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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
106/132

102話 調査依頼4 矢

 巨大透明スライムより先に、鮫が襲ってくるようだ。

 迎え撃とう。


 体の、手の魔力が矢にまで巡ってる。

 杖とか指輪じゃなしに。

 それか指輪――魔道環《発動体》に触れてるからか?


 試しにつがえた数本の矢に念じて魔力を籠めてみる。


 乗るな。

 ィィィィ。

 そしてとても通りやすい。

 まるで発動体みたいに。


 ミスリルだから?


 船底の向こう側、水中から鮫がぐんぐん迫って来る。

 助走をつけ始めたか?


 突っ込んで来るみたいだな。


 だが、どれだけ乗るのだろう?

 籠められるのだろうか?

 イイイイイ。


 ゼラ「ちょ、ちょっとルーナさん、矢が震えてるんだけど」


 もう少し込めてみよう。

 イイイイイイ!


 いかん、鮫が来る。

 ギリギリギリギリ……。


 アリエスタ「なにしてやがんだてめえ、ってうぉおっ!? 鮫がっ」

 モード「ハッ――水中ですネ!?」

 他の魔法使いも気が付いたぞ。


 ガストン「!? 皆掴まれ! 落とされんなよビクター!」


 奴の強大な魔力と水中からせり上がる気配と水流が強くなり、私達のいる辺りが盛り上がり始めた。


 来る。


 魔力が集中しガタガタと震える“三本の矢”をモッカ湖の中へと撃ち放った。



 バシュ――ドパアンッ!!!!!!



 一同「「うわおおおお!?」」


 ……ゴゥゥゥゥウウゥゥゥンンッッ!!

 船底を貫通し、水中を切り裂くように矢が潜っていき、鮫に当たった。


 バシャアアアアアアアンッ!!

 矢の勢いで水が大量に跳ね飛んできた。

 矢じりの火が消えないように首を動かす。


 モード「うわっ風壁っ」


 ドッザバアアアアアアアアアッ!!

 一同「「うわああああ!?」」

 出た!


 奴は面食らったのか驚くように揺れ動き、そして痛みに蠢いたのか、突進がそれて、すぐ横から空中へと飛び上がった。

 透明スライムのすぐ近くだ。


 漁師達「逸れた!?」「助かっにゃ!」

 モード(ええ、あの巨体が当たれば漁船が粉々になってましたネ)

 ソニー「きゃああっ」

 ビクター「ッ!?」

 ベル「わーーっ」

 ゼラ「わお!」

 ガストン「ぅぅ、揺れる、で、でけえぞ!」


 レックス「なんだあのバケモンは!」

 ダロム「やはり進化シたか!?」

 なにっ。


 アリエスタ「チッ揺らすんじゃねえっ!」

 彼はなんとか魔力を巡らせて詠唱を続けてる。


 鮫は船より少し大きくなって、ごつくなっていた。

 ボロボロだった怪我はまるで盛り上がった肉に埋まるように跡を少し残して塞がっていた。


 潰したはずの片目も治っているな。

 表皮も表面の突起も強固なものへと変わっていて、牙は更に凶悪に伸び育ち、顔面に刺さっていたはずの槍等は抜けたのかなくなっていた。


 だが、新たに三つの大き目の穴が開いている。

 矢の傷なのか?


 うん、私の込めたばかりの魔力が体内に三つ、僅かに感じる。

 そして奴の強大な魔力の中に消えていった。


 透明スライムさすがに炎の噴射をやめた。

 というよりは、反応して触手を伸ばし奴を捕まえようとしていた。


 巨大透明スライム「……オオキイゴハン」


 鮫は体をよじり、避けるが、何本も回り込むように伸ばし掴もうとする。


 その時、尾ひれを叩きつけるようにして更に跳び上がりすり抜けた。

 バチャアアン!


 魔法?

 私が水球を足場にしたような感じだ。


 アリエスタ「よし! 食らえクラゲ野郎!! ルーナ!」


 む、急ぎ火矢をつがえる。

 これもギリギリまで魔力を込めよう。


 ィィィィィ。


 鮫が湖面に落ちる間も与えず、アリエスタが大きめの鋭い氷弾を作り出し、スライムのふくらみに向けて放った。


 まるで大剣を投げたようだ。

 ガヒュウンッ!!


 モードは合わせて風壁を解いてくれた。


「フッ!」

 続いて火矢を放つ。


 バシュンッ!


 透明スライムは魔法をよく知らないようだな。

 避ける素振りもなく、その場に浮かんでいたきりだった奴の膨らんだ本体に氷の太い欠片が貫通し、大穴を開けた。


 巨大透明スライム「……イタイッ」

 ブシュウウウウッ!

 ボタボタボタァ!


 見事だ。

 下に溜まっている黒い水に穴を穿った!


 シュウウウウウッ。

 貫通したのか、向こう側に開いた穴から、何か大量の“空気が抜ける音”がして、急激に膨らみがしぼみ、高さが下がる。

 しかし、すぐさま穴を塞ごうとしているのか、スライム穴が狭くなり始めた。


 そこへ、黒い水が零れ落ちるその小さくなる穴へ、火に燃える銀の線が氷弾の後に続いて突っ込んだ。


 ヒュイイィィィン――――ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 一同「「!?」」


 アリエスタ「しゃああっ! ざまあみろ!」

 ベル「わーーっはじけたー!」

 ガストン「うおおお!」

 ゼラ「すっげえええ!」


 一同「「う、うおおおお!」」

 皆何か言っているが爆音で聞こえないな。


 やはり、黒い水全部に火が回り、内部から奴は爆発、破裂した。


 だが、下の魔力の集中、恐らく透明魔石は無事だ。

 まだ死んではいない。

 

 矢をすぐさま出し、魔力を込める。

 この調子だとこの(ミスリル)矢も使い切るかもしれないな。


 ドボオオォォォンッ!

 同時に鮫は湖面に落ちた。


 漁師達の網は投げられなかったようだ。

 次はどこから来るかちゃんと教えなければ。


 巨大透明スライム「……アア……」


 船の傍の方へ、巨大透明スライムが落ちていく。

 本体部分上が弾け飛んだことで、浮かぶことができなくなったか。


 ガストン「よくやったルーナ! まだ生きてるか? 警戒しろっ、鮫もだぞ」

 彼に頷いておいた。


 レックス「お見事でスルーナ様! お前ら、今度こソ網でとっ捕まえるゾ!」

 漁師達「「おおお!」」


 ラプト「お、俺もやるゾ! このままノコノコ港に帰れるか!」

 チャック「先輩達に任せときゃいいんだっての! なぁ、冒険者の兄ちゃんもなあ?」

 ビクター「が、頑張るぞ!」

「あ~あ」


 スライムが湖に不時着? して浮かんでいる。


 よく見ると、弾けた本体上部を塞いでいるな。

 魔力は目に見えて減っている。

 黒い水は燃え消えたようだが……。


 ゼラ「止め刺すにはちょっと遠いんだけどっ」

 ソニー「あ、あれでまだ生きてるんですか!?」


「アリエスタ、あそこに魔石がある」

 矢を向けて示した。

 例の取り寄せる魔法で回収してくれないだろうか。

「! よしっあっおい待て! 撃つなよ? 俺にまかせろ! へへへ、でっかいかな?」


「大きさは多分同じだ」

「何だよ!」


 ベル「あっ、キラキラだっ」

「あっ、ベル!」

 彼女が突然飛んで離れてゆく。


 行先を見ると、向こうの湖面に浮かぶミスリルの矢を見つけたのか。

 そうか、矢は軽いから浮かぶんだ。回収できるのか。


 だが鮫がまだいるんだぞ。


 急に強くなった鮫も倒した方が良いな。


 む、いかんっ 透明スライムに向かっている!

 魔石目当てか?


 すごい速さでそこへ向かう行く奴に狙いをつける。


 漁師達「あっ、鮫が出て来たゾ」

 私の狙いの先を見ていた何人かが気が付いた。


 湖面スレスレに出て来て、巨大な背ビレ、が大剣のように突き立っている。

 チャック「ひえええっ!」


 もうすぐにスライムのところへ行き着くっ。

 ギリギリギリ……。


 その時、奴の大きな魔力が巡り出した。

 また魔法かっ?


 しかも、横にズレ泳ぎ狙いから外れた!


 まるで、狙ってるのがわかったかのような……。


 泳ぎ方も、さっきから私を避けている様に感じる。


 まさか、この“魔力を込めた矢”を感知してるのか?


 モード「! 鮫も風を出していますネ」

 彼女も奴の魔法を察知した。


 ズオオオオオオオッ。


 鮫の前方の湖面が突然、激しく逆巻いて水しぶきを上げ、回転する柱が幾つも現れた。

 辺りの湖面は荒れ揺れ、まるで商人宿にあった絵の、嵐の海みたいになってしまった。


 一同「「うわあああっ!」」

 ガストン「ううっぷ、もう勘弁してくれ」


 もの凄く沈みかけの傾いた漁船が揺れる。

 激しい揺れに、駄目な連中が吐きそうな顔をしているな。


 ゼラ「ありゃ巻き込まれたらふっ飛ぶね」

 ソニー「竜巻です!」

 たつまき、これが。


 あっという間に水柱でスライムが隠れてしまった。

 アリエスタ「くっそ、これじゃ引き寄せられねえ!」

 むう。


 チャック「ぎゃああこっち来んぞ!」

 いくつも巻き起こる竜巻は徐々に大きくなってゆき広がり、こちらにも迫って来た。


 浮かんでいた砕けた船の破片があっという間に竜巻に吸い込まれて巻き上げられて、竜巻の中に消えていった。

 鮫は竜巻を全く気にもせず突っ込んで来る。


 仕方ない、食われる前にとどめを刺す。


 スライムの透明魔石のある、魔力の集中した部分へ向けて、魔力を籠めたミスリル矢を放った。

 ギリギリギリ……シュヒィィィィィンッ!


 竜巻の一本を貫き弾き飛ばし、見えたボロボロのスライムへと、銀の線が走る。

 ドパアンッ!

 なにっ。


 急にスライム下の水が上に吹き上がってスライムを持ち上げ、矢が通り過ぎた。

 外された?


 鮫の魔法か!?

 スライムに食らいつこうと、巨大な口を開けながら鮫が飛び上がった。


 透明スライム「……ヤダ」

 ボコボコボコッ!


 その時、スライムに小鬼ゴブリンの変異種のような変異が突如巻き起こった。


 アリエスタ「くっそ食われる!」


 ジャギンッ!!

 鮫に一飲みにされるその瞬間、透明な奴の体が黒く変色したかと思うと、沸騰するかのように変形し、一飲みにしようと閉じる鮫の口内にむけて、その身体全体から、大量の長い棘を飛び出させた。

 ドジュッ!!!!!!

 強化池鮫「――――ッ!!」


 跳び上がった巨大な鮫の口や頭が、口の中から飛び出した黒く鋭く細長い棘まみれになった。

 殺ったのか!?


 ガストン「土壇場で変異しやがった!」

 ゼラ「あれがか!?」


 ズオオオオオオオッ。

 一同「「うわああああっ」」

 竜巻がこちらに迫って来た。


 どうする!?

 もうすぐ、皆巻き込まれ吹っ飛ばされる。


 アリエスタを見るが、首を振っている。

 合体魔法は間に合わない。


 咆哮を放つか!?


 モード「風壁っ」

 彼女が風壁を竜巻を迎えるように出した。

 バシュウウウウウウッ!

 アリエスタ「すっげ……」

 彼女の風壁は竜巻さえも押しとどめた。

 見事だ。


 チャック「やった! モードの姉ご、すげえっす!」

 ラプト「ひええ、な、なあ、あの鮫浮いてねーか?」


 レックス「水魔法か!」

 ダロム「ルーナ様が先程成功サセた、足場に似た魔術でス」


 見ると、風壁と竜巻の向こう、鮫が空中に浮かんだまま口の中にトゲトゲのクラゲスライムに貫かれたまま、苦しそうにもがいている。

 魔力の巡りを感じる限り、まだまだ元気なようだな。


 アリエスタ「おい! 魔石を食われるぞ!」

 これが最後かもしれない。

 すでに取り出し魔力を込めていた矢を構えながら、レックスの巨体を上り、モードの風壁を跳び越え上がる。

 タッ、ダンッ!

 レックス「!?」


 狙い打つ!


 バフオッ!

 鮫が口から、大漁の魔力の巡っている水を吐き出した。

 む、奴が落ち始めたっ。

 体内に飲んだ水で浮かんでいたのか?


 矢の狙いを、落ちる連中を追ってズラす……。


 ソニー「ああ! 竜巻がっ」

 ビクター「が、合体した!」


 ゴオオオオッ!!

 その時、竜巻が急に集まり始めて、奴らを飲み込もうとする。


 連中が見えなくなるっ。

 だが。


 ここだ!

 シュヒィィィィィンッ!


 鮫が渾身の力で顎を閉じようとし、スライムは棘を維持し、更に鋭く伸ばし大きく変化させていた。

 グググ、ピキッ。

 棘にひびが入った、一瞬だった。

 バクンッ! バリバリバリィィィンッ!

 

 飲み込まれた。

 そして、くぐもった割れる音がする。


 ――バキンッ!

 スライム「……アアァ……」

 

 一歩遅かった。


 ドジュッ!

 池鮫「――!!」

 口を閉じた奴の、復活した目に再度、矢が撃ち抜かれた。


 鮫は怒りと憎悪の感情を露わにしてこちらを睨み、合流した巨大竜巻の中に消えていった。


 ゴオオオオオオッ!!


 バタバタバタッ!

 ケープがとてつもない風で暴れる。

 

 皆が叫んでいるが聞こえ辛いな。


 なん――。

 ヒュンッ――バキャアッッ!!


「っ!? ――……」


 な、ん、だ?


 木の、破、片…………。



 ゴオオオオオオッ!!



 皆「「――――」」

 目撃した者達から悲鳴のような声が上がったが、轟音と薄れゆく意識にかき消され彼女が聞くことはなかった


 それは、竜巻が巻き飛ばした船の破片だった。

 合わさる竜巻の間から蒸気銃の高圧金属弾よりも早く弾き飛ばされ、彼女のこめかみ当たったのだった。


 前に飛び出し過ぎた彼女の意識を失った華奢な体は、そのまま竜巻の吸い込む風に巻き込まれて、あっという間に巨大竜巻の中に飲み込まれた。


 読んでくださりありがとうございます。

 状況が二転三転する。

 ルーナの感覚や思考は早い方ですが、それを越えた変化をやってみました。

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