった。
ゼラ(いやー、びっくりした、あれがブラストタートルってやつですか)
モード(ノーデント卿にルーナさんとベルさん、顔の風防は?)
皆声が届くよう、大声で喋っていた。
ゼラ(え? ああ、これ皆ルーナさんがかけてくれてるんですよ)
ベル(いいでしょー?)
(いや、モードさんは自前のあるじゃないのベルちゃん?)
モード(大変素晴らしい術ですネ、魔力は本当に大丈夫なんですかルーナさん?)
「大丈夫だ、レックスとダロムにもかけよう」
レックス(スゥー、……なんとっ!?)
ダロム(ハァー、少シ息を吐きスぎまシて、助かりまシたルーナ様……ルーナ様?)
モード(えぇ……いともあっさりと……まったく、驚きですネ、?)
「……来る」
ベル(えー?)
一同は彼女の見開いた目で様子を察した。
強力な悪寒も同時に来たのだ。
辺りの生き物の気配が急激に去ったような、水温さえも冷え切ったような、水中に居るのにもかかわらず、彼らは冷や汗を掻いた錯覚を覚えた。
巨大鮫と大亀さえも一瞬、戦いをやめ硬直したのだ。
少し向こうの、水草の地面が、急に盛り上がるように動き出したのを誰かが目の端に捕えた。
見ることなく、その場の全てがそれを感じた。
巨大な質量のそれが動き、辺りの全てが揺れを感じたからだ。
巨大鮫や水泉亀より大きな何かが、薄暗い湖の底から、暗がりの影そのものが動いたかのようにしてここちらに近づく。
鮫がびくりとして離れ、竜巻をくらい身動き取れずにいた大亀が、一歩逃げ遅れた。
ズオオオオオオオッ。
影の中から巨大な口が明るみに出て、大亀をその鱗だらけの口で挟んだ。
メキメキ……バギイイイッ!!
大亀 (ギュオオオオゥッ……)
一同 ((なあっ!?))
巨大鮫でさえ嚙み砕けなかった大亀の硬い甲羅が、簡単に砕かれた。
バギャメギュボグンッゴリボリゴグンッ!
何度も噛みつき、細かく砕かれ肉と甲羅と骨が粉砕され咀嚼され、飲み込まれた。
大量の血煙が辺りの水を濁す中からぬうっと現れたその巨体は、こちらを影になっている眼窩の奥の、巨体に比べれば小さな眼で捕えていた。
人間達にとっては巨大な球体のそれで。
それは、とても巨大な鰐の魔物だった。
ずっと地に潜んでいたのか、最初水草の湖底だと思われたそれは、苔と土に根に覆われた背中であった。
大亀の苔むした岩甲羅よりも、古く、豊かに茂って。
それ以外は土煙を巻き起こしながら現れ、蜥蜴族の様な鱗が、巨体の胴体と地続きの太い尾までびっしりと凶悪に尖って生え揃っており、その手足は短いが、片手で巨大鮫を掴みつぶしそうな膂力を感じさせ、一掻きで獲物に食らいつくくらいだった。
「……」
ベル「ひゃーーっ山みたいだねー!」
巨体に比べその小さな目や図体から、飢えと、歓喜を感じる。
しかしなんという魔力だ。
今まで出くわした中で一番の量だぞ。
ゼラ(何だよこの化け物は!?)
レックス(い、“池鰐”だっ!!)
ダロム(いかん! 逃げまシょう皆サん!)
モード(なんと、ついにはモッカ湖の“頂点捕食者”が出ましたか)
大亀が一足逃げ遅れ食われる間、すでに巨大鮫はその場から離れ泳いでいた。
だがその速度は、大亀の魔法で深手を負ったのか、明らかに以前より遅まっていた。
池鰐が尾を振り、魚と同じ泳ぎ方で体を揺らすその動作だけで、あっというまに巨体が鮫の尾びれに迫り来る。
咄嗟に鮫に捕まり共に離れつつその惨状を見ていた一行だったが、途端に無事で逃げ切れないと知った。
巨大な池鰐の大きく開いた口が迫り来る。
ガチンッ!
身をひねり、間一髪躱す鮫。
辺り中に顎をかち合わせた大きな音が響き渡っていった。
ドガアアンッ!
咄嗟によけた鮫は、湖底から突き出る崖のようにせりあがった岩に勢いよくぶつかった。
鮫の流す血と、崩れる岩場の土砂で辺りの視界が更に悪くなる。
ゼラ(うおおおっ)
レックス(皆離スなぁっ)
ダロム(ぐうっ!)
片腕の蜥蜴族は負傷したようで、跳ね飛ぶ大小の岩の一つが脇腹にぶつかり砕ける。
モード(ダロムさんっ)
彼は網を掴む手が緩み、ダロムが泳ぐ鮫から落ちようとするが、咄嗟に傍にいたモードが空いた手で彼の腰帯を掴む。
そこに、更に大きな岩が丁度降って来た。
ルーナは咄嗟にそこへ飛びこもうと身を屈ませたが、静観した。
ガアアンッ!
大きな銛が岩めがけて突き入れられ、爆砕し、その中からレックスの巨体が現れる。
ダロム(レックス……)
(……フンッ)
むっ、魔力の大きな流れを感じる。
(後ろだレックス!)
ゼラ(嘘だろっ!)
バゴオオオンッ!
崩れる岩山をどけ払うように瞬く間に破壊し、土砂や岩をものともせず大口を開けた池鰐が飛び出て来た。
奴の太い尾から魔力がほとばしっている。
水を操ったのか?
ゼラ(避けろおおっ!)
バグウッ!
鮫「ボボオオォォッ!」
とうとう噛みつかれた。
だが、浅いっ。
背中の辺りだけだ。
鮫は身をひねって噛み付き返そうとしたり、大亀にやったように魔法で攻撃するが歯は届かず、魔法はその岩のような皮膚鱗にびくともしていなかった。
軽快に動き、レックスが岩を砕いた銛の一撃を撃ち込み、傷をつけるも、巨大な池鰐に比べてそれは蚊に刺されたような小さな傷に見えた。
彼は続けて殴りつけるが、街の外壁を殴っているようだった。
ゼラ(レイクアリゲイドの噛み付きっていや絶対離さないって聞くけど!?)
皆はもがくように暴れる鮫から弾き飛ばされそうになるが、それは鰐も同じだった。
ミシミシミチ……ブチイッ!
鮫「ボオオオオオ!」
背中の肉がごっそりとえぐり取られる。
「っ!」
「……」
まずいなこのままでは。
逃げることも倒すことも難しそうだ。
眼を矢で射るか。
水中と奴の巨大さでは傷つけられるかもわからないが。
とにかく魔力を貯める時間を稼げるか。
考えながら揺れる鮫に耐え、突き刺した銛を握る手に力を込めていると、ふと眼がそこにいく。
「ん」
ミスリルの矢のように、握る手に魔力が籠もっていた。
わずかな鮫の肉をごくりと飲み込み、すぐさま池鰐は再び食らいつこうと顎を開く。
鮫は、奴の太い手に尾びれを掴まれ囚われていたのだ。
漁船もひと噛みで粉砕させるような強大な顎が、私達のいる辺りに暗い影を落とした。
ゼラ(うおおっ逃げろおお!)
銛を掴み、勢いよく跳び上がり、抜ける銛ごと鮫から離れる。
泳ぎどくレックス、咄嗟に鮫を蹴り距離を取るゼラ、同様に離れるダロム、モード。
しかし、モードだけ遅れ鮫の体表に残された。
暴れる鮫により水中をはためき揺れる網が、彼女の小さな足にたまたま引っかかったのだ。
いかんっ。
モード(えっ)
驚き振り返る彼女のつぶらな瞳には、巨大池鰐の暗黒の口内しか映っていなっかった。
「ベルっ、手伝って!」
「ふえ?」
夢中だった。
(ウンディーネ!)
頼む!
ゼラ(ちょっ――ルーナさん!)
その光景は、ルーナが水中を亀や鰐のように飛び走り泳いでいる姿だった。
足元の水を、水球を、靴裏に出し飛ばして、組合の喧嘩でのアリエスタのように動かしていたのだった。
ベルが驚き慌てて襟元に抱き着く中、水中を飛ぶように急激に鰐に向かって飛び込んで来ていた。
モード(っ来ては行けませんっ!)
持っていた銛はケープに仕舞い。
ヴン――代りに拳当てが握った拳に出現させていた。
ダロム(なっ)
レックス(ルーナ様っ!)
急激に魔力がそこに集中していた。
ズオオオオッ!
その時、顎を広げた奴の口に飛び混む前、奴と目が合った。
一瞬だが、奴が目を大きく開けて、身体全体をビクンとさせた。
今まで彼女の竜眼を見て固まった蜥蜴族と同様に。
それでほんの一瞬だが、顎が閉じる時間を僅かに稼ぐことができた。
ベル(あっ、うん! う~っ、こんにゃろ!)
彼女と同時に、合わせるようにして、頭上に降りてくる鰐の上顎に向かって拳を思い切り突き出した。
バドゴオオオオオオオオッ!!
池鰐 (ッギャオオオオウウ!!)
殴れた。
そして効いた。
口内の肉か骨か、内側のごく一部を砕き潰して、噛みつかれることなく殴り飛ばせた。
メキッ。
拳当ての重い金属がわずかに軋んだ。
ベル(ルーナっ、きゃ!)
しかし、吹っ飛んだ顎はいいが、下の顎がものすごい勢いで上がって来た。
巨大鮫を巻き込んで。
どうやったかわからないが、さっきのように足元にある水を操り体を飛ばすようにして動かし避ける。
いかん、先ほどに比べ上手く操れず速度を出せない。
ズジュッ!
(ぐぅっ!)
迫り上がって来る鮫の巨体をよけ、鰐の口から逃れ、しかし、鰐の並ぶ、上を向いて並ぶ牙に体が引っ掛けられた。
一同 ((ルーナさん!!))
背中を引き裂き、反動で飛ぶ体を、反対の別の牙が、鉄鋼の胸当てを抉る。
顎が吹っ飛ぶ巨大な池鰐を背景に、ルーナは自らの血で汚れる水中に力なく漂った。
バシィンッ!
続けて、逃げ泳ごうとする巨大鮫の振られた尾びれに弾き飛ばされる。
(っ! ……)
ベルはかろうじて跳ね飛ぶ彼女の長髪を掴み、取り残されることなく共に飛ばされた。
エルフの娘は、巨大鮫の全身を進ませる為の渾身の尾ひれの、岩をも砕かんとするとてつもない振りに頭から弾き飛ばされ、意識を失ってしまった。
途端、巡り紡がれていた魔力の縛りが解かれるように霧散し、モード以外に掛けられた一行の空気を作り出していた風防の魔術が霧散して、予告なく水に顔面が投げ出された。
ゼラ(ルーナさん! ルーナさがぼっ――)
レックス(ム、ゴボッ!)
ダロム(ングッ!?)
ベル(ルーわぶっ!? ゴボボボッ!?)
モード(!? 風防が解けたんですか?)
湖中に消え去る彼女を、レックスが素早く泳ぎ、捕まえるようにして確保した。
レックス(……)
彼は抱き留めた彼女の背中の怪我を見て蜥蜴の鱗の眉間にしわを寄せる。
鎧の破損部に当たった鰐の牙は彼女の背中をえぐったのだ。
ダロムはレックスに手振りで、掴まっている鮫がここから引こうと泳ぎ去ることを知らせ手招きした。
モード(早く捕まってくださいっ)
唯一自前の魔術で呼吸を維持していた彼女が叫んだ。
池鰐「グウウアアアッ」
急に顎を刺すような痛みと共に弾かれた、敵なしの湖の王は、長年感じることのなかった痛みと驚きに、動揺する様に呻いた。
そして、久しく忘れていた怒りを、滅多に上がらぬ湖上に、浮かび上がるようにして思い出し始めた。
その隙に瀕死の巨大鮫は、湖中に川の様に血の跡を引いて逃げ泳ぎ去っていた……。
呼吸を乱しつつ必死にゼラが、モードは努めて冷静に周りを見ながら、ダロムはレックスを手伝いながら起用に足で、彼はルーナを大事に抱え泳ぎながら、それぞれいまだに引っかかり揺れる網を掴み集まった。
レックス(……儂らはまだいいが、ノーデント卿は平気なのか? ベルが溺れるゾっ)
ダロム(いかん! ベル殿の呼吸がっ)
とり急ぎ、モードが静かに閉じた口内で詠唱し、失神したエルフの娘と苦しむ小妖精の少女に風防を作り出そうとしていた。
レックスは空気袋をとっくに潰し、鞄に仕舞っていたことを悔やんでいた。
ゼラは口移しするほど空気を体内に持っていないことを大層残念に思っていた。
ダロムは背後から聞こえた怒りの鳴き声に顔を向ける。
だがその時、鮫の目的地が近いことに一行が気付く。
湖底はいつしかごつごつとし隆起しており、平らでもなく、砂場も少なくなった岩場へと変わっていた。
ゼラ「ゴポポオ!? ん-ん-! (うおおお前々! 前見て!)」
ズオオオオオオオウッ。
その中でぽっかりと開いた穴へと、鮫は育ちすぎた巨体ぎりぎりで突っ込んで入った。
一行 ((洞窟!?))
暗い湖の底のさらに深淵に入り、何も見えぬ暗黒に包まれる。
しかし蜥蜴族と獣人の彼ら彼女らの夜目には、一向にとってはずいぶんと広く長い、奥まった洞窟が見えていた。
ズウウンッ、ガラアンッ!
速度は緩めたものの、想定以上に進化した鮫は窮屈そうにしつつも逃げようと必死にボロボロの体に無理を言わせてねじ込むように奥へ進む。
レックス(うおおお!?)
ガラアアアアアンッ!
あわや洞窟壁に挟まれ押し潰されそうになるになる一部の者達であった。
背後の唯一の光源を一行が振り向いた時、それは聞こえた。
池鰐「ギャオォォォ……」
奴が追って来た。
そう思った矢先に、洞窟入り口めがけて巨大な池鰐が矢のように暗闇から飛び出して来た。
バガアアアアアアアアアアアアアン!
周りを覆うような岩棚を弾き飛ばし粉砕して力づくでだ。
今までに感じたことのなかった、かつてない怒りの衝動に我を忘れているかのように、荒ぶる湖の支配者は矮小な獲物をがむしゃらに追いかけた。
ドゴオオガガララアアアンッ!!
そして巨体にはとても侵入不可能な狭い穴へ突撃する。
ズズズズッガラガラガラアアアアアアッ!
洞窟が崩れ始めた。
レックス((入口がっ))
ズルッ!
鮫が何とか奥の広場へ体を入れた。
ガラアアンッ。
ゼラ(!? 明るい?)
ダロム(む!? 上に水面がっ、空気?)
ガラアァ! ザパアアアアァンッ! ドオオオオオオオオオンッ!
鮫は勢いよく広場を突っ切り、ぶつかるまいと慌てて曲がり泳ぐも、坂の様になっている岩壁にぶつかり、そのまま上の、湖面へと半ば飛び出し浮上し、岸辺の岩壁に頭から突っ込んだ。
ザバアッ!
皆、水上に跳び出した際にそのまま弾き飛ばされ、湖面を跳ね転がった。
バシャアアンッ!
ベル「ぷはぁーー! 苦しかったぁー!」
モード「あらっ?」
ゼラ「ぷはぁぁっ! ルーナさんっ、大丈夫ですか!? しっかり!」
ゴォォォガラァァァッッ……。
崩れる音が続き、入口通路から噴出する大量の土煙や岩粒が広場に広がる。
空気のある天井の、洞窟の亀裂から伸び下がる植物に遮られつつも、わずかに陽が射しこみ、 鮫の隠れ家を照らしていた。
水面にはわずかに岸が存在し、打ち上げられた巨大鮫が岸の岩壁にぶつかったまま、横に倒れその半身は水に浸かっている状態であった。
彼らにとってそこは隠れた秘密の入り江のようだった。
そして、もはや瀕死の巨大な鮫にとっては最期となる狭くなった棲み処であった。
想像を絶する湖の戦いは、最終的に湖の覇者との遭遇と、それからの逃亡に成功したものの、ルーナの重症と意識不明に終った。
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